※れみりゃとお兄さんシリーズの設定に準拠しております。
※これは
れみりゃとお兄さんの出会い(表)の続編です。
出来れば先にそちらをお読みいただきたいと思います。
ちなみに、裏の方は全く読む必要はありません。
↓よろしければどうぞ
初めてのれみりゃ観察日記
「う~♪う~♪」
「ほ~れ、高い、高い」
「うっう~♪ゆっくりぃ~♪」
俺はれみりゃを持ち上げ、そのまま両腕を頭上に上げる。
俗に言う『高い高い』というやつだ。
れみりゃは俺の手の中で両手を上げて喜んでいる…と、思う。
こいつずっと笑顔だから表情じゃよくわからないんだよな。
「じゃあ、弟君。れみりゃの相手をしててあげてね」
「おう、任せてくれ」
姉貴がそう言って立ち上がり、玄関の方へ歩いて行く。
先程言っていた『必要なものを買ってくる』のだろう。
何を買うのか気になるが、どうせ金を出すのは姉貴だ。
それに俺なんかよりこいつ…れみりゃのことに関しては詳しいのだろう。
何も聞かずに任せることにした。
これ以上地雷を踏むのは御免だったからだ。
「行ってきま~す」
「おう、車には気をつけろよ」
「う~♪う~♪ゆっくりぃ~♪」
俺はれみりゃと一緒に姉貴を見送る。
ドアを開けて出て行こう、という時に姉貴が一度こちらを振り向いた。
その顔はすでに先程まで泣いていたという面影は全くなく、いつもの悪戯っ子のような笑みを浮かべていた。
…それにしても、なんて邪悪な笑顔なんだ。
「いくられみりゃが可愛いからって変なことしちゃダメだよ?」
「するか!!」
「ひひひ、行ってきま~す!!」
姉貴は笑いながら今度こそ部屋を出て行く。
人を何だと思っているのか。
うむ、確かにれみりゃは可愛いけどな。
やましい感情ではないことは断言しよう。
まあ、姉貴もそれがわかっているからこそ冗談を言ったのだろうけどな。
「う~♪ゆっくりしていくんだぞぉ♪」
「ああ、俺は十分ゆっくりしているよ、れみりゃ」
俺はれみりゃを一度地面に置き、れみりゃの頭を帽子の上から撫でてやる。
「う~♪う~♪」
れみりゃは嬉しそうな声を出す。
撫でられるのは嫌いではなさそうだな。
これから俺とれみりゃは一緒に生活して行くんだ。
れみりゃの好きなこと、れみりゃの嫌いなこと、どちらも把握していかなければならない。
「う~♪う~♪ゆっくりぃ♪ゆっくりするんだぞぉ♪」
そうだな、姉貴が帰ってくるまでれみりゃの行動を観察してみよう。
こいつは人間の赤ん坊と違い、すでに二本足で歩くこともできるようだ。
ならばある程度の行動は取れるのだろう。
いつも笑顔でいるこいつがどのようなことをしたらどうなるのか。
俺はそのことに興味がわいてきた。
「うっう~♪」
ん?
俺がれみりゃに手を出さずに黙って見ていると、れみりゃが突然おかしな行動をとりだした。
え~っと…両手を頭上に上げ、それを同時に左足も一緒に上げる。
左足と両手を下げたと思ったら、今度は右足と両手を一緒に上げ始める。
その同じ動作を一定のリズムで繰り返す。
…何だこれ。
何をやっているんだ?
何かの儀式なのか?
俺は一所懸命考えるが…さっぱりわからん。
一度儀式にしか見えないと思ってしまうと、そのようにしか見えなくなってくる。
まさか邪神でも呼び出す訳ではないだろうしな…。
れみりゃが突然真顔になって『悪魔が集いし邪教の館へようこそ』とか言い出したら嫌過ぎるしな。
…って、邪教の館なんて言われてもメガテニストにしかわからん話か。
くそっ、さっぱりわからん。
仕方ない、れみりゃに聞いてみるか。
答えてくれるかどうか怪しいけど。
「なあ、れみりゃ。お前は一体何をやっているんだ?」
「うっう~♪かりしゅま☆だぁ~んすぅ♪」
そうか、『かりしゅまだんす』というのをやっているのか。
どういう儀式なんだ?
…
「なあ、れみりゃ、お前踊っているのか?」
我ながらアホのような質問だ。
しかし、踊っているのかどうかはもう一度確かめたかった。
何故なら、見た目だけでは踊りかどうかよくわからないからだ。
「うっう~♪れみぃのかりしゅま☆だぁ~んすぅ♪うぁうぁ♪」
その同じ動作をただただ繰り返すれみりゃ。
相変わらずの満面の笑顔。
やはり踊っていることは間違いないようだな。
もしかして、こいつ…。
「なあ、れみりゃ。お前踊ることが好きなのか?」
「かりしゅま☆だぁ~んすぅはぁ♪ゆっくりゆっくりぃ♪」
踊りながら俺の質問に答えるれみりゃ。
…なんか、いつの間にかれみりゃのコミュニケーション能力が格段に上がっているような…。
ついさっきまでは『う~う~』としか喋らなかったのに。
それはそうと、れみりゃが踊ることが好きなことはわかった。
正直、れみりゃの踊りは言われないと踊りってこともわからなかったが、それは今はいい。
一所懸命踊るれみりゃがとても可愛く見えてきた。
さっきまでは謎の儀式にしか見えなかったっていうのにな。
「え~っと、じゃあれみりゃ、お前の『かりしゅまダンス』というものを俺にもっと見せてくれ」
「うっう~♪れみぃのかりしゅま☆だんすでぇ♪ゆっくりしていくんだぞぉ♪うぁうぁ♪」
俺はれみりゃのダンスを眺め続ける。
れみりゃは俺の目の前で踊り続ける。
相変わらず同じ動作を繰り返すだけだったが、俺はそのことに不満を感じる訳ではなかった。
そうだな、これがゆっくり出来ているってことなのかもしれない。
「う~…」
そのダンスをしばらく眺めていると、れみりゃが突然踊るのを止め、お腹を手で抑えてその場に座り込んでしまった。
今は満面の笑顔もなく、どこか疲れたような顔をしている。
れみりゃの笑顔以外の顔を見るのは初めてのことだった。
ダンスを踊り続けて疲れたのだろうか?
「おい、れみりゃ、どうしたんだ?」
「う~…れみぃ…ぐ~ぐ~…」
ぐ~ぐ~?
そしてお腹に手を当てている…。
あっ、こいつ腹減ったのか。
え~っと、確か姉貴はこいつはプリンが好きだって言ってたな。
冷蔵庫の中にプリンなんかあったかな…。
俺は無言で立ち上がる。
ここで『よいしょ』なんて言ったら負けだろうから言わない。
俺は姉貴と違ってまだ若いのだ。
…こんなこと姉貴に言ったらぶん殴られるな。
俺は冷蔵庫を開け、れみりゃが食べられそうなものを探す。
う~ん…ないな…。
甘い物はそこまで好きじゃないからあまり買わないんだよな…。
砂糖ならあるが、これを直に食べるのは…ないよなあ。
どうしようかな。
「う~…」
れみりゃの悲しそうな声が聞こえる。
ああっ、もう少しだけ待ってくれ。
なにか考えるから!
え~っと、甘い物…つまりれみりゃは糖分が大好きなんだよな!?
砂糖を出したら舐めそうだが、さすがにそれは味気ないだろう。
しかしれみりゃが食べられそうな甘い食べ物はない。
う~ん…。
俺の視界に昨日買った黒いペットボトルが目に入る。
これだ!
俺はその黒いペットボトルの成分表を見てみる。
よし、糖分入っている!!
俺はその黒いペットボトルの中身を容器に移し替える。
中から黒い液体と白い泡が出てきて、それはシュワシュワシュワ…という音を立てる。
うん、良い音だ。
「おい、れみりゃ、これを飲め!甘いもんだぞ!」
「う~…?あまあまぁ~?」
「ん?あ、ああ、そうだぞ!!あまあまだぞ!!」
食べ物ではないがな。
俺はれみりゃにその黒い液体が入っている容器を差し出す。
しかし、甘味が好きならこれも好きだろう、多分。
「うっう~♪あまあまぁ♪」
れみりゃは俺の方を向いて大きく口を開ける。
…飲ませろってか?
まあ、
コップの使い方もわからないだろうから、仕方ないか。
「じゃあ、行くぞ、れみりゃ」
「うっう~♪あまあまぁ♪」
俺はれみりゃの口の方に容器を傾ける。
少しずつ入れてやらねばいけないだろう。
…少しずつ…少しずつ…。
あ、こんな時に…クシャミが…。
「へ…へ…」
やばい、止まらない。
「ヘックション!!」
「うぁぁぁぁ!?」
やばい、クシャミの衝撃で一気にれみりゃの口の中に入れてしまった!
俺は容器の中を見る。
その中はすでに空っぽだった。
つまり、れみりゃの口の中に全部入れてしまった。
「うぁぁぁぁぁぁ!!!しゅわしゅわぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「だ、大丈夫か、れみりゃ!!」
俺がれみりゃに飲ませたもの…それはコカ・コーラだ。
いわゆる炭酸飲料って奴だった。
いや、だって俺はコーラ好きなんだもん。
糖分入っているかられみりゃも大丈夫だと思って…。
「しゅわしゅわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「れ、れみりゃ、落ち着け!!」
れみりゃは狭い室内をのたのた走り回る。
その動きは鈍いが、当のれみりゃは大混乱の様子だった。
赤ん坊のれみりゃには炭酸飲料は刺激が強すぎたのだろうか?
まさかここまで盛大な反応をするとは。
「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
ごつん、という音を立ててれみりゃの動きがようやく止まる。
…あ、思いっきりドアに激突した…。
「だ、大丈夫か、れみりゃ!?」
「う~…しゅわしゅわぁ…ゆっくりできないしゅわしゅわはぽぉ~いだっぞぉ…」
れみりゃはフラフラしながらうわ言のように呟いている。
いかん、衝撃で目を回してしまったようだ。
俺はれみりゃの身体を両手で掴み、その場に寝かせる。
「れみりゃ、一旦寝るんだ。悪いシュワシュワはもういないから」
「う~…しゅわしゅわ…ゆっくりできないのぉ…」
れみりゃはうーうー言いながら寝た。
その寝顔はあまりゆっくり出来ていない様に見えた。
いや、間違いなくゆっくり出来ていないだろう。
俺は心の中で今日の反省をする。
うん、れみりゃが炭酸飲料が嫌いだってことがよ~くわかった。
失敗は成功の母だって言うしな!
これから共同生活を始めるに当たって、好きな物だけではなく嫌いなものも把握して行かなければいけないだろう!
だからこれは収穫なのだ!
断じて失敗ではないのだ!
別に自分を精一杯誤魔化している訳ではないぞ!
自分でも訳のわからないことを考えていると…
「ただいまぁ~!!」
姉貴が帰ってきたようだ。
なんて最悪なタイミングなんだ。
何とか悟られないようにしなければ。
笑顔だ、笑顔。
姉貴は両手いっぱいに荷物を持ちながら居間へと続くドアを開け、その笑顔を見せる。
すっかり元気になったようだな。
「お、おう、お帰り、早かったじゃないか」
「げっ!れみりゃどうしたの!?」
姉貴は俺の言葉を無視し、倒れているれみりゃに駆け寄る。
両手いっぱいの荷物は放り出して。
一方のれみりゃはうーうー寝言を呟くだけ。
れみりゃの様子を慌てた様子で見ていた姉貴が、ゆっくりと俺の方に振り返る。
口元は笑っていたが、目は全く笑っていなかった。
やばい、これは完全に怒ってる。
「弟君…れみりゃに何をやったの…?」
「え?え、え~と…さっきまでダンス踊っていたから疲れて寝てしまったんじゃないかな~…?」
必死に誤魔化す俺。
い、いや、確かに失敗したかもしれないけどさ…。
これは収穫ってことで…。
失敗は成功の母って言うし…。
「ふ~ん…」
姉貴は俺の供述に全く納得していない様子で室内を見渡す。
姉貴の視線が一点で止まる。
そこには、先程の騒動の時に放り投げてしまったのであろうコーラのペットボトルとコップが落ちていた。
やばい、重大な証拠が発見されてしまった!!
「へぇ~…どうしてあんな物が落ちているのかなぁ~?」
「あ、ああ…さっき俺が飲んだんだよ…」
こんなので誤魔化せるか…?
やばい、やばいって。
「ふぅ~ん…ふぅ~ん…」
姉貴はその全く笑っていない目で俺の顔を見る。
…これは確信持たれている…よな?
謝るなら今のうちかな…?
いや、まだまだだ!
あれは失敗ではない、収穫なのだ!
「う~ん…しゅわしゅわはぁ…ゆっくりできないぞぉ…」
ここでれみりゃの寝言が俺の心にクリティカルヒット!
やばい、被害者の証言は重大な証拠となってしまう!
どうする、どうする俺!?
「へぇ~…れみりゃはシュワシュワが大嫌いなんだ~…シュワシュワって何のことだろうねぇ~…」
「あ、ああ…さっきアーノルド・シュワルツェネッガーがテレビに…」
「…言いたいことはそれだけ?弟君…?」
ゆっくりと姉貴が俺のいる方向に歩みを進める。
それに合わせて俺は一歩後退。
やばい、マジ恐い。
「お、落ち着けって、姉貴…。し、失敗は成功の母という言葉を…」
姉貴の歩みは止まらない。
俺は壁際まで追い込まれる。
「いや、だから…」
「赤ちゃんにぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
「ちょ、ま…」
俺の言葉は姉貴の叫びにかき消された。
そして、直後に飛んでくる拳。
「炭酸なんかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
「ぐはあっ!!!!!」
姉貴の拳が俺の腹にクリティカルヒット。
相変わらず半端ねえ。
「飲ませちゃダメでしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
「ドゥワッハァァァァ!!!!」
その拳は一撃ではない。
容赦なく俺の腹に襲いかかる連激。
一発一発が非常に重い。
胃の中の物が逆流しそうな感覚に陥る。
ああ、やばい。
目の前が真っ白になってきた。
俺は薄れ行く意識の中で思う。
シュワちゃんって昔ボディビルダーだったんだよね、と…。
後書
沢山の更新に刺激されて私も書いてみました。
お兄さんはまだ若いので、失敗を認めたくないという子供っぽいところが残っております。
- 赤ん坊に炭酸飲料はないわー -- 名無しさん (2011-01-25 03:40:36)
- まさかの邪教の館w -- 名無しさん (2011-01-25 13:19:12)
- OK姉貴、時に落ち着けってw -- 名無しさん (2013-01-12 21:47:38)
- 砂糖があるなら砂糖水つくれよ -- 名無しさん (2013-02-01 20:03:12)
- うー♪うー♪うー♪うー♪うー♪うー♪ -- れみりゃ (2023-12-09 21:20:30)
最終更新:2023年12月09日 21:20