きみとぼくのずれた世界 ◆xR8DbSLW.w
◆ 9 一日目/F8 市街地(夕方~) ◆
真庭鳳凰は焦りの色を浮かべていた。
否。直に浮かばせるほど、彼はしのびとしての素面を崩している訳ではないが
――それでも謂われのない焦燥感に駆られているのは事実である。
黄昏に煌く鋏状の『ソレ』を銜えた少女に銃口を向ける。
しかしそれまでと同様に、少女はその『殺意』を分かり切ったように身体の軸をずらす。
幾回か繰り返すうちに無駄だと悟った鳳凰は弾の節約、及び余計な銃声を鳴らさない意味合いを兼ねて、撃ちはしなかった。
それをいいことに、か。
少女は逃げる鳳凰を追いかける。
舌を打ちつつも、迎撃をしたりはせずに、大人しく鳳凰は退散に臨んだ。
「■■――■■■■■――……!!」
嘆きとも呻きともとれる叫びは、まさに『鬼』のようである。
塊のような殺意。誰がそう称したか。実に的確な殺気。
殺すためだけに存在し、殺すことだけを生業とする――零崎一賊の典型的な例。
無桐伊織、改め、零崎舞織はそれでも『鳥』を逃すまいと後を追う。
抑えつけていた反動。
殺し合いという絶好の舞台でなお、不殺を貫き通していた分の反動。
遺憾なく解放された――始まった『零崎』は止まる術を知らないかのように暴走を始める。
無桐伊織の暴走。
それは思いのほか長く続いた。
様々な要因が絡み合い、今なお暴走を抑えることが出来ないでいる。
――事の発端は
西条玉藻の、惜しくも最期の言葉となってしまった『ひとしき』の四字だ。
この言葉により、――唯でさえ血の臭いで昂りつつあった伊織の衝動が、解放されてしまう。
そこまでが先の一連の流れ。
されど、本来であれば伊織の暴走とは一時的なものに過ぎなかった。
少なくとも西条玉藻を『殺した』ことで、正気に戻る可能性は十二分にあった。
――死色の真紅との約束を破ってしまったこと。
――対等でありたかった
零崎人識との人間関係を崩してしまったこと。
それらによって、伊織の歯止めはつくはずである。
しかしそこに不幸なことに。
新たな魔の手が攻めの手を加えてきた。
この事によって、西条玉藻が零していた『ひとしき』の身に何かあったのでは? という疑念が引き続いてしまったのだ。
銃弾を撃ち放った人間はもしかしたらこの少女の味方なのかもしれない――。
零崎として、それを見過ごすわけにもいかなかった――それが零崎舞織の無意識下での思考回路。
故に今、彼女は鳳凰を追っている。
追うことで、何かがわかるのかもしれない。
分からずにいた人識の行方がつかめるかもしれない――。
鳳凰は、伊織の思いなどまるで知らず。
撒けるまで逃げ続ける。
彼はしのびとして、逃げることにはある程度の自負を抱いていた。
逃げに徹する。
そのことは決して恥ではない。
無茶かもしれないことに意味なく挑む奴の方が、よほど馬鹿だ。
こうして組まれた距離の縮まらない『鬼』ごっこ。
『鳳凰』と『鬼』。
仮想の生物を象った二人の、至極人間的でつまらない、駆けっこである。
◆ 11 一日目/F8 市街地(夕方~) ◆
真庭鳳凰が迎撃をしない理由は、突き詰めれば保身だ。
先の西条玉藻の時もそうであったが、強大な敵を無理して自分が倒す必要はない。
半ばそのために、実験開始当初、鑢七花と契約を結んだと言っても過言ではない。
七花がどれほど屠ってきたかは定かではないが、七花の確かな実力には、偽りなく一目置いている。
骨董アパートを倒壊させた橙色――
想影真心にしろ、
スーパーマーケットで鮮魚コーナー貪りつくしていた口尽くしの少女――ツナギにしろ。
鳳凰では手を出せそうになかった輩だって、周りから勝手に滅んでいけば、それに越したことはない。
漁夫の利、まさしく彼が目指すものは、その通り。
尤も、生かすに値しない、他の者の手を煩わす必要もない――貝木泥舟のような非力な人間には、容赦なく鉄槌を下しにいくが。
実際、鳳凰からして手を出せずに詰まっていた西条玉藻だって呆気なく眼前で殺された。
望ましい結末である。そこまでは、何の批難も湧かなかった。
ただ、彼は一つ失敗を犯した。
西条玉藻が死に、『この隙に』、『こいつもついでに』程度に伊織に手を出したのは、些か軽率が過ぎる。
無論のこと、玉藻の力量、気迫とも言えようものを多いに越す伊織を、嘗めてかかった訳ではない。
警戒に警戒を重ね、ひっそりと影から討つように標準を定めた。
繰り返すが鳳凰は慢心をしていた訳ではない。
彼が彼女の正体を知っていたら、銃口の標準をむざむざと放しただろう。
殺意に目覚めて、殺気に目敏く、目を逸らしたくなるほどの気迫を有する、ニット帽の殺人鬼。
彼が手を加えようとしていたのは、まさにその人である。
ならば――銃口を向けた時の殺意に気付かないわけがない。
殺意ありきの弾丸、炎刀・『銃』なら尚更だ。
加えて言うのであれば、彼自身が仕組んだとはいえ、タイミングも悪かったのだろう。
図書館に着く前の彼女ならばいざしらず――暴走へ繰り出してしまった彼女には、手の施しようがない。
ベテランの殺し名だって、手を焼くに決まっている。
鳳凰は強い。
格段に強い。
『神』の名を欲しいままに頂戴するに値する人間だ。
しかしそうは言っても、相性というものは絶対にある。
僅かな殺意の機微を察知する『零崎』相手には、決め手になる攻撃が、まるで打てない。
「くぅ……!」
撒くに、撒き切れない。
中々に、しつこい。
そうは言っても始まらない――だからこそ、彼は飽くことなく逃げ続ける。
一瞬でも視界から外させることに成功すれば、しのびたるもの隠密に徹し、さながら影のように姿を眩ますことはできるのに!
だが。
唐突にその逃亡劇も終止符が打たれようとしていた。
メラメラ、と。
ゴウゴウ、と。
目の前の景色が真っ赤に染まる。
火事だった。
竹林が、音を立てて燃え盛っている。
火元が明らかでないほど広範囲にわたり燃えているようだ。
市街地から竹取山の境界は火を以て、これ以上なく厳格に引かれている。
どうするか、左右に逃げるか――そこまで考えて、改め直す。
迷っている時間は、もはやない。
背後を見ると、僅かに立ち止まったこの隙にも『鬼』は迫りくる。
――止むをえまい……か?
確かにこのまま逃げ続けたところで、堂々巡りには違いない。
彼は握っていた首輪探知機、及び銃の類を仕舞い、日本刀を取り出した。
使いなれた得物である。得物とするに不足はなかった。
構える。
見たところ、相手は口に銜えた鋏を得物としている。
間合いが極端に短い得物。
ならば、無防備に間合いに入れさせないようにすれば、問題はない。
短絡的な発想かもしれないが、正攻法。
卑怯卑劣を売りにしている忍者であろうとも、正攻法を取ってはならないという掟など存在しない。
「■■■■――■■■■■■■■■――――■■■■■■■■■■■■■――――!!!!!!!!」
立ち止まり、相手の動きを観察する。
文字にもならない叫びをあげている様子の通り、動きは直線的だ。
隙を突こう、或いは作ろうと思えば、近接武器であれば、決して不可能ではない。
禍々しいまでの気迫こそが気がかりであるが、見た限り唯一にして最大の気がかりに違いはないが、仕方あるまい、と呟いて。
「――――!」
無言のままに、薙ぐ。
その動作を分かり切ったように、伊織は避け、間合いに這入り込もうとする。
先ほどまでの動きとは比べものにならないほどの流動的な動きに、声を洩らさず驚嘆するが、しかしそれまで。
「はぁ!!」
「―――……■ ■■」
伊織を襲ったのは単純な膝蹴りだった。
鳳凰は予め、日本刀は避けられると想定し、
『一喰い(イーティングワン)』では間に合わないにせよ、蹴り易い体勢ならばを作ることは可能だった
ただ単にそれのこと、それだけに過ぎないが、思いのほか覿面に、攻撃は相手の懐に入る。
鳳凰にしてみれば偶然には違いないが、零崎とはあくまで対殺意に特化した殺し名だ。
『殺意なき弾丸』が『殺意なき弾丸』として零崎に通用する一因に、
『殺意なき弾丸』が直接的に相手を殺害する手段とはなりえないことが挙げられる
あれはあくまで、ゴム弾に過ぎない。何弾も当て続けたら、もしかすると内出血程度の傷を与えられるが、所詮その程度。
今回の鳳凰の蹴りとて、また同じ。この攻撃で相手を殺そうだなんて、端から思っていない。
まさか――虚刀流じゃあるまいし。
尤も、鳳凰からしてみれば、この蹴りだってまともに入るとは思ってもいなかったが。
「まあ、おぬしのように我を見失った輩を相手取るのは、初めてではないのでな」
一言零し。
吹き飛び地面に転がった伊織に追撃を喰らわそうと、駆ける。
斬、と刀を振り下げるも、どこに力を入れたらそうなるのか、腹から飛び跳ね、避けられた。
半ば予定調和とはいえ、しかしどうだ嘆息を禁じ得ない。
改めて、逃亡劇を続けていた頃から感じていたが――こいつはどうすれば『殺せる』のか。
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■――――■■■■■■!!!!!!!!!!
先の蹴りのように『攻撃』を加えるのは正直に言って作業にも等しいことだ。
同じ暴走にしたところで、同じ意味不明な咆哮にしたところで、橙――想影真心と比べると劣るというもの。
慣れるというには、あの時は一方的に弄ばれてしまったが、
それでも暴走している伊織を前に立ちはだかることが出来るのは骨董アパートでの一件が何かしら功を奏している。
しかし、だ。
『死』に至らせるまでの『致命傷』を与えるには、どうしたものか。
『殺意』を持ち合わせた『攻めの手』は全て感知されて、何かしらの対処を取られてしまう。
――現状、鳳凰には一つの考えしか、思い浮かばない。
「かくなるうえは――!!」
拷問。
しのびお得意の痛めつけ。
最終手段は、立てなくなるまで、避けられなくなるまで、その身の力を搾りきる。
鳳凰はこちらに襲いかかる伊織に向きあい、忍法『断罪円』を繰り出した。
◆ 12 一日目/F8 火災現場(夕方~) ◆
結論から言うと。
真庭鳳凰の甚振りは、見事成功する。
しかし、彼にも痛めつけを行使したくない理由があった。
鳳凰が、そのじり貧とも言える耐久戦に持ち込みたくなかった理由は明快。
あまりこの場において体力を使いたくなかったからだ。
無論無桐伊織一人に固執して体力を使うという馬鹿らしさ、というのもあるが、今彼らが戦っている場所は、火事場の前だ。
単純に、純粋に、暑い。
暑さというのは、ただそれだけで体力を奪う。
過酷な運動をしようものなら、体内の水分も枯渇し、意識が朦朧とする可能性だってある。
彼はしのび。
火事の最中であろうが、ある程度の時間ならば満足に動けるだろう。
が、それもある程度の話だ。
度が過ぎれば、幾ら『神』を冠しようが彼も人間。悪条件が続けば一層疲労は溜まるに違いない。
彼はそれを危惧した。
なにしろ、『決定打』を打てない相手である。
少しずつ、少しずつ――搾りとるようにしか、相手の体力を奪えない。
幾度か交えて分かった事だが、『断罪円』も『一喰い』も殺意を伴うために易々とまではいかないが避けられてしまう。
――二十番目の地獄が最期に発掘した殺人鬼は伊達ではないということか。
それでも、徐々に優勢は鳳凰に傾き始めた。
例え肉を抉ることはできなくとも、皮を剥ぐことができなくても、息を止めさせることはできなくとも。
キャリアの差、ともいうべきか。
本来あった圧倒的実力差を迫力で誤魔化すには、いよいよ伊織の気迫では物足りなくなってきたということか。
想影真心の殺意、
西東天のカリスマとも換言できる佇まい。
奇しくも彼の心を鍛え直すには、あまりにも適役である。
「……ぅぐ――っ!」
「――――」
蹴飛ばす。
蹴飛ばす。
蹴って、蹴って、蹴った。
それ以上のことは何もない。
リーチも長く、より威力の高い蹴りを優先して浴びせ続けた。
『殺意』を抜いた鳳凰相手に、伊織の技術は未熟すぎる。
暴走して我をなくし、『鬼』としての才覚に身を任せて、一般人ならざる動きを見せた伊織もそこまでくればただのボロ雑巾だ。
一度型に嵌れば、彼が想像していたよりも容易く使命を全うできそうである。
かといって、気を抜くことはせず、あくまで冷徹に淡々と。
こちらの体力の消耗とて馬鹿には出来ないほどだが、伊織も既に満身創痍だ。
倒れこむ伊織の脇腹を蹴りつけ、なおも動けないのを見て、――如何ようにするか、思考する。
ここで刀を取り出して、彼女はどのように反応するだろうか。
殺意に呼応するように、それこそ文字通りの火事場の馬鹿力と言わんばかりに再駆動し始めたら、それはもはや手に負えない。
さすがにここまで痛めつけたら――とも考えたが、撤回する。
そもそも脚を折れば、反撃なんて不可能なのではないか。
その上で、背後の焔の中へ捨て入れればいい。
臥せこんだ伊織の脛の上から、踵を振りおろした。
所詮は元女子高校生の、若木の枝のように細い脚は、ぽっくりと折れる。
片側だけでなく、もう片側も。
しのびに容赦も情けもない。この程度の所業、わけもない。
悲鳴を上げる伊織の腕を片手でもちあげ、背後の炎と向きあい、いざ投げ込もうとしたその時。
「――――そこにいるおぬし。顔を出せ」
鳳凰は、恐ろしく冷たい声を出す。
後方の物影に向かい、静かで、『鬼』よりも冷酷な『不死鳥』の声を。
鳳凰の声を受け。
ガサゴソと物音を立てて、学生服の少年が現れる。
鳳凰に振り返る隙すらも与えず――少年は言葉を発した。
「……やれやれ、伊織さんは何をやってんだ――――かっ!!」
言葉尻を待たず、少年は何かを投げたのがわかった。
咄嗟に警戒を高め、いざとなったら左手に握った伊織を盾にしようかと思ったが、その心配はいらぬ心配だったようである。
まず、鳳凰の身体まで届いていなかった。
鳳凰の『影』に刺さっただけで、彼の肉体には傷一つ付いていない。蚊にも劣る『攻撃』――。
ふん、手練ではなかったか――。
だとしたら殺すだけだ、と内心ほくそ笑むように、伊織を炎の中に投げ入れた。
そこで物語は進む―――――――――――――或いは、止まる。
◆ 13 一日目/F8 火災現場(夕方~) ◆
鳳凰が伊織を炎の中へ投げ込むことはなかった。
違う。
投げ入れることが『できなかった』。
動けない。
動かせない。
まるで『縛られたように』、身体の自由が、或いは不自由すらも操作できない。
「お、おぬし――――何をっ!」
ここに来て初めて、苦悶とも言える表情を浮かべた。
『身体を動かせない』、この事実は、身体的よりも精神的に抉られる。
率直に言うなら、真庭鳳凰は焦りの色を浮かべて、焦燥感に駆られているのだ。
「炎っていうのはつまりは光なんだよ。光があれば影が出来る――小学生でも習うことだ。
……いや、習うまでもなく、もっと幼いころに理解をしてもいいことか」
対して、先ほどまでの鳳凰がそうだったように冷酷に、少年――『破片拾い』は常識を説いた。
太古より火は光としても用いられてきた。
その事実は、今だって、『バトル・ロワイアル』の最中であれ、変わらない。
影あるところに光があるように、光あるところ影にはある――――!
背面に炎を燃やしていた鳳凰から前、つまり様刻が対峙していた方面には、鳳凰の影が伸びている。
その影には一本。
たった一本の矢が刺さっていた。
影谷蛇之の魔法《属性『光』/種類『物体操作』》の『影縫い』。
どうしようもなく決定的に炸裂し、決着はついた。
「まあ、このタイミングを見計るのに随分と待ち構えてみたもんだが――伊織さんは見るも無残になって」
耽々と語りながら、様刻は鳳凰の背後に迫ってくる。
――どくん。
胸が鳴る。
――どくんどくん。
胸が高鳴る。
殺される、――殺されるのか?
我が今ここで? こんなにも呆気なく、それもこんなわけのわからないトリックで?
そんなの、
そんなのは――
「御免こうむる――――!!」
「……悪いけど、きみの意見をそのまま貫くほど、僕もお人好しじゃない」
様刻は鳳凰の腰に据えてあった日本刀を抜く。
妖し、と輝く日本刀の煌きをかざしながら――躊躇いもなく様刻は鳳凰の左手首を断つ。
かつては愛する妹の為にと平気で妹の骨を折った男。
その辺りの容赦は、捨てる時には、それこそしのびのように切り捨てる。
落とされた左手に握られていた伊織を抱きかかえるように手にとって、静かに地面に横たえさせた。それでも刃を収めない。
次いで、右足を切り落とす。
『魔法』の効果で、身体が傾くことはない。
これから伊織を背負って逃亡する際、追いつかれないようにするための予防策だった。
どうせだから、鳳凰が背負っているディパックも頂戴するかと思ったが、
魔法で固定されているため中々うまく引き抜くことが出来ない。
仕方ないか、と呟くと両腕を斬り落とす。するとディバックもパタンと音を立てて地へ落ちた。
様刻は鳳凰自身の身体に巻いてあった鎖で応急処置として、欠落した箇所を縛り上げ、止血した。
その後右足、両手を拾い上げ、炎の中へ投げ込む。
余程の無茶をしない限り取りに行くのは不可能に思える。
実際その光景を見つめる鳳凰は歯を軋らせた。
不愉快を隠しきれずに、何度も何度も、幾度も幾度も歯を軋らせる。――そしてそれしかできない自分を忌む。
何か言いたげな鳳凰を意に介すことなく、静かに語る。
「別に今回は推理小説をやりたいわけでも、得意顔で語る探偵役を担いたいわけじゃないからね。
ネタバレ編とか言って、きみに語る予定なんてないけれど、しかし一つ言えることは」
一言。
間を溜めてから、言い放つ。
「残念だったね。鳳凰さん――」
まあ、僕は殺人犯になってビデオに映りたくはないから殺しはしないけれど。
と、伊織を背負い、鳳凰のディバックを奪ってすたすたと歩き出す。
ただそれだけの邂逅。
酷く決定的で、酷く簡素な――物語の移行。
まるでこの物語に欠けていた破片を、様刻はつなぎ合わせたかのように――。
『辻褄合わせ(ピースメーカー)』――――――――!
こうして、『鬼』と『神』の駆けっこは。
『人間』の登場によって、さながら御伽話のように、泡沫に消える。
◆ 8 一日目/図書館(夕方~) ◆
櫃内様刻は恐れの色を浮かべていた。
目の前に放置されたそれは、紛れもなく死体である。
見慣れたというには病院坂の二人に対する口惜しさが湧いて出るが、ひとまず置いておく。
目の前にあるのは、頸動脈を的確に裂かれた少女の死体。
少女の外見は、緑がかった短髪にまだまだ未発達な肢体を包むあちこちが切り裂かれた何処かの制服。
無桐伊織に襲われたにしては首以外の外傷が目立たないが、これより前に何かしらあったのだろうと推察する。
一応様式美として、脈を測るも当然ながら脈打つものはなく、刑事ドラマでやっているように瞳孔が開いた瞳を、瞼で閉ざさせた。
こうして見ると可愛らしい顔をしているな――と思ったが、同じ年頃の妹、夜月に比べるとまだまだだ、と様刻は内心で思う。
どちらにしたところで、少女・西条玉藻は既に死んでおり、可愛い可愛くないの話をしている場合ではないのだが。
思いのほか、冷たく身体は動く。
あれほどの殺気にあてられて――その上死体までも眼前に臥せられているのに。
『破片拾い(ピースメーカー)』・櫃内様刻の脳内はするべき作業を淡々とこなそうと命令を下している。
自分でも可笑しくなるほどの――実際可笑しくて、こんな状況の中でも自嘲を含んだ崩れた笑みが浮き上がった。
人の死に悼むことが出来たら、どれほど気持ちが楽になるだろうに。そんなことを思い起こしながらも、それでもやはり、作業は続く。
こうすることで、いつもの自分を保とうとする。
『破片拾い』――『能力を最大限に使い最良の選択肢を選ぶ』――いつもの彼を、演じる。
冷静に、人死にが起こっても動じることなく、落ち着きを以て対応していた。
しかし。
恐れの色を浮かべていたこと自体は嘘ではない――。
分かり易い伊織の変貌に戸惑って、どうにもできない死の予感を感じたのは確かだ。
件のことは幾度と伊織は言っていた。
それでもここまでのものだったか――。
図書館で味わった、鮮明な『殺意』を噛みしめる。
それに、何よりも。
『好きな人』を殺してなお、生への欲求がここまであった自分にも、僅かな苛立ちと恐れが募る。
帰って妹に会いたい様刻がいる。帰って恋人に会いたい様刻がいる。
――だけどどこか、病院坂黒猫が死んだ今、殺してしまった今、
死んでしまってもしょうがないと諦観を帯びた様刻がいるのも間違いなかった。
それが彼が犯した殺人の重さ。――――人の命の重さ。持ちきれないほどの罪悪感。
様刻らをこんな場所に誘った主催は許せない。
決意自体は本物だ。斜道卿一郎研究施設で刻まれた決意は、本当なのだろう。
病院坂の為に生き残るという気持ちもまた然り。
第一彼はかなりシンプルに生きている人間だ。やると決めたからには、必ずやる人間である。
決意に嘘偽りを上乗せできるほど、彼は複雑に作られていない。
けれどその決意は――病院坂が死んだことに混乱したまま、表明されたものである。
あの時。
研究所にて声をあげて泣いたあの時。
胸中が如何ほどのものだったかは、それほど察するに難くない。
術中にはまったとはいえ、『好きな子』を殺し、それで研究所に居た女の子に八つ当たり紛いの行動に出るもいとも簡単に返り討にされ。
弱さを知り、何もできない、何もできなかった、誰も幸福にすることのできなかった
――希望の破片を拾うことなく粉々に砕かれた様刻の、無力感に伴う投げやりなものだったとしたら。
今の彼に、言うほど生きた心地はしない。
さながら推理小説のように、憎さと言う感情一つで人をあっさり殺してしまった彼に、今を生きる余裕など果たしてあるのか。
それこそ我が物顔で得意げに道徳を説きはじめる探偵がいなかっただけ、彼にとっては大いに救いだったのだろうが、人殺しは人殺し。
手に残るこの感触を忘れない。
ナイフで滅多刺しにした、あの瞬間を。
思い返すたびに、彼は自己嫌悪に陥るのだ。
それでもその時までは、それを抑え込むことがまだ可能であった。――
第二回放送までは。
時宮時刻を殺せば、それできっと二人も彼自身も満足する。
それが彼の生きる証であり、唯一の動機だった。
――その思い込みは、解消させられもせず、わだかまりを残したまま、彼の暗闇の中へと消える。
今では仇討ちさえも許されない。
時宮時刻は死んだ。櫃内様刻の与り知らぬ場所で、ばっさりと殺されたのだ。
――彼は何を目標に生きていけばいい。何を選択して生きればいい。何を選択肢として挙げればいい。
分からない分からない分からない分からない――――。
それこそ病院坂黒猫の言い分に近いが――今の櫃内様刻は、この『分からない』が無性に怖くて仕方がなかった。
自分は何を道標に生きている?
どうして、それすらも『分からない』?
計画通りに。最良に生きることこそが彼の数ある生き様だったはずなのに。
――――――――果たしてこれが、最良か? ――――――――果たしてこれが、最善か?
返事が出来ない。
答えを出せない。
自己同一性が揺らぎ始める。
思えばそれは、第二回放送が終わった直後から今に至るまで続いている。
伊織の「時宮時刻を殺した人を突き止めて、それからどうするつもりなんですか?」
という問いに答えられなかった辺り、彼としてはあるまじき姿の片鱗は見せていた。
さながら、考えることさえも億劫になり、生きることさえも辛くなったかのように。
今の彼が『時宮時刻を殺した者』を探し回っているのは、恐らくは――否、確実に先の伊織の発言からきている。
伊織が単純に「これからどうしますか?」――とだけ訊ねたならば、様刻は何もしなかっただろう。
例えば仮に、病院坂黒猫を自らの手で殺してなかったならば、ここまですり減らすことなかっただろう。
例えば仮に、時宮時刻を自らの手で殺していれば、ここまで疲弊することはなかっただろう。
しかしそれも――現実が「自分が最良と思った選択肢の末路」であることを省みれば、
甚だ意味がない仮定であることは誰よりも様刻が理解しているつもりだ。
最良も何も、今の彼には存在しなかった。
彼自身が愚の骨頂と蔑む『徒労』に費やしていただけだった彼に、これ以上何が出来る? 何を求める?
頑張れば出来ないことはない――彼はそう信じていた。
しかしどうだ。
蓋を開けてみれば、病院坂を守ることも、仇を討つことも、何一つ満足にできない非力な彼に、これ以上何が出来る?
これは数沢六人を痛めつけることとは違う。
或いはそれを契機に起こってしまった殺人事件とも違う。
舞台も、環境も、彼の立ち位置も何もかもが違う――そんな中で、どうすれば、どうすればいいんだろう。
今の彼には、『今まで通りの櫃内様刻』を演じることが手一杯だった。
そうすることで、強制的に自らを雁字搦めにする――僕にはやるべきことがあるんだ、と。死ぬわけにはいかない、と。
一種の呪いのようなものだ。
確かにそれは、心を落ち着かせるにも最適だった。
住み慣れた家に居るように、心が沈静化し、空いた空洞を見て見ぬ振りが可能である。
「今の自分って何なんだ?」そんな空洞を。
改めて。
目の前の少女の遺体を見下ろして。
嗤った。
自らを。
動じない『いつも通りの自分』を。
嗤った。
◆ 10 一日目/F7 図書館(夕方~) ◆
櫃内様刻が無桐伊織を追いかけようとした理由は、突き詰めれば何もない。
伊織その人が忠告した通り、逃げたっていい。逃げることが、一番状況に適している。
だけど彼には、逃げて何かをしたいという、『選択肢』そのものが見つからなかった。
時宮時刻を殺した人間を突きとめたって、薬にも毒にもならないのは、彼自身頭では理解しているのだ。
見つけて、警察に送りつけることはできない。そもそも彼自身もまた殺人犯である。二人仲好く監獄行きなんて笑えない冗談である。
ならば八つ当たりを込めて殺害するか? ――しかしその殺害に、何の意味はない。
ただその様をビデオに撮られて自分の立場をより一層怪しめるだけだ。
彼があくまで『時宮時刻』に固執するのは――そうすることで、何もできない自分を有耶無耶にさせる。たったそれだけの、意図。
確かにこの『操想術』がかかったままの瞳は不便に違いないが、
だからといって時宮時刻を殺した人間を突きとめたって、事態は好転しない。
そして。
今の彼から『時宮時刻』という要素を抜いたら何が残るだろう。
守るべき存在は死んだ。愛する者はここにはいない。生き残ろうと努力したところで、彼の選択は空回りを続ける。
そもそも、伊織や人識、時刻を例に挙げるまでもなく、ここに居る中で自分が最弱であろうことは、なんとなく察しがついていた。
戦闘能力はなくとも、
玖渚友には頭脳がある。
宗像形には暗器があって、阿良々木火憐には並はずれた格闘センスがあったようだ。
様刻にはそんなものはない。
部活動をやっている人間には敵わないだろうと自負している人間だ。
正直なところ、生き残れと言われて生き残れると思えるほど、環境はよろしくなかった。
だから彼は、『選んだ』。
無桐伊織を追うことを。
心の中ではごちゃごちゃとお誂えな御託を並べて。
それがさながら最良の選択肢であるかのように幻視させて――。
もしかしたら伊織――或いは襲撃者に殺されるかもしれない。
一抹の懸念が頭をよぎる。
よぎったが、それでも様刻は意に介すことはなかった。
「死んでもいいや」――さながらツタヤのレンタル延滞でもするかのような気軽さで、命を捨てようとしていたのである。
生きる目的が見えないのなら、死んだって変わらないんじゃないか――?
『破片拾い(ピースメーカー)』――もしくは、『自殺志願(マインドレンデル)』。
やると決めたら。
後は早かった。
携帯電話を見る。
と、画面が真っ暗だった。
――そういえば、と。
様刻らは図書館に主催者に関与する第三者がいないか怪しんでいた。
下手に関わるつもりは毛頭なかったし、関わっても良さそうな相手だったとしても、ある程度の観察を踏まえてからである。
影から窺うようにしている最中、電話が鳴られたら大変傍迷惑な話だった。
そんな漫画みたいな奇跡的タイミングで電話が鳴るとは思ってもいなかったものの、万が一の可能性がある。
様刻と伊織ともども、図書館に留まる間は携帯の電源を切っておこうという話に収まった。
だからこそ宗像の発信は届いていなかったのだ。尤も、図書館に第三者など見当たらなかったので無意味な行為だったと言えるが。
さて改めて電源をオンに切り替える。
掲示板には幾つか更新があるが、彼が見たのは目撃情報スレだ。
別段、何かを期待して開いたわけではない。
あくまで玖渚友との連絡を取ろうとしたついでに開いただけだったが、何やら有用な情報が載っていた。
『 4 名前:名無しさん 投稿日:1日目 夕方 ID:IJTLNUUEO
E7で真庭法王という男におそわれた拳銃を持ている。危険
鳥のよな福をきている、ものの乃記憶を読めるやしい
黒髪めだかと組んん出いる可能性あり
付近にいるのは注意されたしい 』
何やら誤字脱字が多量に含まれているが、読めなくはない。
要するにE7にて真庭鳳凰(名簿から察することが出来る)という鳥のような服を着た者が、銃を持って徘徊しているそうだ。
生憎様刻は襲撃者の姿を見たわけではないが、銃と言う点と位置関係上、彼が襲撃を仕掛けた可能性が重々にある。
それがわかっただけで、実際彼には対策と言う対策を持ち合わせていない――強いて言うならこの『矢』ぐらいなもの。
だからこそ、話は元の鞘に収まるように、玖渚友に電話しようということになる。
様刻が持っていない情報を、玖渚友は何処かからか持ち出した、と言う可能性は中々否めない。
眼前で、あれほど自由に電子の中で踊り狂っていた玖渚のことだ。
鳳凰――或いは違う襲撃者のことを何か掴んでいるかもしれない。
掴んでいなかったとしても、様刻が会うより前に伊織と行動を共にしていた玖渚ならば、
伊織が暴走していた時の対処法を、もしかしたら教えてもらっているかもしれない。
どちらとも、聞くだけ無駄と思えるほど、可能性の低い話であったが、万が一のことも考えて様刻は電話する。
そもそも。
元より図書館に着き、DVDを回収した時点で電話をする予定はあった。
DVDが有ったことの報告と、玖渚友、及び宗像形が無事に斜道卿一郎の研究施設を離れることが出来たかの確認。
そこらへんの雑多な目的を兼ねての、電話でもある。
アドレス帳から玖渚友へ電話を発信する。
PiPiPi、と暫しの機械音を聞いた後、直ぐに玖渚は電話に応じた。
彼は今の自分におかれた立場を報告しながら、即刻使える情報を交換しあう。
◆ 14 一日目/F8 市街地(夕方~) ◆
結論から言うと。
玖渚友は先ほど櫃内様刻が欲していた情報をほぼ有していた。
真庭鳳凰の情報――どころか全参加者の詳らかな情報。
それに伴い、無桐伊織の暴走の止め方こそわからなかったものの、暴走の主因となる要素は把握できた。
尤も、その情報を駆使ことはなかったものの。
しかしそのお陰もあり、櫃内様刻は真庭鳳凰を出し抜く――とはいかずとも無桐伊織を救出させるだけの行動を組み立てることが出来た。
彼は確かに死んでもいいとは考えたものの、わざとらしく死に急ぐわけではない。
便宜的に立てた『時宮時刻を殺した人間』を探すという目的がある。
――鳳凰から難を逃れたからには、その命を続けてすり減らしていこうと思う。
その辺りの考え方はシンプルで、極論「生きれるなら生きるが、死んだら死んだ。とやかく言うつもりはない」。そう言うことだ。
「ひどいですよぅ……なんでもっと早く出てきてくれなかったんだすかぁ……」
「それはきみが邪魔で中々この『矢』を投げれなかったからだろう」
無桐伊織を背負いながら、櫃内様刻は前を見て歩く。
『今は無桐伊織を運ぶ』という目的がある。
目的を見つけたならば、彼は動かないわけにはいかない。
その考えは、その場限りのものでしかないことに目を瞑りながら。
疲弊した様子の伊織を労わるというわけでなく。
耽々と、変わらぬ調子で下山しながら様刻は歩く。
「ていうかきみこそ、いつから正気に戻ってたんだよ」
「あんだけ蹴られたら嫌でも正気に戻りますって……様刻くんは女の子の気持ちがわかってないですねえ……」
「んなもんわかるか」
――そう。
伊織は途中で暴走から意識を戻した。
甚振りからのあまりの苦しさに、戻らざるを得なかった。
だからこそ、鳳凰は一方的な拷問をするに至れたのだが、結果的にどちらであったところで、こうなる結末は変わらなかっただろう。
「しかしどうしましょうねえ、両足。これじゃあお嫁にいけませんよ」
「他に心配することはあるだろう」
「いやまあ、なんかすでに両手が義手ですから。今更と言われればそれまでなんですよね」
「……まあ、なんだ。帰ったらまた義足、作ってもらえよ。なんだっけ、罪口商会――だっけ」
「人識くんに合わせる顔がありませんよ……。双識さんと人識くんしか残ってないない現状でこの様じゃあ」
「手がなくても、足がなくても、顔ならあるだろ。会ってやれよ。――それに僕と零崎……人識は顔馴染だぜ。何とか言ってやる」
力ない笑いで伊織は返すと。
苦痛を顔に表しながらも、様刻に問う。
「そういえば、どうして逃げなかったんですか?」
「ん?」
「わたし言いましたよね、確か。――わたしが暴走したら、気にせず逃げてくださいね、って」
「ああ、言われたな。人だって殺していた。僕だって逃げようかと思った――けど」
「けど?」
「――玖渚さんに電話して、勝てる試合だと確信したから」
「へえ? 玖渚さんはなんて?」
「掲示板と僕達の位置関係上、それはきっと『法王』――真庭鳳凰って奴の可能性が高くてね。
そして僕の持っている『矢』と鳳凰さんは、決して相性が悪いわけではない。……ってね」
「随分とざっくらばんとした確信もあったもんです」
まあ、助かりましたよ……、と。
伊織は一言つぶやくと、まどろみに浸りはじめた。
伊織は知らない。
様刻が『逃げてもやるべき選択肢』がないと、まるで相手を眼中に入れてない考えで挑んだことを。
実際のところ、玖渚友は『勝てない相手ではない』と伝えたわけではない――『負けないかもしれない相手』と伝えている。
似ているようで、意味合いとしてはかなり違ってくる。
玖渚は「挑んだら高確率で返り討に遭うけれど、それでもいいなら挑むのもありだよ」その様な意図で伝えたはずだ。
その意図は、結論から言うと様刻は察している。察していて――鳳凰と対峙した。
知らぬが仏――知らぬが鬼と言うべきか。
今に限りは様刻の胸中を察してやれるほど伊織は万全ではない。
両足を折られ、自分のことをただ考えるしか彼女には出来なかった。
「すいませんが、ちょっと疲れちゃいました。背中借りますね……」
そう言って、やがて様刻の返事を待つことなく、伊織は穏やかな寝息をたてはじめる。
『鬼』には思えぬ可愛らしい『人間』のもの。
それを聞いて、様刻は一人、聞いていないであろうことを分かっていながら答える。
「……じゃあ、僕は治療なんてたいそれたことはできないけど、診療所か薬局に送ってみるよ」
それが今の様刻の『最良の選択肢』だからと――――――――
「伊織さん、これが僕のやるべきことなのか?」
「――なんてね。おやすみなさい」
【1日目/夕方/F-8】
【無桐伊織@人間シリーズ】
[状態]両足骨折、睡眠、様刻に背負われている
[装備]『自殺志願』@人間シリーズ、携帯電話@現実
[道具]支給品一式×2、お守り@物語シリーズ、将棋セット@世界シリーズ、バトルロワイアル死亡者DVD(18~27)@不明
[思考]
基本:零崎を開始する。
0:……。
1:曲識、軋識を殺した相手や人識君について情報を集める。
2:そろそろ玖渚さん達と合流しましょうか。
3:
黒神めだかという方は危険な方みたいですねえ。
4:宗像さんと玖渚さんがちょっと心配です。
[備考]
※時系列では「ネコソギラジカル」からの参戦です。
※黒神めだかについて
阿良々木暦を殺したらしい以外のことは知りません。
※宗像形と一通りの情報交換を済ませました。
※携帯電話のアドレス帳には箱庭学園、ネットカフェ、斜道郷壱郎研究施設、ランドセルランド、図書館の他に櫃内様刻、玖渚友、宗像形が登録されています。
【櫃内様刻@世界シリーズ】
[状態]健康 、『操想術』により視覚異常(詳しくは備考) 、伊織を背負っている
[装備] スマートフォン@現実
[道具]支給品一式、影谷蛇之のダーツ×9@新本格魔法少女りすか、バトルロワイアル死亡者DVD(11~17、28)@不明
炎刀・銃(回転式3/6、自動式7/11)@刀語、デザートイーグル(6/8)@めだかボックス
支給品一式×6(うち一つは食料と水なし)、名簿、懐中電灯×2、コンパス、時計、菓子類多数、輪ゴム(箱一つ分)、
首輪×1、真庭鳳凰の元右腕×1、ノートパソコン@現実、けん玉@人間シリーズ、日本酒@物語シリーズ、トランプ@めだかボックス、鎌@めだかボックス、
薙刀@人間シリーズ、シュシュ@物語シリーズ、アイアンステッキ@めだかボックス、蛮勇の刀@めだかボックス、拡声器(メガホン型)@現実、首輪探知機@不明、
誠刀・銓@刀語、日本刀@刀語、狼牙棒@めだかボックス、金槌@世界シリーズ、デザートイーグルの予備弾(40/40)、
「箱庭学園の鍵、風紀委員専用の手錠とその鍵、ノーマライズ・リキッド、チョウシのメガネ@オリジナル×13、小型なデジタルカメラ@不明、
マンガ(複数)@不明、三徳包丁@現実、中華なべ@現実、虫よけスプレー@不明、応急処置セット@不明、鍋のふた@現実、出刃包丁@現実、
食料(菓子パン、おにぎり、ジュース、お茶、etc.)@現実、おみやげ(複数)@オリジナル、『箱庭学園で見つけた貴重品諸々、骨董アパートと展望台で見つけた物』」
(「」内は現地調達品です。『』の内容は後の書き手様方にお任せします)
[思考]
基本:死んだ二人のためにもこの殺し合いに抗う(瓦解寸前)
0:伊織さんを診療所か薬局に連れていかせる
1:玖渚さん達と合流するためランドセルランドへ向かう。
2:時宮時刻を殺したのが誰か知りたい?
[備考]
※「ぼくときみの壊れた世界」からの参戦です。
※『操想術』により興奮などすると他人が時宮時刻に見えます。
※スマートフォンのアドレス帳には玖渚友、宗像形が登録されています。
※阿良々木火憐との会話については、次以降の書き手さんに任せます。
※支給品の食料は乾パン×5、バームクーヘン×3、メロンパン×3です。
※首輪探知機――円形のディスプレイに参加者の現在位置と名前、エリアの境界線が表示される。範囲は探知機を中心とする一エリア分。
◆ 15 一日目/F8 火災現場(夕方~) ◆
「――――我が――――我が!」
五分後。
真庭鳳凰を縛りつけた魔法が解け、自然と鳳凰の体は崩れた。
右足がなく、左足だけで立ち続けるには、些か難しい。
というよりも、自然解除されるとは思っていなかったので、心の準備が足りなかったという具合である。
「こんな場所でくたばるわけには―――――!!」
地面の味を口に噛みしめ。
様刻たちが消えていった方に視線を向ける。
この五分の間に、淡々と離れてしまったようだ。
少なくとも、片足の鳳凰が追い付くには、随分と離れてしまっている。
這うように、左足を蹴ることで、身体を動かす。
屈辱で、ならなかった。
「―――――ぅぅぅぅぅぅぅぅううううううううううううゔゔゔ」
何をするにしても、足が必要だ。
とはいえ今までの足は、様刻が燃やしてしまった。
まだ肉が残っているかもしれないが、這って炎の中を拾いに行くのは無理だ。
だから彼は、ここに来るまでに殺し、そして身体を残している否定姫のいるレストランへと身体を進めている。
コンパスなど諸共奪われてしまったが、なんとなくの方向や地図の図面は覚えている。
――こんなことなら、貝木泥舟の身体を残しておくべきだったかと後悔するも、後の祭り。
「――――我は!!」
忍法『命結び』。
匂宮出夢の『一喰い』、真庭川獺の忍法『記憶辿り』を失った今。
彼に残された技はそれしか残らない。
まあ、それにより手足欠損による流血も、痛みも、慣れたものではあったが、苦しいには違いない。
「死なぬ!!!!」
それでも彼は諦めない。
生を。
願いを。
しのびを。
どれだけ今が恥さらしな格好だとしても、手足をもがれても。
彼は『不死鳥』――幾度だって地獄の底から舞い戻ってみせよう。
羽ばたいてみせよう。
まだまだ時間はかかるかもしれないが、それでも彼は諦めない。
否定されても。
屈辱を浴びても。
なお、屈しない。
もう二度と、屈してやるものか。
――彼は謳う。
「真庭を滅びさせたりはせん!!」
――彼は呪う。
「いずれ借りは返すぞ――――――――少年ッッ!!」
【1日目/夕方/F-8 火事場付近】
【真庭鳳凰@刀語】
[状態]身体的疲労(極大)、精神的疲労(極大)、左腕右腕右足欠損
[装備]矢@新本格魔法少女りすか
[思考]
基本:優勝し、真庭の里を復興する
1:――――
2:レストランまで這う。否定姫の身体を頂く
3:余計な迷いは捨て、目的だけに専念する
[備考]
※時系列は死亡後です。
※首輪のおおよその構造は分かりましたが、それ以外(外す方法やどうやって爆発するかなど)はまるで分かっていません。
※記録辿りによって貝木の行動の記録を間接的に読み取りました。が、すべてを詳細に読み取れたわけではありません。
The World begins to be distorted
[備考]
※竹取山は全域炎に包まれた可能性が高いです。
※影谷蛇之の矢は使い捨てです。
一度魔法を発動させたものは、再度魔法を組みこまない限り単なるダーツの矢でしかありません。
最終更新:2014年01月20日 16:17