Velonica ◆ARe2lZhvho





ほんとのことだけで生きてゆけるほど
僕らは強くないさ強くなくていい
――――いい?




『また勝てなかった』






「――でも次は、勝つ」






『……とは言ったもののどうしようか。めだかちゃん見失っちゃったし』
「さっきまでのお姿が台無しですよ」

いつものように、けれどどこか嬉しそうにため息をついてわたしは球磨川さんの返事を待ちます。
今のわたしは彼の刀。
従僕が主人に逆らわないようにわたしも所有者である球磨川さんの指示がないかぎり動けません。
七花もきっと――ああ、とがめさんがいなくなった後は自由に行動したのかしらね。
かつてのわたしのように。
そうでなければ錆ついた意味がないのですから。
……こうして思うと錆びるのも悪くはない――むしろいい。
七花に会ったら謝らなくてはいけませんね。
とは言ってもまだ会いたくない、会うとしてもそのときを引き延ばしたいと思っているわたしがいるのも事実。
七花に殺してしまってもらいたい。
球磨川さんに最期まで付き従いたい。
相反する二つの思い。
どちらを優先するかでこれからの行動にかなり響いてしまします。
…………………………さて。
こういうときにこそ四季崎が茶々を入れるかと思ったのに静かですね。

――なぁに、こいつは冗談抜きでおもしろそうなものが見れると思ったからな――おれが干渉して左右しちまうのはもったいねえ――

つまりこれからはもうちょっかいをかけられることもないと。

――まあそういうことだと思ってくれていい――おまえの機嫌を損ねてこの先が見れなくなっても困るしな――呼ばれない限りは出るつもりもねえよ――

それはありがたい、と素直に受け取っておきましょうか。

『どうしたの、七実ちゃん?さっきから黙っちゃって』

では迷うのもほどほどにして本題に戻りましょう。

「いえ、少し考え事を」
『ふうん……?まあ、いいけど。僕としてはめだかちゃんを探したいところなんだけどね』
「ではそうしましょうか」
『……七実ちゃんのしたいことがあるなら優先するよ?』
「今のわたしはあなたの刀。あなたのすることに異論は唱えず、あなたの命令があれば誰が相手だろうと斬る、一本の刀です」
『そういう堅っ苦しいのは抜きにしていいって。あたりも暗くなってきたしとりあえず……』

途中で球磨川さんの口が止まった理由はわたしにもわかったので何も言いません。
視界を少し滑らせて林へ目線を向けるだけ。
草がかすれるような小さな音ではなく木が倒れた大きな音のした方向へ。

『めだかちゃんじゃないとは思うけど行ってみる?』
「禊さんがしたいのならそのように」

そして。
そして。
そして。
それは林に踏み入れてすぐ見つかった。
ところどころが溶けた倒木。
その側にうつぶせで倒れている男。
短くなったぼさぼさの髪。
見覚えのある泥だらけの着物。
わたしは男を――彼を知っている。

「…………七花?」

まだ会いたくはないと思っていたはずの弟の姿。
探していたうちは見つけることはできず、いざ逢いたくないと思ってしまった途端に遭ってしまうとはままならない。
本当に、ままならない。

「――おーるふぃくしょん」

球磨川さんが何かを言うよりも先に勝手に動いた。
動いてしまったと言った方が正しいのかもしれない。
ただ、七花が、弟が、無様に倒れているのを見ていられなかったのかもしれないしそうでなかったのかもしれない。
とにかく、結果としてわたしは『おーるふぃくしょん』を七花に使った。
その後のことを考えずに。
その前のことを『なかったこと』にした。

――幽霊の笑い声が背中を撫でたような気がした。




髪は戻った。
顔の傷も消えた。
けれど、泥は落ちていない。
おかしい。
不完全だった?そんなはずはない。
ならばもう一度――

「おーる――
『やめた方がいい』

使おうとして球磨川さんに止められる。

『七実ちゃんらしくない反応だったけど、それが探していた弟くんだったのかな?』

今更ながらに気づいてはっと息を呑む。
刀になると決めたばかりなのに勝手な行動を――あまつさえ斬らずに治すとは。
だが、心の中では安心もあったのだろう。
ぬるい友情をモットーのひとつに掲げる球磨川さんなら、

『うん、よかったじゃないか。ずっと探してたんだろう?会うことができてよかったね!』

きっとこうやって不問にするだろうと期待していたのだから。

「よかった――いえ、ここは素直に悪かったと言っておきますか。『まだ』会いたくはありませんでしたし」
『そういうものだよ、過負荷(ぼくら)はね。そして弟くんが被っている泥も過負荷だ』
「……どういう意味ですか?」
『過負荷を「大嘘憑き」で「なかったこと」にすることはできない。やっと気づいたことだけどね』
「ああ……それでわたしの病魔も消せなかったのですね」
『申し訳ないけどそういうこと。過負荷でこんなことをするとなると心当たりは江迎ちゃんしかないけど……』
「あら、江迎という名前だったのですか、彼女」
『ん?僕は学園で七実ちゃんと一緒になったときは江迎ちゃんはいなかったはずだよね?』
「その前に少しだけ会ったのですよ。彼女が桃の髪をした女で間違いないのならば、ですが」
『うんうん、江迎ちゃんに間違いないね』


『それで』


飄々とした声色が、


『一応確認しておくけど」


変わる。


「そのとき七実ちゃんは江迎ちゃんに何をしたのかな?」


有無を言わせないものへ。

「……毟ろうとしましたが逃げられました、というよりかは逃がしたと言った方が正しいですかね」

だから答える。
素直に。
正直に。
実際にそのときのわたしは彼女の『弱さ』を見取らないためにあえて戦闘を早めに切り上げさせた。
当初は連戦に向かないこの体で長期戦をするわけにはいかないという事情があったからこそのものだと思っていたのだけれど。
閑話休題。

『なら問題はないね!まあ、僕が江迎ちゃんと会ったときは泥舟ちゃんと仲良くやっていたし』

括弧をつけて球磨川さんはさっきまでのように話します。
ただ、動揺しているようにも見えたのは気のせいだったのでしょうか。
最初の放送の直後にも似たような反応を見た気がします。
あのときは、確か――阿久根とか言う方が呼ばれていましたっけ。
宇練さんと遭遇したときに話していたはず。



――ああ、なるほど



ぬるい友情だなんて自身で謳ってはいたけれど、実際は全然ぬるくなんかないのね。
むしろ熱い友情って言ってしまっていいくらいじゃない。
まあ、わたしにも同じことが言えるんだけど。

「先程は勝手な真似をしてしまい、申し訳ありませんでした。弟が被ってるその泥について詳しく聞きたいのですが……」
『だからそんな堅苦しくなくていいのに……弟くんは、なんというか――感染してる、って感じかな』
「感染……ですか?」
『かなあ。僕も初めて見るからなんとも言えないけど……弱さが内からじゃなくて外に出てるとでもいうのか』
「弟本人には何の問題もなく、泥だけが問題だと?」
『だろうね。「大嘘憑き」で傷は消えたのに泥が落ちてないのがその証拠だ。ほら、僕がやってみても服しか消せなかったし』
「木が倒れたのも、枝が所々不自然に落ちているのもそれによるものだと」
『そう思って間違いないだろう。やっぱり七実ちゃんとしては弟くんがこのままになってるのを見過ごすわけにはいかないよね?』
「……え?それはもちろんですが」

反射的に答えたわたしが球磨川さんを見ればその手には螺子が。


『だから』


この螺子は――黒神めだかとの戦いで使っていたもの。


『悪いけど』


それがどんどんと伸びていき――


『こうさせてもらうよ』


七花を背中から、貫いた。

――幽霊の声は聞こえない。




真庭蝙蝠を追っていたはずだが途中から記憶がない。
足を滑らしたのか頭をぶつけたのか猛烈な頭痛に襲われたのか――それすらもわからない。
ただ、気がついたら急速に意識がはっきりして、そして今まで全身に走っていた痛みが消えていた。
人の気配を感じて飛び起きる。
……おかしい。
体の感じがいつもと違う。
さっき被った泥とは関係ない、奥底から出るような違和感。
更に、脱いだ記憶もないのに服が消えていたが、そんなものを気にする余裕はなかった。
なにせ、おれの胸の中央から『何か』が飛び出ているのだから。
痛みはないが、こんなものが刺さっていて平静にしていられるおれではない。
胸の中央ってどうしても悪刀のことを思い浮かべちまうし……

「七花」

なんてことを思っていたら呼び止められた。
ようやく視線を動かすと目の前に二人いた。
一人は知らない顔だ。
そしてもう一人は――

「姉ちゃん……?」
「ええ、そうよ」

本当に、いた。
死んだはずの姉ちゃんが。
おれがこの手で殺したはずの姉ちゃんが。

「本物、なのか?」

知ってるやつで死人じゃない方が珍しかった。
名簿にとがめがいた、まにわにがいた、宇練銀閣がいた、浮義待秋がいた。
真庭鳳凰も、左右田右衛門左衛門も、真庭蝙蝠も、おれが殺したはずなのに実際にいた。
それでも生きているときから死人のようだった姉ちゃんが生きていることが信じられなくて。
だから、つい、馬鹿げたことまで訊いていた。
ここまで来て、本物じゃないはずがないというのに。
頭の悪いおれでもいいかげん気づくようなことなのに。
ただ、それでも。


「今更なことを訊くのね、気づいているくせに」


「でも、ひとつ言っておかないといけないことがあったわ」


「わたしは今、この人――禊さんの刀だから」


「命令とあらば七花を斬るし、今は七花に斬られるつもりもない」


「最初は七花に殺してもらうつもりだったんだけど……色々と事情が変わって」


「ごめんなさいね」


耳を疑った。
だって、姉ちゃんが、あの姉ちゃんが誰かの刀になるだなんて。
一度とがめの刀になるという話もあったけど、あれは本気じゃなかったはずだったし。
何が姉ちゃんをそこまで変えたかなんて……一つしかないじゃないか。


『せっかく姉弟で会えたところでそんな物騒なこと言うわけないじゃないか、七実ちゃん』


『おっと、自己紹介が遅れたね』


『僕は球磨川禊。箱庭学園の3年-13組生で今は七実ちゃんの持ち主ということになっている』


『それと、君の胸に刺さってるそれは僕のスキル「却本作り」によるものさ』


『君が被っていた泥は過負荷によるものだったから「大嘘憑き」じゃどうしようもできなくてね』


『仕方がないから「却本作り」で上書きさせてもらった』


『例えるなら消しゴムで消せない落書きがあったから修正液を使ったというところかな』


『副作用というか本来の効果で肉体も精神も技術も頭脳も才能も僕と同じになるけど』


『そこはまあ、不可抗力として受け止めておいてくれ』


『あのままだと君は無残に腐っていくのみだったんだし僕はそれを助けたんだ』


『だから』


『僕は悪くない』


姉ちゃんを変えたのは姉ちゃんの持ち主に決まっている。
じゃなかったら姉ちゃんが持ち主――球磨川の刀になろうだなんて思わないはずだ。
かつておれがとがめの心意気に惚れたように。
それだから、なのか。
それなのに、なのか。
何の感情も湧いてこない。
驚き、だとか。
怒り、だとか。
悲しみ、でさえも。
昔のおれでさえも何かしらの反応はできたはずだろうに。
それもこれも胸に刺さったこいつのせいだというのだろうか。
だとしたらどうなのだろう。
ありがた迷惑なのか。
それともただ素直に感謝か文句のどちらかを述べればいいのかも――わからない。
ただひとつ言えたことは――


『なんて言ってみたけど僕のだけじゃ不完全だったみたいなんだよね。言い出しっぺの手前恥ずかしいけどお願いしていいかな?』
「確かに二度見ていますからできなくはないですけれど……本当にいいんですか?」
『弟くんを助けたくないのかい?』
「いえ、そういうわけでは……」


問答の後、ため息をついた姉ちゃんの手に『何か』が握られていて。


「もう一度言うわ――ごめんなさいね、七花」


瞬間。
全ての感覚が塗りつぶされた。



痛い。



痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。
からだ痛いのうちがわすべ痛いてをきりつづ痛いけられるよう痛いないたみ痛いがはしる。
ゆ痛いびさきがなにかに痛いふれるだけで痛いもがれ痛いてしまいそう痛いなしょうげき。
こえをだ痛いそうとして痛いとっくに痛いさけびつ痛いづけてい痛いたことに痛いきづく。
いたい痛いといっか痛いいおもう痛いあいだになんかいい痛いたいとおも痛いっただろう。
だから。


「物騒な音が聞こえたから何事かと思って来てみれば……球磨川、貴様らの仕業か?」


乱入者のことなど蚊帳の外だった。


「おや、鑢七花。なぜ貴様がここにいる?」


当然疑問には答えられるわけもない。




ん、また僕の出番かい?
やれやれ、語り部なんてそこにいる誰かに担当させればいいじゃないか。
そうもいかないから僕がやるはめになってるんだろうけどね。
確かにこの四人の中で誰かに語り部をやらせるというのはいい判断ではない。
彼らのこれまでの因縁を考えるなら第三者視点で語るというのが得策だ。
七花くんは見ての通りだったしちょっとスキルを使って『雑音』を取り除いておいたが彼の全身に走る激痛は生半可なものではない。
ああ、その件については後で解説を加えておこう。
でも、だからといって語り部を僕なんかにやらせず神様にでもやらせときゃあいいのに。
それとも、悪魔様にやらせるかい?――なんてね。
まあ色々と承知の上なんだろうけど、一応言っておくぜ。
これから先何が起ころうと――僕には一切関係ないし、僕は一切関係していない。



「ひたぎちゃんを追いかけていたんじゃなかったのかい?どうしてこんなとこにいるのさ」

球磨川くんがめだかちゃんに尋ねる。
その疑問は至極尤もだが、ここは割愛して僕が答えておこうか。
一言で言えば見失ってしまったのさ。
闇雲に探し回ったけど足跡一つ見つけることはできず、七花くんが被った過負荷の影響で木が倒れた音と彼の叫び声を聞き駆けつけたわけだ。
いやはや、人識くんの逃げ足には感服するね。
40キロ後半強の女子高生を背負ってめだかちゃんから逃げおおせるとは。
かつて人類最強と鬼ごっこをやってたりもしたんだし殺し名の皮を被ってるだけあって伊達ではないということかな。
そういえば七花くんのこれまでも曖昧だったっけ。
なに、彼は途中で力尽きただけさ。
何重にも着ていた着物のおかげで体幹部は被害が薄くて済んだものの剥き出しの手足や頭はそうもいかなかった。
頭痛と吐き気に苛まれながら触れた木の枝を溶かして落として進んでいたものの、とうとう限界を迎えた――ということさ。
球磨川くんと七実ちゃんの発見が遅かったらそのまま死んでいてもおかしくなかっただろうね。
その後の対処も彼らの持ち得る手段としてはおよそ的確だったと思うよ。
まず『大嘘憑き』で損傷した肉体を回復させ、『却本作り』で上書きすることで過負荷がこれ以上感染することを防ぐ。
ただ、『パラメータを強制的に自身と同じにする』という唯一、史上唯一、悪平等たる僕に有効なスキルである『却本作り』でも過負荷そのものを消せるわけではない。
そこで七実ちゃんの出番と相成ったわけだ。
忘れかけてるかもしれないけど彼女の体に潜む病魔はまだなんとかなったわけでは全くないからね。
病魔が健在で七実ちゃんも健在な以上、七実ちゃんの病魔に対する免疫力も健在ということ。
だから病魔もついでに強靱な抵抗力もプレゼント。
先に刺さっていた球磨川くんの『却本作り』が病魔の痛みを軽減するという逆転現象が起こってしまってるが、七実ちゃんが見取るためには必要な過程ではあったし。
とか言ってる間に更に一本『却本作り』が刺さってるね。
見かねた球磨川くんの仕業か。
痛みがなくなったわけじゃないが多少楽にはなっているみたいだ。
さりげなく全裸になってたり二人分のパラメータが入り交じってたり激痛に襲われたりと七花くんの色々が犠牲になってはいるが、そんなものは些事だろう?
じゃあ彼らの今の話に戻ろうか。
僕がここで話している間にまどろっこしいところは済ましてしまったようだし。
ふうん、球磨川くんは七実ちゃんに待機の命令を出したのか。
七実ちゃんの気持ちもあるだろうに、やっぱり自身で決着をつけたいんだねえ。
七実ちゃんに何かあったら七花くんに影響するというのもあるから素直に引き下がっているんだろうけど。

「私は貴様がここにいる理由を聞きたいのだがな、鑢七花。貴様にはまだ眠ってもらうはずだったが」

めだかちゃんにとっての目下の疑問は七花くんの存在だ。
彼女にとって彼はまだデング熱の影響下で高熱で動けなくなってるはずだったしね。
それがなぜかこんなところにいて苦しみで喘いでいるのだから疑問は至極尤もだ。
しかし『五本の病爪』は元々僕のスキルだったのに伝聞だけで完成させてしまうとはなあ。
病気を操るスキルとはいえ、基本的には相手を病気にすることの方が当然使い道は多い過負荷なんだが。
まあ、あのままあそこにいれば江迎ちゃんの過負荷の影響で骨の髄まで残らなかっただろうけどさ。
そうそう、そのままだと七花くんが何を言ってるか理解するのに時間が非常にかかるし僕がスキルでわかりやすく伝えていることを言っておくよ。

「あんたがいなくなってからしばらくしたらなんともなくなったよ。疲れとかは残っちまったけどな」

でもまあ、もう話せるようになるなんて半減されてるとはいえ常人には耐えがたい痛みだとは思うがやはり弟なだけあるね。
息も絶え絶えだった七花くんの発言だけど、それでもめだかちゃんを動揺させるきっかけにはなったようだ。
言ってしまえば中途半端な対応をしてマーダーを自由にしてしまったんだから。

「そもそもめだかちゃんはなんでひたぎちゃんにこだわるんだい?やっぱり善吉ちゃんを殺されたから?」

そしてここにいるのはめだかちゃんの動揺が治まるまで素直に待つような人じゃない。
特に――球磨川くんはね。
それにしてもちゃんと見抜いていたんだなあ。
そこは弱さという弱さを全て知り尽くしている球磨川くんだからこそだろうけど。
案外カマをかけただけかもしれないけどね。
いずれにせよ、図星だったわけで。

「……っ、それもある、が、先程左右田右衛門左衛門の名が呼ばれてしまったからな。彼奴の主君である戦場ヶ原ひたぎ上級生になおのこと会わねばならん」
「ちょっと待て。右衛門左衛門の主君が誰だって?」
「戦場ヶ原ひたぎ、と聞いたがそれがどうした」
「おれはそんなやつ知らねえぞ。あいつの主君は否定姫だけだ」
「しかし、確かに……」
「あいつは最期まで否定姫の腹心だったよ。殺したおれが言うんだから間違いない」
「なっ、貴様……殺したとはどういうことだ!」
「もういいよ、めだかちゃん」

おやおや、一気に核心に触れてしまったみたいだね。
いよいよ種明かしの時間にでもなるのかな。

「めだかちゃん、君は間違えていたんだよ。
「最初からね。
「君が阿良々木暦くんを殺さなければひたぎちゃんは善吉ちゃんを殺すことはなかった。
「ひたぎちゃんは君を殺そうと躍起になる必要はなかったし、僕も殺されずに済んだんだ。
「僕はまあ、こうして生き返ることができたけど、他の人はそうもいかない。
「左右田ちゃんの件だって君の対応は間違っていた。
「何があったのかは知らないけど、想像はできるよ。
「どうせ君のことだから馬鹿正直に言うことを信じたんだろう?
「実を言うと僕も左右田ちゃんには一度会っていてね。
「彼からは殺されかけたんだよ。
「敵前逃亡したからあえなく勝てずじまいの無様な姿を晒しただけだったけど。
「まあ僕がどんな姿を晒そうがそれは関係のない話だ。
「重要なのは彼が殺し合いに乗っていたことだよ。
「別に殺し合いに乗ったこと自体は重要じゃない。
「パニックになってなりふり構わず他人を襲うことだってないわけじゃない。
「まあ左右田ちゃんはわかってて乗ったみたいだったけど。
「おっと、こんなことは今はどうでもいいことだったね。
「肝心なことは一点。
「君はみすみす彼を見逃したことで他の人を危険に晒したんだ。
「しかもそれだけじゃなく同じことを弟くん――七花くんのときにもしたわけだ。
「順番が逆かもしれないけどそんなことは関係ないね。
「左右田ちゃんよりかは剣呑だったようだけど、いずれにしてもマーダーを野に放ったのには変わりない。
「しかも七花くんは左右田ちゃんを殺しちゃったわけだ。
「わからないかい?
「君が対処を間違えたからこうなったんだよ。
「何もしなくても人が人を殺すなんて明らかだ。
「現にもう28人死んでいるんだしね。
「だというのに君は何もしていないに等しい。
「人殺しを看過できないからと手元において監視することもせず。
「これ以上の被害を出さないために心を鬼にして殺すこともせず。
「一見安全策ともとれるようなことをしたつもりで放置したんだ。
「実際は安全でもなんでもなかったのが明らかだけどね。
「ああ、そういえばどうして君が暦くんを殺したことを僕が知っているかについて説明していなかったっけ。
「どこかで誰かが誰かを殺した瞬間の映像が手に入るようでね、それをまた別の誰かがネットに流してるんだよ。
「携帯電話とかパソコンとかがあれば誰でも簡単に見ることができる代物だ。
「つまり、大多数の人間に君の所業は知られているということだよ。
「生憎僕はそういった物は持ってなかったんだけど人脈はそれなりに築いていたからね。
「もちろんばっちり見させてもらったよ。
「そしてガッカリした。
「まさか君がいの一番に人殺しをするだなんてね。
「だからさっき会えたときは嬉しかったんだよ。
「君は僕の気持ちを受け入れてくれた。
「ま、ひたぎちゃんにすぐ邪魔されちゃったけど。
「今は邪魔の入らない状況でリベンジってところだというのに。
「なんだいその体たらくは。
「そういう意味では今のめだかちゃんの格好はとってもお似合いだと思うよ。
「その服、まるで『お前に生徒会長はふさわしくない』って言われてるようじゃないか」

たたみかけたねえ。
いつものめだかちゃんならそれこそ先程のように突っぱねて「こまけえこたぁいいんだよ」みたいなこと言って向かっていったんだろうけどタイミングが悪かった。
むしろよかったとでも言うのかな。
七花くんの存在、そして発言で動揺した隙を球磨川くんは見逃さなかったわけだ。
滅多に見られないめだかちゃんの弱さが垣間見えた瞬間ではあったわけだしねえ。
『却本作り』で七花くんは半分封印されているようなものだし、激痛で戦闘なんてまず無理だろう。
七実ちゃんも七花くんのこともあるし球磨川くんの不利益になるような行動はしない。
御託はいいからめだかちゃんは実際にどうしたのか教えてくれって?
僕としても楽しみではあったんだが控えさせてもらうよ。
続きをお楽しみに、ってね。
だって、そこまで語ってしまうのは野暮というものだろう?



【一日目/夜中/E-5】
【球磨川禊@めだかボックス】
[状態]『健康だよ』
[装備]『七実ちゃんはああいったから、虚刀『錆』を持っているよ』
[道具]『支給品一式が2つ分とエプロン@めだかボックスがあるよ。後は食料品がいっぱいと洗剤のボトルが何本か』
[思考]
基本:「黒神めだかに勝つ」


今度こそ僕は、勝つ。
黒神めだかに、僕は勝つ。
――七実ちゃんもその気みたいだしさ


[備考]
 ※『大嘘憑き』に規制があります
  存在、能力をなかった事には出来ない
  自分の生命にかかわる『大嘘憑き』:残り0回。もう復活は出来ません
  他人の生命にかかわる『大嘘憑き』:残り0回。もう復活は出来ません
  怪我を消す能力は再使用のために1時間のインターバルが必要。(現在使用可能)
  物質全般を消すための『大嘘憑き』はこれ以降の書き手さんにお任せします
 ※始まりの過負荷を返してもらっています
 ※首輪は外れています


【鑢七実@刀語】
[状態]健康、身体的疲労(小)、交霊術発動中
[装備]四季崎記紀の残留思念×1
[道具]支給品一式×2、ランダム支給品(2~6)、球磨川の首輪×1
[思考]
基本:弟である鑢七花を探すついでに、強さと弱さについて考える?
 0:命令があるまで待機。
 1:七花以外は、殺しておく?
 2:球磨川禊の刀として生きる。
[備考]
 ※支配の操想術、解放の操想術を不完全ですが見取りました
 ※真心の使った《一喰い》を不完全ですが見取りました
 ※宇練の「暗器術的なもの」(素早く物を取り出す技術)を不完全ですが見取りました
 ※弱さを見取れます。
 ※大嘘憑きの使用回数制限は後続に任せます。
 ※交霊術が発動しています。なので死体に近付くと何かしら聞けるかも知れません
 ※球磨川禊が気絶している間、零崎人識と何を話していたのかは後続の書き手にお任せします
 ※黒神めだかの戦いの詳細は後続にお任せします


【黒神めだか@めだかボックス】
[状態]『不死身性(弱体化)』
[装備]『庶務』の腕章@めだかボックス、箱庭学園女子制服@めだかボックス、王刀・鋸@刀語
[道具]支給品一式、否定姫の鉄扇@刀語、A4ルーズリーフ×38枚、箱庭学園パンフレット@オリジナル
[思考]
基本:もう、狂わない
 0:? ? ?
 1:戦場ヶ原ひたぎ上級生と再会し、更生させる
 2:話しても通じそうにない相手は動けない状態になってもらい、バトルロワイアルを止めることを優先?
 3:哀しむのは後。まずはこの殺し合いを終わらせる
 4:再び供犠創貴と会ったら支給品を返す
 5:零崎一賊を警戒
 6:行橋未造を探す
[備考]
 ※参戦時期は、少なくとも善吉が『敵』である間からです
 ※『完成』については制限が付いています。程度については後続の書き手さんにお任せします
 ※『不死身性』は結構弱体化しました。(少なくとも、左右田右衛門左衛門から受けた攻撃に耐えられない程度には)
  ただあくまで不死身性での回復であり、素で骨折が九十秒前後で回復することはありません、少し強い一般人レベルです
 ※都城王土の『人心支配』は使えるようです
 ※宗像形の暗器は不明です
 ※黒神くじらの『凍る火柱』は、『炎や氷』が具現化しない程度には使えるようです
 ※『五本の病爪』は症状と時間が反比例しています(詳細は後続の書き手さんにお任せします)
  また、『五本の病爪』の制限があることに気付きましたが詳細はわかっていません
 ※軽傷ならば『五本の病爪』で治せるようです
 ※左右田右衛門左衛門と戦場ヶ原ひたぎに繋がりがあると信じました
 ※供犠創貴とかなり詳しく情報交換をしましたが蝙蝠や魔法については全て聞いていません
 ※『大嘘憑き』は使えません
 ※鑢七実との戦いの詳細は後続にお任せします
 ※首輪が外れています


【鑢七花@刀語】
[状態]全裸、『却本作り』による封印×3(球磨川×2・七実)、病魔による激痛、『感染』?、覚悟完了?
[装備]なし
[道具]なし
[思考]
基本:優勝し、願いを叶える?
 0:? ? ?
 1:放浪する?
 2:名簿の中で知っている相手を探す。それ以外は斬る?
 3:姉と戦うかどうかは、会ってみないと分からない?
 4:変体刀(特に日和号)は壊したい?
[備考]
 ※時系列は本編終了後です
 ※りすかの血が服に付いていますが『荒廃した過腐花』により腐敗されたようです
 ※不幸になる血(真偽不明)を浴びました。今後どうなるかは不明です
 ※掲示板の動画を確認しました
 ※江迎怒江の『荒廃した過腐花』の影響を受けました。身体にどの程度感染していくかは後続の書き手にお任せします
 ※着物の何枚かを途中で脱ぎ捨てました。どの地点に落ちているか、腐敗の影響があるかは後続の書き手にお任せします
 ※着物は『大嘘憑き』で『なかったこと』になりました
 ※『大嘘憑き』により肉体の損傷は回復しました。また、参戦時期の都合上負っていた傷(左右田右衛門左衛門戦でのもの)も消えています
 ※『却本作り』の影響をどれくらい受けるかは後続の書き手にお任せします


冠善跳悪 時系列順 めだかクラブ
牲犠 投下順 冠善跳悪
君の知らない物語(前編) 鑢七花 めだかクラブ
球磨川禊の人間関係――黒神めだかとの関係 鑢七実 めだかクラブ
球磨川禊の人間関係――黒神めだかとの関係 黒神めだか めだかクラブ
球磨川禊の人間関係――黒神めだかとの関係 球磨川禊 めだかクラブ

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最終更新:2014年04月08日 22:32