「きっと、また生えて来るよ。適当な奴等だし」
「適当ななぐさめだなあ…・・・・」
うなだれるにとりの肩を、椛は何度もさすった。
今になってみれば、本当に方向性を間違えた慰めだったと解る。
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「あー何か生まれそう」
「えっ」
「今まさに」
冬に入るか入らないかの境目の季節にて。
ちょうど、多々良が人里付近で、紅魔館のメエド長にからまれ、色々と質問を受けたという話をしていた
最中だった。
「何だって?」
「いや、人里で流行ってんのかとか何とか」
「肉まんねえ。冬だからかな?」
「”肉まん”って単語に何か意味があるのかもしれないよ」
2人はそこで、前方で待ち構えるように生えていた切り株と、その上のお饅頭に気が付いた。
――――森にてルーミアと多々良小傘が不意に出会ったゆっくりれいむが、挨拶もそこそこに。冒頭の台詞を
突然言い出したのが恐らく何よりの始り。
2人が眼中にない訳でもなく、一応例の「ゆっくりしていってね!!!」を言いかけて、その途中で言い放ったので、
「生まれそう」には2人が少なからず関係しているという事になる。
不気味だった。
2人はそれぞれ顔を見合わせたが、碌な想像ができなかった。
後から聞いた所、多々良は単純に酷く生々しい想像をしてしまったらしく(魚類に見られる何か)、ルーミアは
もっと芸術や創作といった分野の「生み」を想像したのだが、このゆっくりれいむから何かが創造されるという
発想が、そもそも少し恐ろしくあった。
結果的に言うと、ルーミアの想像が正しかった。
今もって正体不明のゆっくりれいむだが、確かに文化面には造詣が浅くはないと話していて思っていたのだ。
「崖に登ってみたくなったよ!!!」
「そ、そうか…… 何か決意したら崖だよねえ、やっぱり」
「―――………崖で」
獅子は、我が子を千尋の谷に突き落とし、這い上がってきた者のみを育てるという。
「私、用を思い出した」
「―――……何ぃ?!」
「ルーミアちゃんは、付き合ってくれる?」
「いいけど、今日は夕方―――神社に行くから」
恐らくその数分後には、妖怪の山にも近い断崖絶壁の上に2人で立っていたのだが、その経緯が何故か思い出せない。
多分飛んだのだろうが、気が付くとそこにいたのだ。
その崖の正確な位置もよく解らない。
岩が何層にも連なる、一見すると小高い階段の様な絶壁地帯だった。
その内の、かなり面積のある平地にて。
本当は多々良と積もる話のついでに、神社に行く前に食事をおごってもらう予定だったのに……
妖怪の山に入るか入らないか、そんな曖昧な境界線にあったのだろう。眼下には、人里の一部も湖も見えた。
―――そんな場所があるのだろうか?
ひんやりとした風が吹きすさぶ中、ゆっくりれいむはぼそりと呟いた。
「食らいつけども 働けども 楽ならず」
「何それ」
「最新の俳諧『7・6・5』」
百歩譲って、わざわざ俳句を生み出すために崖の上まで付き合わされたというのは解る。
人間の文化の中ではそこそこの芸術なのだろうし、社会的に発表する場面もあろう。
しかしだ。
「そんな気の遠いエポックメイキングな事のために私をここまで突き合わせたの?」
「エポックメイキングという事はわかっているみたいだね!!!」
「はっきり言って語呂悪いよ。流行るのは無理だと思うね」
「他にも、4・2・8 や9・6・1があるんだけど」
どれも中途半端だ。
「普通に俳句を謡えばいいじゃない」
「ノむノむ」
ノンノンとでも言いたいのか。
「やってみたけど、5・7・5でカッコ良くするのは難しい」
「かっこ良さで優劣が決まるの?」
「いや、女の子を助けた後、颯爽という台詞として5・7・5だと何か狙い過ぎ感が強くてさ」
こういう輩が、文化を衰退させるのだろうか。
俳句は、もうメインですらない。このゆっくりした饅頭にとっては、女の子へのアピールの道具にすぎないと
そういう事か。
ほんの少しだが苛立ちも覚えてしまった。
「それじゃあもっとかっこいい台詞を言えばいいだろ」
「それが思いつかないから先人の知恵を借りてるんだよ!!!」
何故か今まで見た事も無いほど、ゆっくりは怒り始めた。
「いいよねー! ルーミアちゃん達は、仕組みは未だに解明されていないらしいけど、ほぼ無限に弾が出せてさ。
ゆっくりは弾幕も出せやしないよ! かっこいい名前も言えやしないよ!」
「…………別に、弾幕ごっこの最中に大声でいう奴はそんなにいないよ。現実には」
ごめん嘘だ。ゆっくりに会う少し前辺りは、結構言ったりしてた。
「れいむも、『ダークサイドオブザムーン』 とか言いながら、颯爽と登場したいよ!」
「おいやめろ」
「『バッドレディスクランブル』とか『キングクラーケン殴り』とか言ってみたいよー!!」
「私のと同列に扱うな――――っていうか、そういう嗜好なの?」
そもそも、どこで、いつ、何者から、何故に、女の子を助けてみたい のかが解っていない。
「かっこよくいきたいよ!!!」
多分そこら辺はどうでもいいのかもしれないが、何だかゆっくりの言う「女の子」の定義を知ってしまう事が
とても恐ろしい事に思えて、ルーミアは深くは聞かないでおくことにした。
「技名に拘るなら、弾幕じゃなくてもいいじゃない」
「例えば?」
「んー 人間は弱いから、小細工として『格闘技』ってのがあるよね?」
一応、巴投げ という技だけはルーミアはできる。
しかし言ってしばらくして直ぐに後悔した。
首だけの饅頭に、格闘の何ができるというのだろう。
人間だって、例えば足の指一本欠損した所で、肉弾戦には雲泥の差がつくと聞いたことがある。
通常起こり得る構図ではないが、これでは強者の上から視点の話だ。それも優しさを装った無自覚の気分の悪い
タイプの。
「その発想は無かったよ!!! 名前だけなら、たくさんあるね……。その路線で行くね!!!」
「………やるの?」
「何を?」
「その、技」
「頭一つあるじゃない! 格闘なんて、同じ年代の奴等には負ける気がしないよ!!!」
「そんなんだったら、弾幕出せる努力しろよ!!!」
「知らねえよ! 弾幕なんざ出せねえって言ってんだろ! お前らどういうシステムで弾幕出してんだよ!」
「解んねえよ! 説明する事じゃねえだろ!」
「結局自分でも解ってねえじゃねえかよ! 飛び道具使えないなら、自分の体使うしかないじゃんか!」
「それはそうだが!!」
本当に何ができるんだ。
「じゃあ……ルーミアちゃん、ちょっと実験台になってよ」
「ああ……別にいいけど」
ゆっくりはぴょんぴょんと後ずさって、力をため始めた。
「行くよー! ロープワーク・タワーブリッジーーー!!!」
そして、崖の上に絶叫が響き渡り続けた。
―――こんな事は、不健康だ。
にとりは自覚していた。
しかし、今更引き返せなかった。
坂道を登りながら考える。
今、こうして運転している行為自体が物語っているというか、問題に直結している。本当にそのままだ。
だが、ここで停止すれば乗っている自分も大惨事だ。
引き返せなくなっている。
もういっそ自分が痛い目にあってしまえばいいのだろうか。
(嫌な目に遭うのは、私だけじゃないし………)
言い聞かせるように首を振り、にとりは坂道をなおも登る。
そして、この一人相撲を何回も繰り返していることに気が付きゾッとするのだった。
「今は忘れよう」
声にわざわざ出して、気持ちを落ち着かせようとした――――が、それすら許してもらえなかった。
坂の上から、絶叫が木霊したからだ。
「そりゃあーーーーーー マッスルミレニアムー!」
「のはあ」
「メガトンキング落としー!」
「うおおおお!」
「マッスル インフェルノ!!!」
それも2名の。
声だけではなく、何かが爆発したような、激しくひたすら縁起の悪い音まで聞こえる。
「――………何事?」
卒倒しそうに嫌な予感がして、にとりはギアを上げて、ペダルをこぎ続けた。
そして、坂を一気に上り詰める。
元々の目的地に到着である。
すぐさま、手荷物だけ車輪の脇に置き、地面に降り立つと――――― 一際凄まじい地響きが起こる。
砂煙の中、大惨事が繰り広げられていた。
絶叫の主(?)であると思われる宵闇の妖怪・ルーミア
ひっくり返っている。約270度。
つまり、脳天が地面に向けて、逆立ちするように、恐ろしく反り返った形でブリッジをしているのだった。
両足は、かろうじて、という言葉がピッタリな程、つま先だけが地面と接している。そして異様に股が開いている。
恐らく、最初は本当に180度ひっくり返り、それなりの上空から脳天から地面に落ちたのだろう。そして脳天を
そのまま支点に、バランスを崩して今の体勢になったという訳か。おかげで、スカートも元の状態に戻って
最初の印象程卑猥な状態にはなっていない。
その脳天の下に――――何という事だろう。
少女の生首が一つ、潰されているのだった。
可愛そうと言う言葉では言い表せない程、少女の生首は酷い事になっていた。
普通なら上半分は砕け散るなりして液状となっていてもおかしくはないだろうが、圧縮したお饅頭のように、
ただ潰れ、全体の質量はそのままに、扁平になっているのだ。
鏡餅に例えれば、通常の生首が頂点の蜜柑なら、今は一番下の土台の餅である。
元はきっと可愛かった顔も、今は間抜けとしか言いようがない程だ。
「う、うわああああああああああ!!」
「う、うおお………」
「―――お、お、お久しぶりですにとりちゃあああん」
―――ゆっくりしていってね!!!
と声が聞こえた気がしたが、どこから出たのか解らなかった。
「る、ルーミア、あんた何て事を………」
「うあああ……… 河童ぁ」
間抜けにも種族名をただ呻くだけだ。
馬鹿かこいつは。
「後生よ………」
「えっ?」
「あんまり見ないで……恥ずかしいわ」
怒髪天を突いて、帽子を地面にたたきつけ、にとりは怒鳴り散らした。
「まったくだな!恥を知れ恥を!」
「あ………あ…………?」
「こんなか弱い存在に、何て酷い事をしてるんだ!」
ルーミアは、無言でそのままばたりと仰向けに寝ころんだ。
そしてそのまま動こうともしない。
何と不遜な態度だろう。
「だ、大丈夫じゃ………ないけど…… うぅ、何て可愛そうな……」
にとりは半泣きでルーミアは無視して、生首に手をかけた。
首から下は全く見えない程、すっぽりと地中に埋まっている。
こんな状態自体がずっと続いていたのだと思うと胸が張り裂けそうで、思わず手に力がこもった。
そして、そのまますっぽりと生首を持ち上げてしまう。
「………え?」
「ゆっくりしていってね」
「…………」
ゆらり、とルーミアは立ち上がった。
目がすわりきっている。
「あんた………体はどこに……?」
「いや、そいつに体は元々ない」
そういう生き物(?)なんだよ、とルーミアは解説した。
成る程、かなり小さいが、大カムロとか、そこら辺の妖怪の一種か?
しかし、普通は妖怪の一種に「生物」という表現は使わない。それにしてもどこかで見た事のある顔だ。
「だからって、これは酷いよ! 原型をとどめてないじゃないか!」
「………あーはいはい」
「こいつ……!」
「ゆっくりこっちは全く大丈夫だよ!心配しないでね!」
健気と言うか、ルーミアと何かあるのだろうか? この生首お化けは、何故にルーミアを庇う?
「言い訳する気も起きないし、私が苛めてたと思うんならそれでいいわ」
「どう見ても苛めてたじゃないか!」
「それより、あれ………」
「あっ」
踵を返すと、そこでも大惨事になっていた。
自身のテクノロジーと体力と財力を結集させて作った半自動二輪車が、大八車ごと、消え失せていた。
理由は解っている。
先程の地響きで―――ルーミアの奴が、この気の毒な生首妖怪を苛めた時の振動で、動いてしまったのだ。
半自動二輪―――完全な自動ではない。燃費に改善の余地が大いにあるが、歩行するのと同じ程度の労力で、
米俵を目一杯乗せた大八車2台をこの絶壁の上まで運ぶことができる。
何故にこんなものを作る必要があったのかというと、河童は、水中でもない限り、人間と同程度の力しか
ないから。
「おい、ルーミア、どうしてくれるんだ!」
「どうもこうも………」
「か弱い生き物を苛めて、なおかつ私の仕事まで………!」
「河童、あんた言ってる事おかしいぞ?気づいてるか?」
「あぁ、時間も無いし、ここまであれを運ぶのにどれだけ手間がかかったと思ってるんだよ!」
言いたい放題だが、悲壮感と焦燥感は本物らしい。そこに利己主義的な印象は無かった。
涙目で、今まで運んだらしい荷物が―――どれ程の量だったのかは解らないが―――余程差し迫っていたのか。
だが、ルーミアは苛立ちの方を優先させた。
「関係ないし、そんな態度とられたら、こっちは何もできない」
「何おう! 本当に見損なったよ! ―――いや、元々君の事はあんまり知らないけどさぁ!」
ごしごしと袖で涙を拭きつつ、にとりも流石に言い過ぎと思った。やや温厚な口調にはなっていたが、それでも
弱い者苛めの件に関しては納得ができず、重くにとりは言った。
「とりあえず、この子を苛めてたって事は文にでも言っておくよ」
「………やめてよ。おい」
「いや、言うよ」
「やめてってば」
「言うよ。色々許せないもの」
「いやいやいや」
「ごめんね。荷物に関しては私の八つ当たりだわ。本当にあやまる―――とりあえず、私はまた麓まで行かなきゃ
ならないし、それは別に、あんたの態度と所業はどうかと思うし…」
「……………解った。多少手伝う」
多少の罪悪感が育ってしまったのだ。
ゆっくりと共に、2人は崖の下まで行く事にした。
「おや、メード長かな」
その日の椛の巡回は割と快適だった。
一年ぶりに火鉢が出され、皆瀧の外へ少しでも出る事が億劫にもなっていたが、温度を皆上げ過ぎて変に空気が
こもってしまい、外の巡回も却って気分が良かったほどだ。
詰所に戻る前、入口の前にて今一度妖怪の山の麓の少し先まで見渡すのが彼女の習慣だったのだ。
そこで、そろそろ妖怪の山の麓、とは言えないほどの範疇にある、人間の猟師たちの小屋に、紅魔館のメエドが
出入りしているのが見えたのだ。
しかし、一度入っただけで、本当に山には近寄らずにそのままどこかへ飛んで行ったまま見えなくなった。
「珍しい事があるもんだ」
あの面々とは、あまり接点が無い。中々興味深い連中とは思っているのだが……
さらにぐるり、と見渡すと――――友人の姿も視界に入った。
何をしているのかは、解っている。
「あー………」
嫌なものを見た。
と、一人ごち、悲しい気分となって椛は入室した。
ともあれ、今日の仕事は終わりである。
相変わらず蒸し暑い詰所では、他の数名の天狗達も動きが緩慢になっている。
「ただ今戻りました」
「椛さんそろそろあがりじゃないですか?」
「ふむ。どうしようかな」
前は割と就業時間を過ぎても、そのままだらだらと居続ける事が多かったが今は違う。というのも
「もう将棋やる相手もいないしねえ」
「でも今日は、博麗神社でまた飲むそうじゃないですか」
「時間余るなあ」
自宅は神社と正反対の方向である。
「まあ、ゆっくり行きなされ」
「そうだ、この前景品で当たった箱―――使ったらどうです?」
「―――たまには整えて行こうかな」
仕事中も、趣味の時もまず使わない――――やたら高価な化粧のセットを箱として先日もらった。
別段めかしこむ趣味を嫌っている訳でも捨てきった訳でも無し。
ただ必要を感じなかったが、こうした時くらいは有効活用と思った次第である。
「さて」
いつぶりだろうかと、洗面所にてやや念入りに行った。
殊の外、口紅の自らの帽子と同色のやや深めの色が気に入ってしまった。
そしてごく軽く白粉をはたくだけに留まろうとしたが、どうにも気がすまなくなって、念入りに
全ての道具を駆使して、終わるころには幾分時間も経っていた。
「お疲れお疲れ」
「椛さん」
「あー……椛さん」
後輩の女子天狗と、新米の白狼天狗が一瞬黙った。
「いいじゃないですかあ」
「おお、可愛い可愛い」
「………可愛いの?」
化粧と言うと、化ける→誑かす の意があり、椛の中では可愛いという表現はあどけなさや無邪気さ
とセットであったから、少なくとも少女のするものではない――――別の次元の表現が必要と考えていた。
それはそれで嬉しいが……
「うん。本当に可愛いですよお」
「もう少し、瞼とかも念入りにメリハリ付けても良いかも」
「そうかな」
もう一度洗面台に向かう事数分。
「やだ、椛先輩素敵………」
「これなら、宴会でも河童連中辺りならイチコロですよ!」
「おいおい」
それはどうだろうか。
河童が何人来るか解らないが、まあ河城は来そうにない。
遊び友達としては楽しいが――――
「お世辞で言ってるんだとしても、何も出ないよ?」
「いやいや、本当にいいですよ。やっぱり、白狼天狗も化粧で化けるんですねえ」
「椛先輩、色白だし髪も白いから、濃いめの赤とか青とかすっごく似合いますね!」
近くを、鴉天狗の射命丸が通りかかった。
いつもならそっぽを向くところだが、試しに向き合ってやった。
「………………」
「………………」
「何ですかあ」
「………いや別に」
「…………その化粧………いや、やっぱり言うのやめた」
客観的に今いち解らなかった。
しかし、本当に後輩たちの発言が世辞に過ぎず、更に実際は目も当てられない状態であったら、射命丸は
まず心にもなく褒めちぎり、そして、写真もとり、そしてその美しさを恥じる事は無いとか言い出して外に
送り込むぐらいのことはする。
逆に、客観的にいいものはあえて評価もせずに、遠まわしに貶して自信をなくさせる。
奴は、そういうやり方をしかねない天狗だ。
「よし、本当みたいだね」
「おっと失礼」
そばを通りかかった木の葉天狗が、射命丸にぶつかり、派手にミネラルブラッド(生血10%未満の飲料)を
椛にぶちまけた。
――――吸血鬼でもないのに、何故そんなものを持っている――――と怒鳴りたかったが――――理由は
解っていた。
「…………」
「――……こりゃ申し訳ない!」
「あ、着替えあるかなあ」
「ありましたー」
気の利く後輩達だ。
数秒と経たない内に、着替えを持ってきてくれた。
更衣室まで行くのももどかしく、洗面所で即座に着替えたが――――
「小さすぎじゃない?これ……」
「えぇ~? ぴったりですよお」
「いや、ほら、袴なのに、膝がちょっと隠れるくらい短いって何かおかしい……」
「そういうの、山の流行ですよ?」
「それに―――………脇が……」
「わお! 山と麓の巫女さん達とお揃いですね!」
これにはいろいろくすぐられる。
その言葉には少し弱いのだ。
「いやでも、お臍も丸見え………」
「変に暑いし、ちょうど良くないですか?」
「宴だって、最後は暑くなりますし」
「ふむ」
しかし、外は冬。寒い。
「あ、じゃあ厚手のコートをお持ちしましょう」
「こちらにっ」
恐らく猫科の動物の毛皮であしらったと思われる、分厚く高価そうな上着を、既に後輩たちは用意している。
「あら、完璧ねえ」
「着て見て下さい!」
分厚さは、そのまま重さにつながっていたが、確かに防寒は万全であろう。
くるりと回ると、皆歓声を上げる。
「―――じゃあ、行って来るよ」
「気を付けて――――」
気がつけば、結構な時間も経っていた。
まあ、神社に行っても時間は余る事だろうが、有意義に時間を過ごしたわけだ。
良い後輩を持ったものだ――――人間、いや天狗関係の豊かさに感謝しながら椛は飛び立っていったが、その分、
元々の友人との関係を思い出してやりきれない。
しかし。
飛び立ってしばらくすると、コートの重さが無視できなくなってきた。
そして、普通に暑い。
「ふう………」
神社まではやや遠い。
コートの前をはだけた辺りで、休憩を取ろうと、そのまま真下に着陸すると、そこは、とある絶壁地帯だった。
高い頂点に向かって伸びた坂道に、階段の踊り場の様にいくつか広場があって、そこに寂しく一本生えている
木が合った。
椛はそこにもたれかかり―――手持ち無沙汰で、タバコを一本飲み始めた。
「8往復って所か……」
「このままじゃ8往復だね」
ゆっくりとルーミアは、無事だった荷物と、その横で大破した半自動二輪と荷物を見上げつつ適当に言った。
食料品の箱―――あまり人間の食べるものではないものも交じっているから、妖怪用とも家畜用ともとれる。
積み上げられた段ボールの一つ一つの重さは、平均的な妖怪としては重くは無いだろうが、数も多く、非常に
持ち運びにくい。
大八車だけは何とか無事だったので、これに乗せて、地道に行くのが一番手っ取り早いだろう。
リグルやミスティア辺りに頼もうかとも思ったが、この時間に見つけるのは少し骨だ。
何より―――にとりは急いでいたらしく、先に置いていた手荷物だけでも届けたいと、荷物の現状を確認して、
先に先ルーミア達のいた地点へ戻って行った。
「ここで、このまま帰ろうっていう選択はルーミアちゃんには無いの?」
「いや、単にばらされたくない……」
大八車に手をかけた時、ルーミアはゆっくりが、何かの機械を耳に当てていることに気が付いた。
「何だいそれは」
「ケータイと言って……」
「ああ、蹴鞠に使ってる、外の世界のあれ」
ややあって―――非常に間抜けな音が聞こえた。
すぃー…………
振り返って、ルーミアは驚愕した。
本当に腰を抜かした
「ちょっと……」
走ってきたのは、4輪車である。外の世界にそうした者がある事は知っている。
しかし、目にした物体の簡素さと言うか適当さは、明らかにそんなものと比較できる代物では無いと解る。
最初に想像したのが切り餅。
それぞれの辺の長さの比がそれに近い。色が薄桃色という事もある。材質は不明だ。そんなものが、大人
4人ほどは座れる大きさに拡大され、側面にそれぞれ2個ずつ車輪が付けられている。
ただそれだけ。
分厚い板に、車輪が付いただけ。
それが、さらに間抜けな音で軽快に走ってくる。
子供に、粘土か何かで車を作ってみると命じても、適当にやったとしてももう少しの工夫や意匠が見られる
はずだ。
それ程に簡素と言うか適当と言うか、無駄を省きすぎたデザインは、狂気すら感じた。
更に、問題は、その上に乗っている者
自分自身だった。
勿論、自分よりも間抜けな顔をしている事には気づいていた。というか、顔つきはゆっくりれえむそっくり
だった。
何故か顔つきが、今まで見たゆっくりれえむやゆっくり紫、ゆっくり早苗、ゆっくり白蓮といった面々と
ほぼ同じなのだ。
ゆっくりルーミアと言った所か。
ただし、胴体があった。
酷く幼児体型と言うか、赤子の様なバランスで、3頭身くらいしかないだろう。
腰から下が、その車に埋没されている(車から生えている?)
運転らしきものは、何一つやっていない。
というか、そもそも後ろから押している存在や前を引いている者はもちろんいないし、何かの機械で動いて
いる訳でもなさそうなのに、ただ走っている。原理は想像もつかない。
ゆっくりルーミアは――――両手を真横に一直線になるようなポーズで、まるで十字架にでもかけられた聖人
の様。
4輪車は、2人の前でぴたりと止まった。
「ご苦労ご苦労」
「これしか無かったのかー」
トーンがやや違えど、ゆっくりれえむと同じ声質だ。
「上等上等」
「ん?本人なのかー」
ゆっくりルーミアは、本物(?)のルーミアをさして興味も無さ気にみやると、少し腰を浮かせた。
そして緩慢な動きで、上半身のポーズは崩さずにふわふわと浮遊を始めた。下半身は、あった。
「ゆっくりありがとうね。日が暮れる前には終わるからね」
「そーなのかー 終わったら、ここに置いておくのかー」
そのまま、同じく緩慢な動きで二人に背を向けると、ゆっくりルーミアはどこかへと飛んで去って行った。
ルーミアは何とか立ち上がったが、しばらくは呆然と立ち尽くしていた。
「何あれ!?」
「何だっていいじゃん」
「いや、よくないよ!」
単純な問題だという事は解る。
あの巫女さんのゆっくりが目の前にいるのだし、東風谷早苗、聖白蓮、八雲紫、と来るのなら、まあ「他の人妖のゆっくり」
がいる事も想像できなくない。
想像できたはずなのに、何故かずっとしてこなかった。
していたとしても、実物をこうして目の当たりにすると、平静を保ってはいられなかっただろう。
「私の、ゆっくり………?」
「だね。気になる?」
「ああ、気になるねえ!?」
「そんなに怯える事も無いのに……まあ今度ゆっくりと教えるよ!」
理屈は解るようで、釈然としない。
恐怖ではなかったし、不愉快ではないが、単純に気になる。
あのゆっくりルーミアは、どこから生まれ、普段何をして、どこにいて、そしてどこへ行こうと言うのか。
誰にもわかるまい。
勿論こんな事を、そのまま自身に問われても解らない。
だからと言って気にならない訳がない。
あと、何であんなに語尾に「のかー」とつけるんだ。自分はそんな風に喋った覚えなど無い。
「さて、準備完了だよ!」
我に返ると、先程の4輪車に、荒縄が生えていた。原理は相変わらず解らないが、まあさっきのゆっくりルーミアと同じだろう。
その先が、大八車の一つにくくりつけられている。
「ゆっくり行こうね!!!」
「えっ ちょっと………」
ちょこん、と車の上の先端に、可愛らしく飛び乗ったゆっくりれえむ。
後ろには、ルーミアが余裕で座れるほどのスペースがあり、恐る恐る腰を下ろすと、あの すぃー という間抜けな音が始まった。
そして、大八車を引いて、かなり軽快なスピードで前進を始めた。
相当な馬力だ。
「どういう事なの………なにこれ」
「すぃー ってみんなは呼んでるよ!!!」
進む擬音が、そのまま名前か。適当にも程がある。
注意深く すぃー を見回すと、側面に「そーなのCAR」と書かれていた。これは何だ。
謎が尽きない。
それにしても、すぃーはテンポよく進んだ。
車輪は別に何かの工夫があるようにも、分厚いものでもなかったが、どんな障害物をもろともせずに、一定のスピードを全く変える
事も無く進んでいく。と言うか、何の捻りも無い平面に乗っているのだから、ゆっくりもルーミアも自分でバランスを取る必要も出て
くるはずだろうに、全くそのまま乗っていて影響がない。
大八車一つをこれだけ引っ張れるなら、2往復で仕事は終わる事になる。
にとりがこれを見たら、何と言うだろうか。
「いやー でも気持ちいいね」
「うん……」
あまり乗り物に乗った事は無かったが、こうして全身を預けて(いいのかどうかは不安だが)、どこかへ移動するのは確かに快適。
快楽のためだけでは無かろうが、人間達が必死で自動的に動く文明を作ろうとしているも理解できる気がする。
斜面もなんのその登って行き、やがて平地に差し掛かった。
にとりと出会った場所はもう少し上のはずで、高い杉の木が一本目に入った。
そこに、もたれかかっている者がいる。
白狼天狗だった。
こちらを見て驚く。
「……………」
「な、何だいそれは!」
「えーと………」
「誰だお前ら!?」
お前こそ誰だよ――――と、ルーミアは思った。
まず、柄が悪すぎる。
妖怪と言っても、本当に見た目から「悪」と判断できるような連中は実はそれほどいないだろう。
鬼など、物騒な角を持った奴等はともかくとしてだ。
目の前の天狗は違った。
何だかものすごく不道徳で不健康な「悪さ」があった。真っ赤な口紅を初めとして、化粧はやたらと濃いし、来ている服は冬なのに
露出が多く不自然だ。寒くないのかと思ったら、ちゃんとコートを、それも金持ちが着る様な高価で嫌味なデザインのものを羽織っていて、
普通に着ているならまだしも、前をややだらしなくはだけている。お蔭で、魅せつける様な脇や臍や膝のあたりの雪の肌が
生々しく映える。攻撃的ですらある。
しかも挑発するように両足を組んで、タバコなんて吹かしているのだ。
喧嘩売ってるのか。
「お久しぶりですぅ、椛ちゃん……」
「む、どこかで会ったんだったかな?」
「ゆっくりれいむだよ!」
「―――……ゆっくりですって!?」
口調は随分真面目に聞こえるのに。
すぃーは、緩やかに動作を止めた。平地だから大八車には影響はない。
「誰か待ってるの?」
「そういう訳じゃないんだけど………ゆっくりかあ」
ほう。流石は天狗だ。
ゆっくりの存在を知っているか。ならば話は早い。知っている者と知らない者とでは、進行も全く違う。
で、お前は誰なんだ。
「首だけって、随分省略されてるのね」
「ん?」
「もっとか弱い、赤ちゃんみたいな連中かと思ってたけど、あんたみたいなのもゆっくりなんだ」
いや、寧ろ、ゆっくりの基本というか始祖がこいつだとルーミアは思い込んでいたが、考えてみれば個人的に
初めて出会ったのがこいつというだけで、実際はもっと想像を絶する奴等が主流という事だろうか?
しかし、「か弱い」とは?
そうした単語自体日常使わないが、どこかで聞いたと思ったら、先程の河童が言っていたのだった。
はて。
もしかして、妖怪の山では、何かが見られるのだろうか?
「れいむは弱くないよ!」
「やだ、可愛いわ、あんた………」
天狗は、元々頬紅でうっすらとだけ赤かった頬をされに赤く染めて微笑んだ。
笑顔だけなら慈愛に満ちたものだっただろうが、服と化粧のせいで、何か淫猥ですらある。
「天狗がこんな所で何やってるの」
「―――ん。暇つぶし。宴会までのね」
「宴会………」
決して忘れてはいなかったが、ルーミアは改めて焦った。
そうなのだ。小傘と行く前に軽食を取って、ゆっくりと赴く予定だった。
まだ余裕はあるだろうが、こんな仕事は早く終わらせるに限る。
と、ゆっくりは小声で言った。
「ねえ、椛ちゃんも乗せていっていい?」
「えー…?」
こんな、エロ河童ならぬエロ天狗を?
良く見ると、ゆっくりは軽く興奮している。
「今日だけなんかエロいからいいじゃない」
「ゆっくり、あんたああいうのが好きなの?」
「ルーミアちゃん、想像して見なよ、あの腋を見せびらかしてる巫女が、今の椛ちゃんと同じ風だったら……」
「……そりゃあ…………」
反則だ。
まあ、元よりあの巫女さんの素敵さはそうしたゴテゴテした人工物でどうにか影響されるものではないが……
「………」
その間、ゆっくりは天狗に状況を話していた。
天狗は―――やや表情を曇らせていることが解った。そして言った。
「悪い、本当に私も連れて行ってほしい。頼むわ」
「?」
「現場にはにとりもいるんだよね?その場で言いたいことがあるし、あんた達からも言ってやってほしいの」
「うーん、すぃー にはもう一人乗れるし」
飛んで行けよ……こっちは荷物のために乗ってるんだ―――
と思ったが、確かにこの乗り物は楽しい。
見た目が悪そうなだけで、話していると内面は非常に良い天狗の様子なので、同行して不愉快ではなさそう。
寧ろ、あの河童には正直わだかまりもあるので、何か言ってくれる相手がいるのなら、都合がいい。
ルーミアは首肯する。
「ゆっくり再出発だよ!」
すぃーは、妖怪一人増えた所で何も変わらないように動き出した。
「しかし、頂上までってのはきついね」
思わず口に出すと、白狼天狗は首を傾げた。
「頂上は何もないでしょ」
「いや、頂上までってにとりちゃん言ってたよ?」
「一度だけ手伝った事があるけど、その時は中腹で終わったんだけどなあ」
何か変わったのかな?
としきりに思案しているが、そうした事に関わりは持ちたくない。
しばらく登った所で――――広場でもないのに、あまり広くない道に、人が立っていた。
今度は、人間である。
メエド長だった。紅魔館の。
思わず停車する。
「あれ?」
「ご無沙汰してます」
恭しい態度と柔らかな物腰は、第一印象が酷かった隣の天狗とは大違いだが、ルーミアは、何故だか、
危機感を覚えた。
「こんな所で………」
「今日は、化け傘に河童に天狗に人間と、色々な人達と会う楽しい日だね!ルーミアちゃん!」
「あら、日が暮れれば、もっとたくさんの面々に会えますよ?」
朗らかに咲夜さんは笑ってくれたが、ルーミアと同様、天狗は顔を強張らせていた。
「ところで、椛さんにちょっとお話が」
椛は表情も変えずに すぃー から下りたが、それは装った平静さだった。
聞かれたくない話なのか、随分離れた上に、聞き取る事はができない。
そのまま弾幕でも始まってもおかしくはない雰囲気だったが、ややあって椛は少し安心したように帰ってきた。
咲夜さんは、そのまま一礼して、全く違う方向へ去って行った。
最後まで礼儀正しかったのに、変に怖かったのは何故だろう。
そう言えば、小傘も絡まれたと言ってたが………
「どしたの?」
「う~ん……もう少し上に行ってから話しても良い?」
登る事数分。
最初に、にとりと会った広場へ差し掛かった。流石文明の利器――――というか、何かのテクノロジーの勝利。
しかし、行程の半分である。更にもう人往復となると、4分の1程度という事になる。
そう言えば、何に使うんだか。
「『カラメル』『卵』、『牛乳』―――あと、粉末ばっかり」
「トマトジュースと―――何だか離乳食でも作るみたいね」
「あれ?加工前? あいつわざわざ、向こうで作ってたの?」
と、広場を見渡すと、にとりがいた。
手荷物だけ一度頂上に持っていくと言っていたが、こんな所でどうしたものか
「やあ………」
「にとり」
にとりは、ちょっと気の毒になるほど怯えていた。
ルーミアとゆっくりに今更気を使うはずはないから、椛に対してか
「うわぁっ! あんた誰?」
「椛だよ!」
「何だえ、その恰好!」
「メエド長ですら、私だって理解したぞ?」
椛は、自らひらりと まだ止まっていない すぃー から降り、にとりに詰め寄った。
「これ、いつまで続けるの」
「………自立できるまでだよ」
「嘘だ。連中が自立できるような支援を、あんたは全くやってない」
今度は停止したルーミアとゆっくりを向いて、厳しい口調で椛は怒鳴った。
「あんたらさ、か弱い野生動物の保護とかってどう思う!?」
「別にいいんじゃないの?」
「野生動物は基本か弱くないよ!」
いや、そうじゃなくて、『保護区』なんてものを勝手に作って、天敵も排除して、その生物にだけ都合の良い
空間を作るっていう状態が……
「幻想郷は――――違うな」
発想としては近い気もしたが、寧ろ排除されたはこちらの方で、全てを受け入れ過ぎているから、常にバランスの
調整と、適度ないがみ合いは必須となっている。
これは―――健全だろう。
だが
「パークとか、ビオトープって奴?」
「―――……? 何それ? でも多分違う。食事もこいつが支給してるんだ。冷暖房も」
それは――――甘やかしだろう。
自分の親族辺りにそれをやるのは、まだ不幸な未来を迎えるのはそいつ自身だけで済むが、ある種の生物自体に
それをやるのは―――影響が大きすぎる。
「違うよう……私だって、甘やかすつもりは………」
「河童ってのは何だかんだいって優しいからね。でも間違ってるって、手伝わされたあんた達も言ってくれないか」
優しいか? それは、妖怪にしては水中以外では弱いからそう見えるのか。
とは言え、尻子玉の件もあるが、人間には友好的な部類には入る。
目上の天狗や鬼と言った強者に囲まれた環境に生き続け、では自分より少し下の人間と言う弱者に対してはというと、
殊更上からの目線はとらずに、「盟友」と言い放つ。
普通に考えれば、この気質は優しい、と捉えられるだろう。
人間なんぞは、同族に対しさえちょっとした差異だけで強弱上下をつける。上から叩かれれば、更に自分より下を見つけて叩くことに
専心する輩すらいるのだから。
「まあ、希少な生き物だったら仕方がないんじゃないの?」
「結局何を保護してるの」
「ゆっくりをだよ」
「……………………」
悪い冗談だ。
にとりは、真っ赤になって下を向いているが、無理も無い
「何を言ってるのか、さっぱりわからないわ」
「『ゆっくりのゆっくりのための園』を作ってるんだってさ。にとり、あんたそう言ったわね」
「あうう」
『ゆっくりによる』がぬけてるね! とゆっくりれいむが言ったが、それで、何となく、ルーミアはこの話の不健全さが
見えてきた気がした。
そもそも、ゆっくりれいむ一人だけでもたまに少し怖くなるのに、さなえやゆかり等も集まって一同に会したら――――
「何か、そんなもの作ったらこの世の終わりって気がするんだけど」
「だって……か弱い連中だし……」
「何度も聞くけど、こいつのどこがか弱いのよ?」
徐にゆっくりれいむの両頬を軽く掴んで胸の高さにまで持ち上げると、そのまま伸び切り、顎(?)が、地面に着いた。
そして、よく解らない成分が分泌されたか、手が、何故かすべり、その両頬も手放してしまった。地上で、ゆっくりは
瞬時に元の姿に戻る。
「………………………」
「………………………」
「………………………」
「………………………れいむは、殺しても死なないタフガイさんだよ!」
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'r ´ ヽ、ン、
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| ||ヽ、 ,イ| ||イ| / 楽園のタフガイ
レ ル` ー--─ ´ルレ レ´
最終更新:2011年12月30日 18:32