龍機兵
概要
- "次世代型特殊兵装『龍機兵』。世間では機甲兵装の次世代機として第四種とも第五種とも言われているようですが、とんでもない。機甲兵装と龍機兵とでは設計思想が根本的に異なっている。まるで別物だ。まったくの新世代機と言った方が正しいでしょう。問題はそこだ。従来のテクノロジーをはるかに超える機体を日本警察が突然持ち得たという事実は不可解という他ない。部品の多くは既製品か、特注でメーカーに製造させているが、肝心のシステムに関する部分は整備、点検もすべて内部でまかない、調べた限り一切外には出していない。開発者及び開発過程を含めすべて極秘"(『完全』p.115)
- "龍機兵の要は『龍骨』と呼ばれる中枢ユニットに組み込まれた統合制御ソフトにある。龍機兵の脊椎に当たる位置に埋め込まれた龍骨の、三次元分子構造としてコンパイルされているこのソフトが、龍機兵の驚異的ハイスペックを可能としているのだ。龍骨以外の部品は先進的であるものの、複製、交換が可能。言わば龍骨ことそが龍機兵そのものであり、それ以外はすべて消耗品にすぎない。だが肝心の龍骨を破壊することなく解析する試みはことごとく失敗に終わっていた"(『完全』p.139)
- "特捜部トレーラーの左側面が上部に向かってウイング状に開放された。内部には二メートル四方の立方体型コンテナが二個。それぞれを固定していたセルガイドのロックが外れ、モーター音とともに各コンテナの上部から外に向かって二本の鋼鉄のバーが伸びる。コンテナが持ち上がり、バーに沿ってスムーズに横行、道路上へと降ろされた"(『完全』p.39)
- "上着を脱いでシャツの上から専用の特殊防護ジャケットを着用した姿警部とオズノフ警部が、それぞれコンテナの前に立つ。コンテナ上部側面のランプがグリーンに点灯し、ロックが外れる。コンテナの前面と上部が開き、小さくうずくまるような形態で格納されていた人型の装備が現われた。コンテナ内で<それ>を固定していたアームが自動的に上部へと伸びる"(『完全』p.40)
- "姿警部は眼前に佇立した龍機兵の、露出した脚筒へ後ろ向きに両足を突っ込む。ラッチがブーツの底を固定すると、龍機兵の下半身が完全に起立した。同時に脚筒内壁のパッドが膨張して下半身を固定する。「グリーブ・ロック確認。シット・アップ」ハッチのグリップを引くと、上半身が定位置に移動し、前面ハッチが閉鎖される。続いて左右に腕筒が迫り来た。それに両腕を挿入し、先端にあるコントロール・グリップを握る。「ハッチ閉鎖、ハンズ・オン・スティック」グリップを握った状態で、背中をハーネスに押しつける。それにより腕筒内部のパッドが膨張、固定されていた龍機兵の腕が展開する。ヒューマノイド形態が完成すると同時に、姿警部の頭部を覆うシェルが閉鎖。内壁のVSD(多目的ディスプレイ)に外部映像が投影され、各種情報がオーバーレイ表示される。「シェル閉鎖。VSD点灯。オンスクリーン・リーダブル」半透過スクリーンの奥で、スキャナーが装着者の視線を追い、脳の電位を検出する。BMIデバイスがそれを基準にスキャナーを調整、[ADJUSTED]の文字が点滅する。「BMIアジャスト完了」背筋が熱くなり、全身に一瞬痺れとも痛みとも言えない感覚が走る。『龍骨』の回路が開かれ、姿の脊髄に埋め込まれた『龍髭』と連動したのだ。(中略)「キール、ウィスカー、エンゲージ確認。エンベロープ・リミット5・0」両腕、両脚、胴体各部のアジャスト・ベゼルが回転し、リコイル・トリム(抵抗)を調整。自己診断プログラムが異常の有無を走査する。結果:未検出。全ハッチのロックを示すインジケーターが点灯した。「最終トリミング完了。ステイタス・セルフチェック、オールグリーン。PD1フィアボルグ、レディ」"(『完全』pp.40-41)
- "全長約三メートル。従来の機甲兵装と比べて一回りは小さい。さらに大きな違いは、その形状にある。無骨そのものの機甲兵装に対して、『龍機兵』はまさに<人>であった。腕の先のマニピュレーターなどその最たる部位で、人の掌、人の指を見事に再現したフォルムを有している"(『完全』p.42)
- "龍機兵の操縦はマスター・スレイブ方式とBMI(ブレイン・マシン・インタフェイス)を併用している。内部で脚筒に足を固定した姿が走れば、フィアボルグもその通りに走る"(『完全』p.58)
- "従来の機甲兵装では到底考えられない運動性能である。装着者の脊髄に挿入された龍髭が、脳に達する以前の脊髄反射を検出して量子結合により龍骨に伝達。機械的操縦では実現できない反応速度を生み出すのだ"(『完全』p.59)
- "龍髭と量子結合で連結した龍骨により制御される龍機兵には、搭乗要員の身体状況を観測する装置が内蔵されている"(『完全』p.208)
- "索敵装置作動。レーダー、ソナー、サーマル他各種センサーが目を覚ます。両手の指をフルに使い、グリップのボタンやダイヤル、サムスティックを操作して索敵に当たる。(中略)状況がシェル頭部内壁のスクリーンにオーバーレイ表示される。フィアボルグは一部屋ずつ確認しながら先へと進む。それに連れて3D表示されたマップが順次上書き、更新される"(『完全』p.291)
- "その屋根に飛び乗った緑は、現場判断でバーゲストの首筋襟状部分の裏にあるインタフェイスのカバーを跳ね上げた。「強制脱着を執行します」管理者権限として所持する生体認証キーを差し込み、<外部優先>の位置に回した。コックをひねると、各部からプシュッという排気音がしてガスが抜けた。龍機兵はBNC防護機能のために密閉されており、四肢を固定するパッドも膨張状態にある。そのためハッチ開放前にはバルブを緩めて排気しなければならない。(中略)インディケーターがグリーンに変わった。ハッチ開放ボタンが有効になる。誤作動防止用に一段奥まっているボタンをさらに押し込むと、装着時と逆の順序でハッチが次々に開いた"(『暗黒』p.394)
アグリメント・モード
- "もはや限界だった――ノーマル・モードでは。姿が音声コードを口にする。「『DRAG-ON』」ドラグ・オン――無論英語本来の意味ではない。シフトチェンジの宣告。メカニズムと司令本部と己への。アグリメント・モード。一〇〇パーセントBMI(ブレイン・マシン・インタフェイス)による操縦へ切り換えられた状態を関係者はそう呼んでいる。両手に握ったグリップのカバーを跳ね上げ、中のボタンを左右同時に強く押し込む。エンベロープ・リミット解除。フィードバック・サプレッサー、フル・リリース。ディスプレイが激しく明滅し、アグリメント・モード表示に変わって安定する。背中側の首筋が燃えるように熱い。脊髄の龍髭だ。灼熱の痛みが全身に広がる"(『完全』p.306)
最終更新:2015年04月30日 11:01