虚数にしてやるぜ!!! ◆xzYb/YHTdI


「『不解』。なぜわたしは生きているのだろうな」

不忍のお面を被る男、左右田右衛門左衛門は確かに鑢七花によって、殺されたのである。
その彼が今ここで立っているのは、本来異常なことである。

「ふむ、まあ考えていても仕方がないな。――――――――では姫さまのために動くとするか」

そう言うと、彼は歩き始めた。
仮面の下には、殺意に満ちた目がぎらついていた。

 ◇

「得物は、刀…普通の刀だな。しかし
あの無力そうな少年を殺すには、十分過ぎる得物だな。得物も持っていないようだしな」

そう言うと、片方の手に握っていた、脇差を静かにディパックに収め、右手には、本差の刀を握られる。
脇差の刀をしまったのは、特にこれと言って、理由は無い。
―――――だが、『いざという時』のために残しておくのも悪くない。そう言う考えがあったりなかったり。
それは、『不解』。
さて、無力そうな少年、――――つまるところ、球磨川禊は左右田右衛門左衛門に気づいていなかった。
そして、それをいいことに、それを狙い、左右田右衛門左衛門は、球磨川を気配を消してこっそりと、襲った。

…はずだった。のだが、球磨川は死んでいなかった。そしておかしなことに
彼の手にはまずそもそも武器と呼べるような品物なんてどこにも無かった。簡単に言うのであれば、何も持っていなかった。

「――――――――――ッ!!」
『全く、酷い事するなあ。後ろからこっそりと襲うなんて。
そんなの、三流の悪役のすることだぜ。やってること古いって』

右手で自身の頭をポリポリと掻きながら言う球磨川。
彼の生きていた時代ではまだまだ現役のやり方。
しかし残念ながら、それは今回は関係がない。
それ以上の問題に、左右田は思考する。――――――――考えたところで理屈を求めるのは不可能なのだけど。
左右田はいきなりしっかり気配を消して襲ったはずだが、なぜか見破られ、
左右田はいきなり刀を消した。これもまたありえないことだった。

「『不得禁』。正直驚きが隠せないのだがな。少年」
『ははっ、そうだね。でもあなたほどじゃないよ。あんなに上手く気配を消せるなんて。
そんなことできたら、僕もわざわざ「大嘘憑き(オールフィクション)」を使わず消したのになあ。
まあいいんだけどね。それで何か教えてほしい?今なら、命と引き換えに教えてあげるよ☆』
「――――――――するとでも思ったか」
『はははっ!冗談だって。本気にしないでよ。―――――でも、まぁいいよ、今僕は機嫌が良いからね。初めて誰かに勝てそうな予感がしてならないんだ』
「――――――よく分からないが………ではなぜわたしに気づけた」
『いや。別に偶然だよ偶然。ちょっとのどかわいたな―。と思って
水を出そうと振り向いたらあなたがいただけだよ。』
「とてもそうとは見えないがな。では何で刀は消えたんだ」
『『不笑』笑えないねえ。そりゃ聞くのは許可したけどさぁ……少しは考えようよ。
考えたところで「異常」のあなたには分からないだろうけどね』
『だから教えてあげる。これは僕の過負荷「大嘘憑き」さ。
全てを現実を虚構にする過負荷だよ。分かった?』

全ての物事を、無かったことにする。
球磨川が万全の状態でさえあれば、
例え、それが致命傷であろうと。
例え、それが視覚であろうと。
例え、それが気配であろうと。
例え、それが『死』であったとしてもだ。

「反則だな」
『まあ。しょせん欠点だからね。通常運行はできないよ』
「『不解』。ではその欠点とやらで、わたしを殺せばいいではないか」
『うんうん。それなんだけどさあ、聞いてよ。
何でか知らないけど、人が消せないんだよね。この首輪も。全くありえないよ』
「ほう。ではまだわたしは貴様に勝てる要素はあるということだな」
『そうだね。人を消せない今。僕に勝ち目なんかないよね。何故か勝てそうな予感がプンプンするんだけど』
「ではおとなしく殺されるのかな」
『いや。勝負は最後まで諦めない。これは僕の座右の銘だよ』
「まあどちらでもいいがな」
『そうだよ。男の真剣勝負に理由はいらないよ』
「では、貴様は何と言って死ぬのかな?」
『いいね。決め台詞か。カッコいいね。キャラが立ってるよ。
僕もそうゆーの欲しいな。そうだなあ…。よしこういうのはどうかな?』

そして少し思考する仕草を見せて、次の瞬間には、堂々と、その『台詞』を発していた。

『いいぜ。かっかてきな。そのかわりテメェの全てを、虚数にしてやるぜ!!!』

『とかは?』

案外真面目で、真剣な顔で聞く球磨川。
ださいということはことは言うまでもない。

「『不悪』。悪いがわたしはそういったものに興味はないからな」
『ふぅん。まあいいや。かっかてこいよ。エリート皆殺しを変えるつもりはないからね』
「『不解』。わたしには貴様の思考がよくわからないな」
『分かってもらわなくて結構だよ。めだかちゃんじゃないんだから』
「誰のことだかは存じないが、そろそろ本気でいかしてもらうぞ」

その言葉を境に、場の空気は変わった。
シリアスな空気に移り変わった。
左右田は、崩れかけていた構えの姿勢を整えなおす。

『そうだね。正々堂々とね』

球磨川も、それに呼応するかのように構えの様な姿勢を保つ。
その両手には突如出現した、大螺子二本。

「貴様が言えたことか。まあいい。どうせ貴様はここで死ぬのだからな」
『怖いこというなあ。週刊少年ジャンプだったら規制させられちゃうよ』
「では、左右田右衛門左衛門――――参る」
『ん?ああ。じゃあ球磨川禊、いくよ』

二人の戦士は、動き出した。――――――――――そう思った時期もありました。

 ◇

勝敗は一瞬でついた。これを勝負といっていいのかいささか疑問が残るが、
では、これがその一部始終だ。

先手を切ったのは左右田右衛門左衛門だった。

「相生拳法―――背弄拳」

これは常に相手の背後をとる技であり遠い昔に存在が消えた技である。
本来相手に背後をとられるというのは勝負では、ほぼ負けも決定したも同然だ。
しかし、球磨川は死んでいない。
別に左右田右衛門左衛門がわざと殺していない訳ではない。
というよりはまずなぜか左右田右衛門左衛門は球磨川の背後にいなかった。
おかしな事に左右田右衛門左衛門は球磨川の下にいた。
これは地面に伏せているわけではない。ではなにか。それは
球磨川の前にポッカリとあいた穴に落ちていた。
簡単に言うと超即興落とし穴に左右田右衛門左衛門は落ちた。
この勝負、球磨川禊が勝利を収めたのである。


――――――いや、そうではない。


そもそも、彼、球磨川禊という人間は、『勝てない人間』なのだから。

『敵前逃亡……やっぱり僕は、誰にも勝てないね』

特に感情も、こめずに、特に感慨もなく、ただ『台詞』を発する。
顔には笑顔。
それ以外、何もない

『それにしても――――――綺麗にきまったね。ジャンプのギャグ漫画みたいだったよ。
いいもん見せてもらったね。それで…左右田ちゃんだっけ。
一応3メートルくらいの高さにはしておいたけど、まだ生きているなら、まあ頑張れ』

そう言うと球磨川は去って行った。

『それじゃあ、また明日とか』

そう言い残して。


結論から言うと、左右田右衛門左衛門は生きていた。
腐っても元忍者である。高所から落ちるのは何のことはない。

「『不笑』。笑えないな。…どうしたものか。………とりあえず登るか」

そう言って1人悲しく登るのであった。



【1日目/深夜/C-1】
【球磨川禊@めだかボックス】
[状態]『健康だよ』
[装備]『大螺子が2個あるね。』
[道具]『支給品一式とランダム支給品が3個あるよ』
[思考]
『基本は疑似13組を作って理事長を抹殺しよう♪』
『1番はやっぱメンバー集めだよね』
[備考]
※『大嘘憑き』に規制があります。
存在、能力をなかった事には出来ない。
自分の生命にかかわる『大嘘憑き』:残り2回。
他人の生命にかかわる『大嘘憑き』:残り3回。
物質全般を消すための『大嘘憑き』はこれ以降の書き手さんにお任せします。

【左右田右衛門左衛門@刀語】
[状態]健康
[装備]「不忍」のお面@刀語
[道具]支給品一式、ランダム支給品(0~2)、脇差@不明
[思考]
基本:参加者は命が無い限り殺すが、七花など勝てない相手とは戦わない
 1:とりあえず出よう
 2:いたら姫さまを探そう。
[備考]
※死亡後からの参加です。

「許せねえな」 時系列順 虚刀流、道を決める
「許せねえな」 投下順 虚刀流、道を決める
START 左右田右衛門左衛門 今は不忍と未だ不完全
球磨川禊のパーフェクトマイナス教室 球磨川禊 +と-、二人の考え方

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最終更新:2012年10月02日 08:10