そこは、真っ暗や皆暗闇の中だった。
視界も何も見えない中、周りからはゆっくりのざわめき声が聞こえてくる。
その声の騒がしさだけでもこの場には大量のゆっくりが居る事がわかった。
やがて、その中心にスポットライトが当てられる。
// ヽ,
,.└''"´ ̄ ̄ `ヽ、
,. '´ 、、 ヽ ヽ
ノ , lヽ j /、lヽ ト、_,,.',
r'´ r'"イ .ノ\| .レ r=;ァ'レ' { }
{ !、 l rr=- / `'''l.>‐ .、
レヽ.,ト' ー=‐' / l 、,,_,,ノ
,}' ', /ヘ, /レ' ,/ >‐、
7'´レ1 ヽ 人ル'レ' 'i、_
レ~i` ヽ 、_ ( "
_,. ´j !` .. _
,. || ̄ 、_ _,||  ̄`\
/ ||  ̄`\ /´ ̄ || }
i || || i/ ,. 一ァ
! '.{/ ̄ ̄ ̄\ / ̄ ̄ ̄\ .' / ∠._
:, :, j/ 〈
:, :, 、 ,. ´ r'
:, '. },. ´ __,ノ
'. _⊂二 ̄\‐ ´ ,.イ´ .′
く.ィァ \ / ! i
くィァ ` ー----┴=x、 |
くィァ __,. - 、 ヾ!
〃〈/、__,. ´ ` 、 }}
{{ 八 } ` ー┬‐t‐'{{
「皆さんお待たせいたしました!きめぇ丸の脱ぎ脱ぎショウ!ゆっくりしていってね!」
「おぉ、脱衣脱衣。」
アナウンスの後、怪しい音楽とスポットライトの動きに合わせてきめぇ丸がゆっくりと脱ぎ始めた。
それと同時に、周りのゆっくり達も一気に騒ぎ出す。
「良いぞ~!脱げ~!もっと脱げ~!」
てゐもそのゆっくり達に混じって騒いでいた。
「って、なんて所に案内してるんですか!」
ドガアッ!
そんなてゐの後ろからむらさは錨を思いっきり投げつけてきた。
「あだぁ!」
でかい錨を思いっきり後頭部にぶつけられて思いっきり悶えるてゐ。
「ちょ、打ち所が悪かったら死んでたよ!」
「五月蝿い!なんて所に連れてきてるんですか!」
むらさは怒りに満ちた表情でてゐに向かってそう叫んだ。
てゐは、そんなむらさを落ち着かせようとする。
「まぁまぁ、ここならありのままのゆっくりが写し放題だよ。
本当は撮影禁止なんだけど、特別に許可は貰ったからゆっくり映していきなよ。」
, \, -─-- 、.,_
,.i (ヒ_] ,___, `ヽ,. /
./ ヽ _ン ヒ_ン )
_,./__,,. -‐ ''"´ ̄ ̄`"'' .、`ヽ,ー:'
,. ''"´ /´ / ;' ! ;`ヽ,ヽ、
'.、 .;' ', i ´ハ_ _ハ ノ メ !,!ヽ,.ヽ.
`Y i Vレ'7;__,.!/ V !__ハ ハノ., ',ノ';
_ノ i=ハ -‐‐ ー- ハ.ノi i
`.>' iX|/// .,___,///ノ!レノ
∠._ ノ |=ヽ、 ヽ _ン ノ!i レ
,.ヘ,) | |>,、 _____, ,イ| |
' | !>;`ヽ、「、,ハ.| |
「良いのが撮れたら私に頂戴ね。」
「撮りませんし、やりません!!」
ガゴッ!
むらさの投げた錨、諏訪小僧の脳天に直撃。
諏訪小僧、ダウン!
「あ~仮にもここのオーナーなんだから乱暴しちゃ駄目だよ。」
「怒らせてるのはあなたでしょう!先生、とっととここから帰りますよ…。」
呆れ帰りながらむらさは大月の方へと振り向いた。
…大月は、ほぼ全裸状態のきめぇ丸をジッと直視していた。
「…あの、先生…。」
むらさは気づいた。
…あの、もしかして先生…。
鼻血たらしてない…。
「…すまない、きめぇ丸を甘く見ていた。」
「…先生…。」
・・・むらさと大月の間に、お寒い風が吹いた。
~☆~
ストリップ劇場の外ではれみりゃ、てんこ、らんの三匹のゆっくりがてゐ達の帰還を待っていた。
「…お子様入場禁止とは、それちょっと卑怯でしょ。」
「まぁ、ストリップ劇場だから仕方ないど。」
不貞腐れ気味なてんこを、れみりゃが宥めている。
…らんはというと、ストリップ劇場の入り口の前で泣き崩れている。
「…お金があったら、らんだって、らんだって…!」
…そう、らんがストリップ劇場に入れなかったのは、入場料を持ち合わせていなかったから。
そんなに悔しいのか、きめぇ丸のヌードが見れないのは。
「…奥さんが見てたら速攻離婚だど、これ…。」
「煩悩が全開の狐がここにいた。」
本気で悔しそうならんを見て、れみりゃとてんこが呆れ帰って居ると…。
「きゃ~!らんしゃまよ~vvvvvv」
凄い嬌声を上げて人影がらんに近いてくる!
「え?」
らんは何が起こったの理解する暇もなく、抱き上げられ、抱きしめられた!
「フカフカよ!モフモフよ!かわいいわよ!最高よ~!」
「わぁあああああ!」
いきなり人間の女性にほお擦りされ、らんは思わず叫び声を上げてしまう。
「な、何だどあれ!?」
「あまりの早すぎてこっちも動けなかった、アイツ絶対忍者だろ…。」
れみりゃとてんこは呆然とした顔で突然現れた人間の女性を見る、
「あ~堪能したわ~。」
金髪の縦ロールといういかにもお嬢様な雰囲気の彼女はらんを一頻りほお擦りし終えると、らんをポイッと放り投げた。
「うわっ!」
こっちに飛んできたらんをれみりゃたちは思わず避けてしまう。
「ぶぎゅ!」
らんは顔面から思いっきり地面に突っ込んだ。
「って、あらあらごめんなさい、痛かった?私ったらつい興奮しちゃって…。」
人間の女性がそう言ってまたらんを抱き上げる。
今度は抱きしめるのではなく、そっと地面に置いてやる。
「…謝るならその前に放り投げるのをやめて欲しいてんこ…。」
らんは涙目でそう訴えた。
「…お嬢様、寄り道をしている場合じゃないでしょう。」
と、人間の女性に話しかけてきたのは、これまたセバスチャンと言う名前が相応しい初老の人間だ。
「あら、そうだったわね…じゃあまたね、ゆっくりちゃんv」
人間の女性はそれだけ言うと、なんとセバスチャンを連れてストリップ劇場の扉をあけた。
「!?ちょ、そこはストリップ…。」
れみりゃの忠告も聞かずに人間の女性はストリップ劇場の中へと入って行った。
「…い、行っちゃったど…。
あの人間のお嬢さん、そんなにゆっくりの裸が見たかったのかど?」
れみりゃがそんな疑問を抱えて首をかしげていると…。
「ええと、確かここじゃな…ストリップ劇場?またこんな所を会場にせんでも良いだろうに。」
「フム、ここか…きめぇ丸のヌード…まぁ、そんな事はどうでも良いか?」
「あら?ここが会場?随分と私には入りたくない所にしたざますわね。」
なんかあちこちから人間がやってきては、ストリップ劇場の中へと入っていく。
「…れみぃ、私は何だかおかしいと思うんだが?」
「てんこの言いたい事は解るど~。」
ここは殆どゆっくりしか住んでないとは言え港町、別に人間が沢山やってきてもおかしくは無いだろう。
しかし、何でこんな港町のハズレの方の場末のストリップ劇場に人間がやってくるのだ?
それも、全員凄いきらびやかな身なりの傍目から金持ちそうな人達ばかり。
「…ここで何をやっているのか、かなり気になるど~。」
「…良し、ここは行って見るべきそうすべき。」
てんこはそう言ってストリップ劇場に入ろうとする。
それを見て、らんは慌てててんこを止めに入る。
「!?!?ちょ、ここに入っちゃ駄目だてんこ!
君たちをここに入れたらてゐさんにしかられるてんこ!」
「おいぃ、何いきなり話しかけてきてるわけ?」
「え?」
「こっちが紳士的な態度に出たら、付け上がりやがって!」
「ちょ、いきなり何を言って…。」
「メガトンパンチ!」
ドガアッ!
「アワビュー!」
らんしゃま、吹っ飛ばされた~!
「…黄金の鉄の塊で出来たナイトが、皮装備のマダラに遅れを取るはずが無い!」
てんこはそう言ってガッツポーズを取った。
「…あの、まだらって何だど?」
「まるで
だめな
らんしゃま
略してまだら、これははやるよ?」
「はやらないど、何処かで聞いた気がするどその単語。」
「そんな事より早く私はストリップ劇場に行きたいです、
はやく
はやく。」
「…いや、でも子供が中に入った所で追い出されそうな気がするんだけど…。」
「それも問題は無い、わたしには良い手がある英語で言うならナイスアイディア。」
「…ナイスアイディア?」
何だか嫌な予感がしたれみりゃであった。
~☆~
話は戻ってストリップ劇場、
ショーは一旦小休止、てゐ達は備え付けのバーで飲んでいた。
椅子に座っている大月と、カウンターの上に敷かれたクロスの上で寛いでいるむらさとてゐの前に飲み物が置かれている。
むらさも大月も、仕事の真っ最中なのでミルクを注文していた。
「…全く、きめぇ丸の裸で鼻血を出さないでくださいよ。」
「…すまん、きめぇ丸のセクシーさを甘く見ていた。」
大月は実に恥ずかしそうにミルクを飲み干している。
「お客さん、あんたも好きねぇ。」
てゐがそう言いながらカウンターにしかれたクロスの上でお酒を飲んでいる。
こいつも仕事中のはず何だが。
「…あんたも!こんな所に連れてこないでもっとちゃんとした所に連れてきてくださいよ!
むらさがそんなてゐに怒鳴りつけてくる。
「…じゃあ具体的に何処に連れて行ったら良いのさ?」
「え?そ、そうですね…幼稚園とか、小学校とか。」
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,.i (ヒ_] ,___, `ヽ,. /
./ ヽ _ン ヒ_ン )
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`Y i Vレ'7;__,.!/×V !__ハ ハノ., ',ノ';
_ノ i=ハ -‐‐ ー- ハ.ノi i
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∠._ ノ |=ヽ、 ヽ _ン ノ!i レ
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' | !>;`ヽ、「、,ハ.| |
「幼児プレイですね、わかります。」
ガスッ。
諏訪小僧、二度目の碇直撃。
「…はぁ、今回の取材は完全にハズレかもしれませんね、先生。」
「…かもしれないな…。」
そう言ってミルクを煽る大月の目にあるものが視界に入った。
…それは、妙に身なりの良い人間…それも複数だった。
「…何だあいつら?この店の客にしては妙に良い身分のようだが。」
人間たちは、劇場の隅に設置された地下への階段を下りていく。
「…?あの階段の先には何があるんですか?」
むらさが頭に碇が刺さって死に掛けている諏訪小僧にそう問いかける。
「た、確か、あの先はかなり広い倉庫になってるはずだよ…今は貸し出し中だけど。」
「…何か怪しいけど、まぁ今はかわいいゆっくりが先だな。」
「今度はちゃんと案内してくださいよ!」
「はいはい…。」
そんなやり取りをしながらてゐ達が席を立とうとしたその時だった。
「…ん?」
てゐの目に、ある二匹のゆっくりの姿が目に入った。
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♪ rー-、,.'" `ヽ、.
\ _」::::::i _ゝへ__rへ__ ノ__ `l
く::::::::::`i / ゝ-'‐' ̄ ̄`ヽ、_ト-、__rイ、 }^ヽ、
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/ヽ/ r'´ ィ"レ´ ⌒ ,■__, ⌒ `! i ハ / }! i ヽ
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⌒Y⌒Y´ノ /l ハノ i ヽ⌒Y⌒Y´
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ノ´ / ヽ、 / / ,ハ | |
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/ /ヽ| {|__|} /-'ァヘ ∨´ ̄ /
ー-<7 .ム /! }!:::|{ イ ,〈 ,' ∧ ヽ. ,〈
「…どうだ、これで私達を子供だと馬鹿にする奴らは居ない!」
「イヤイヤいや、着けといて言うのも何だけど、こんなちょび髭で大人の振りは無理だど!」
「おいぃ、大声出したらてゐに見つかってしまうから黙っていてもらえませんかねぇ。」
なんと、変なちょび髭を着けたてんことれみりゃがコソコソと移動していたのだ。
どうも、てゐ達にばれない様に行動していたようだが…残念ながらバレバレだった。
「あ、あいつら何してんの!?」
てゐは大声でそう叫んでしまった。
「アレってあなたのお連れの二人組みでしたよね…。
何だか、さっきの人達の後をつけていたようですけど。」
むらさの言うとおりだった。
れみりゃとてんこは先ほど人間たちが入って行った地下への階段へと入って行ったのだ。
「おい、あいつらやっぱり地下に行くつもりだぞ。」
「あの馬鹿!何で自分から危険なことに首を突っ込もうとするのさ!」
てゐはそう言って慌てて追いかける。
「先生!私達も追いかけましょう!」
「あ、こら!」
むらさが立ち上がっててゐの後を追いかける。
続いて大月も後を追いかけようとするが…。
「あ、お客さん!呑み代踏み倒す気!?」
諏訪小僧がそう叫んで大月を呼び止める。
「…ちッ!あの馬鹿、客に自分の飲み代まで払わせる気かよ!」
大月は財布から万札を取り出すと、カウンターの上において走り出した。
勿論、お釣りなんか貰う暇は無い、大損だ。
「クソ!この呑み代は経費で落ちるか、むらさ!」
「…帰れたらやれるだけの事はやってみましょう!」
二人はそんなやり取りを繰り広げながら、てゐの後を追いかけていった。
~☆~
人間たちの後をつけて言ったてんことれみりゃがたどり着いた場所は、やたらと広い部屋であった。
そこにはなんとも身なりのよう人間たちが無数に集まって、中央に置かれたステージを囲むように座っている。
「す、すごいど、これだけ人間があつまってる所、めったに見れないど!」
「こんな所で一体何をするつもりだ明らかに怪しい…。」
れみりゃとてんこは隅に置かれていた木箱の影からステージの様子を見ていた。
カッ!
やがてスポットライトが中央のステージに浴びせられる。
「…!静かに、何か始まるど!」
れみりゃがてんこにそう言い放つ。
…一分経過…。
…五分経過…。
…十分経過…。
…何か何時まで待っても、スポットライトがステージを照らすだけで何も起きない。
「…?」
「お、遅れてごめんなさいみょん!」
と、何処からかまた声がする。
また別のスポットライトが今度は離れの方を照らす。
スポットライトに照らされて現れたもの。
r-、_,「:V´|-─‐- ..,,_
r'::::::、:::::::!::/_,,...,,___ `' 、
>、:::::;> "´ ` ''ー- 、`フ
/ y' / / ! ,! `ヽ.
,' / / /! ./| / ! ,! i i ',
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! i .! !、 ヽ _ン ノ | |
`ヽレヘ. |7>,、 _____, ,.イ ! |
\! \ハ__」
銀髪のおかっぱ頭と背負った刀が特徴の胴無しゆっくり『みょん』だった。
みょんはピョンピョン飛び跳ねて中央のステージに立つ。
「居眠りしてたら遅刻してしまったみょん…ごめリンコだみょん。」
みょんはそう言って可愛らしくウィンクする。
…観客たちは黙り込んでいた…そして。
「そんな細かいこと気にするなぁあああ!」
「そうよぉおおおみょんが可愛いから全てOKよぉおおおお!」
「ち~んぽ!ち~んぽ!ち~んぽ!」
…突然、一斉にみょんをに向かって歓声を上げた。
「あ、ありがとう御座いますみょん!」
みょんは深々とこれまた可愛らしくお辞儀をした。
うぉおおおおおっ!
それにより、周りの歓声が一層大きくなっていった。
「…何だど、これ。」
全く着いて来れないれみりゃ達であった。
「…さて、前置きはこれぐらいで早速本題にはいるみょん!
ロットナンバー001番!」
みょんの声と同時に、別の出入り口から檻を持ったごつい体格の人間の男が現れる
男は凄まじい威圧感とともに、中央に檻を運んでいく。
「!?あ、アレって…!」
れみりゃは檻を見て、驚愕の声を上げる。
…檻の中に入っていたのは、胴無しぱちゅりーとこぁだったのだ!
2匹とも、何だか脅えた目で周りを見ている。
「さぁさぁ!このゆっくりにまつわるお話を聞いてくれみょん!
このぱちゅりーとこぁのゆっくり姉妹は親に迫害されて家を飛び出し、
毎晩路上で冷たい夜を二匹健気に暮らしているみょん!」
「まぁ!何て可愛そうなの!」
「うう、聞いてるだけで涙が…!」
「セバスチャン!私はあのゆっくりを買いたいわ!あの子達に親の暖かさを教えてあげるのは私だけよ!」
「お嬢様、何てお優しい…。」
みょんの話を聞いて、先ほどまで歓声を上げていた人間達が、今度は啜り泣きをしている。
そんな人間たちに対してみょんはこう言い放つ。
「さあ!このゆっくり達を愛してやれる人間は一人だけ!まずは100万から!
皆さんの愛の重さに大期待だみょん!」
「120万!」
「180万!」
「230万!」
人間たちは次々にみょんが言った値段をあげていく!
「お、お姉ちゃん…。」
「大丈夫よこぁ、私達はこれからおいしい食事と暖かい寝床があるところでゆっくり暮らせるんだから…。」
檻の中のこぁとぱちゅりーの姉妹はそう言ってお互いの身をジッと寄せ合った。
「こ、これって…。」
「ちょ、ゆっくりの密売なんてシャレにならないでしょ…!」
影で見ていたれみりゃとてんこはその光景を見て、驚愕の顔を隠せなかった。
ゆっくりと人間の扱いは基本的に同等だ。
ゆっくりの国も人間の国でもゆっくりを殺せば殺人罪にもなる、
ゆっくりが大怪我したら、傷害罪で訴えることも出来る。
勿論、ゆっくりをオークションにかけるなんて、人身販売と同じ大犯罪だ。
「ど、どうするど!?どうすれば良いんだど!」
れみりゃはパニック状態でてんこに問いかける。
「ちょ、れみりゃは落ち着くべき!とりあえずここを抜け出して、てゐさんに相談…。」
てんこがそう言ったその時だった。
れみりゃがパニックのあまり、てんこの足に思いっきりぶつかってしまったのだ。
「あ…。」
「おおっと!?」
ドッスン!
れみりゃの体当たりでバランスを崩したてんこは凄い勢いでシリモチを着いてしまった。
「!?誰だみょん!」
シリモチの音に反応してみょんが叫ぶ!
「おいぃ!これはいくら何でもやばすぎるでしょ!」
「ご、ごめんなさいだどぉ~!」
怒鳴りつけてくるてんこに、思わず謝るれみりゃ。
「おぉ~アレは噂に聞くれみりゃちゃんだ!」
「それにあれはてんこちゃんじゃない?」
「きゃ~!可愛い~!」
「はぁはぁはぁはぁてんこ愛してる~!」
観客たちは現れたれみりゃとてんこを見てまたも歓声を上げている。
「おいぃ?ちゃんじゃなくてさん付けでお願いしたいんですけどねぇ。」
「そんな事言ってる場合じゃないど…。」
れみりゃの言うとおりだった。
てんことれみりゃの周りをガタイのごつい人間達が囲っているのだ。
「ああ!見えなくなった!」
「もっとみせろぉ~!」
…何だか観客たちからブーイングが上がっているが、それは無視しよう。
「全く、何処からネズミが紛れ込んだみょんか…。」
れみりゃたちを囲ってる人間たちの間から、みょんが現れる。
先ほどのステージの上で陽気に振舞っていたときとは違う、冷酷な雰囲気だ。
「まぁ良いみょん、見られたからには始末するだけみょん!」
みょんはどうやったのか背中に背負った刀を口に咥える。
そして、その刃をれみりゃ達に向けたその時!
「ああもう!何でこんなに世話が焼けるのさ!」
そう叫んで天井から一匹のゆっくりが飛び降りた!
ガシッ!
れみりゃ達を囲んでいる人間の内の一人の顔面にそのゆっくりは飛びついた!
「な…ま、前が!?」
視界を塞がれてその人間の足元がヨタつく!
そのゆっくりの長い耳がそのまま人間の首に巻きついた!
ギチギチギチ…。
「ぐ、ぐはッ…。」
首を閉められた人間はそのまま白目をむいて倒れこむ。
人間が倒れるのを確認してゆっくりは地面に着地した。
「て、てゐさん!」
れみりゃとてんこは天井から降ってきたゆっくり――いや、てゐに向かってそう言った。
てゐは周りの状況を一通り見回してため息をつく。
「…はぁ、なんかいつの間にかまた面倒くさいことになったねぇ…。」
「え、え~と…ゴメンなさいど…。」
「まぁ、謝るのは後回しにしたほうが良いと思うけどね。」
てゐの言う通り、周りの人間はこっちを殺る気満々だ。
「おいお前ら、俺たちの商売の邪魔をしてただですむと思ってんのか?」
「たかがゆっくり、思いっきり踏み潰してやることも出来るんだぜ?」
そう言ってこっちを脅してくる人間たちに対して、てゐはいつも通りの不敵な笑みだ。
「へぇ、あたし達を踏み潰すねぇ…。」
てゐはそう言って髪の毛の中から一枚のカードを取り出す。
「何だ?そのヘンテコなカードは?」
「そんなもん取り出した所で貴様の運命に変わりないぜ!」
「あのカードは…?お前達!下手に近づくのはやめるみょん!」
みょんはそう忠告するが人間達はかまわずぬてゐに飛びかかっていく!
それと同時にスペルカードが派手に光りだした!
逃符「フラスターエスケープ」
「う、うわ!何だこの光の弾は!」
「ふ、吹き飛ばされる!」
カードから無数の弾幕が発射され、周りの人間達をまとめて吹き飛ばした!
「あの馬鹿ども…スペルカードの事を全然知らなかったのかみょん!?」
みょんはそう言いながら弾幕をかわして行く。
「お、おい!弾がこっちに来るぞ!」
「お嬢様、お伏せ下さい!」
「うわあああああああ!」
更に、弾幕は観客の方へと向かっていく!
観客は慌てて頭を下げたり弾幕から逃げ出りしている!
会場は、あっという間にパニック状態になった。
「よし!今のうちに逃げるよ!」
「おk!とんずらは得意分野!」
「うわぁ、みんな待ってくれだど~!」
てゐ達はその隙を突いて逃げ出した!
「…うわぁ、予想外なくらいに凄い事になってますね…。」
「ここで待ってろと言ったアイツの判断は正しかったわけだ。」
…大月とむらさは会場の出入り口で待機していた。
てゐにここでジッと待ってて欲しいと頼まれたからだ。
ついでに待っている間に携帯で近くの警察に連絡を入れる、
まもなくこの部屋に警察がなだれ込んで来ることだろう。
「…さて、警察に連絡を入れたし後はあいつらが戻ってくるのを待って…。」
「…あ!ちょっと待ってください!」
と、むらさはそう言ってあるものを取り出す。
┌┐
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フ::::::::!"" ,___, "" i /:::::ヽ
フ::::人 ヽ _ン 人::::::::::)
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「お、おいむらさ何をするつもりだ?」
カメラを頭に載せ、コードでつながったシャッターボタンを口に咥えたむらさに大月はそう問いかける。
「何言ってるんですか、この事件を取らなくちゃ、カメラマンの名折れでしょう!」
むらさはそう言って写真をパシャパシャ取り始める。
「確かにそうだな、なら俺も…。」
大月がそう言ってカメラを取り出したとき、大月は気づいた。
「凄い、これは凄いですよ!」
むらさが写真を取るのに夢中で、ドンドン前に出ていることに!
「ば、馬鹿むらさ!戻って…。」
大月は慌ててむらさを呼び戻そうとするが…。
「…ん?何でここにゆっくりが居るのかしら?」
出入り口から出ようとしていたお嬢様に見つかったのだ!
「あまり見ないゆっくりですわね…でもショートカットは私の好みですわ!せばすちゃん!」
「かしこまりました。」
お嬢様に命令されセバスチャンはむらさを捕まえようとしている!
しかし、むらさは写真を取るのに夢中で気づいていない!
「くそっ!」
大月は飛び出して、セバスチャンに体当たりを繰り出した!
「むおっ!」
「ああっ!セバスチャン!」
セバスチャンは吹き飛ばされ、お嬢様は慌ててセバスチャンに近寄る!
何とかむらさに迫る危機はしのげたが、さらにまずい事になった。
「おい!こっちにも人間とゆっくりが居るぞ!」
「しかもカメラを構えてやがる!」
「捕まえろ!証拠を押さえられたらまずい!」
みょんの配下の人間に見つかってしまったのだ!
「し、しまった!」
「…あ、アレ!?何でこんな所に!?」
写真を取るのに夢中だったむらさも、正気に返って周りを見ている。
状況は、かなりまずい状態だった。
「あ、あそこに大月さんが!」
「おいぃ、アレは明らかにまずい!すぐに助けに向かうべき!」
てゐ達も、大月達が人間に囲まれているのを目撃した。
慌てててゐ達は大月の方へと向かう!
「お前ら、下がっているみょん!」
その時、大月達を発見したみょんが刀の先にカードを突き刺した!
突き刺したカードから溢れるエネルギーが刀に伝わってくる!
「ぉおおおおおっ!」
みょんはそのまま刀を大月に振り下ろした!
断迷剣「迷津慈航斬」
凄まじい斬撃エネルギーが大月達に襲い掛かる!
大月はむらさを抱えて逃げようとするが、間に合わない!
「おりゃああっ!」
バアッ!
その時、大月達の前にてゐが飛び出した!
「!」「お、おい!」
てゐの姿を見て大月とむらさが大声で叫ぶ!
てゐはそのまま大月とむらさを体当たりで突き飛ばした!
ズバアッ!
てゐはみょんのはなった斬撃をまともに食らってしまった!
「ぐはあっ!」
てゐは巨大な傷口を作ってその場に倒れこむ。
「て、てゐさん!」
傷口から餡子を流した倒れこんでてゐを見て慌ててれみりゃ達が駆け寄ろうとする。
しかし、その目の前に人間達が立ちはだかる。
「このヤロ!手間をかけさせやがって!」
人間達はそのままれみりゃを掴みあげ、てんこを羽交い絞めにした。
「う、うわぁあああは、放すんだど~!」
「おいぃ!?これはシャレになってないでしょ!」
「…れ、れみりゃ…てんこ…。」
てゐは体から餡子を零しながら何とかれみりゃ達の所に近づこうとするが…。
「おッと、そうは行かないみょん。」
その目の前に、みょんが立ちはだかる。
「まさかみょんの斬撃より早く移動する奴が居るとは思わなかったみょん…
念のために止めを刺しておくでちーんぽ!」
みょんはそう言って刀をてゐに向かって突きつける。
「…ハハ、あんたに出来るかねぇ…?」
死にかけているその時でもてゐは憎まれ口を叩く。
「お前、その状態でよくそんな口が聞けるみょんね。」
「…いいや、どうやら私の悪運はまだ尽きてないみたいだよ。」
そう言った次の瞬間。
シュンッ!
てゐの姿が、目の前から消えた。
いや、消えたのはてゐだけじゃない。
むらさや大月も、いつの間にか姿を消していたのだ。
「!?い、一体何が起きたみょんか!?」
いきなり目の前からゆっくりが消えたことにより、みょんは思いっきり取り乱す。
そうこうしている内に、入り口の方からパトスィーのサイレンの音が聞こえてくる。
「くッ、きっとあいつらが通報したみょんね…おい!そいつらを連れてずらかるぞ!」
「了解!」
みょんとその手下の人間たちはれみりゃとてんこを連れて
この場から逃げ出した。
「て、てゐさん…。」
「これはかなりシャレになってないでしょ…。」
連れ去られたれみりゃとてんこは不安そうにそう呟いた。
第9話終わり
最終更新:2011年02月05日 15:58