「意外と楽でいいが」 ◆ARe2lZhvho
『それ』を見つけたのは偶然ではなく当然だった。
彼女はこのバトルロワイアルを止めるため協力者、主催への手がかり、その他とにかく役に立つものがないかと観察し続けていたのだから。
故に彼女が気付かないわけがない。
『十字架に圧し潰された男の死体』に。
何一つ見落とすまいと決して速くないスピードで歩いていた彼女は足を止め、死体に近づく。
普通の女子高生ならば到底持ち上げられないだろう重さの十字架を軽々と持ち上げ、自身の横に突き立てると嫌悪感を示すことなく死体の検分を始めた。
「服は全部剥がされ、顔も特定できぬように潰されておるな……死後硬直の具合からして最近死んだ者ではなさそうだが運動直後だった可能性も否めん」
少なくとも体格からして私の知る者ではないな、と結論付けるといつの間にか手の長さの2倍近くまで伸びた爪で死体を『引っ掻いた』。
だが、然したる変化は起こらない。
彼女もこの結果を想定していたようで浮かぶ表情に変化は見られなかった。
「やはり病気を操るスキルでは完全に死んでしまった人間を生き返らせるのは不可能か……となるとあまり気は進まぬが、確認の意味も込めてやっておくか」
検分を終え、検証を始めた彼女は顔や肩など傷口に手を触れていく。
土で汚れ、虫もたかっていたが彼女はそれらを気にすることはない。
やがて全ての検証を終えたらしい彼女は立ち上がった。
「『大嘘憑き』はやはり無理か。根本を覆してしまうようなスキルではあるから半ばわかっていたようなものだが」
彼女が試みたことは死者の蘇生。
バトルロワイアルという舞台においては禁じ手とも言える手段。
もちろん主催側が何も対策を講じていないはずもなく、本来のスキルホルダーではない彼女が使うことを許されているはずもなかった。
蘇生が不可能ならせめて死体を誰か特定できるように外傷を『なかったこと』にしようとしたがそれも不可能だったらしい。
「名も知らぬ青年よ、今この場であなたに何もできぬことを許してくれ。代わりというわけではないがこのバトルロワイアルは私が必ず終わらせるから――」
結果を見れば死体を弄んだだけとなってしまい、彼女は死体に詫びる。
返事が返ってくるはずはないが。
「しかし、これくらいの障害があった方がこの
黒神めだかもより熱くなれるというものよ。なあ、善吉――おっと」
そして、彼女――黒神めだかはかつてのように常に側にいた幼馴染に語りかけようとして気付かされる。
「そういえば、十三年前からいつも私の隣には貴様がいたのだったな。この春から高貴も共にいるようになったし、善吉と会う前は兄貴やくじ姉がいたし……」
そうか、と一人納得したように頷く。
「考えてみれば私は初めて一人を迎えてしまったわけか……なるほど、話には聞いていたが一人は――」
夕陽を背にし、めだかは目的地であるランドセルランドへ向かって再び歩みを進める。
少しばかりの感傷に浸るめだかはまだ何も知らない。
自身がしでかした行いが原因とはいえ、自分以外の全ての参加者がめだかの罪状を知ることができる状況にいることも、
彼女がこれから再会するつもりである
供犠創貴が阿久根高貴が死ぬことになった遠因であることも、
創貴と同行している真庭蝙蝠が先ほどの死体の主である
零崎軋識を殺した張本人であることも、
球磨川禊がめだかの知る球磨川禊ではなく、改心する前の状態であることも、
「――意外と楽でいいが……やはり寂しいものだな」
めだかが一人ではなく独りになろうとしていることも――何も知らない。
【1日目/夕方/D-5】
【黒神めだか@めだかボックス】
[状態]『不死身性(弱体化)』
[装備]『庶務』の腕章@めだかボックス、箱庭学園女子制服@めだかボックス、王刀・鋸@刀語
[道具]支給品一式、否定姫の鉄扇@刀語、A4ルーズリーフ×38枚、箱庭学園パンフレット@オリジナル
[思考]
基本:もう、狂わない
0:ランドセルランドへ向かう
1:
戦場ヶ原ひたぎ上級生と再会し、更生させる
2:話しても通じそうにない相手は動けない状態になってもらい、バトルロワイアルを止めることを優先
3:哀しむのは後。まずはこの殺し合いを終わらせる
4:再び供犠創貴と会ったら支給品を返す
5:零崎一賊を警戒
6:行橋未造を探す
[備考]
※参戦時期は、少なくとも善吉が『敵』である間からです。
※『完成』については制限が付いています。程度については後続の書き手さんにお任せします。
※『不死身性』は結構弱体化しました。(少なくとも、左右田右衛門左衛門から受けた攻撃に耐えられない程度には)
ただあくまで不死身性での回復であり、素で骨折が九十秒前後で回復することはありません、少し強い一般人レベルです
※都城王土の『人心支配』は使えるようです。
※
宗像形の暗器は不明です。
※黒神くじらの『凍る火柱』は、『炎や氷』が具現化しない程度には使えるようです。
※戦場ヶ原ひたぎの名前・容姿・声などほとんど記憶しています
※『五本の病爪』は症状と時間が反比例しています(詳細は後続の書き手さんにお任せします)。また、『五本の病爪』の制限についてめだかは気付いていません。
※軽傷ならば『五本の病爪』で治せるようです。
※左右田右衛門左衛門と戦場ヶ原ひたぎに繋がりがあると信じました
※供犠創貴とかなり詳しく情報交換をしましたが蝙蝠や魔法については全て聞いていません
※『大嘘憑き』は使えません
最終更新:2013年12月02日 22:29