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GAME OVER ~Thank you for playing!!~ ◆oub/vvrBRg




「さーてIマイさん、そろそろ我々もお別れの時間のようです」
「えっ、なんでなんで?」
「このゲームが終わるごとに、こうやってお別れの挨拶することになってるんですよ」
「えーっ! まだツッコミどころいっぱいあるのにぃ!」
「はいはい、文句はロケテ用紙に書いてくださいね。
 ということで今回のセットは終了、我々も撤退します。
 でも、次回起動時にまた会えると思うんで、そんな短いお別れじゃないと思いますよ?
 そんな訳でアークシステムワークスの新作「バトル・ロワイアル(仮)」のロケーションテスト、お楽しみいただけたでしょうか?
 それではまたお会いしましょう、司会はSギタトモカズと」
「Iマイアサミと」
「キョ……KンドウKナコがお送りいたしました!」
「「「ばいば~い!」」」



「ふう、これで放映分は終わりましたね」
「もうちょっと喋りたかったなー、まあすぐ出番が来るけど」
「くぅ~っ!! かっこよく喋れるぞぉ~!!」
「じゃ、行きますか」



「「「本当の仕事に」」」



時間停止を解除し、ワープを用いたことでデバッグモードは使えなくなった。
問題はない、むしろこの方が好都合。
アイテムを使ったデバッグモードにわざわざ入ったのは、彼女以外がデバッグモードに入らないようにするためでもある。
そして自分は、別にデバッグしようと思えばデバッグが可能だからだ。
領域「アンバー」はあり得ないアドレスにアクセスしゲームを変化させる何が起こるかわからない魔の領域だ。
何が起こるかわからないが、何でも起こすことができる。
失敗するという気持ちは、これっぽちもない。
このメモリ領域を知っている限り、彼女に不可能なことはない。
アドレスジャンプに次ぐアドレスジャンプ。
デバッグモードではなく、メモリを直接書き換えて行うデバッグ作業と呼ぶ方が近い。
ほむらは、淡々とその言葉をつぶやく。
「コード:空間圧縮」
その瞬間、空気がピンと張りつめ、ほむらの体が吸い込まれるように直進する。
道中の空間を圧縮することで、目的地へと瞬間的に迫っていく。
辿り着いたのは、目指していたD-1の港。
目の前にあるのは、見るからにハデハデしい装飾の豪華客船が泊まっていた。
終わりだ、あの船に乗ってこの会場を抜け出せば全てが終わる。
生存者が何人いようと構うことはない、もう全て終わるのだから。
振り返る必要も、未来を見る必要もない。
時空転移を用い、豪華客船の操縦室へと瞬時に乗り込んでいく。
「……さよなら」
そして、終わりを望む少女は船を動かし始め。
全てを壊す目を持ちながら、未来を見つめていた。
そう、終わり。これで終わりなのだ。
向かう先に映る、全てが真っ白に染まっていく光を見つめたまま。

彼女は、笑った。



ぱち、ぱち、ぱちぱちぱち。
聞こえたのは、拍手の音だ。
それも一人ではない、複数人の拍手の音が響いている。
ここが終わりの空間か、それとも最後の妨害に来たのか?
領域「アンバー」を駆使しながら周りの状況を解析していく彼女の元に、三人分の人影が現れる。
「一週目攻略、おめでとうございます」
金髪セミロングヘアの、少し短すぎるミニスカートの少女はそう言った。
「攻略……?」
「おいおい、まだ理解してねえのかよ」
疑問を浮かべるほむらに対し、尖った銀髪と赤いジャケットが特徴的のオッドアイの男が笑う。
「ここは、ゲーム「バトル・ロワイアル」の世界です。
 それはとっくに理解してるでしょ? <救世主>さん」
「そんなこと言われなくても、分かってるわ」
赤い一つ目が描かれた黒い帽子に黒い法衣の少女が、薄紫のマントと赤いロングヘアを靡かせながらほむらの顔を覗き込む。
露骨に嫌そうな表情をするほむらの顔を、少女は挑発するように下から見上げる。
「先に言っておくと、ゲーム決着の瞬間を見計らって本社にアクセスしようがこのゲームのマスターデータは死にませんよ?
 本社サーバは本社サーバでも、この"ゲームの為"のサーバーであって、開発部のサーバーではないんです。
 というか、開発データとリプレイデータやデータログを混同させる会社なんて末期の会社でもやらないわよ?」
「はえ? 呼びました?」
「コンドムは引っ込んでろ」
「うぅ~……」
「もう、いくら筆者が"ツバキのほうが真面目トークに向いてるだろ"って事で構ってくれないからって、遊ばないでよ!
 ……ああ、ごめんごめん。それと、この基板は次のプレイの為に再起動されます。
 仮にあなたがリプレイサーバに侵入できたとしても、シャットダウンまでの間に開発データの置かれたサーバまで侵入できる?」
ボケツッコミを交えながら、赤髪の少女はほむらに語り続ける。
淡々と組み立てられていく正論に、ほむらは口を閉ざし続ける。

「そして、もう一つ。
 残念ながら、対主催エンドを迎えようが優勝エンドを迎えようが、最後に生き残った人は次の週に巻き込まれるんです。
 そうやって一つの基板の中で繰り返し繰り返し事が進む、そういう仕組みになってるんです。
 あなたという存在のデータを保存し、次週で読み込む。こう言ってしまえば簡単ね」
「……え?」
次に告げられた情報に、ほむらは表情を一瞬だけ崩す。
「タカマガハラって、知ってる?」
ふふっ、と笑ってから少女はそう言い、言葉を続けていく。
「何回も何回も同じ歴史の空間を繰り返す、我々ブレイブルー世界の最初の舞台となっている場所よ。
 この「バトル・ロワイアル(仮)」も、そのタカマガハラのように何回も何回も、同じ基板の中で同じ歴史を繰り返すの」
同じ時代をループするということは、ほむら自身にも馴染みがある。
鹿目まどかを救うために何度も同じ歴史を遡っているのだから。
だが、それはあくまでほむら自身の力によるもの。
このゲーム自体が歴史を繰り返す、というのはどういうことなのか?
「そろそろ分かったかしら?
 あなたが"鹿目まどか"の死に立ち会うのも。
 あなたが"アンバーと出会う"ことも。
 あなたが"ゲームキャラだと認識"することも。
 あなたが"覚醒"と"合体"を行うことも。
 あなたが"ゲームを破壊"しようとすることも。
 あなたが"デバッグ"であちらこちらに干渉するのも。
 あなたが経験したことは次の週でも繰り返され、そして失敗に繋がる。
 何週しようと何週しようと、これからあなたのたどる道は変わらないわ」
「黙れッ!!」
「あらあら、怒っちゃって。かわいいのね」
大人の男でも出せない覇気を帯びた怒りの表情と共に、ほむらは赤髪の少女を睨む。
煽る少女の言葉が、自分がやってきた輪廻の世界をもひっくるめて"無駄"だと言っている様で。
未来は覆らないと言われているようで、柄にもなく怒りを露にしてしまった。
そんなほむらを冷やかな目で見つめ、ナイフを団扇のようにパタパタと扇ぎ、少女は言葉を続ける。

「まあ、所詮あなたはプログラミングされたCPUキャラクターなのよ。
 デバッグの力を手に入れようが、何をしようが"作られたもの"であることは抜け出せないわ」
そう、ここは人の手によって創られたゲームである。
どれだけ超常的な力を手に入れようと、その正体はプログラム。
あらかじめ植えつけられたプログラムに抗うことなど、出来はしないのだ。
繰り返しの世界を漂うという烙印を押されることに、抗うことはできない。
「あ、でも。向こうのスタッフに怒られたから、完全に同じ歴史が繰り返されるってわけじゃないんだけどね。
 人間のプレイヤーが遊ぶ以上、そこだけは微妙に変わってくるわ。
 でも細かいところは違えど、同じ結果が来ることには変わりないのよ」
ふふっと悪戯っぽく笑ってみせる少女が、くるりとほむらから踵を返し、どこかへと歩き出していく。
「……あなたの"保存"が終わったわ。この基板はこれから再起動に入る。
 もしあなたがそれでも抗うというなら、繰り返しの歴史の中でももがき続けると言うなら。
 せいぜい頑張ることね、救世主さん」
その言葉を残し、彼女と残りの二人はどこかへ"消えて"しまった。
どこだか分からない場所に一人残されたほむらは、誰も聞いていないというのに口を開く。

「言われなくても、やってやるわ」

言葉と共に現れたのは"ALL MISSION CLEAR"の赤文字。
この「バトル・ロワイアル(仮)」が、攻略されたことを示す文字列だ。
ほむらはその文字を見てから、言葉をつぶやいていく。
チャンスは一度だけ、そして時間はほんの少ししかない。
自分の口から発せられているとは思えない速度で言葉を呟き。
自分の脳で処理しているとは考えられないことを思考し。
自分自身の意思で、自分の体を動かしていく。

こんなことが出来るのも、プログラムならではということなのだろうか。

ふとそんなことを考えて、すぐに頭から振り払う。

やがて体が一つの光となり、どこかへと吸い込まれていった。

潜る、潜る潜る。
進む、進む進む。
探す、探す探す。

思い出を、記憶を、人を、踏みにじられないように。

この殺し合いを破壊するため、この世界を破壊するため。

彼女は、光となって電子の海を彷徨う。

「……見つけた!」

そして、奇跡的に目当ての物を見つける。

この殺し合いの根幹、大本を象るソースプログラム達だ。

これらを破壊すれば、あのゲームは二度と起動することはない。

ついでに、二度とこんなゲームが作られないように細工もしてやろう。

まるで数十年のときを経たかのような熟練の技で、ほむらはそのソースプログラムたちを破壊しようと手を伸ばしていく――――



バチン。



所詮、彼女は1プログラムにしか過ぎない。
電源が切られてしまえば、プログラムは走り続けることが出来ない。
タイム・オーバー、時間切れ。間に合わなかったことを認識するまでもなく、彼女の意識は闇に落ちた。

「これより、皆さんには最後の一人まで殺し合いをしていただきます」
気がつけば、聞いたことのある声が耳に届いた。
どよめく白い空間、横たわる人々、そして謎の声。
嫌でも、理解してしまう。
一筋の涙とともに、彼女は声を上げて笑う。
怪訝な表情で彼女を見るものが増えても、彼女は笑うことをやめない。
そんな彼女を気にすることなく、声は続いていく。
やがて10人の生贄が呼ばれ、首が爆ぜる。
桃髪になった今も、彼女が好きだった人の首も飛ぶ。
変わらない、変わらない、変わらない。
何も変わりはしないのだ。




歴史は繰り返される。

暁美ほむらという一人の人間――失礼、プログラムが再び殺し合い、ゲームを彷徨う。

人々に出会う、様々な力を手にする。

殺し合いの終盤、手にしたデバッグ能力で殺し合いを覆していく。

毎度提示される終了条件、それを難なくこなしていく。

再び表示される"ALL MISSION CLEAR"の文字。

ほむらは破壊の詩を歌う、終末の唄を詠う。

でも唄は届かない、光は届かない、手は届かない。

落ちる意識、闇へと招かれる体。

もう一度始まる殺し合い、記憶と力を持ち越して開かれる同じ歴史。

これはゲームだ、そしてロケテストだ。

新たなプレイヤーを交え、CPUと共に殺し合いを繰り広げていく。

それを何度も繰り返す、繰り返す、繰り返す。

何週も、何週も、何週も、何週も、何週も、何週も、何週も、何週も、何週も。

そして毎度のように生かされ、後一歩の喜びを掴まされながらも振出へ戻される。

何週も、何週も、何週も、何週も、何週も、何週も、何週も、何週も、何週も。

いつしか、彼女は。

ずっと笑うようになっていた。

何週も繰り返す中、次々に新たな力を手に入れていく暁美ほむら。
その外見は変わりに変わることを繰り返し、元の姿へと戻っていく。
壊れた力と一週回って元に戻った体を持った彼女は、何週目か数えるのもバカらしくなった殺し合いを笑いながら駆ける。
その外見、能力、行動も――――所詮プログラムの一片なのだが。
そして、XXX週目の世界、当たり前のように彼女は脱出の糸口を掴む。
分かっている、分かっている、その先がどうなるかは分かっているのだ。
でも、希望がそこにある限り、このゲームが破壊できるかもしれない希望がある限り。
彼女はそれにすがることしか出来ない。
「今度こそ、今度こそは上手く行くわ」
壊れた笑顔と共に、新たな脱出条件をクリアしていく。
いつしか当たり前になり名前すら忘れたデバッグ能力と、手に入れた数々の力で困難をクリアしていく。
人を殺すことも慣れた、だって相手はプログラムなのだから。
人を騙すことも慣れた、だって相手はプログラムなのだから。
人を犯すことも慣れた、だって相手はプログラムなのだから。
何も出来ないことはない、ゲームの破壊への希望のためなら何だって出来る。
だが、ほむらは分かっている。
また、一歩届かずに終わることを。
希望だけを見せられて、絶望するところを愉しまれている事を。
それでも、たった一粒の希望だったとしても、彼女はそれにすがるしか出来ない。
ありとあらゆる思い出、記憶、人を踏みにじるこのプログラムを破壊できる希望に。




   一つ、ここで伝えたいことがある。

「あれ……?」

   タカマガハラの輪廻は、繰り返すたびに小さな歪みを生み出す。

「そういえば、私」

   やがてそれは裂け目となり、輪廻を崩壊させていく。

「なんでデバッグできるんだっけ?」

   それが「ブレイブルー カラミティ・トリガー」で起こった出来事だ。

「そう、この力を与えてくれたのは……私に全てを気づかせてくれたのは……」

   自社製品の原作再現、あたりまえのことだ。

「助けて、助けて、助けてよ」

   XXX週目の世界、歪みが裂け目へと変わる。

「"アンバー"!!」

   誰も知らない未来へと、時計の針が進む。



一瞬で、あたりの光景が変わる。
幾多もの周回の中でも、色濃く記憶に残っている場所。
一番最初に希望を掴み、そして輪廻する絶望を手にした場所。

D-1、港。

一週目の世界に、彼女は飛び込んでいた。

どうやって?
それは、領域「アンバー」の仕業だ。
アドレスジャンプ及びアドレス参照を繰り返した先に飛ばされた参照先。
そこは、リプレイデータを格納しているフラッシュメモリだった。
何もリプレイデータはネットワーク通信によって送信される分だけではない。
ローカル稼動を選択する店舗用に、フラッシュメモリへの書き出しにも対応している。
何週も何週も繰り返したリプレイデータを格納したフラッシュメモリから、一週目のデータを呼び出し、まずは「アンバー」の本来の力で時を巻き戻す。
そして、リプレイデータに沿って動くようにデバッグを行い、同じ状況を作り上げる。
これが、彼女が一週目の世界にたどり着いた理由だ。

しかし、一つだけリプレイ通りにならなかったことがある。
いや、暁美ほむらが無意識のうちに書き換えた未来がある。
それは、暁美ほむらという人物がD-1に辿り着いた時。
存在し得ない人間――――プログラムが三体、そこにいたからだ。

「な、なんだァ!?」
「あれっ、こんなところにいたっけ?」
「これは……」

フルフェイスメットの男、赤いジャケットの女、赤髪の異世界の男。
その三人を視界に捉えたほむらは、反射的に叫んでいた。

「助けて!!」

救いの言葉と共に、時が凍りつく。



全てが止まった世界の中で、動くことを許された四つの存在。
その中で一人、暁美ほむらは残りの存在へ向けて全てを語る。
これがゲームであること、自分たちが作られた存在であること。
自分が何週もした世界で受け取った全て、感じたものを露に語っていく。
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくれ! 頭で整理できねぇ!」
赤髪の青年、リッドはほむらの話を聞くや否や頭を抱えてうずくまってしまった。
無理もない、突然自分が"作られた存在"だと明かされれば当然の反応だ。
むしろ、平然と聞いていられる二人の方が異常だというものだ。
「驚いたな……意思を持つだけでなく自我を持ち、自分の存在に気づくCPUか、つくづくこのゲームは面白いな」
赤いヘルメットの男、ジャギ――――否、QMZは正直に声を上げる。
プレイしていたゲームのキャラクターから突然助けを求められたと思ったら、次はそのキャラクターに"ゲームを壊してほしい"と頼まれたのだ。
ゲーム内のキャラクターとは違う驚きが、現実の人間には生まれている。
「で、いつまでシラを切ってるつもりなんだい?」
「え?」
そこで、赤いヘルメットの男はジャケットの女へと突然語り掛けていく。
「MELTY BLOOD全一、闘劇でも活躍を見せる現役プレイヤー、GO1さんだろう?」
「あれ? いつからバレてた?」
子供っぽく頭をかく女、両儀式――――もといGO1はわざとらしくおどけて見せる。
それに特に反応するでもなく、QMZは話を続ける。
「設営手伝ってた覇者から聞いてたんだよ、実は極秘でネットワークテストに参加してるプレイヤーがいるって。
 誰なんだよって聞いたらポロっと教えてくれてさ、極秘事項だったらしいけどな……。
 それにもしCPUならそこの彼みたいに狼狽えるのが普通だ。
 そうじゃないっていう事は、こっち側の人間、って事だろう?
 全部繋がれば、簡単な話さ」
手にした情報を線としてつなげた話をするQMZに、GO1は肩をすくめて答える。

「あははー、まあバレちゃ仕方ないか。
 確かに僕は大阪からネットワークを介してこのゲームにプレイヤーとしてアクセスしてる。
 今日の朝に急に電話来たから、設営班とか戸惑っててね。
 最初は無線でプレイしてたからラグいの切断されるのなんのなんのって。
 AIと僕とに切り替わってたのは、そこらへんが原因なんだ。まあAIも僕の監修だけど……。
 あ、今は漸く有線に切り替わったから大丈夫だよ!」
式としてはあり得ない満面の笑みを見せながら、GO1は語る。
ともあれ、現実側の人間が二人この場所にいる。
「なるほど、闘劇壇上プレイヤーが二人か……」
そして、その生き残ったプレイヤーは日本でも名の知れた
プレイヤー達だ。
QMZは北斗で戦術を組み立てるように、冷静に状況を判断して一つの結論を出す。
「君は、このゲームを破壊したいんだな」
「う、うん」
「そうか……なら一つ方法があるかもしれない」
そして破壊を望むほむらに、QMZは彼女の知らなかった新たなる可能性を語り掛けていく。
数カ所で目を見開きながら、ほむらは話を聞いていく。
食いつくように次へ次へと、隣で悩んでいるリッドをよそに話を聞き出していく。

あり得ないと思っていた、もう一つの希望が顔を出し始める。

「限界は五分……持って十五分、それでも出来なかった時にどうなるかは……君次第だ」
可能性の全てを語り終えてから、明確なタイムリミットが提示される。
「どうして?」
そのときだ、ほむらが今にも泣き出しそうな声でQMZに問いかけたのは。
「どうして、そこまでしてくれるの?
 あなたたちはプログラムではない、"現実"側の人間だって言うのに。
 どうしてゲームを壊そうとしている私に力を貸してくれるの?」
QMZ達はこのゲームをプレイする、現実側の人間だ。
この"ゲーム"を楽しむプレイヤーという立場でありながら、このゲームを破壊することに手を貸してくれる。
このゲームが遊べなくなるというのに、なぜ彼らは手を貸してくれるのか?
理解できないといった顔をしているほむらの頭に、QMZは優しく手を乗せて撫でる。

「ゲームなんだったら、面白いほうがいい。
 ましてやその"ゲーム"が"ゲーム"を物理的に壊したいって言ってるんだから、これ以上に面白そうなことはないだろう?
 言ってしまえば君の存在はバグみたいなものさ、でもゲームはバグやらなんやらが多いほうが面白い。
 バグも突き詰まっていけばシステムとして昇華されたりする。
 そしてそれは、遊ぶ人間次第だっていうのは僕はよく知ってるよ」
仮面越しの表情が笑っているのかどうかはわからないが、ほむらにはQMZが笑っているように見えた。
QMZはそのままほむらの頭を撫で続け、今度は目線をほむらの高さにまで落として語りかけていく。
「それに……新作が無くなっても、僕たちにはまだまだ遊び続けることができる格闘ゲームがあるからね。
 一つのゲームに何年も何十年も熱中できるくらい、格闘ゲーマーってのはバカの集まりなんだ」
別に新作ゲームが拳獣よろしく発売中止になって遊べなくなったとしても、がっかりはするけれどそこまで凹むことではない。
新作の発売中止なんて、今に始まったことではないのだ。
そして何より、彼らにはまだまだ遊べるゲームがある。
格闘ゲームのやりこみに終点はなく、さらなる次のステップと目標へと向かい続けられる。
対人というシステムである限り、ここは変わらない。
そのゲームを遊び続ける人がいる限り、上を目指して遊び続けられるのだ。
「さてGO1さん、この作戦には……」
「だいじょぶだいじょぶ! ロケテが盛り上がるんなら越したことはないでしょ!
 サブキャラだけど、やったるやん!」
最後に、QMZは協力を仰ぐためにGO1へと語り掛ける。
返事は即答、QMZが全てを言い切る前に返していく。
そのGO1の返事を受け止めた証に力強く頷き、再び"万能の救世主"へと語り掛けていく。
「僕たちをできるだけ目立つ場所に転移させてくれ。
 そうだな、できるだけだだっ広いところがいい。
 あと4:3画面サイズ準拠の画面端もよろしく頼むよ」
少し細かい注文を付けながら、QMZはほむらへと頼み込んでいく。
ほむらは頷き、すぐにデバッグを開始していく。
自身とリッド・ハーシェルの生存状況の偽装、QMZとGO1の座標の指定と戦闘空間の生成、そして副産物の暗黒空間を自分達の座標に当てはめていく。

全ての演算が終わったとき、QMZとGO1の体が白みを帯びていく。
この凍り付いた時から、抜け出していくのだ。
「ほむら君」
最後に、QMZはほむらに語りかけていく。
「頑張れ。努力は、必ず実を結ぶ」
ひたむきに頑張る少女の姿に、かつてジャギでひたすらがんばり続けた自身の姿を重ねて。
グーサインと共に精一杯のエールを送りながら、掻き消えていった。



動き出した数少ない時間の中で、望みを達成するためにほむらは自身の体をフル稼働させて演算とデバッグしていく。
「ねえ、リッド=ハーシェル」
わずかに空いた思考能力と処理能力で、未だに頭を抱えて悩み続けるリッドへ語りかける。
「あなたは、"い"きたい?」
いくつもの意味を含んだ一言を共に。
「元の世界には帰れず、永遠にどことも言えないどこかを彷徨うことになっても」
残酷な未来が待っているという絶望を突きつけながら。
「"い"きたい?」
彼女は、問いかけていく。



「さて、たどり着きましたね」
ほむらのデバッグ通りに、疑似格闘ゲーム空間にとばされた二人。
互いに向き合いながら、キャラにない笑顔を浮かべる。
「じゃあ、怪しまれないようにさっさとやりますか」
頭に描いた一つのアイテムを取り出し、口元へと当てていく。
ボリュームはできるだけ大きく、このゲームをみている全ての人間に聞こえるように。
そして、スイッチを放った。
「えー、みなさん――――」

~アークシステムワークス 本社~

「おい、見ろよあれ!」
「えっ、式の中の人って極秘事項じゃなかったの?」
「でもネット対戦とかはどうせ公開するシステムだし、初回のサプライズってことでいいんじゃないの?」
「それより、このカード見ろよ!! 闘劇でも見れない夢のカードだぜ!?」
「配信視聴数、めちゃくちゃ上がってます、っつーかパンクしそうです!」
「こいつは盛り上がるぞ! この機会にロケテストを大いに宣伝する!
 各方面にメールと電話しろ! 配信を担ってるドワンゴには"チャンネルの全てをQMZに切り替え"、あと大至急a-choに連絡とれ!!」
「わかりました!!」
「あの、システムをはじめとしたゲームの監視は?」
「バッキャロー!! んなもんやってる暇あったらあの試合見ろ!」

~その頃の店内では~

「おい、霧でみえねーぞ!!」
「つーかこれ煙じゃね? 誰だよスモークとか焚いてんの!? 意味あんのか!?」
「あっ、おい、ようやくディスプレイの一つが見えるよーのなったぞ!」
「ほんとだ……っておい!? 聞いたか今の!? 式の中身GO1だったのかよ!!」
「しかも生き残ってるもう一人はQMZさんじゃん! 何がどうなってんだ!?」
「ってことは最後の一人を決める戦いが始まる?」
「闘劇壇上だあああああああああああ!!」
「うおおおおおおおおおおおお!!」
「スモークだあ!! 炭酸ガスだぁあああああ!! どんどん焚けェェェェェ!!」

「はいはいはい、急遽参上いたしました火九でございます。
 kaqnちゃうで、火九さんやで。
 いやねー、僕も行きたかったんですよー、ロケテェー。
 だってアークの新作っしょ? アークの新作っしょ?
 そんなん、やるに決まってるじゃないっすか! わらかさんといてくださいよ!
 んでまあ、僕はロケテ実況をチラ見しながら仕事してたんですけどね、そんな僕に突然電話きたんですよ。
 何でも"めっちゃおもしろいカード始まるから実況してくれ"って言われて、店のPCからSkype繋いでかなり無理矢理音声だけを今お届けしてるんですね!
 もうてんやわんやっすけど、確かにこのカードは熱い!
 熱い! 熱すぎる! 夢のカードってレベルじゃないですよもう!
 しかも本人たちたっての希望ってことで、全快状態からの正々堂々タイマンってお前、熱すぎるやろ! ロケテの配信やのにサービスしすぎやって!
 ご丁寧に挨拶代わりのインタビューまでしてるしほんまに……。
 っとまあ私自身、一観客としてこの試合を楽しみながら、実況させていただきたいと思います!
 では、参りましょう!
 アークシステムワークス新作「バトル・ロワイアル」ロケテストォ!」

デデデデザタイムオブレトビューション

「生き残りをかけた最終決戦!!」

バトー ワン

「QMZジャギ vs GO1両儀式ィ!」

デッサイダ

「勝つのは、初代覇者はどっちだァ!!」

デステニー

「ワアアアアアアアアアアアアアア!!」



「オレは、"生"きたい」
リッドは一人、うつむいて呟く。
「"生"きて、"生"きて、"生"き続けたい」
闇の空間のどこかに、あぐらを掻いて座り込みながら呟く。
「ファラやメルディ達と一緒に、何でもない平凡な人生を"生"き続けたい」
ほむらと目線を合わせることなく呟き続ける。
「それだけでいい、それだけでいいんだ。
 それを達成できるって言うなら、どんな困難でも乗り越えてみせる。
 彷徨うことになろうが、なんだろうが、ぶっ飛ばしてやるさ」
結局最後までほむらと目線を合わせることなく、リッドは言い切った。
「そう」
そのリッドの姿を見るでもなく、どこかを見つめたままほむらも呟く。
「……じゃあ、一緒に行きましょう」
溜息を一つはさんで放たれた一言。
「"戦い"に」
それは、パンドラの箱に入っていた"希望"だった。

体が光になり、どこかへと向かっていく。
ほむらにとっては数えるのもバカらしくなる回数の経験だが、リッドにとっては初めての経験だ。
そして彼らは電子となり、ネットワークの海へと漂っていく。
ゲーム終了まで大阪の某ゲーセンとゲーム内専用回線でしかしか繋がっていないはずのこのゲームで、如何にしてネットの海に飛び込んだか?
ネットワークに繋ぐにはこのゲームを攻略する必要があるはずなのに、なぜ彼らはネットの海に飛び込めたのか?
QMZは、ほむらにどのような作戦を吹き込んだのか?
作戦はこうだ。
まず、拡声器でGO1の存在を明かす。
そしてGO1vsQMZ、格闘ゲームを齧った人間でも知っている両名の対戦カードを、ラストバトルとして用意する。
観客及び全関係者の目線を、その試合に向けさせることで"監視者"の存在を無くす。
その間に、ほむらの能力を使って「グラフィック出力」にアクセスをさせる。
このゲームは今、全世界に向けて配信されている。
つまり、映像出力をどこからか分配させてキャプボなどを介してPCに繋いでいる。
QMZは設営に携わったK.Iの話通り、グラフィック出力からPCまでのルート……つまり配線経路をほむらに伝えていた。
ゲーム基板から出力される情報を辿り、配信コンピュータへとアクセスしてインターネットへと繋ぐ。
これが、外部へアクセスさせる手段。
もう一つ、観客の目を向けさせたのは"ほむらの行動に気づく者"を作らないためだ。
ほむらたちは"死亡扱い"でも、フィールドには彼らの姿が残っている。
カメラやフォーカスが全て自分達に向く必要があった。
そして、自分達が戦えば戦うほど、基板は稼動し続けることになる。
つまり、彼らの行動可能時間が延びる。
ほむらの悲願を達成させるには、このゲームに関わっている全ての人間を巻き込むことが近道だった。
これは"現実側"の人間にしか気づけない、重要なファクター。
元々店の常連であり、店についてある程度の情報を手にしていたQMZだから流せた情報だった。



そして、ほむらはついに悲願を達成する。
この「バトル・ロワイアル(仮)」を生み出した、マスタープログラムが格納されている場所へと。
あと一歩、あと一歩が何回も届かなかった場所へと、ついに手を伸ばすことが出来た。
「まさか、この私を駆逐しに来るものが現れるとはな」
悲願のその場所で聞いたのは、一つの声。
重々しく、機械的な声だった。



時は西暦20XX年。
ある二つの会社が極秘に開発していた、人類文明の存続と地球環境の保全を両立させるための存在。
果てしない調査とシミュレーション、世界最高峰の演算能力を持ち。
地球規模のネットワークに接続して、働き続ける一つの存在。
名を、アシンクロニャス・スーパーコンピュータ"ノア"と言う。

「私は……何兆回もの推論を行ってきた」
自分の内部、ソフトウェア上のノアの思考に乗り込んできた二つの存在。
「人類文明の存続と地球環境の保全を両立するにはどうすれば良いのかと」
ノアは、その突然の来客にも慌てずに話しかけていく。
「だが辿り着く答えはいつも一つだった」
自分が生み出された理由を。
「人類が人類である限り、それは成立しないと!!」
そして、辿り着いた結論を。
「私は、そんな人類を抹殺する優秀なプログラムを生み出すことにした」
真っ先にやるべきだと判断したことを。
「人間と同じ舞台に組み込むことで、人間に対する憎悪を増幅させ、人類抹殺に適したプログラムを生み出そうとしていたのだ」
この殺し合いを開いた本当の理由を全て語る。
「問おう、私によって作られた者たちよ」
その上で、来客二人に問いかける。
「何故、人類ではなく私を破壊しに来る?」
なぜ、私に従わないのかと問いかける。
「くだらねぇな」
リッドは、一歩前に出て答える。
「そうね、くだらないわね」
ほむらも、一歩前に出て答える。
「何……?」
自分の目的をくだらないと言われたノアが、不快そうな声を出す。
「私たちは、人類を憎んでなどいないわ」
構いやしない、ほむらは話を続ける。
「俺たちが憎んでるのは、俺達の人生を変えやがった奴だ」
構いやしない、リッドは話を続ける。
「私たちが憎んでるのは、私たちの記憶を、思い出を踏みにじる奴よ」
ほむらがもう一歩踏み出し、言葉を続けていく。
「俺たちが作られた? 誰がそんなこと決めたんだ?
 今までの人生をしっかり生きて、楽しいことも悲しいことも辛いこともムカつくことも全部受け止めて生きてきたんだ。
 そんな俺たちを、誰が"作られた存在"だって良い切れるんだ?」
リッドは歩きながら、想いを吐き出していく。
「私たちの記憶は嘘じゃない。
 手で触れたもの、感じたこと、大好きな人、周りの世界、全てが私の人生、経験なの。
 それが偽りの用意されたものだった? 馬鹿いわないで、私たちにとってはそれが"現実"なんだから」
ほむらは歩きながら、想いを吐き出していく。
「そう、私たちが憎んでいる――――いや、憎める存在はたった一つなのよ」
ほむらは真っ白な空間で、指を指していく。
「俺達の人生を、記憶を、思い出を、"作った"とか抜かしやがるたった一人」
リッドは真っ白な空間で、指を指していく。


「「そう」」

二人の声が重なり。

「「てめェだ!!!!」」

あるはずのない空気を、振るわせる。

「ふん、所詮は知性と言う武器を身につけたサルに感化された存在か」

ノアが激昂するまでも無く、冷ややかな声で来客へと語りかける。

「ならば、この私が"消し"てやろう!!」

ノアの内部ソフトウェア、そこにワクチンと言う名の"兵器"が降り注ぐ。
来客ではない、これは進入してきているウィルスだから。
ノアはそれを駆除するために、全ての手段を使っていく。

            私の思い出」
   「この輝きは、
            俺の思い出」

脳裏に思い描く、今までのこと。

   「私の
       出会った人々と」
   「俺の

脳裏に思い描く、沢山の顔。

                 私の人生」
「過ごしてきたたった一つの
                 俺の人生」

脳裏に思い描く、一本の道。

        私の
   「そして    未来は」
        俺の

その道の上で、真っ直ぐ前を見据え。

「「これからずっと!! 続いていく!!」」

彼らは、走り出していく。

「「うぉおあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」」







光と闇が入り混じり、新しい「   」が生まれた。





【ノア 消滅】





「おいおい、なんだなんだ?」
「電源トラブルかー?」
「ディスプレイ落ちてるだけだったら承知しねーからな!」
人と人がひしめき合う店内は、あの伝説のカードが始まる前と同じようにどよめきに満ち溢れていた。
それもそのはずだ、試合が一番熱いまさにその瞬間に突然画面が真っ暗になったのだから。
1ラウンド目、北斗と言う地の理を生かし、数少ないジャギの強みをぶつけて行ったQMZが先行。
2ラウンド目、持ち前の反応と吸収を生かし、熾烈な攻めを潜り抜けたGO1が取り返し。
3ラウンド目、手札を見せきった両者が拮抗し、共に0ドットになってから両者が共に前方ジャンプを選択した瞬間だった。
会場のボルテージが最高潮の中、慌てるロケテストスタッフと騒ぐ観客。
2chの実況スレは勢い六桁を記録し、ニコニコとTwitterのサーバーも全て落ちると言う異例の事態が起きていた。
誰しもが不満を抱え、それを言葉にしていく中。
東京と大阪、二つの土地で静かに筐体に座り続けた二人の男は。
汗を拭い、小さくガッツポーズを取っていた。

【QMZ(ジャギ) 死亡】
【GO1(両儀式) 死亡】
【バトル・ロワイアル(仮) クラッシュ】





「終わった、わね」
光でも闇でもない不思議な空間に漂いながら、ほむらは同行者リッドへと話しかける。
その言葉は、幾つもの意味を含んでいた。
ゲームの全てを統括しているノアが死滅した、つまり基板を走らせる重要システムが死滅したと同義。
全ての基板はこの瞬間にゴミクズになり、あのゲームは二度と起動することは無くなる。
彼女達の目的は達成された、思い出を、未来を、記憶をぶち壊す存在はいなくなったのだ。
そして彼らは"作られたプログラム"からついに抜け出すことに成功し、自分の意思で動けるようになった。
これからの未来を作るのは、他でもない彼ら自身。
「……行くのね」
「ああ」
ノアから受け取った最後の電力を使い、リッドとほむらは再び光の塊へと姿を変えていく。
彼には目的がある、普通の生きて生きて生き続けるという目的がある。
その世界は、彼の知る世界で無ければいけない。
「案内するわ」
「ああ、サンキュ」
何巡もした世界の中で把握したルートを使い、ほむらは迷うことなくリッドの"故郷"へと案内していく。
光が飛び、瞬く間に違うサーバーへと辿り着く。
「ここよ、ここが貴方が生まれた"マスターデータ"よ」
「おう、ありがとな」
あるゲーム会社の中にある、リッドが生まれたマスターのデータが保管されている場所だ。
数十年来使用されていないらしく、装置の老朽化は激しかったが何とかアクセスすることが出来た。
「これもまた、貴重な記憶と思い出か」
そこに飛び込む前に、リッドはふと呟く。
これもまた、彼の人生を彩る一つの記憶と出会った思い出なのだと。
「忘れた方が良いわ」
「いや、忘れちゃいけねーな。
 誰に喋るわけでもねーけど、俺は覚えてなきゃいけないと思う」
「そう」
ほむらはそれを忘れることを提案したが、リッドはそれを拒んだ。
辛いことも、変なことも、全て受け止めて自分の身に刻むのが"人生"だから。
「じゃあ、これを持って行きなさい」
ほむらから差し出されたのは一本のリボン。
彼女が胸元に付けていた、紫色のリボンだ。
リッドはそれを受け取ると、手馴れた手つきで頭へと巻きつけていく。
「とっても似合うわ」
お世辞か、本心か、どちらか分からなかったが、分かる必要はない。
リッドはほむらのその言葉に対し、笑顔で答えた。
「じゃあな」
「ええ」
そして、ほむらに見送られながらデータの海へと飛び込んで行った。



「……ん、あ」
リッドは目覚める。
見渡した先に広がるのは、故郷の近くの原っぱだった。
「夢……?」
普通はそう考える、誰でもそう考える。
だが、それが夢ではないことをすぐに理解する。
風に吹かれた草木と共に、激しく靡く一本のリボン。
頭に巻かれていた、紫のリボンがあったからだ。
「リッド~! 何やってんの~? メルディもキールもみんな待ってるよぉ~?」
少し間の抜けた、でもどこか懐かしい声が聞こえる。
そうだ、自分は帰ってきたんだ。
自分が歩むべき人生に、生きるべき世界に。
「ああ、今行くぜ!」
彼は、走り出していく。

【リッド・ハーシェル 生還】




「さて……」
リッドを見送った後、ほむらはその場で悩む。
彼には帰る世界がある、だから彼はその世界で生き続けていくのだ。
では、自分はこれからどうしようか。
考える必要のないそんなことを、ふと考えたときである。
「ほむらちゃん」
聞こえるはずのない声、この場所にいるはずのない声が聞こえる。
焦って振り返ると、そこには確かにあり得ない人がいた。
「ま、どか?」
「うん」
守りたかった人が、神々しい衣服を身にまとい自分の目の前にいた。
超常的な力を手にしたまどか、"この"暁美ほむらが知ることは無かったまどかが、そこにいた。
「頑張ったね」
思わずその胸元に飛び込み、ほむらは柄にも無くわんわんと泣き出してしまう。
まどかはそのほむらの頭を撫で、ほむらの身体を包み込むように抱きしめ、やさしく語りかけていく。
「もう、私は大丈夫だから。
 ほむらちゃんが頑張ってくれた"ある世界"で、私は――――たから。
 だから、もう大丈夫だよ」
そう「おりこ☆マギカ」ではない「まどか☆マギカ」の世界。
その世界の"終末"の姿で、鹿目まどかは現れた。
そして「おりこ」の暁美ほむらが知ることは無かった「まどか」の真実が、まどかの口から語られた。
「そう、良かった」
それを聞き、ほむらは長らく忘れていた安堵の表情を見せた。
良かった、本当に良かったと。
あまりの嬉しさに、その場に力なく座り込んでしまう。
「そうだ」
座り込んだほむらと同じ目線にまで下がり、まどかは問いかけていく。
「ほむらちゃんは、何がしたい?」
ほむらの悲願は"とある何巡目かの世界"で達成される。
それは確固たる事実として起こり、現にこの場に超常的な力で現れているのだ。
まどかは思っている、彼女がこれ以上苦しむ必要は無いと。
あの世界の「ほむら」と同じように、この「ほむら」にも「幸せ」を与えたいと。
「何……が?」
「うん、そうだよ。ほむらちゃんが望むこと、何でも言ってごらん?」
まるで子供のような顔で笑うまどかの言葉を受け、ほむらは考える。
ぐるぐるとぐるぐると記憶を辿り、思い出を掘り起こし、会った人々の姿を描いていく。
何度も何度も考えに考え、彼女は一つの答えに辿り着く。
「私は――――」

その答えを聞いたまどかは、満面の微笑でそれに答え。

まとかとほむらのいる空間が、柔らかく暖かい"それ"に包まれた。

【暁美ほむら
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数日後、都内某ゲームセンターにて。

「なあ、見た? 今日のニュース」
「ああ、見た見た。あのゲーム、軍事プロジェクトの横流れ品だったんだろ?」
「そうそう。んで、どーにも基板があの瞬間にクラッシュして、マスターデータもおじゃんになったらしいぜ?」
「悪くないゲームだったけどなー」
「それより大変なのは、アークシステムワークス関係者を装って営業に来てたらしい事だよな」
「あー、それな。ほんとアークも大変だな、知らないところで知らない奴等に名前使われてるんだから」
「クレーム処理と問い合わせ対応に忙殺されてるらしいぜ?」
「うわー、怖っ」
「まーでも、これで伝説のゲームになっちゃったわけだよなー」
「もうちょっとビデオとか取っとけばよかったかもなー」
「ロケテでお亡くなりになるとか、バカみたいな話だよなー」

「ところでさー」
「何?」
「あの黒髪ロングの子、毎日ここに来て北斗やってるよな」
「ああ、あのアニメキャラにちょっと似た子だろ? すげーやる気だぜ? フリープレイの日とか大会の日はほぼ必ず来るし」
「無言で乱入してきて、人がいなけりゃここぞとばかりに連コインしてくるしな」
「最初はガードすら出来てなかったのに、どんどん強くなってっからなー」
「もう修羅レベルまであるっしょ、2onとはいえこないだ準優勝まで行ってるしなあ」
「すげーわ、あのやる気は見習いたいね」
「そういや話しかけたことねえな、お前は?」
「いや、俺も無いわ」
「うーん、でもなんか話しかけにくいんだよなー」
「あ、QMZさんこんちわっす。って、その台は……」
「そーいやあの子、QMZさんがやってる台にやたら粘着するよな」
「そーいやそうだな。なんでだろう?」
「あ、バスケされてる」
「あ、星取られた」
「あ、終わった」
「周りを確認してるわ」
「おーい、俺たちはやんないから気にせず連コインして良いぞー」
「うわー、灰皿に50円玉並べ始めたよ」
「始まったなー、フリープレイじゃない日でもあの調子だモンな」
「こりゃしばらくあの台から動かねーぞぉ」
「でもさ、なんかさ」
「ああ……」
「「楽しそうだよな……」」



少女がふふっと笑った。



筐体を挟んで向かい合っていたQMZも、釣られてふふっと笑った。



【新安価ロワイアル GAME OVER】


STAFF

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◆OmtW54r7Tc
◆BogC9Jz4YQ
◆5ddd1Yaifw
◆6GINjR4WOQ
◆25KJkkH23Y
名無しさん
イラストを投下してくださった方
管理人 ◆qsVAoN2nfQ



◆oub/vvrBRg



AND YOU



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最終更新:2013年01月26日 06:45