てゐ魂 三十二話-2



~☆~


そこは、なんも変哲もないクヌギの木だった。
夏になれば沢山のカブトムシとクワガタが集まって樹液を啜って行くその木。
その木に今、謎の異変が起こっていた。


バリバリ、ガツガツ…。


そのクヌギの木の幹が奇妙な音を立てて抉れていっているのだ。
抉れた部分は何処に消えたのか、全く解らない状態。
その様子はまるで見えない何かに、樹液を幹の部分毎食われているようだった。


「…間違いない、あれがピグ・れいむだぜ。」


その異様な光景を、一人のゆっくりまりさがじーっと隠れて見つめていた。
いや、正確には隠れているが全然隠れていなかった。

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        ___,,.へ./:::::::/\:::::│      │;;:-‐''"      |_____
       「     `` ヽ、_ハ│      │  _,,.         /
      rソ     \__  >│      │<   _;:イ___    /
      く   >'"::;:- '"´ ̄│      │´ ̄ `ヽ、:::::::::`"'<
       ノ>'"_:;ア´     │      │      ヽ、::::::::::::::\
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   く;::::::::::::::/  /  /   i. 、,' │      │,i   ハ_   iヽ;__;;;:::::>
    `ヽ、::::ノ  ,'  .i   ハ  i\│      │i ,.イ´./i   !  i /
      ,,.イ   i   i  ./ ァ'" │      │,ァ''" ̄`ヽハ  ハ ∠_
      l  |  ノ ,ハイ r'ト│      │ト ̄ ソヽト| / i  ヽ7
      /  i  レ    i, ヽ│      │i__ノ 丿  ' レ'_ン i \
     i   ハ   'ハ i  /// │      │    /// ハ'   ハ   i
    ,'    ! ゙i. ト., 〉    │      │      〈 ,.イ ./ !  ',
   .,ノ    '、 ‐゙i !、 ハ    │      │i       ハ ノ /‐ 、'   ヽ.
  ,' .ノ .、,ノ |  /'rハi人ト、i  │      │    ,.イ人iハr'i /ヽ、. ヽ. ',
  ゙iヘ .,r'   レ   !、 i !、'ノヽ│      │   ノ i ノ  レ   ヽ. ヘ/


なぜなら、そのまりさの身体は大きすぎて、木の幹からはみ出しているのだから。


「やっぱりきせい丸の所為で食欲がものすごい事になっているようだな、
 クヌギの樹液を幹ごと食うなんて、無茶苦茶にも程があるぜ。」


まりさはどんどん独りでに抉れて行くクヌギの気を見つめながら、そんな事を呟いた。
クヌギの木に起きている異常のそもそもの原因、
それこそが、どす・まりさの倒すべき相手であった。


「それにしても、無茶苦茶な食欲だな。
 これじゃあ幾ら姿を隠しても何処に居るかバレバレだぜ。」


どす・まりさはそう言って横に視線をやった。
そこには、すさまじい光景が広がっていた。
木も草も片っ端から食い荒らされ、その後がクヌギの木に向かって道のように伸びていた。
どす・まりさはこれを追ってクヌギの木にたどり着いたのだ。

「…さてと、そろそろ狩りに移るとしますか。」

ドス・まりさはそう言うと食い荒らされていくクヌギの木から距離をとった。
逃げるためではない。
自分の技で自滅しないようにするため、距離をとったのだ。


「食うことに集中している今なら…確実に落とせる!」


ドス・まりさの身体に光が集まり始める。
ドス・まりさの最強の武器「ドススパーク」で今だクヌギの樹液を木毎食らっているピグ・れいむを吹き飛ばす為だ。
エネルギーをためている間、どす・まりさが考えていたこと。

      ___      ____     ______
     /       ヽ _/ ̄ ̄ ̄ ̄ ヽ_ゝ         /
     /   _, -‐ ' ̄                \ _ ノ| ヽ
    i r‐'                         ヽ    ヽ/
    !/|                            \  ノヽ
   / ── --- __            __ --- ── \  i
   / ── ‐‐‐     ̄         ̄     ‐‐‐ ──  ヽ   i
   i   /  i \    / /、 | ,   /   ! |  、  /   i  |
   |  ノi   | _\  ノi ノ ヽ レ' /  __ノ .レ'  ヽ ノ|  |  |
   |  | | / i / ト-- i         ├- ヽ ! i   |   |   i | |
   |/ノ '| | ヽ L_ _|          L_ __ノ ノ   |    | ヽ  | | |
     iヽ/i ////              //// | ̄ ̄|  i i  |
     | | |        ,____,             |    | ノ |   |
      | i       \   ヽ /           |   |  | |. |
      |__,ゝ         ヽ __ノ            |__| ノ |  |
      | | |',                      / | | |  /  /
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      |  ,  i |ヽ                 /i |   |  /i  /
      |/ ノ レ ー─--------───一'  ノ レ' レ'  レ'

「まりさ!どっちが先に森の奥にたどり着けるか競争しようよ!」

それは、今はもう過去の物となった記憶の残滓だった。
「…あいつを倒してけじめを付ける…そのためにまりさはこんな所まで一人で来たんだぜ!」
エネルギー充填100パーセント。
どす・まりさがピグ・れいむに向かってドススパークを発射しようとしたその時だった。


「ウアアアアアアアアアア!」


ドンッ!


突如、横から凄い勢いで何かが飛んできた!
弾丸のごとき速度で飛んできたそれは、ドス・まりさの体制を崩させる。

「うわあっ!?」

姿勢が崩れたドス・まりさはそのままの勢いでドススパークを発射してしまう!


ズバアアアアアアッ…!


狙いがずれてしまったドススパークはピグ・れいむに直撃することはなく、
ピグ・れいむの横にある森林をなぎ払うだけに終わってしまった。

「しまっ…!」

思わず叫ぶドス・まりさだがもう遅い。


                // ヽ,
               ,.└''"´ ̄ ̄   `ヽ、
             ,. '´     、、   ヽ  ヽ
           ノ   ,  lヽ  j /、lヽ ト、_,,.',
          r'´ r'"イ .ノ\| .レ r=;ァ'レ'  {  }
          {  !、 l rr=-       /  `'''l.>‐ .、
          レヽ.,ト'     ー=‐'   /    l 、,,_,,ノ
          {  ,}' ',          /ヘ,  /レ' ,/ >‐、
          .7'´レ1 ヽ            人ル'レ'   'i、_ ノ
      __,-‐'、  レ~i` ヽ 、_     ( "  ______
     /       ヽ _/ ̄ ̄ ̄ ̄ ヽ_ゝ         /
     /   _, -‐ ' ̄                \ _ ノ| ヽ
    i r‐'                         ヽ    ヽ/
    !/|                            \  ノヽ
   / ── --- __            __ --- ── \  i
   / ── ‐‐‐     ̄         ̄     ‐‐‐ ──  ヽ   i
   i   /  i \    / /、 | ,   /   ! |  、  /   i  |
   |  ノi   | _\  ノi ノ ヽ レ' /  __ノ .レ'  ヽ ノ|  |  |
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   |/ノ '| | ヽ L_ _|:::::::::::::::::::::::::::::::L_ __ノ ノ   |    | ヽ  | | |
     iヽ/i ////              //// | ̄ ̄|  i i  |
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      |__,ゝ         ヽ __ノ            |__| ノ |  |
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      |  ,  i |ヽ                 /i |   |  /i  /
      |/ ノ レ ー─--------───一'  ノ レ' レ'  レ'


自分を狙う敵が居るということに気が付いたピグ・れいむは姿を実体化させた。
それは、戦闘体勢に入った事の証明であった。

「くそ!あいつに気づかれる前に一発でしとめたかったのに!」

ドス・まりさはそう毒づきながら辺りを見回す。
先ほど自分に体当たりしてきた謎の敵、その正体を見極めるために。


          ,. -───-- 、_
      rー-、,.'"          `ヽ、.
      _」::::::i  _ゝへ__rへ__ ノ__   `l
     く::::::::::`i / ゝ-'‐' ̄ ̄`ヽ、_ト-、__rイ、
      \::::::::ゝイ,.イノヽ! レ ヽ,_`ヽ7ヽ___>
      r'´ .ィ"Y◎`,  、 '◎Y.::`!  i  ハ
      ヽ/ ! " ⌒,トェェェイ⌒.::::::::i  ハ   ',
      .ノ /l    |,r-r-|  .:::::::ハノ i  ヽ.
      〈,ヘ  ヽ、 `ニニ´ .::::::::,〈 i  ハ  i  〉
       ノ レ^ゝi>.、.,_____,,...ィ´//レ'ヽハヘノ


「ウゥウウウウウ!ウゥウウウウウウ!」

そいつはドス・まりさのすぐ横でうなり声を上げていた。
本家の愛らしさが消えたその表情からは、自身がれみりゃとは別の生き物であることを主張しているようだ。

「れみりゃもどき!?何でこいつが!?」

ドス・まりさはれみりゃモドキを診て驚きの声を上げた。
れみりゃもどきは基本的にゆっくりを見つければ種族やガタイの大きさなどお構い無しに襲い掛かってくる生き物だ。
なので、ドス・まりさを発見して襲い掛かっても不思議ではない。
問題はタイミング、どう見てもあれはドススパークの発射を邪魔したようにしか見えない。

「…ん?」

ドス・まりさはそこで気づく。
れみりゃもどきの頭に何かが生えていることに。

               ,,、
            ,.・'  ̄ ̄'ヽ.
           〈 リハlノ´r:zN.〉
          o.・'丈r=' __, ノ.,゚・o
          ,. -ヾ.`)  ('`′
      rー-、,.'"          `ヽ、.
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     く::::::::::`i / ゝ-'‐' ̄ ̄`ヽ、_ト-、__rイ、
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      r'´ .ィ"Y◎`,  、 '◎Y.::`!  i  ハ
      ヽ/ ! " ⌒,トェェェイ⌒.::::::::i  ハ   ',
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それは、ピグ・れいむの頭に生えているものよりは遥かに小さかった。
だが、間違いない。
れみりゃもどきの頭に、きせい丸が生えているのだ。


「き、きせい丸!?そうか、ピグ・れいむの奴から感染したんだな!?」


きせい丸は生物から生物へ、次々と寄生して増殖していく生き物である。
そして、寄生された者はある変わった行動を取る。
それは、寄生された者同士は、お互いに守りあおうとするのだ。
寄生されたれみりゃもどきがドス・まりさを攻撃した理由。
それは今にも攻撃されそうだった同胞を守るための行動だったのだ。


「くそ!ピグ・れいむの相手だけでも厄介だってのに!」


ドス・まりさはそう毒づくと、帽子の中からかなり怪しい色のキノコを取り出した。
そしてそいつをれみりゃもどきに向かって投げつけた!

ボンッ!

「………!?」

キノコは破裂し、その胞子が辺りに散乱する。
れみりゃもどきはその胞子を吸い込んでしまった。

「…!?」

途端にれみりゃもどきは痙攣したかのような表情になり、地面に落下する。
そしてそのまま、ピクリとも動かなくなってしまった。

「シビレダケだ!そこで大人しくしているんだぜ!」

動けないれみりゃもどきにドス・まりさはそう言うと、改めてピグ・れいむのほうへと向き直る。
ピグ・れいむはドス・まりさの方へとゆっくり近づいてきている。
もし肉弾戦に持ち込まれたら不利になるのはドス・まりさの方だ。
何しろピグ・れいむには殆どの攻撃が聞かないのだから。

「くそ!チャンスを逃したのは惜しいがここは体勢を整えなおす!」

ドス・まりさはそう言ってピグ・れいむに背を向けて逃げ出そうとする!

ベチャッ。

その時、ドス・まりさの足元に何か粘っこいものが張り付いた。

「!?な、何だ!?」

ドス・まりさは焦りだす。
それは当然だ、張り付いた粘っこいものはトリモチの様になっており、ドス・まりさの動きを止めているのだから。

「身体が地面に張り付いたように動かない!?くそ!こうなったらちょっと熱いけど!」

ドス・まりさは帽子の中から赤いキノコを取り出した。
このキノコはハッカダケと呼ばれ、叩きつけると発火する特性を持ったキノコだ。
「こいつで身体に張り付いている粘っこいものを焼き払ってやるぜ!」
ドス・まりさはそう言って発火だけを叩きつけようとしたその時!


シュン!!

突然茂みから現れた何者かがドス・まりさの目の前を横切った。


  *o ゚ |+ | ・゚   *o ゚ |+ ○ ゚| ・゚ o |*゚・ +
  o○+ | ・| ○・ o゚|i・   |*゚ + | ・゚  ゚| o ○。
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  |o   |・゚。 。,.i (ヒ_]  ∪,___, `ヽ,. / |  ゚*o゚
 o。!    |! 。/    ∪  ヽ _ン   ヒ_ン )   ゚o*
   。*゚  l _,./__,,. -‐ ''"´ ̄ ̄`"'' .、`ヽ,ー:'    .|o
 *o゚,. ''"´ /´ / ;'     !     ;`ヽ,ヽ、o* ゚|i
 。 | ゚'.、  .;'   ', i ´ハ_ _ハ  ノ メ !,!ヽ,.ヽ *゚・ +
  |o 。`Y    i Vレ'7;__,.!/ V !__ハ ハノ., ',ノ'; |  ゚
 o。! 。_ノ     i=ハ ==    == ハ.ノi   i  i゚o*
   。*。`.>'    iX|///∪ ,___,///ノ!レノ ゚ i  i|o
 *゚○∠._   ノ |=ヽ、   ヽ _ン ∪ノ!i レ  |i + o。
 。 | ・ 。  o,.ヘ,) | |>,、 _____, ,イ| |.o|! ゚o  *゚・ +
  |o 。 |・゚。。 .' | !>;`ヽ、「、,ハ.| | ゚l   | ○・o゚
     _|\∧∧∧MMMM∧∧∧/|_
     >                  <
   /\  ──┐| | \     ヽ|  |ヽ  ム ヒ | |
   /  \    /      /  | ̄| ̄ 月 ヒ | |
       \ _ノ    _/   / | ノ \ ノ L_い o o
     >                  <


次の瞬間、持っていたハッカダケが変なゆっくりが写っている写真へと変化していた。
「な、なんじゃこりゃあ!?」
写真を見て思わず叫んでしまったドス・、まりさ。
その次の瞬間、茂みからまた何者かが飛び出した。

                   ,,、
                ,.・'  ̄ ̄'ヽ.
               〈 リハlノ´r:zN.〉
              o.・'丈r=' __, ノ.,゚・o 
                ヾ.`)  ('`′
               ハVヾ  )   _,, ---―ァ
          r‐-―┴-ーノ"⌒ハ::ィヽ.;:::::::::::/
          \:::::::::::::::::/´    `  ヽ:::::/
            \:::::::ノ イ. ハ} /l V!ハ丶ヾ
             く` ノV i'「\ヽ|/ /}ハlヾ ノ
  i´`Y´`Y`ヽ(⌒)   ヽ `ヽ、,゙ー‐゙*゙ー‐゙i;},ゞ
  ヽ_人_.人_ノ `~ヽ   \\弋 ナ十弋 |    ,(⌒)
    \___    \   \トメ‐十ー/   ノ  Y`Y´`Yヽ
            \_ 〉     ̄ ̄ ̄  (´ ̄   .i__人_人_ノ
                          ` ̄ヽ

「すり替えて置いたのさ!」

変な覆面を被ったそのゆっくりはドス・まりさの前でそう言い放った。
その頭にはやっぱりきせい丸が寄生している。

「スパイダーマだとぉ!?」

ドス・まりさはそのゆっくりをみて思わず大声でそう叫ぶ。

               彡⌒ヾ、
               ハVヾ  )   _,, ---―ァ
          r‐-―┴-ーノ"⌒ハ::ィヽ.;:::::::::::/
          \:::::::::::::::::/´    `  ヽ:::::/
            \:::::::ノ イ. ハ} /l V!ハ丶ヾ
             く` ノV i'「\ヽ|/ /}ハlヾ ノ
  i´`Y´`Y`ヽ(⌒)   ヽ `ヽ、,゙ー‐゙*゙ー‐゙i;},ゞ
  ヽ_人_.人_ノ `~ヽ   \\弋 ナ十弋 |    ,(⌒)
    \___    \   \トメ‐十ー/   ノ  Y`Y´`Yヽ
            \_ 〉     ̄ ̄ ̄  (´ ̄   .i__人_人_ノ
                          ` ̄ヽ

スパイダーマ:危険レベルB

こいつも見た目はゆっくりに似ているが、全く別の生き物である。
粘着力の強い巣をつくり、その巣に掛かった獲物を食べる生物である。
また、いろいろなものを摩り替える習性を持つ。
何故そんな事をするのか、現在も解明されていない。


「くそ!寄生されているのはれみりゃもどきだけじゃなかったのか!
 まりさの身体に張り付いているのもこいつの巣だな!?」


ドス・まりさはすりかえられた写真を地面にたたきつけると、また帽子の中から写真を取り出そうとする。

プシュー!

しかし、次の瞬間スパイダーマは手から糸を発射した!


ベチャ!


糸はドス・まりさの帽子にモロに引っかかる!
結果、帽子と頭が糸でくっついて帽子の中のものを取り出すことが出来なくなってしまった!
「なぁ!?なんつー事してくれるんだこいつ!!」
ドス・まりさは慌てて帽子を何とかしようとするが、手足がないのでどうしようもない。
この辺の不便さは、幾ら図体が大きくなろうが胴なしゆっくりとあまり変わらないのであった。


ゴォオオオオオッ!


そうこうしている内に、ピグ・れいむは身体を光らせ始める。
夢想封印をドス・まりさに向かって放つためだ。


「くそ!まずい!このままじゃあまずい!」


幾らドス・まりさでも夢想封印をまともに食らったらタダではすまない。
何とか逃げようとするがスパイダーマの巣のせいで身体が動かない。
「くそ!完全に打つ手なしか!」
こうなったらせめて夢想封印のダメージを軽減しようと、ドス・まりさは防御姿勢をとる。
そして、そんなドス・まりさに向かってピグ・れいむは夢想封印を放とうとする!
その時だった。


「うぉおおおおおおおおおおおお!間に合え~!」


何者かがそう叫んで、ドス・まりさとピグれいむの間に何かを投げ入れた!


カッ!


次の瞬間、激しい閃光が辺りを照らし出す!

「うぉ!?」

「!?」

ドス・まりさもピグ・れいむもその眩しさに思わず視線をそらす。
いや、それだけではない。
ピグ・れいむの全身を覆っていた、夢想封印の光も消えている。
突然の閃光で集中力をそがれて夢想封印の構えが解除されたのだ。

「く…なんだ、今の光は…。」

「おい!無事かドス!?」

「まさか、今の声は!?」

その声に驚いてドス・まりさは声のした方向へと振り向く。
「…く、マグネシウムがあんなに激しく輝くとはな…。
 まだ視界がちかちかする…。」
そこには大月が、襲い掛かる眩暈を抑えながら立っていた。
どうやらさっきの光は、大月が持っていたマグネシウムを使って作った簡易閃光弾の光だったようだ。
…何故マグネシウムなんて持っていたのかって?
そこはほら、こいつ一応カメラマンだし。

「…お前なんでここにいるんだ!?まりさが閉じ込めたはずなのに!」

ドス・まりさは大月の姿を見て思わず呟いてしまう。
それはそうだろう、大月をはじめ、あのゆっくり達は安全の為に洞窟の中に閉じ込めてきたのだ。
それが何故こんな所に居るのか、ドス・まりさに全然理解できなくて当然だろう。


「そんなことはどうでも良い、それより一緒に逃げるぞ!」


大月はそう言ってドス・まりさに手を差し出した。
…そんな大月に向かってドス・まりさは済まなさそうにこう言った。


「…まりさもそうしたいのは山々なんだけど、今はチョット無理なんだぜ。」

「何だって?」

「ちょっとした罠にかかって動くことが出来ないんだぜ。」

ドス・まりさはそう言って視線を下にやる。
視線の先では、ドスまりさの下半身が蜘蛛の糸で地面に張り付いているのが見える。

「こ、これってスパイダーマの糸か?」

大月はその糸を見てそう言うと、どす・まりさはコクリと頷いた。

「そうだぜ、一度張り付いたら象でも剥がせない代物だぜ。」

「まずいな…何とかしなければ逃げることは出来ない。」

大月はどうしたものかと考え始める。
一方、ピグ・れいむは体勢が崩れたことで解除された夢想封印のチャージをやり直している。
早くドス・まりさを開放しないと、再び夢想封印の餌食になってしまう。

「くそ!さっきスパイダーマにすりかえられたハッカダケがあれば簡単なのに…ン?」

そこでドス・まりさは気づく。
大月の足元に何かキノコが落ちている。
しかもそのキノコ、ドス・まりさには見覚えのある色合いをしているような…。

「ア~!見つけたー!」

ドス・まりさは大月の足元に落ちているハッカダケを見て思わず叫んでしまった。

「!?急、急に叫ぶのはやめてくれ…何か心臓に悪い…。」

「ア、ゴメン。」

思わず謝るドス・まりさ。
しかし、何故、大月の足元にそんな都合よくハッカダケが落ちているのだ?
「あまりの眩しさに目をくらませる男、スパイダーマ!」
その答えはすぐに見つかった。
スパイダーマが目を押さえて辺りをごろごろ転がっているのだ。
恐らく、さっきの閃光弾の光を直視してしまい、思わず目を押さえて辺りを転がっているうちに
摩り替えたハッカダケを落としてしまったんだろう。

(…なんにせよ、この状況は使える!)

ドス・まりさは大月に向かって指示を出した。

「おっさん!足元のキノコをまりさのくっ付いている部分に投げてほしいんだぜ!」

「え?な、何故!?」
いきなりドスに他の見事をされて戸惑う大月。

「いいから早く、もう余り時間はないんだぜ!」

言いながらドス・まりさはピグ・れいむの方を見る。
…夢想封印のエネルギーは順調に集まっている、
その光り具合からしてチャージされたエネルギーは50パーセント位だろう。
もはや一刻の猶予もない。

「…く!何が何だかわからんが…!」

そう言って大月は足元に落ちていたハッカダケを拾い上げる!
そしてそのまま、ドス・まりさの下半身にある蜘蛛の巣がくっ付いている部分にハッカダケを投げつけた!


ゴオアッ!


ハッカダケはドス・まりさの足元で大きく燃え上がる!
「うおわぁ!?」
いきなり燃え上がったもんだから大月も驚いて後退してしまう。
「アチチチチチチ!やっぱり幾らなんでもこれは無茶だったか!?」
ドス・まりさはその炎に根性で耐え抜く!
そうこうしている内にドス・まりさを縛り付ける蜘蛛の巣が少しずつだが燃えていく。

「あと少し…!あと少しで、動けるようになるんだぜ!」

「お、おい!何か色々良いにおいがしてきているが大丈夫なのか!?」

大月が心配そうな顔でそう話しかけてくる。
「心配するな!問題ない!」
ドス・まりさはやせ我慢しながらそう答えた。


ゴォオオオオッ!


と、その時だった。
ピグ・れいむの方が夢想封印の充電を完了したのだ。

ドオッ!

次の瞬間、無数の光の魂がドス・まりさと大月に向かっていく!


「!?」

「うわああああああああ!?」


ドゴォァアアアアアアン!


夢想封印の爆発で辺りの木が吹っ飛び、砂煙が舞い上がる。
その様子を見たあと、ピグ・れいむはゆっくりと夢想封印の着弾地点に近づいていく。

「……?」

そこでピグ・れいむは首をかしげる。
なぜなら、着弾地点にあるはずの、黒焦げのドス・まりさと大月の死体が何処にも無かったからだ。


~☆~


「はぁ、はぁっ…!」

大月は全身汗びっしょりで膝を付いている。

「ま、間に合ってよかったぜ…!」

その隣ではドス・まりさがホッ、と一息ついていた。
夢想封印の着弾の瞬間、ドス・まりさはやっと自分を拘束する蜘蛛の糸を焼き切る事が出来た。
そして夢想封印を間一髪で交わし、(とはいえ、直撃しなかっただけついでに大月の方に行った光弾もその身で受け止めたのでダメージは半端なかったが。)
夢想封印の爆発で起こった爆煙に紛れてピグ・れいむから逃げ出すことに成功したのだ。

「よし、とりあえず今は逃げるぞ…こっちだ、案内する。」

大月はドス・まりさのほっぺを引っ張って誘導しようとするが…。

「…悪い、逃げるならお前だけにしてくれ。」

ドス・まりさはその手を振り切ってそう言った。
そして、今だダメージの残るその体を無理やり起こして、どこかに行こうとする。
何処に行くのか?決まっている、ピグ・れいむの所だ。


「おい!その怪我で、またあいつに戦いを挑む気か!?自殺行為だぞ!」


それが解っているからこそ、大月は慌ててドス・まりさを引き止める。
「何するんだぜ!行かせてくれ!」

「死ぬと解ってて行かせる馬鹿が居ると思うか!お前は死にたいのか!」

「違うぜ!あいつは…あいつは…まりさが何とかしなくちゃ行けないんだぜ!」

「何を言ってるんだ!くそ!完全に頭に血が上ってやがる!」

何とかドス・まりさをとめようとその身体にしがみ付く大月。
だがそれでもドス・まりさは大月を振り落としてでもピグ・れいむの元に行こうとする!
このままでは本当に収拾が付かなくなると思われたその時だった。


シュン!


茂みの中から何者かがドス・まりさの目の前に飛び出してきた!
そしてそいつはドス・まりさに向かって光言い放つ。

\   、 m'''',ヾミ、、 /
  \、_,r Y  Y ' 、 /';,''
  、 ,\ヽ, | | y /、 ,;;,,'',
  \、\::::::::::/, /,, ;;,
   ヽ\ o 、 ,o / { ;;;;;;;,,
   丿 [ \|:::|/ ]  >"'''''
    >、.>  U   <,.<
  ノ  ! ! -=- ノ!  ト-、
..''"L  \\.".//_ |   ゙` ]

「落ち着きたまえ。」


「…。」

「…………。」

「…何か、すごく落ち着いた。」

ドス・まりさはそれまでの暴れっぷりがうそのような口調でそう言った。

「そうか、良かったであるな、では!」

それを聞くと、そいつは満足そうな顔をしてまた茂みの中に戻っていった。

「…なんだ?あれは?」

「さあ?」

二人は顔を見合わせて首を傾げるばかりであった。







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   ヽ\ o 、 ,o / { ;;;;;;;,,
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【リューサン】危険レベルD

謎の仮面を被った生き物、
趣味はジャンプ。
そして興奮している生き物の前に現れては
「落ち着きたまえ。」の言葉で落ち着かせ帰っていく。
割と出落ちな野生生物である。

…自然は、まだまだ謎にあふれている。



~☆~


「済まないんだぜ、このまりさとしたことがチョット頭が熱くなってしまったぜ。」

先を行く大月の後を追いながら、ドス・まりさがそう話しかけてくる。

「気にしなくていいさ、情に流されるのは、人間もゆっくりも同じだからな。」

そんなドス・まりさに対して大月は笑いながらもそう答えた。
本当にドス・まりさの失態の事なんてあまり気にしていないようだ。

「それより見えてきたぞ、ホラ。」

大月はそう言って前方を指差した。


「ホラ!もうチョット踏ん張って!ガンバ!ガンバ!」

「て、てゐさん…これを木の上に上げるには徹底的に体重が足りないんだど…。」

「貴方もこっちに降りて手伝ってくださいよ!」

「え~でも私が降りるとせっかく上に上げたこれをセットする奴が居なくなるじゃない。」



そこに居たのは、蔦に絡まって下に引っ張っているれみりゃとむらさと
木の上で必死で二人のゆっくりに呼びかけるてゐであった。

「おいぃ、土台はこの位の大きさで良いんですかてゐ?」

「上出来上出来、これなら例のぶつも余裕で乗っかるよ。

ちなみにてんこは木の上で何かを作っているようだ。

「…何してるんだ?あいつら?」

ドス・まりさは木の上でワイワイやっているてゐ達を見て思わずそう呟いた。
それに答えたのはてゐであった。

「決まってるでしょ、あのデカイれいむをぶっ潰すための仕掛けを作ってるの。」

それを聞いたドス・まりさはフッ、と皮肉に満ちた笑みを浮かべる。

「あいつを倒すための仕掛けだと?そんなの作るだけ無駄ってもんだぜ。」

「でも、あんたもピグ・れいむに返り討ちにあったんでしょ。」

「う。」

てゐに図星を突かれ、ドス・まりさは言葉に詰まってしまう。
「その様子だと図星みたいだねぇ。」
にやりと笑うてゐ煮向かってドス・まりさは反論する。

「う、うるせ~!お前だって一匹じゃあきっと適わないんだぜ!」

その言葉に、てゐは特に動揺したりはしない。

「そうだね、適わない、だからこそ力を合わせなくちゃいけない。」

そう言っててゐは木の上からドス・まりさの前に飛び降りた。

「あたし達の知恵とあんたの力を合わせないと、あいつは倒せない、そうだろ?」

「ほう正論ですね、てゐとどあう・まるいさが合わせれば確実に最強に見える。」

てゐの言葉にうんうんとてんこが頷く。
それを聞いたドス・まりさはふぅ~と、深いため息をついた。
「おっとっと。」てゐはそのため息でちょっと吹き飛ばされそうになった。

「…参ったね、出来ればまりさ一人だけの力でこの事件は解決したかったんだけど。」

「ふぅん、妙な事にこだわるね、何か理由でもあるの?」

てゐの問い掛けにどす・まりさはしばし考える。

「…そうだな、もうお前達はここまでかかわった異常、黙っている訳には行かないか。」

そして意を決した表情になるとドス・まりさはこう言った。

「…これからお前達に、ちょっとした昔話をしてやるんだぜ。
 耳の穴かっぽじって良く聞いてくれ。」

そして、ドス・まりさの語りが始まった…。

~☆~


ゆっくりの国がある大陸の奥にある前人未到のジャングルの奥の奥。
そこにドス・まりさを初めとした巨大ゆっくりの村があった。
そこには人間より二、三倍程度巨大なだけの巨大ゆっくりも居れば
まるでゴジラかなんかじゃないかと思ってしまうほど巨大なゆっくりも居る。
そして通常サイズのゆっくりと袂をわかった巨大ゆっくり立ちはその誰も入ってこれない秘境で
ゆっくりとした暮らしを続けていた。

ドス・まりさも子供の頃からこの巨大ゆっくりの村に住んでいた。
そして、その頃ドス・まりさにはとても仲の良いゆっくりがいた。

「お~い、ドス~探検の準備は終わったの~。」


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       i   /\    /ヽ    /ヽ    /ヽ    /i    i
       i  /i_Y_ヽ /  ヽ  / ヽ  __/_ ヽ  / i   /
       ヽ/ | |.i  __\   ヽノ  /ノ    ヽカ_Y   i
         .| .|ir'ト ̄カ       ト ̄ ソヽ   i|  |     i
         |  .ii,ヽ _」       i__ノ 丿   .i|  |     i
         .|ww|i//  ,_____,    ///   .i|wv|     i
       ./ ' ̄ i    i   ヽ i         i  ̄ ヽ    i
       |   ハ     ヽ   ソ         ハ   |    i
       |  / ヽ      ー '         ノ ヽ /   i
        iノヽノ   "、              イ  .i/   i
        レ ヽノヽノ " 、____  イ ´ ヽ/  ヽ/



そういいながらピグ・れいむはドスの家に入ってきた。
「バ、馬鹿!デカイ声を出すんじゃないんだぜ!」
帽子の中に色々入れていたドス・まりさは慌てた顔でピグ・れいむにそう言い放つ。
「ア、そっか、ばれたら村長に起こられるもんね、ゴメン。」
ピグ・れいむはそう言ってテヘッ、とした表情になる。
…ドス・まりさはその表情を見てちょっとイラっとしてしまった。

「…とりあえず、準備は万端、後は出発するだけだぜ。」

それでも気を取り直してドス・まりさはピグ・れいむにそう言った。
「よし、それなら急いで出発するだけだね!
 あの遺跡には何があるのかドキドキするね!」
ウキウキ状態のピグ・れいむは実に嬉しそうな顔でそう言った。
それにたいしてドス・まりさも笑顔でこう答える。

「ああそうだな、まりさも楽しみだ!」


巨大ゆっくりの村周りには秘境にはお約束ともいえる巨大な遺跡群があった。
誰が何時立てたものかは不明だが、危険なのは間違いないということもあって巨大ゆっくり達は
勝手に遺跡への立入る事をを禁じている。
しかし、子供というものはその好奇心を抑えきれずに禁を破ってしまうものだ。
まだ身体が大きくても幼かったドス・まりさとピグ・れいむもそうであった。

勝手に遺跡に入るゆっくりは居るがそれで戻って来れなかったゆっくりは居ない。
何より自分達は普通のゆっくりより戦闘力の高いゆっくりだ、どんな危険な敵が立ちはだかっても簡単に倒せる。
今回も無事に帰れるはず。
二人の巨大ゆっくりはそう思っていた。




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                        、/// ー=‐'





遺跡の奥であんな化け物に遭遇するまでは。

「だぁああああああ!?何だあれ!遺跡の奥にあんなのが居るなんて聞いてないぜ!」

「な、何だか解らないけどあれに捕まっちゃいけない気がするよ!ゆっくりしないで逃げるんだよ!」

生きるために逃げ出す二人の巨大ゆっくり。
しかし、「敵」は久しぶりの獲物を簡単には見逃さなかった。

「うわ!こっちからも迫ってくる!」

「来た道は使えないよ!別に道を使うんだ!」

四方から「敵」はジリジリ迫ってくる。
もう、ピグ・れいむの心配すらする余裕もなくなったどす・まりさは本当に必死になって逃げ回った。

「ひ、光…?で、出口!出口だぜ!」

やがて、何処をどう進んだのか、ドス・まりさは何とか遺跡を脱出した。

「…良かった、あいつらはもう追って来ないみたいだぜ…あれ?れいむ?」

そして、外に出てから後ろについて来ているはずのピグ・れいむの姿が何処にも無いことに気が付いた。


~☆~


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最終更新:2011年02月03日 18:12