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◆ ◆
「はぁ~~~~~」
大仰なため息を
零崎人識の隣に座ってた
玖渚友が吐いた。
放送にそこまで落胆させるような要素はあっただろうかと、人識は怪訝な顔をする。
「最悪の結果になっちゃったね」
「最悪?」
「いーちゃんへの電話、聞いてたでしょ」
「そりゃまあな」
零崎曲識の直接の仇である
水倉りすかを殺せなかったのは惜しかったが、及第点はもらえたのではないだろうか。
供犠創貴だって大将こと
零崎軋識の仇の一人ではあったんだし、とごちるが玖渚は不満げな表情だ。
「呼ばれなかっただけで実は瀕死の重傷を負ってるってなら話は別だけど、そんなおいしい話がこの局面で来るわけないだろうしねえ」
「俺のせいだって言いてーのか? 呼んだのはそっちだろ、何の準備もしないで行くほど俺は驕っちゃいねーよ」
そもそも、玖渚が
掲示板に上げた映像を見た上で襲撃したのだ。
手筈を整えるのは当然である。
手榴弾をドーナツの箱に放り込むところだって、玖渚も見て見ぬ振りをしていたのだから同罪だろうと主張する。
「そういうわけじゃないんだけどさ、愚痴の一つも言わせてくれたっていーじゃん。実際問題、被害が出ない方がマシだったと思うし」
「そこまで言うか」
「うん、そこまで言うよ。規模こそ違えど、奇策士がいなくなった虚刀流みたいなもの。それにしたって城攻めを完遂したのは並外れたことだし。
手綱のなくなった道具の暴走なんてたいていろくでもないことになる。ましてや、それが自分で考えることのできる道具だったら尚更。
正直な話、この一瞬後に水倉りすかが来てもおかしくないよ。もちろん、僕様ちゃんたちが太刀打ちできるわけもないし」
「……怖いこと言うなよ」
思わず身構えるも、変化はない。
そんなことが起きたところで自業自得、因果応報というものなのだが。
零崎が始まった以上、零崎を始めてしまった以上、滅ぼすか滅ぼされるかの二択しか選択肢は残されていない。
あくまで人識の気まぐれが続く限りという前提が成り立っているなら、ではあるが。
そういう意味では、「金輪際目の前に姿を現さない」という約束もいつまで守れるか疑問だが、とりあえずは守っておくことにした。
向こうから来ない限り当分は遭うことはないのだ、勝手に進行してくれる。
「そんなあるかどうかもわからない未来より、この後ほぼ100パーやってくる未来の方が俺はめんどくせえ」
「舞ちゃんと会うのが? 兄妹なんだから普通にしてればいーじゃん」
「俺に普通を説くか」
「そうだったね。取り消す」
俺は普通よりも不通の方があってるだろ、そう放たれた軽口は、さすがにそれは通らないんじゃない?とあっさり否定された。
「とりあえず僕様ちゃんはいーちゃんにバックアップを残しておくとして、ここまでのこと整理しておこっか」
「整理?」
「首輪については舞ちゃんたちが戻ってからの方がいいっていうか二度手間だし」
「まあ、いいけどよ。何を整理するんだ?」
「ここにいる人たちの違和感、偏り、バランスってとこかな」
「妙な言い方するじゃねーか」
「どうしても妙な言い方になっちゃうんだよね」
そう話しつつ、玖渚の手が休まることはない。
ぽちぽち、などという擬音では収まらない速さでボタンが叩かれていく。
処理能力が追いついているのか心配になるレベルだったが、打鍵が止まらないということはなんとかなってるのだろう。
特別製なのだろうか。
ぼんやりとそんなことを考える人識の傍らで玖渚は続ける。
「世界観の違いには気付いてるでしょ?」
「一応はな。仮にも色んなやつらとといたんだし」
「それが全部でいくつになるかはわかる? めんどくさかったら知り合い同士の繋がりでもいいよ」
何気なく投げかけられた問い。
すぐに答えられるようなものではなかったため、考え込むような仕草をして、
「この場合時系列の違いってやつは無視していいんだろ? ってことは……まずは俺たちの世界、ざっと10人ちょいってとこか。
水倉りすかと供犠創貴、それとツナギは繋がりがあったはずだ。で、鑢七実と七花が姉弟でとがめってのも知り合いのようだった。
そういや真庭のやつらのこと、『まにわに』って呼んでたんだよな……もしかしたら知ってたのかもな。
阿良々木暦と火憐も兄妹、そしてそいつらの知り合いが
戦場ヶ原ひたぎ、羽川翼、
八九寺真宵、か。
反応からして阿良々木火憐と宗像くんは元からの知り合いって感じはしなかったが、そこんところどうなのかねえ。それと病院坂の二人と様刻は元々付き合いあった側か。
あと名字繋がりなら黒神もか、あと球磨川のやつも
黒神めだかに執着してたところを見ると因縁あったと思っていいよな。
あ、黒神めだかと言えばさっき放送やってた都城王土も知り合いぽかったんだよな。……俺が持つ情報じゃこの辺りが限界だな。
残りのやつらは名前だけじゃさすがにわかんねーわ、九州の地名がやたらあるけどそれだけで括るのは無理あるしな」
見解を一気に述べていく。
それを聞いた玖渚は少しだけ目を丸くし、
「ほぼ正解、すごいやしーちゃん」
素直に賞賛した。
「そうか? 情報があれば誰でもできるだろ、こんなの」
「その情報を得るのが普通は大変なんだよ? しーちゃんほぼコンプリートしてるもん」
「コンプリート、なあ」
「どうかした? 僕様ちゃんがしーちゃんが京都でかつて解したカードの中に入ってないこととか?」
「……お前、性格悪いって言われたことねえの?」
人識本人以外では
哀川潤しか知らないはずの動機なのだが、今更突っ込むのは野暮だった。
哀川潤が話すとも思えないし、情報の出所が気にならないでもなかったが。
「そういえば」
「無視かよ」
「都城王土のこと、どこで知ったの?」
「あん? 昼過ぎに会ったんだよ。ついでにこの斬刀を置いてったんだけどな」
もっとも、俺じゃなくて戦場ヶ原ひたぎに渡したもんなんだけど、という備考までは言わなかったが重要なことではあるまい。
「都城王土が? よりによって斬刀を? ふうん……」
「なんかわかったのか?」
「仮説レベルのなんとなくでだけどね。まあそれは後にして答え合わせしよっか」
たったそれだけで仮説レベルでもわかったのなら大したものだと思うのだが。
そう人識が口にする前に、のべつ幕無しに玖渚が話し出す。
「参加者45人中、見せしめの皿場工舎も入れたら46人中かな? うち13人が僕様ちゃんやしーちゃんと同じ世界観出身だね。
もっと詳しく分けると暴力の世界が零崎5人、匂宮1人、時宮1人。権力の世界は僕様ちゃん1人、
西条玉藻を檻神の一員に入れていいなら財力の世界もいるのかな。
で、あとはいーちゃん潤ちゃん
想影真心と
西東天が一般人だね。ああ、うん、異論は大いに認めるけどさ、潤ちゃんを一般人と形容するのに抵抗するのはわかるけどさ。
人数が多い順だと次は12人か。しーちゃんには予備知識がそこまでないだろうからここからは全員フルネームで言ってあげる。
鑢七花、鑢七実、とがめ、真庭狂犬、真庭喰鮫、真庭蝙蝠、真庭鳳凰、この7人はしーちゃんが考えた通り同じ世界出身だよ。
それと宇練銀閣、左右田右衛門左衛門、否定姫、浮義待秋と皿場工舎がプラスされるね。ここだけ世界観がかなり異質なんだよなあ。
他はみんな現代なのにここだけいわゆる江戸時代なんだよね。いわゆるってつけたのはその世界における江戸幕府が尾張幕府だったから。
完成形変体刀といい、色々とめんどくさそうなんだけどこれも後回しでいいか。それで次が一番重要になるのかな。
どうして一番重要かわかるのかって、そりゃあの不知火袴と同じ世界だからだよ。誰か彼のこと『理事長』って呼んでなかった?
黒神めだか、黒神真黒、
球磨川禊、後は阿久根高貴、江迎怒江、
人吉善吉、日之影空洞、形ちゃんこと
宗像形の以上8人。あとは都城王土もここに加えていいよ。
九州の地名で引っかかりを覚えたしーちゃんの勘は正しかったんだよ、お見事。ここからはほぼ消化試合みたいなもの。
阿良々木暦、阿良々木火憐、戦場ヶ原ひたぎ、羽川翼、八九寺真宵、その5人と貝木泥舟で計6人。忍野忍がなぜ名簿にいなかったか疑問を覚えるところではあるんだけど。
あとは病院坂黒猫、病院坂迷路、ぴーちゃんこと櫃内様刻と串中弔士の4人。最後に『魔法の国』長崎がある世界の供犠創貴、水倉りすか、ツナギの3人。
人数順だとこうだけど、放送聞く限り主催は別の順番で並べてるみたい」
「そういや、順番に法則が見えねえよな」
「うん。グループ内での順番はさすがにわからないけどグループごとの順番ならなんとか。
中心人物を代表にして並べると、潤ちゃん、病院坂黒猫、水倉りすか、鑢七花、阿良々木暦、黒神めだか、のグループだね。
三回目の放送を元に考えるならこうなる。そしてこれで46人のグループ分けが完了したんだけど、しーちゃんはどう思う?」
「……どうって言われてもな」
立て板に水とはまさにこのことかと感嘆するより他にない。
先程自分で整理したとはいえ、新たにこの情報量を加えるとなると考える時間が必要だ。
そうしてしばらく経ったのち。
「ありきたりなとこを突くなら、最初二つのグループが人数多すぎってとこか。それとも最後二つが少なすぎとでも言うべきか?」
「多すぎってのは同意だけど少なすぎってのは微妙かな。「魔法」使いにせよ「魔法使い」にせよ増やすのは得策じゃなさそうだし」
「そうか? 殺し合いやらすんだったら一般人よりはそういった戦闘力あったやつらのがよさそうに思えるが」
「そもそもこの殺し合いは『実験』だってこと忘れてない?」
「あー、そういやそんなこと言ってたっけな」
「しかも『完全な人間を作る』という目標つき。定義にもよるけど『完全な人間』に『魔法』なんて不純物を持ち込んでいいのかは疑問が残るところだよ」
「んなこと言ったら俺たち殺人鬼が5人もいる時点でおかしいだろ」
「まあね。だから舞ちゃんぴーちゃんの意見も聞きたいところだったんだけど……それにしても遅いね、二人」
「言われてみれば……電話してからそれなりに経ってるよな」
人識が最後に伊織と通話をしてから優に30分は経過している。
逃げるときは走っていただろうことを考慮しても、いいかげん戻って来ないとおかしい頃合いだ。
「まさかとは思うけれど」とおいた上で玖渚がある可能性を事も無げに言う。
「電話する猶予すらなく襲われちゃってるとか? 案外――あっ、しーちゃん!?」
話を最後まで聞くことなく人識は駆け出していた。
ぽつんと取り残されるような形になった玖渚は収まりも悪かったので言いかけていた残りを言う。
「……舞ちゃんもしーちゃんと同じで会うのが気まずくて入る勇気がないだけ、ってのが真相だと思うんだけどなあ」
それから思い出したかのように、ぴっ、とメールの送信ボタンを押した。
◆ ◆
「開けるよ」
「あっ、ま、まだ開けないでください」
「放送で真庭鳳凰の死が確定した以上、入らない理由はないと思うけれど?」
「その、心の準備というものがですね……」
真下から響く櫃内様刻の声に
無桐伊織はしどろもどろになって答える。
伊織の手には首輪探知機が抱えられており、その画面には5人の名前が表示されていた。
中心に「無桐伊織」そしてほぼ重なるように「櫃内様刻」、ほんの少しだけ離れて「真庭鳳凰」「玖渚友」「零崎人識」とある。
目の前の扉一枚さえなければ目視だって可能な距離だ(建物の構造上中に入ってもすぐには見れないだろうが)。
つい先程まで最大の懸念であった真庭鳳凰の脅威が放送によって払拭されたため、伊織たちは中に入ることを躊躇する必要はどこにもない。
しかし、伊織はまだ入ることができないでいた。
「……そんなに怖いのかい?」
「そういうわけじゃないんですが……」
「じゃあ『どんな顔をすればいいかわからない』とか?」
「そんな感じですかね……」
「なら、『笑えばいいと思うよ』って返すのが定石になるけど」
「質問の時点でその答えが返ってくるだろうことは予測できましたよう、ええ」
ため息まじりに訊く様刻だがめんどくさそうな素振りは見せていない。
元々『妹』の扱いは手慣れているのだ。
それがギリギリの均衡を保つような綱渡りの連続だったとはいえ。
「家族と会うだけだろう? 普通にしていればいいだけのことじゃないか」
「そんなこと言われましても、私のこと家族って言ったのさっきが初めてなんですよ? どうしたらいいのかすらわかりませんよう……」
「零崎になる前だってお兄さんがいたんだから、そのときみたいに接すれば済むことじゃないのかい」
「あのときは逃げてばっかりでしたし尚更参考にはなりません……」
そこまで言って、様刻に『無桐伊織』であったときの家族構成まで話していただろうかと疑問がよぎったが、それは頭の片隅に追いやった。
眠る前後に話していたかもしれないし、今は目前の問題をなんとかしたい。
「じゃ、じゃあ様刻さんだったらどうするんですか」
「今の状況だったら放送なんか待たずにさっさと入っているよ」
「まあ、そうでしょうね……なら、もしもの話ですけど、ここに妹さんがいたらどうしてました?」
それでも、矛先を逸らしてしまう。
逃げているのではない、立ち止まっているだけだからと自分に言い聞かせているが、そうしている時点で逃避同然であることは否めない。
「そんなの簡単すぎる。もしも夜月が死んでいたら全員殺す。殺して、優勝して、生き返らせる。それができないのであれば主催も全員殺して僕も死ぬ」
「ありきたりですけど、『そんなことをして生き返っても妹さんは喜ばない』とか言われても?」
「生き返るまでわからないだろ、それって。仮の話に仮を重ねるけど、夜月がそう言ったって僕が『じゃあ責任を取って死ぬ』って言えば全力で引き留めるだろうし」
「では、生き残っておられた場合は」
「真っ先に夜月を保護して、こんなことに夜月を巻き込んだ落とし前をつけさせる。ついでに僕を巻き込んで夜月を心配させた落とし前も。
それから、二人で脱出する方法を探して、それが無理ならさっき言った方法を採る。そのためには僕が夜月を一度殺さなきゃいけないのが本当に辛いけれど。
でも、夜月に僕を殺させる苦痛をかけるくらいなら、そして僕が生き返らない恐怖を味わわせるくらいならそうする。そんなところだ」
「そ、そうですか……」
自分から話を振っておいてなんだが、少し引いていた。
「何かおかしいこと言ったかな」
「様刻さん、シスコンって言われたことないんですか?」
「シスコンと呼ばれた程度でたじろぐような兄妹愛はシスコンとは言えない」
「否定しないんですね」
「残念なことに僕達の兄妹愛を表現する言葉が他にないだけだ」
「そんな言葉があったら逆に怖いですよう……でも、そこまで思ってもらえる妹さんがいるのは羨ましいですね」
「目に入れても痛くない、自慢の妹だよ」
「妹さんのこと、大切ですか?」
「家族なんだ、当たり前だろ」
「当たり前ですか」
「当たり前だ」
「…………」
黙り込む。
そして「よし!」というかけ声と共にぱちんと両頬をはたいた。
「伊織さん?」
「すみません、お手間を取らせました。もう大丈夫です」
「そいつは何よりだ」
「今までさんざん人識くんに家族だーって言っておいて、いざ自分が言われたら縮こまるなんておかしすぎます。こんな姿見られたらまた心配かけてしまいますよ。
それに以前『もてあました性欲の解消にも協力してもらうことができます』なんて言っちゃいましたし――うおぅっ!?」
突如、勢いよく扉が開かれる。
その向こうにいたのは伊織の『兄』である人識で、
「……………………」
「……………………」
「……………………」
しばし、無言で向かい合う。
人識と伊織は完全に固まっている。
特に伊織は直前に話していたことがことだったため、不意打ちを食らったかのようだ。
どうやら膠着を打開できるのは自分しかいないと気付いた様刻は、軽くため息をつくと気さくに話しかける。
「よう、人識――」
◆ ◆
「おかえり、舞ちゃん、ぴーちゃん」
「あ、ただいまです」
「ただいま……でいいのか、この場合?」
無事(?)薬局に戻った二人を、ソファーに座ったまま手を振って玖渚は迎え入れる。
伊織を玖渚の隣に下ろすと、玖渚を挟み込むように様刻も腰かけた。
「…………」
一方、終始無言でいた人識は様刻から人一人分の間を空けてばつが悪そうに乱暴に腰を下ろす。
「しーちゃん、それはないんじゃない? せっかくぴーちゃんが気を遣ってくれたのに」
「そうですよう、わざわざ空けてくれたんですからこっち側に座るものでしょう」
途端、女性陣からの猛口撃が始まった。
女三人寄れば姦しいと言うが、二人でも十分姦しかった。
様刻は我関せずと言った表情で瞼を閉じていたが、耳元で騒ぎ立てられるのはいい気分ではないだろう。
うるささに耐えかねたのか、人識は「あー、わかったわかった」とめんどくさそうに言い放つと諦めて伊織の横に座る。
微妙に隙間を空けていた。
「じゃ、早速だけど首輪探知機ってやつ見せてもらってもいい?」
「あ、はい、どうぞ」
四方山話に花を咲かせる間もなく、玖渚が本題に入っていく。
伊織から手渡された首輪探知機を検分すると、一分もしないうちに返した。
「もう済んだんですか?」
「とりあえず死人の首輪も反応するか確かめたかったんだよね。真庭鳳凰と真庭狂犬は表示されたけど浮義待秋は無し」
「……今玖渚さんが持ってる首輪は二つだけだし、つまり、デイパックに入った首輪には反応しない、ということでいいのか?」
「そういうこと、かな。ぴーちゃんたちは首輪持ってたりしないよね?」
「回収しようって発想がなかったというか、首を切ろうって発想には至れなかったというか……ああ、いや」
「持ってたんですか?」
「真庭鳳凰が、ね。映像を見た限りじゃ、おそらく否定姫のものだと思うけど」
「うん、ぴーちゃんの考え通り否定姫のみたいだね。とりあえず使えるのは4つか。まあ真庭鳳凰と真庭狂犬が一応僕様ちゃんの設定した条件満たしてるしいいか……
あ、その首輪もらっていい? それと後で残りの映像見せてね」
そう言って持っていた首輪をデイパックにしまう。
首輪探知機を見遣れば、表示されている名前は四人分に減っていた。
「条件? どういう意味ですかそれ」
「後々説明するよ。とりあえず何でもいいから気付いたことない?」
「え、気付いたことですか? そんな急に言われましても……」
「そもそも、僕たちが気付く程度のこと、玖渚さんが気付かないわけがないと思うんだけど」
「それがそうでもないんだって。それに、被りでもいいから情報は集めておいて損はないよ。被るってことは情報の精度が上がるってことでもあるし」
「……そういえば」
様刻がふと言葉を漏らした。
それを聞き逃さず玖渚が反応する。
「何か思い出したの、ぴーちゃん?」
「もしかしたら、ってくらいのものなんだけど、満月だったなあって」
「満月? それって今もってこと?」
「昨日、って言い方もどうかと思うけど、24時間前も満月だったような気がするんだ」
「うん、合ってるよ。僕様ちゃんもネットカフェから研究所に移動するとき見たし。でしょ、舞ちゃん」
「うなー、そうでしたっけ? 私は覚えてないです」
「そうなの?」
「玖渚さんを運ぶのが大変だったのでそんなの気にする余裕なんてありませんでしたし」
「話を戻すけど、一日経っても満月のまま……ということになるよな」
「そういうことだね。ありがと、おかげで一つわかったよ。いや、一つ潰れたってことになるのかな」
「「潰れた?」」
怪訝な顔をする二人に挟まれながら、玖渚は滔々と語り出す。
ちなみに、人識はといえばいつの間にやら船を漕いでいた。
◆ ◆
「ぴーちゃんが教えてくれたことで、この会場について可能性が二つに絞り込めたよ。
「元々、僕様ちゃんは大きく分けて二つ、ひとまずは三つで考えてたんだよね。
「現実空間か、非現実空間か。
「現実空間だった場合、開放空間か、閉鎖空間か。
「隔離空間ではあるけれど、それが建造物の中か外かでまた変わってくるからね。
「他に生物が見当たらなかったから開放空間の可能性はかなり低いと踏んではいたけど。
「ぴーちゃんは馴染みが薄いかもしれないけど、舞ちゃんは地図に違和感持ってたでしょ?
「ピアノバー・クラッシュクラシック。
「北海道にあったはずのそれがここにあるなんて、詳しい場所を知らなくてもおかしいと思うよね?
「……え?
「言われて初めて気付いた?
「……そう。
「しーちゃんなら早い段階で気付いてたとは思うけど。
「あ、別に起こさなくていいよ。
「ああ見えて結構頑張ってたみたいだし、少しは労ってあげないと。
「話を戻すね。
「クラッシュクラシック以外にも骨董アパートやランドセルランド、それに西東診療所に卿壱郎博士の施設が一ヶ所に集まってるのはわかる人なら一発でわかるし。
「あとは竹取山。
「正確には雀の竹取山。
「これも山頂に登ったことのあるしーちゃんならわかる――っていうかしーちゃん色んなフラグ持ちすぎ。
「引きこもってた僕様ちゃんが言うことでもないけどさ。
「まあ僕様ちゃんも掲示板とかで色んな人とフラグ作ったりしたけど。
「で、竹取山の山頂は本来はただの山頂でしかないはずなんだよね。
「僕様ちゃんが登ったことがあるわけでもないし、そもそも雀の竹取山は四神一鏡のものだから疎いんだけど。
「でも、少なくとも踊山なんて山なんてないし。
「他にも箱庭学園だったり、学習塾跡の廃墟だったり、不要湖だったり。
「特定の人間が見れば引っかかる施設や地名ばかり。
「違和感を抱かない方がおかしいよ。
「というよりも――そうなるように仕組まれているのかな?
「昼に舞ちゃんと電話でDVDの話したでしょ。
「それ以外にも、何かしらの疑問を覚えさせるようなのがあちこちに散らかってる。
「そうなると、どうしてこんな風にしたのかって当然思うよね。
「どうやって、は今更だよ。
「閉鎖空間だったとしても、普通に作っただけだろうし。
「箱庭学園の地下に『あんなもの』を作れるくらいの技術力はあるんだから、条件さえ整えばできなくはないだろうね。
「非現実空間――わかりやすい例えだとヴァーチャル空間ってやつ?
「それなら舞台の構築は容易だろうね。
「その場合、僕様ちゃんとしてはお手上げに近くなるからそうであって欲しくはないんだけど。
「それに、『完全な人間の創造』という目的に沿うものじゃないように思えるんだよね。
「あくまで希望的観測だけどさ。
「ああ、そうだ。
「この殺し合いの目的である『完全な人間の創造』ってなんなんだろうね?
「そもそも、『完全な人間』って何――って言った方がいいか。
「どういう定義でもって完全とするかにもよるけど、果たしてそれが殺し合いで実現できるものかな?
「優勝者が出たとして、その人が無条件で『完全な人間』と認められる、いくらなんでもそんな簡単な話はないでしょ。
「その優勝者が完全な人間と呼ぶにふさわしい、立派な人間だったとして、この殺し合いを肯定する?
「相打ちで終わって優勝者が出ない可能性だってあるよね。
「そうなればせっかくの人材の浪費だよ。
「『実験』と銘打っている以上、失敗は織込み済みだろうけどさ。
「それにしたって実験の『材料』は唯一無二のはず。
「基本的に実験なんて成功するのは大学生レベルまでだし。
「いけないいけない、話が逸れちゃった。
「僕様ちゃんがこの点でも疑問を覚えるのは、主に3つのアプローチがあるからなんだよね。
「一つ目が元から高すぎると言っても過言ではないスペックを持つ人たち。
「人類最強の潤ちゃん、人類最終の想影真心、フラスコ計画の最初の成功例である人吉善吉。
「黒神めだかや羽川翼だってここに当てはめてもいい。
「生き残ってるのは翼ちゃんだけだけどさ。
「逆に言えば『完全な人間』へのスタートラインが他よりもゴールに近い人が既に四人も死んでいる。
「率直に言ってもったいないと僕様ちゃんは考えるね。
「二つ目はいーちゃんや球磨川禊のような反対にスタートラインが遠い人間。
「不完全ならぬ負完全な人間と言ってもいいかな。
「絶対値が同じなら次善の策としてはなくもないけど……やっぱり釈然としないんだよね。
「それと、一緒くたにするのはやや失礼な面もあるけどカテゴリ分けするなら他にも当てはまるのはいるし。
「僕様ちゃんとか舞ちゃんたち殺人鬼である零崎、日本刀として育てられた鑢、第十三期イクスパーラメントの功罪の仔・
匂宮出夢。
「この辺りなんかは人間として振る舞うにも欠陥は抱えてるようなもの。
「ついでに重箱の隅をつつくようなことを言うけど、病院坂の二人だってここに入れたくなるし。
「いや、ぴーちゃんならわかるでしょ。
「迷路ちゃんは表情だけでコミュニケーションをとれるほどだそうだけど、声で会話ができたわけじゃなかったんだよね?
「黒猫ちゃんだって一対一ならともかく、大勢の前に出れば発作を起こすほどの人見知りだったんだし。
「日常生活を送ることすら困難だったのは否定できないでしょ?
「他にも疑問は尽きないけど、突き詰めたところで時間の無駄でしかないから次に移ろうか。
「三つ目はそもそも人間じゃない参加者。
「もどきとはいえ吸血鬼の阿良々木暦、忍法で意志を刺青に移した真庭狂犬、『赤き時の魔女』水倉りすか。
「ちょっと判断に困るけれど、幽霊の八九寺真宵、元人間の「魔法」使い繫場いたちことツナギもどちらかといえばこっちかな。
「この辺は明らかに異物でしょ。
「そもそも人間じゃないんだもの。
「『化け物を倒すのはいつだって人間』なんて言葉を実践しようとしたわけじゃあるまいし。
「それにしたって、最初から暴れてくれそうなのは真庭狂犬くらいじゃないかな。
「規模だってたかが知れてるし。
「実際、舞ちゃんに返り討ちされたくらいだもんね。
「僕様ちゃんとしてはこの点について特に考えたいところではあるんだけど、資料が足りないんだよなあ。
「まさかここまで見越してたのかなあ……うーん、仕方ないや。
「ごめんね舞ちゃん、しーちゃん起こしてもらってもいい?」
◆ ◆
「ひーとしきくーん。起きてくださいよー」
肩を揺すりながら伊織は思考する。
思い出すのは絶体絶命の状況での出会いだ。
双識と二人、死を待つことしかできなかったところに、突如として現れて。
そうするのが当たり前かのように言いたい放題戯言を並べ立てて。
相手からは「最悪だ」と捨て台詞を言われたけれど、それは零崎なんだから当然だ。
今の伊織が気にかけるのは、最初にだれにともなしに言っていたこと。
『対して――俺は全然優しくなんかない。優しさのかけらも持ち合わせちゃいない、それがこの俺だ』
『だが俺はその『優しくない』という、自身の『強さ』がどうしても許せない――孤独でもまるで平気であるという自身の『強さ』がどうしても許すことができない』
『優しくないってのはつまり、優しくされなくてもいいってことだからな。あらゆる他者を友人としても家族としても必要としないこの俺を、どうして人間だなどと言える?』
今にして思えばひどい言い草もあったものだが、実際のところはどうなのだろうか。
人識は強い、それは確かだろう(人類最強には負けたが、あれは規格外だ)。
だが、本人の言に則るならば、それはもう過去のことになってしまっているのではないか。
義手を手に入れるまでの一ヶ月間、身の回りの世話をほとんど全て人識にやってもらっていたが、あれだって投げ出そうと思えば投げ出せたはずだ。
双識への義理もあっただろうが、それを抜きにしても人識は優しかった、ように思う。
優しくされたいというわけではないだろうし、孤独に耐えられないというわけでもなかっただろうが、優しかった。
そうなってしまった原因は考えるまでもなく、伊織にあるだろう。
伊織のせいで人識が弱くなってしまうのはともかく、伊織が人識の弱点になってしまうのは嫌だった。
だからこそ、これまで殺人衝動が溜まっていたこともひた隠しにしていたのだが、それもさっきの件で露呈してしまった。
糸が切れたかのように眠っていたのも、先程までずっと緊迫していたことの裏返しだろう。
改めて、とんでもないことをさせてしまったと実感する。
自分のためにそこまでしてくれたということ自体は、嬉しくないと言えば嘘になるけれど。
「……ん、……寝てたのか」
「あ、おはようございます……じゃなくて、えーと、お休みのところすみませんが、玖渚さんが用があるみたいでして」
考えていることを悟られたくなくて、事務的な返答をしてしまう。
慌てて顔をそむけたが寝起きでぼんやりしていたためか、気づかれずに済んだようだ。
「ねえ、起きたばかりで悪いんだけど、しーちゃん」
「あん?」
加えて、玖渚が早速切り込んだのもあって、人識の意識は伊織から完全に移っている。
「斬刀、僕様ちゃんの前に突き刺してくれない? あ、倒れないように固定してもらえると助かるんだけど」
「どういう意味だよ、そりゃ」
「見てればわかるって」
「……まあ、いいけどよ」
言われた通り玖渚の前まで動いた人識は持っていた日本刀のうち、一振りを鞘から抜いて突き刺した。
その姿を見て、中々様になっているなと、そんなことをぼんやりと考える。
人識が生まれたときからずっと兄だった双識とは違い、伊織はたった数ヶ月前に妹になったばかりだ。
厳密に言えば、人識の方から妹と認めてもらったのだって一時間前かそこらだ。
無理をしてもらった引け目がある。
殺人衝動を隠してた負い目がある。
だけど、それでも。
(今の人識くんだって家族は私しかいないんです。やっとそういう関係になれたんですから、私も人識くんに頼られるようにならないと)
やはり伊織はマインドレンデルの妹として、マインドレンデルの弟である人識とは対等な関係でいたかった。
◆ ◆
「で、伊織ちゃん」
「はい、なんでしょう。人識くん」
「どうしてさっきのパートの締めで今こうなってるんだ?」
「こうとは?」
「二人乗りでバイク乗ってこのあと禁止エリアになるはずの図書館に向かってることを言ってるんだよ」
「成り行きでしょうかねえ」
「どんな成り行きだ」
「説明しますと、玖渚さんが人識くんの持っていた斬刀とやらを使って首輪の外殻だけを切断したはいいですが、
中身を見ても万全に解除ができるかどうか自信がないので、その間に少しでも情報収集をしようという算段です」
「いやそれだけじゃわかんなくね?」
「更に詳しく説明しますと、『人間じゃない参加者』である真庭狂犬の首輪の中身を見ても能力を制限させるようなものは見当たらなかったということ、
斬刀を使えば首輪の切断自体は可能ですが、生きた人間の場合だと首輪の爆破機能が起動したままなのでそれを止める方法が必要なこと、
詳細名簿やDVDが図書館にあった以上、他にも有用な資料が図書館にあるかもしれないということ。
移動手段として玖渚さんがバイクをお持ちでしたが、それを乗りこなせるのが人識くんしかいなかったこと、
人識くん一人では心配な点があるのと、水倉りすかに恨まれてるかもしれないので、リスク的に玖渚さんとは分断した方が良いだろうということ、
私が残るよりは様刻さんが残った方が機動力があるだろうということ、人識くんが戦場ヶ原さんとやらを殺したので羽川さんとはお会いにならない方がいいということ。
……あとは少しくらい兄妹水入らずで過ごしたらどうかという、様刻さんからの提案もありましたけど」
「最後は置いといて、納得はできなくはねえけどよ……やっぱりおかしくねえか?」
「どこがですか?」
「首輪の構造はあいつの言うことを鵜呑みにするしかないとしてもよ、図書館に手がかりがあるかもしれないってのはできすぎじゃねえの?」
「わからなくもないですけど、実際」
「名簿やらDVDがあった、だろ? それだって普通用意しとくか? この殺し合いの打破に直接繋がらないとしても、置く理由にはなんねーだろ」
「まあ、そうですよね……逆に理由があったとか?」
「そう考えるのが妥当だろうけどよ……狙いはなんだったんだろうな」
「狙いですか……正直さっぱりです」
「いや、そっちじゃなくて」
「そっちじゃないとは」
「俺たちをわざわざ行かせた理由だよ」
「それならさっき説明したじゃないですか」
「あるとは限らないし下手すりゃお陀仏になるのにか? 俺たちを遠ざけたかったのか、それとも……いや、言わなくてもいいか」
「どうしましたか?」
「なんでもねえよ」
「そうですかー。では」
「おい、何しやがる」
「少し風除けになってもらいますね。こんなときでもないとできなさそうですし、『お兄ちゃん』」
「ここぞとばかりにお前なあ……まあいいか」
「えへへー」
「……ったく」
【2日目/深夜/G-7】
【零崎人識@人間シリーズ】
[状態]健康、右頬に切り傷(処置済み)
[装備]斬刀・鈍@刀語、絶刀・鉋@刀語、携帯電話その1@現実、糸×2(ケブラー繊維、白銀製ワイヤー)@戯言シリーズ、ベスパ@戯言シリーズ
[道具]支給品一式×11(内一つの食糧である乾パンを少し消費、一つの食糧はカップラーメン一箱12個入り、名簿のみ5枚)
千刀・ツルギ×6@刀語、青酸カリ@現実、小柄な日本刀、S&W M29(6/6)@めだかボックス、
大型ハンマー@めだかボックス、グリフォン・ハードカスタム@戯言シリーズ、デスサイズ@戯言シリーズ、彫刻刀@物語シリーズ
携帯電話その2@現実、文房具、炸裂弾「灰かぶり(シンデレラ)」×5@めだかボックス、賊刀・鎧@刀語、お菓子多数
[思考]
基本:
戯言遣いと合流する。
0:一応図書館に向かってはやるけど……
1:蝙蝠は探し出して必ずぶっ殺す。
2:零崎を始める。とりあえず戯言遣いと合流するまでは。
3:黒神めだか? 会ったら過剰防衛したとでも言っときゃいいだろ。
4:ぐっちゃんって大将のことだよな? なんで役立たず呼ばわりとかされてんだ?
[備考]
※Bー6で発生した山火事を目撃しました
※携帯電話その1の電話帳には携帯電話その2、戯言遣い、ツナギ、無桐伊織が登録されています
※携帯電話その2の電話帳には携帯電話その1、戯言遣い、ツナギ、玖渚友が登録されています
※参加者が異なる時期から連れてこられたことに気付きました
※球磨川禊が気絶している間、鑢七実と何を話していたのかは後続の書き手にお任せします
※DVDの映像は、掲示板に載っているものだけ見ています
【無桐伊織@人間シリーズ】
[状態]両足骨折(添え木等の処置済み)
[装備]『自殺志願』@人間シリーズ、携帯電話@現実
[道具]支給品一式×2、お守り@物語シリーズ、将棋セット@世界シリーズ
[思考]
基本:零崎を開始する。
0:曲識、軋識を殺した相手は分かりました。殺します。
1:人識くんが無事で、本当によかったです。
2:羽川さんたちと合流できるなら心強いのですが。
3:玖渚さんと様刻さん、何事もないといいんですが。
5:羽川さんはちょっと厄介そうな相手ですね……
[備考]
※時系列では「ネコソギラジカル」からの参戦です。
※黒神めだかについて阿良々木暦を殺したらしい以外のことは知りません。
※宗像形と一通りの情報交換を済ませました。
※携帯電話のアドレス帳には箱庭学園、ネットカフェ、斜道郷壱郎研究施設、ランドセルランド、図書館の他に櫃内様刻、玖渚友、宗像形が登録されています。
※DVDの映像を全て、複数回確認しました。掲示板から水倉りすかの名前は把握しましたが真庭蝙蝠については把握できていません。
◆ ◆
「うん、一応は真っ直ぐ向かってくれてるみたいだね」
「よかったのかい?」
「もちろん、しーちゃんが気まぐれ起こしても構わないつもりで送り出したんだし。じゃ、続きを始めようか。同時再生っていくつが限界?」
「試してないからわからないけど…………3つが限界かな。あくまで再生するだけなら、だけど」
「じゃあ僕様ちゃんなら大丈夫。読み込みは全部終わってるんでしょ、再生して」
「了解。それで、その首輪の中身だけど新しい発見はできそうかな」
「正直微妙。僕様ちゃんの目論見通り外殻はただの金属。おそらく絶刀と同じかな。つまり加工手段があったってことだから逆もまた然り。
中身は起爆装置と位置情報を知らせる発信器以外はめぼしいのは見つからないね、それに結構デリケート。盗聴器もあってもよさそうだったんだけど。
生きてる首輪も外せなくはないけど、斬刀を使う以上少しでもずれたら頸動脈切れちゃうし、誤爆だって起こらないとは到底言えない。
とりあえず必要なのは起爆装置を外からでもオフにできる何か、ってところかな。そんな都合のいいものあるとは思わないけどさ。
4つとも構造に違いがなかったのは予想と外れたけど、刺青が本体だった真庭狂犬といえど、体がないとどうしようもないってのはあったし……
そういう意味じゃ、阿良々木暦の首輪が欲しかったなあ。全盛期なら頭を吹っ飛ばしてもすぐ再生したらしいし。
爆薬の代わりに聖水が詰まってたとしても下手すれば時間をかけて再生しちゃうかもしれないしなあ……そうなる可能性がほとんど無かったとはいえ。
水倉りすかの場合は『魔法封じ』に類する何かがあったとか、水倉りすか本人の魔法式に細工がされていたとかで殺すことは可能だろうけど。
不可解なのはキスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードが黒神めだかごときに殺されたってところかな。
形ちゃんが名簿と一緒に持ってきてくれたあのレポート、読んだ限りじゃ弱点が弱点にならないレベルでほんと規格外だし」
「そのための『制限』だったと思うけどな、僕は」
「あくまで『制限』されてたのは参加者でしょ? 忍野忍には首輪がついてなかったし、阿良々木暦が死んだ直後にハートアンダーブレードに戻ってたし。
殺したくらいじゃ死なない筆頭だよ。そもそも不死身なんだけどさ」
「……ごめん、僕にはさっぱりだ」
「ぶっちゃけ僕様ちゃんもそこについてはさっぱりだから気にしなくていいよ。ん、ぴーちゃん、次再生して」
「あ、うん」
「考えてみればおかしいところはあったんだよね。穴があるっていうか、攻略前提で作られているというか。
都城王土がわざわざ斬刀を手渡ししたのがその最たるところかな。こと殺し合いにおいて近距離であれほど便利なものは中々ないよ。
それでいてこうやって首輪の切断にも使えたわけだし、ボーナスアイテムだから渡す相手を選びたかったのかもしれないけど……だったら渡すなって話だよねえ。
似たようなのだと僕様ちゃんのスタート地点がパソコンに囲まれたネットカフェで、近くには舞ちゃんがいて。
お互い潤ちゃんという共通の知人がいて穏やかな関係は結びやすかっただろうし。舞ちゃんがいたからこそというのもあったけど近くにお誂え向きの研究所もあったし。
そこにやってきたのが真庭狂犬だったのもちょっと思うところはあるよね。僕様ちゃんの体を乗っ取ればその知識を使えた可能性もあるにはあるし。無理だろうけど。
ぐっちゃんのところに現れたのが真庭喰鮫で、
零崎双識のところには真庭蝙蝠。零崎と真庭で因縁を作らせたかったんじゃないかって考えちゃう。
穿った見方になるけれど、零崎曲識を殺した水倉りすかと彼女を駒にしてる供犠創貴が真庭蝙蝠と同盟を結んだのだって計算して配置したのかもしれない。
そうなると、しーちゃんだけそういうのがなかったことに疑念を抱くところではあるんだけど」
「そう言われると、僕も心当たりはないでもないんだよな。病院坂と彼女の親戚の迷路ちゃんと早くから合流できたってのはやっぱりできすぎだと思う。
電話を持ってたにもかかわらず、伊織さんだって人識と再会できたのはついさっきだったんだしさ」
「もしかするとしーちゃんはそっちに宛がわれたのかもね。裏切同盟を撃退した経験もあったし繰想術にも耐性はあっただろうし」
「それであの結果じゃ様は無いけどな。……はい、次の動画」
「ありがと。でも正真正銘ただの一般人が呪い名に関わって五体満足でいられてるんだからそう悲観する必要はないと思うよ?」
「割り切れるものじゃないさ。ほとんど影響ないとはいえまだかけられた繰想術は解けてないんだし」
「目を合わせただけなら、遠からず解けると思うけどね。即効性があるゆえに持続性を犠牲にしてるはずだから」
「そうは言ってもなあ」
「なら頼めば? すぐやってもらえるんじゃない」
「いや、やめとくよ。……そういえば聞きたかったんだけどさ」
「何?」
「どうして玖渚さんは『そう』したんだ? そんなの必要なさそうに思うんだけど」
「うーん、唯一踏み込んじゃったから、ってのはあるけど一番の理由にはならないかな。まあ、ぴーちゃんと同じ感じ。
私がいーちゃん以外のものになるなんて私が許さないけど、もしもそうしなかったせいでいーちゃんに何かあったらもっと許せない。
単純に、優先順位の問題で合理的だった、それだけの話だよ。それに、忘れたわけじゃないでしょ?
悪平等の前に
自由であれ。それが変わらないからこそ、しーちゃんと翼ちゃんを遭わないように僕様ちゃんはああいう計らいをしたんだもの。
僕様ちゃんは僕様ちゃん、ぴーちゃんはぴーちゃんなんだから」
「それはどうも。なあ、
悪平等」
「なんだい、
悪平等?」
「この後、どうするんだい?」
「そうだね、どうしようかなあ」
【2日目/深夜/G-6 薬局】
【玖渚友@戯言シリーズ】
[状態]右手甲に切り傷(処置済み)
[装備]携帯電話@現実、首輪探知機@不明
[道具]支給品一式、ハードディスク@不明、麻酔スプレー@戯言シリーズ、工具セット@現実、
首輪×4(浮義待秋、真庭狂犬、真庭鳳凰、否定姫・いずれも外殻切断済)、糸(ピアノ線)@戯言シリーズ、ランダム支給品(0〜2)
[思考]
基本:いーちゃんに害なす者は許さない。
0:映像を見ながら首輪の解析。
1:いーちゃんは大丈夫かなあ。
2:水倉りすかだけ生き残るなんてめんどくさいことになっちゃったなあ。
3:しーちゃんが翼ちゃんと遭っちゃうのはよした方がいいよね。
[備考]
※『ネコソギラジカル』上巻からの参戦です
※箱庭学園の生徒に関する情報は入手しましたが、バトルロワイアルについての情報はまだ捜索途中です
※めだかボックス、「十三組の十三人」編と「生徒会戦挙」編のことを凡そ理解しました
※言った情報、聞いた情報の真偽(少なくとも吸血鬼、重し蟹、囲い火蜂については聞きました)、及びそれをどこまで理解したかは後続の書き手さんにお任せします
※掲示板のIDはkJMK0dyjが管理用PC、MIZPL6Zmが玖渚の支給品の携帯です
※携帯のアドレス帳には櫃内様刻、宗像形、無桐伊織、戦場ヶ原ひたぎ、戯言遣い(戯言遣いのみメールアドレス含む)が登録されています
※ハードディスクを解析して以下の情報を入手しました
・めだかボックス『不知火不知』編についての大まかな知識
・不知火袴の正体、および不知火の名字の意味
・主催側が時系列を超越する技術を持っている事実
※主催側に兎吊木垓輔、そして不知火袴が影武者を勤めている『黒幕』が存在する懸念を強めました
※ハードディスクの空き部分に必要な情報を記録してあります。どんな情報を入手したのかは後続の書き手様方にお任せします
※
第一回放送までの死亡者DVDを見ました。内容は完全に記憶してあります
※参加者全員の詳細な情報を把握しています
※首輪に関する情報を一部ながら入手しました
※浮義待秋の首輪からおおよその構造を把握しました。また真庭蝙蝠たちの協力により真庭狂犬の首輪も入手しました
※櫃内様刻に零崎人識の電話番号以外に何を送信したのかは後続の書き手にお任せします
※本文中で提示された情報以外はメールしていません
※零崎人識からのメールにより以下の情報を入手しています
・戯言遣い、球磨川禊、黒神めだかたちの動向(球磨川禊の人間関係時点)
・戦場ヶ原ひたぎと宗像形の死亡および真庭蝙蝠の逃亡
※首輪探知機――円形のディスプレイに参加者の現在位置と名前、エリアの境界線が表示される。範囲は探知機を中心とする一エリア分。
※作中で語ったのとほぼ同じ内容のメールを戯言遣いに送信しました。他に何を送信したのかは後続の書き手にお任せします
※現在動画を確認中です。全て見終えるまでそんなに時間はかからないでしょう(次で消していただいて構いません)
※悪平等(ぼく)です
【櫃内様刻@世界シリーズ】
[状態]健康、『操想術』により視覚異常(詳しくは備考)
[装備]スマートフォン@現実
[道具]支給品一式×7(うち一つは食料と水なし、名簿のみ8枚)、影谷蛇之のダーツ×9@新本格魔法少女りすか、バトルロワイアル死亡者DVD(11~28)@不明
炎刀・銃(回転式3/6、自動式7/11)@刀語、デザートイーグル(6/8)@めだかボックス、懐中電灯×2、コンパス、時計、菓子類多数、
輪ゴム(箱一つ分)、真庭鳳凰の元右腕×1、ノートパソコン@現実、けん玉@人間シリーズ、日本酒@物語シリーズ、トランプ@めだかボックス、
鎌@めだかボックス、薙刀@人間シリーズ、シュシュ@物語シリーズ、アイアンステッキ@めだかボックス、蛮勇の刀@めだかボックス、拡声器(メガホン型)@現実、
誠刀・銓@刀語、日本刀@刀語、狼牙棒@めだかボックス、金槌@世界シリーズ、デザートイーグルの予備弾(40/40)、
「箱庭学園の鍵、風紀委員専用の手錠とその鍵、ノーマライズ・リキッド、チョウシのメガネ@オリジナル×13、小型なデジタルカメラ@不明、三徳包丁@現実、
中華なべ@現実、マンガ(複数)@不明、虫よけスプレー@不明、応急処置セット@不明、鍋のふた@現実、出刃包丁@現実、おみやげ(複数)@オリジナル、
食料(菓子パン、おにぎり、ジュース、お茶、etc.)@現実、『箱庭学園で見つけた貴重品諸々、骨董アパートと展望台で見つけた物』」
(「」内は現地調達品です。『』の内容は後の書き手様方にお任せします)
[思考]
基本:死んだ二人のためにもこの殺し合いに抗う(瓦解寸前)
1:玖渚さんに付き合う。
2:
時宮時刻を殺したのが誰かわかったが、さしたる感情はない。
3:僕が伊織さんと共にいる理由は……?
4:マシンガン……どこかで見たような。
[備考]
※「ぼくときみの壊れた世界」からの参戦です。
※『操想術』により興奮などすると他人が時宮時刻に見えます。
※スマートフォンのアドレス帳には玖渚友、宗像形が登録されています。また、登録はしてありませんが玖渚友からのメールに零崎人識の電話番号とアドレスがあります。
※阿良々木火憐との会話については、以降の書き手さんにお任せします。
※支給品の食料の一つは乾パン×5、バームクーヘン×3、メロンパン×3です。
※DVDの映像は全て確認しています。
※スマートフォンに冒頭の一部を除いた放送が録音してあります(カットされた範囲は以降の書き手さんにお任せします)。
※マシンガンについて羽川の発言から引っかかりを覚えてますが、様刻とは無関係だったのもあって印象が薄くまだブラック羽川と一致してません。
※悪平等(ぼく)です
[共通備考・首輪について]
- 耐熱、耐水、耐衝撃などの防護機能が施されており、外からの刺激で故障、爆発することはまずない
- 首輪から発信される信号によって主催はそれぞれの現在位置を知ることができる。禁止エリアに侵入した場合、30秒の警告ののち爆発する
- 主催に反抗した場合、首輪は手動で爆破される(どんな行動が反抗と見なされるかは不明)
- 一定の手順を踏めば解体することは可能。ただし生存している者が首輪をはずそうとした場合、自動的に爆発する
- 装着している者が死亡した場合、爆破の機能は失われる。ただし信号の発信・受信機能は失われない
- 二重構造で外殻には特別な仕掛けはない。中身は爆薬・起爆装置・発信器のみで(今のところ)能力を制限するようなものは見当たらない
支給品紹介
【ベスパ@戯言シリーズ】
想影真心に支給。
戯言遣いが葵井巫女子から譲り受けた白のヴィンテージモデル。
ラッタッタと呼んではいけない。
最終更新:2016年03月11日 01:40