~☆~
「…あの後、数人がかりであの遺跡を探し回ったがあの不気味な生き物も、
ピグ・れいむの姿も何処にも見当たらなかった。
まりさだって、ピグ・れいむはあの怪物に捕まって殺されてしまった…そう思っていたんだぜ。」
ドス・まりさの言葉をてゐ達は黙って聞いている。
「…だが、数年たって突然あいつはまりさの目の前に現れた、
数年間、一体何処で何をしていたのか、まりさには解らない、でも一つだけ解った事がある、
れいむは、あの怪物の一部になってしまったってことだ。」
ドス・まりさはそう言って歯軋りをする。
まるで、自分の無力さをすり潰すかのように。
「まりさの所為だ、まりさがれいむを見捨てなければれいむはあんな怪物にならなかった!
あれは、まりさが何とかしなくちゃいけない問題なんだぜ!」
そう絶叫するドス・まりさの目には確かに涙があふれていた。
「…なるほどね、それがあんたが一人で立ち向かおうとする理由だった訳だ。」
てゐは成る程、と納得した表情でそう言った。
「…悪いな、本当は一人で解決したかったんだ、あれはまりさの罪そのものなんだからな。
お前達を、巻き込みたくは無かったんだぜ。」
ドス・まりさはてゐ達に向かってすまなさそうな表情でそう言った。
それに対して、黙って聞いていたれみりゃ達は、こう言った。
「気にしなくていいんだど!れみりゃ達はこういう事には慣れているんだど!」
「突然のトラブルなんていつもめぐり合っているのは確定的に明らか。」
「…ま、そういうことだ、お前が気に病むことは無い。
遠慮なく、俺達の力を借りてくれ。」
大月はそう言ってドス・まりさの肩をポン、と叩いた。
「そっか…すまない、すまないんだぜ…。」
ドス・まりさは全身を振るって涙をぬぐうと、てゐ達に向かってこう言った。
「じゃあ改めてお願いするぜ!ピグ・れいむを倒すお手伝いをして欲しい。
あいつが悲劇を起こす所を、まりさは絶対見たくないんだぜ!」
そのお願いに対しててゐはこう言った。
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♪ rー-、,.'" `ヽ、. ィャァ- / ハ├──-//i i ,' r〈 〉:::::ァト-ヘ:::::〈ハ 〉' |
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く::::::::::`i / ゝ-'‐' ̄ ̄`ヽ、_ト-、__rイ、 }^ヽ、 i /:;:::::::::::::::;:::::::::::::::ゝ、____ノ ! |/`ー-ァ| |( ∨ー‐ァ' ./
.r'´ノ\::::::::ゝイ,.イノヽ! レ ヽ,_`ヽ7ヽ___>、_ ノ ハ } \ 〉--' /:/、__;:ィ::ハ::、_;:!:::i:::ハ::〈 | __,/ /∧、 |o|>-、 `ヽ/ /
/ヽ/ r'´ ィ"レ´(ヒ_] ,___, ∠ `! i ハ / }! i ヽ i::::::::/::::::ハ_ニ;、,レ レ、_;、ゝ::::|:Y ',(__,r/::::/ `ァー---r‐`ー‐イ\イ
/ / ハ ハ/ ! /// ヽ_ ノ /// i ハ 〈〈{_ ノ } _」 ハ:::::::レヘ::i' rr=-,´ r=;ァハソ:::ハ =ャ ヽr/::::::::/、 / | ,ハ::::ハ、
⌒Y⌒Y´ノ /l ハノ i ヽ⌒Y⌒Y´ |::::::::ノ:::l:|〃 ̄  ̄ l:::::|::ノ く人:::::く\へ.__ __rへ/::::::人>
〈,.ヘ ヽ、 〈 i ハ i 〉 ノ:::::::::::::ハヽ、 'ー=-' ノ::::i:::( =ャ \\::7--へ._><><__/::://
ノ レ^ゝi>.、.,_____,,...ィ´//レ'ヽハヘノ イ:::/::::::/:::イヽ>, -r=i':´イ:::ハノ `ト>、:::/___:::::::::___::!>'r '´
〈rヘ:::::!::レ´ `y二」ヽレ':::〈 ト、_ア`'ー-‐'´ ̄`ー‐ヘ _.ノ|
!__/ ∨_,!
「お代はお高くつくよ!少なくともそこのケチな人間よりは奮発してね!」
~☆~
深い森の中、ものすごい振動と足音が響き渡る。
逃した獲物を求めて山をさまよう存在、ピグ・れいむだ。
そのピグ、れいむの周りを寄生されたレミリャモドキが徘徊している。
勿論、こいつもドス・まりさを探し出すのが目的だ。
そんなピグ・れいむを茂みの中から見つめている奴らが二人。
「み、見つけましたよ、先生!」
「落ち着け!タイミングを見計らって一緒に飛び出すんだ。」
カメラマン、大月とその助手のゆっくり、むらさだ。
彼らは茂みの中でピグ・れいむが近づいてくるのをじっ、と待っていた。
ズン…ずん…。
ピグ・れいむが近づいてくるのを、大月とむらさはだんだんと大きくなる地面の振動で感じ取る。
「せ、先生、緊張してきました…トイレ行きたいです。」
「俺も行きたいが今はぐっと我慢だ!」
大月とむらさはヒソヒソ声でそんなやり取りを繰り広げる。
そして、大月達の隠れている茂みと、ピグ・れいむが極限まで近づいた次の瞬間。
「今だ!」
「ハイ!」
大月とむらさは、凄い勢いで茂みから飛び出した!
大月はその手に、むらさは頭の上に、愛用のカメラを持ちながら!
カシャッ!
瞬間、ピグ・れいむの視界をカメラのフラッシュが覆いつくした!
「!?」
「うわああああっ!?」
ピグ・れいむはひるみ、周りを飛んでいたレミリアモドキは光に驚いて逃げ出す!
「せ、先生!どうですか!?」
むらさは大月に向かってそう問いかけた。
「ユウウウウウウ…!」
ピグ・れいむが大月とむらさを鬼の形相で睨んでいるのを見て、大月はこう言った。
「よし!成功したようだ…後は全力で逃げるぞ!
目印を絶対に見逃すなよ!?」
「ハイ!先生!」
むらさと大月はすぐさま後ろを振り向くと、全速力で走り出した!
「ゆがぁあああああ!」
その直後に、ピグ・れいむは正に獣のような勢いで大月達を追いかける!
「せ、先生!あいつに追いつかれないでしょうね!」
「ぴ、ピグ・れいむは足が遅いから走っていれば追いつかれることは無いはずだ!…多分。」
「何ですか多分って~!」
むらさはツッコミを入れながらも全速力で走り続ける!
勿論大月も!
「うぉおおおおおおおお!」
ドドドドドドドドドドドドドドドド!
ピグ・れいむもただ追いかけるだけでは追いつくことが出来ないと解っているのか、
追いかけながら弾幕を発射してくる!
弾幕は大月達の身体を掠め、あちこちを吹き飛ばす!
「せ、せんせ~い!ホントに大丈夫なんですか~!?」
「ぐ、グレイスおいしいですの気概で駆け抜けるんだ!立ち止まったら死は確定だぞ!」
大月がそうむらさを励ましながらも、地獄の追いかけっこは続く。
そして、むらさも大月もそろそろ体力の限界が迫ってきたという頃…。
「…せ、先生!目印!目印です!」
「ホントか!見間違いじゃないだろうな!?」
「本当ですよ!ホラ!」
そう言ったむらさの視線の先には、小さなキャンプファイヤーのような組木が三つ並べてあった。
「よし!これで第一段階は終了だ!」
「ハイ!後はうまく私たちの後を追ってくれればいいのですが…。」
「そればかりは運任せだな…とにかく行くぞ!」
大月とむらさは目印を直角に右へと曲がった!
「ゆぅううぉおおおおおおおおお!」
ぴぐ・れいむも後を追って右に曲がった次の瞬間だった。
「うりゃああああああ!」
突然、右手の茂みかられみりゃが飛び出してきた!
その頬っぺたはまるで頬袋に食べ物を蓄えるリスの用にプクリと膨らんでいる!
「食らえ!ヨクスベルダケ!」
ドバァアアアアッ!
れみりゃは口の中から大量のキノコを吐き出した!
吐き出されたキノコはぴぐ・れいむの眼前にばら撒かれる!
ぴぐ・れいむはそのキノコを踏みつけた!
ツルッ!
「!?!?」
れみりゃが吐き出したヨクスベルダケは表面の摩擦係数がゼロになっており、非常に滑りやすいキノコだ。
そしてそれをいきなり目の前に吐き出されたぴぐ・れいむはそのキノコの上に乗っかってしまう!
するとどうなるか?
ツルルルルルルル!
ぴぐ・れいむはキノコの上を凄い勢いで滑っていく!
そして、キノコで滑って言ったその先には巨大な木が生えていた!
ドガアッ!
ピグ・れいむはその木の幹に顔面から突っ込んだ!
ミシッ、メキメキメキ!
衝撃でその木は根元から折れて倒れてしまう。
「ユ…ユ…。」
ピグ・れいむの方はと言うと、顔面から木に突っ込んだのが聞いたのか、
頭の上に星を光らせて目を回していた。
そんなピグ・れいむを木の上から見ているゆっくりが二人。
「おいぃ、気持ち悪いくらいにてゐさんの作戦がうまく行った感。」
その一方のてんこが相方に向かってそう報告する。
「確かにここまでは旨く行ってるね。、でもてんこ!ここからが本番だよ!」
その相方、てゐはてんこに向かってそう言った。
「言われなくてもそれは解ってる感!」
てんこは実にやる気満々でそう言い放つ。
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てゐはでかい大木から直接削りだしたような巨大な杭の上に乗っかっていた。
その大きさたるや、その杭を乗せている相当に太い枝が今にも重みで折れてしまいそうな程である。
「まぁ見てな、こいつを一発で当ててやる!」
てんこはてゐに向かってそう言うと…なんと、その杭を持ち上げた!
そしててゐはその杭にしっかり捕まる!
てんこはてゐを杭に載せたまま、ゆっくりと狙いを定める。
「むう、ここからだと目標が良く見えない不具合。」
「もっと右!もっと右でお願い!」
狙いが定まらずに困るてんこにてゐが大声で指示を出す。
「もっと右というとこの位ですか?」
てんこがゆっくりと微妙に杭の先端を右に動かし始める。
「オッケー!狙いは完璧!後は出来るかぎり真っ直ぐに投げてよ!」
「言われなくても!」
てんこはそう言うと、呼吸を整える。
そして…。
「ウォリャアアアアアアアアアアアアアア!」
全身の筋肉を使っててんこはその巨大な杭をピグ・れいむに向かって投げつけた!
「うぉおおおおお!?」
上にてゐを乗せたまま、その杭は真っ直ぐピグ・れいむへと向かっていく!
「!?!?」
その時、目を回していたピグ・れいむは正気に戻り、上空を見上げる。
次の瞬間、ピグ・れいむは真っ青な表情になった。
それもそうだろう、自分に向かって巨大な杭が飛んできているんだから。
すぐさま杭を交わそうと、ピグ・れいむは右に飛ぶ!
これで、杭はピグ・れいむの左側を掠めて飛んでいくはずだった。
しかし、ここでピグ・れいむは一つの計算違いを犯した。
「おっと、それでかわしたつもりにならないでよ!」
それは、てゐが木の杭の上に乗っかっていたと言う事だ。
すぐさまてゐは自分の体重を右の傾けて、気の杭の軌道を右寄りに変える!
グイッ!
その結果、木の杭の先端は再びピグ・れいむを捉える!
「!?」
ピグ・れいむは杭の軌道が変わったのでまた横に飛ぼうとする!
しかし、今度は旨くいく事は無かった。
ドッガアアアアアアッ!
「ゆがあああああああああっ!?」
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│ │
│ │
___ │ │ ______
/ ヽ _/ ̄ ̄ ̄ ̄ ヽ_ゝ /
/ _, -‐ ' ̄ \ _ ノ| ヽ
i r‐' ヽ ヽ/
!/| \ ノヽ
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/ ── ‐‐‐  ̄  ̄ ‐‐‐ ── ヽ i
i / i \ / /、 | , / ! | 、 / i |
| ノi | _\ ノi ノ ヽ レ' / __ノ .レ' ヽ ノ| | |
| | | / i / ト-- i ├- ヽ ! i | | i | |
|/ノ '| | ヽ L_ _| L_ __ノ ノ | | ヽ | | |
iヽ/i //// //// | ̄ ̄| i i |
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| i \ ヽ / | | | |. |
|__,ゝ ヽ __ノ |__| ノ | |
| | |', / | | | / /
| | | ヽ ノ| | | | ノ| /
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|/ ノ レ ー─--------───一' ノ レ' レ' レ'
てんこが投げた木の杭は頭の上に生えていたきせい丸をつぶして見事にピグ・れいむに突き刺さった。
「やった!」
てゐは杭がピグ・れいむに命中したのを確信して地面に降り立つ。
木の杭はピグ・れいむの脳天に不覚突き刺さっていて、実に痛々しいことになっていた。
その足元には、もとはきせい丸だったと思われるかけらが散らばっている。
欠片の一つ一つが微妙に動いているので、実に気持ち悪い。
「てゐ、やったか!」
と、そこへ大月とむらさがてゐに近寄ってくる。
「見ての通り、木の杭は見事に命中させたよ。」
てゐはそう言って耳でピグ・れいむを指差した。
「…これは凄いな、頭の上のきせい丸が完全にぐちゃぐちゃだ。」
大月は串刺しのピグ・れいむとその周りに散らばるきせい丸の残骸を見てそう呟いた。
「さすがの化け物も、ここまでされたらひとたまりも…。」
てゐがそう呟いた、その時だった。
ビクン!
突然、ピグ・れいむが大きく動いた。
「!?」
てゐ達は驚いて、ピグ・れいむから距離をとる。
「てゐさん、今あいつ動かなかったかど!?」
れみりゃが脅えた様子でてゐにそう問いかける。
「いや、あの杭は脳天から地面まで貫通してるんだよ!?普通なら…。」
てゐがそう答えた次の瞬間。
…ボヨォオオオオオオオン!
杭がまるでトランポリンが弾むような音と共に、上にすっぽ抜けたのだ。
「えぇえええええええ!?」
てゐ達全員が驚きの声を上げる。
上空に飛ばされた杭はあっという間に見えなくなり…
数十秒後、遠くで何かでかい物が地面に落ちる音が聞こえた。
…ピグ・れいむは潰れて原形を留めていないきせい丸部分以外は傷一つ無い表情でそこに立っていた。
「…嘘でしょ、あんなでかい杭を使っても貫通できないなんで何処まで弾力があるのさあの肌は!」
てゐもこれにはさすがに驚くしかない。
「ど、どうするんだ!?あれで倒せないということはもう打つ手が…。」
大月がそう叫んだその時だった。
「…いや、今ならまだ何とかなるぜ。」
てゐ達の前に出たドス・まりさはそう言い放った。
「あの一撃で、きせい丸の支配が弱まり、ピグ・れいむは満足に動けない!
今なら、まりさの全力ドススパークで吹き飛ばすことが出来る!」
ゴォオオオオオオオオ!
そう言うと同時に、ドス・まりさの身体にエネルギーが集まり始める。
「うわ!何かドス・まりさの奴、急にエネルギーをため始めた感!」
「みんな!ドス・まりさから離れるよ!あれだけのエネルギー!近くに居るだけでも危険すぎる!」
「りょ、了解だど!」
てゐの指示にあわせてドス・まりさを除くほかのメンバー達はその場から離れる。
これで、何の遠慮も無く、全力のドススパークをドス・まりさは撃つ事ができると言う訳だ。
「ユ、ユぐぐぐぐぐぐぐ…。」
と、その時だった、
さっきまで、全然ピクリとも動く様子の無かったピグ・れいむが急に動き始めたのだ。
ただし、その動きは、油を挿していない蝶番のように何処かぎこちない。
頭のきせい丸が半分吹き飛んでいる影響が出ているようだ。
そして、ピグ・れいむもエネルギーを貯め始める。
「…!て、てゐさん!あいつ弾幕を打つ気だど!」
「え!?」
離れようとしていたてゐはれみりゃの言葉に驚いてピグ・れいむの方へと振り向く。
確かに、ピグ・れいむの身体が弾幕を打つために赤く光っていた。
(ま、マズイ!いくらあいつでもあんな至近距離で弾幕を撃たれたら!)
そう思ったてゐはドス・まりさに向かってこう叫んだ。
「離れろドス・まりさ!そいつの直撃を食らったら本当にタダじゃあすまないよ!」
そのてゐの叫びはドス・まりさの耳に確かに入った、
しかし、それでもドス・まりさはピクリとも動かない。
「はなれる?バカいってんじゃないんだぜ、今動いたらドススパークのチャージが解除されちまうんだぜ!」
ピグ・れいむが弾幕を撃とうとしている事なんて、目の前に居るドス・まりさが一番わかっている。
しかし、だからといって今、ドス・まりさが逃げるわけには行かない。
今、あいつと決着をつけられるタイミングは、ここしかないんだから。
「相打ち覚悟だ!ここで決着をつけてやるぜ!」
そう叫ぶドス・まりさの瞳には、何の迷いも無い。
そして、ピグ・れいむの赤い光が最高潮に高まり、弾幕が発射されようとしていたその時だった。
しゅうぅううううん…。
「…え?」
突然、ピグ・れいむの赤い光が収まったのだ。
弾幕は発射されず、直後にドス・まりさのチャージは完了する。
だが、ドス・まりさのドススパークは発射されない。
「ど、どうなってるんだ!?この状況であいつが弾幕を撃って来ないなんてありえない…。」
そう、突然のピグ・れいむの行為に戸惑いを隠せずに居たのだ。
そして、その直後、ドス・まりさは更に戸惑いを覚えることになる。
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i r‐' ヽ ヽ/
!/| \ ノヽ
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/ ── ‐‐‐  ̄  ̄ ‐‐‐ ── ヽ i
i / i \ / /、 | , / ! | 、 / i |
| ノi | _\ ノi ノ ヽ レ' / __ノ .レ' ヽ ノ| | |
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iヽ/i ///U U /// | ̄ ̄| i i |
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|/ ノ レ ー─--------───一' ノ レ' レ' レ'~
そう、ピグ・れいむは涙を流したのだ。
「…な、何で!?」
その涙を見て、ドス・まりさは更に戸惑いを覚える。
…そして、ピグ・れいむの唇が微かに動いているのが見て取れた。
「…なんだ、何か言いたいのか?」
ドス・まりさはピグれいむが何か言いたいことに気づく、
唇の動きから読み取れる言葉はこうだった。
ご・め・ん・ね
…その瞬間、ドス・まりさは全てを理解した。
てゐ達の一撃によってきせい丸が潰れたことによって、
きせい丸の支配力がほんの少しだけ弱まった。
その、ほんの少しだけ弱まった部分から、本来のピグ・れいむの人格が出てきたのだ。
「…お前、こんな…こんな時に出てきてゴメンって。」
だが、この奇跡は本当に小さな奇跡でしかない。
頭の上のきせい丸はもう既に再生を始めている。
きせい丸が再生すれば、ピグ・れいむもまた、きせい丸の支配下に置かれるのだ。
「…それを言いたいのは、まりさの方なんだぜ。」
それが解っているからこそ、ドス・まりさは決意する。
後ろに居るてゐ達を守るために、
ゆっくりの国をきせい丸の脅威から救うために、
そして何より、あの頃から行方不明だった幼馴染をきせい丸の呪縛から解放するために。
「…ゴメンな、こんなことしか出来なくて。」
カッ!
次の瞬間、今までとは比べ物にならないくらいの激しい光が日の暮れかかった空を貫いた。
~☆~
日も昇りきらないほどの薄暗い空に、羽の音が響き渡る。
___________
/ /.| うー♪ うー♪ うー♪
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r'´ノ| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| | }^ヽ、
/ヽ/r| うーぱっく | |_ ノ ハ } \
/ヽ/ r' | | |/ }! i ヽ
/ / ハ ハ/ | ⌒ ,___, ⌒ | |{_ ノ } _」
⌒Y⌒Y´ .| /// ヽ_ ノ /// | | ⌒Y⌒Y´
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羽をばたつかせて空を飛んでいるのは、救助用のうーパックであった。
「う~う~、遭難者は何処に居るんだぞ~。」
救助用う~パックはそう言いながら山の上をぐるぐる飛び回る。
…と、彼女の鼻が、何かを捉える。
「この匂いは…匂いの出所はここだ~!」
そう言うと、救助用うーパックは颯爽と山へと舞い降りた。
~☆~
「ふう、やはりキノコ鍋は旨いですな。無事に山を降りれたらキノコパーティを開きたい気分。」
「てんこちゃん、そんな勢いよくがっついてると、絶対喉を詰まらせるど~。」
「お二人さん、落ち着いて!まだキノコはいっぱいあるんですから。」
てんこ、れみりゃ、むらさの3人のゆっくりは、キノコ鍋を囲んで和やかムードになっていた。
3人とも、凄い勢いでキノコ鍋を食べている。
よっぽど、ピグれいむとの戦いがきつかったのだろう。
「う~う~、遭難者、発見~!」
と、そんな事を言いながられみりゃの前に降りてくる奴がいる。
「ン?お前一体誰だど?」
れみりゃはうーパックを見て率直な疑問を投げかける。
「う~私は管理人代行者れいむに頼まれて山で遭難しているゆっくりの救助に来た
うーパックだぞ~!」
そう言ってうーパックは頭をパカパカと閉じたり開いたりしている。
「え?ってことは貴方、私達を送ってくれるって事ですか?」
「その通りだぞ~。」
むらさの問いかけに、うーパックはそう答える。
「それは助かるど!山からの帰り道は封鎖されてるから、
封鎖が解除されるまではサバイバル生活をすることになるのかなーって、みんなで考えていたところなんだど~。」
れみりゃは帰れるという事実に、思わず小踊りしてしまう。
「オイィ、帰るのは良いんですが、せめてキノコ鍋を食べつくさせてもらえないですかねぇ?」
てんこがそう言いながらキノコ鍋を物凄い勢いで食べ始める。
「…なんて意地汚い…。」
むらさはそれを見て呆れていた。
「…あ、忘れてたど!」
と、そこでれみりゃが何かを思い出したかのように立ち上がる。
「うーパックさん!今からゆっくりをこっちに呼んでくるので待っていて欲しいんだど!」
れみりゃはうーパックにそうお願いする。
「え?まだ遭難しているゆっくりがいるの?」
「そうなんだど!だからちょっと待っていて欲しいど!」
れみりゃはそう言うと、森の奥に向かって走り出した。
~☆~
「いい?一、二の、三、で引っ張るよ!」
赤い布の切れ端を口に咥えたてゐは大月に向かってそう言った。
「ああ、解かってる、そうなんども確認するなって。」
そう答える大月の手にも赤い布が握られている。
「それじゃあ行くよ!一!二の!三!」
てゐと大月は掛け声と共に、その赤い布を同時に引っ張った。
シュルルルルルルルルル!
あっという間に、金髪の髪に大きな巨大リボンが縛られた。
「お前達、終わったのか?」
ドス・まりさは後ろにいるてゐと大月に向かってそう言った。
「うん、終わったよ。」
「ご注文どおり、完璧なチョウチョ結びだ。」
てゐと大月はドス・まりさの後ろ髪を縛るリボンを見て、満足そうにそう言った。
「悪いな、あんなでかいリボン、まりさの髪に縛り付けるだけでも骨だったろうに。」
「まぁ、あんたには何だかんだで助けてもらったしな。
これで借りは返したってことにしてくれ。」
大月は満足そうにそう言い放った。
反対にてゐの方は、何だか不満げだ。
「…私としてはちょっと不満が残るけどね。
はぁ…あんたのお陰で松茸狩りがパァだよ…。」
そう言って深いため息をつくてゐ。
「おい、最初の目的は私のボディガードじゃなかったか?」
大月はすぐさまツッコミを入れた。
「お~い!てゐさ~ん!大月さ~ん!」
と、そこへれみりゃが大手…もとい大羽根を振って走ってきた。
「ん?れみりゃ、どうしたのさ?」
てゐはれみりゃを見てそう問いかける。
「救助のうーパックが来たんだど!あの管理人代行さんが手配してくれたんだど!」
「ホント!?」
「あいつ、やるべき事はちゃんとやるじゃないか!」
てゐと大月は、れみりゃの話を聞いて表情が明るくなる。
「急いでこっちに来るんだど!ぐずぐずしてると置いてっちゃうど~!」
れみりゃはそう言うと、凄い勢いで来た道を戻っていった。
てゐと大月もれみりゃの後を追おうと…する前にドス・まりさのほうへと振り向く。
「…じゃ、私達はうーパックにのって下山するけど…あんたは?」
「オイオイ、まりさが乗ったらうーパックが浮かないだろ、
まりさはこのまま、故郷まで歩きで帰らせてもらうぜ。」
「そ、じゃあここでお別れだね。」
「お前達、機会があったらまりさの村に遊びに来いよな。
最高級のキノコ鍋をご馳走してやるぜ!」
「…アハハ、遊びにいけたらね。」
ドス・まりさのすむ巨大ゆっくりの村は秘境中の秘境にある。
そう簡単に遊びにいける所でないのは、確かであろう。
「てゐ、行くぞ、むらさ達が待っている。」
「解かってるって…そんじゃ、またね。」
そう言うと、てゐも大月もれみりゃの後を追うように走り出す。
大柄な人間と、うさ耳のゆっくりの姿は、スグに見えなくなった。
「…それじゃあ、まりさ達も故郷に帰るとするか、なぁれいむ。」
そして、ドス・まりさも地響きを立てて歩き出す。
後ろ髪に縛られた、真っ赤な相棒に呼びかけて。
第三十二話、終わり
- せつないぜ・・・れいむの魂と一緒に故郷でゆっくりしていってね!!! -- 名無しさん (2011-02-03 18:21:07)
最終更新:2011年02月03日 18:21