てゐ魂43話-3



~☆~


「…あーもう!あーもう!今日は厄日だね!間違いない!」

「…あなたの場合、厄日と言うより厄年じゃないかしら?」

「うるさい!まだそこまで年食っちゃいないよ!」

そんな口喧嘩を繰り広げながらてゐとレティは詰所の見回りをしていた。
自らが囮になってお化けを誘い出す。
そんな作戦を実行に移すために。

「はぁ、何でコイツと二人きりでこんな夜の廊下を見回りしなくちゃいけないんだか。」

てゐは溜め息混じりにそう呟いた。

「まぁ、あなたの場合は自業自得な所もあるじゃない。」

レティの言う通り、てゐ達の場合は変なことを考えなければ
こんな面倒なことに巻き込まれなかっただろう。

「うるさいなぁ、黙れよ!」

だからてゐもこんな台詞でしか反論できなかった。
…そして、こんな二人のやりとり以外、詰所はしんと静まり返っている。

「…あいつ等、ホントにその辺に隠れてるんだよね、
 妙に気配も視線も感じられないけど。」

周りを見回しててゐがそう言った次の瞬間だった。


ボォァ!


「ホワアアアアッ!?」


てゐの目の前で突然火の玉が燃え上がった。
てゐは思わず変な悲鳴を上げてしまう。

「な、何へ、へ変な声を上げてるのよ!」

火の玉よりてゐの叫び声に驚いたレティの口調はかなり穏やかではなかった。

「い、イヤイヤ、いきなり目の前に火の玉が現れたら
 アンタだってビビるよね!」

てゐは慌ててレティにそう反論する。

「ビビるって、んな訳無いでしょ?子供じゃあるまいし…。」

そう言って呆れるレティだが…。

ヌルン。

直後、彼女の首筋に何か冷たくてぬるぬるした感触が。

「ひゃんっ!?」

レティは思わずそんな悲鳴を上げてしまった。
しまったと彼女は直後に思ったがもう遅い。


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   ノ:::::::::::::ハヽ、   ヽ _ン ノ::::i:::(   ヘラ
  イ:::/::::::/:::イヽ>, -r=i':´イ:::ハノ
  〈rヘ:::::!::レ´   `y二」ヽレ':::〈


てゐの方を見てみると、彼女は自分を見てニヤニヤと笑っていた。

「何よ、そのムカつくニヤケ顔は。」

「べっつに~可愛い声上げてたよねーとか思ってないけど。」

それを聞いたレティ、凄い勢いで赤面。

「ば、バッカ、バッカじゃないの!可愛い悲鳴なんて上げてないから、上げてないから!」

赤面しながらそう叫んでも、逆効果という奴である。

「ハイハイ、大事な事だから二回言ったんだよね。」

そんなこと言いながらてゐがレティより先に廊下の曲がり角を曲がったそのとき。
…彼女の視界に入ったのは、こっちに向かってくる小さな黒い影だった。

「…?」

てゐは一瞬、あれは何かと思おうとした。
しかし、そう思う前に、それが何なのかを理解した。
影はこっちを発見したとたん、すーっと音も立てずに近づいてきたのだ。


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それは、不気味な落ち武者の生首であった。

「~~~~~~~!?!?!?」

生首、生首を見て大絶叫。
すぐさま来た道をもの凄い勢いで引き返す。
まだ角を曲がってなかったレティとすれ違うが、
そんなのを気にしている余裕は今のてゐにはなかった。

「ちょ、アンタ何で引き返して…。」

レティはてゐの方を振り向いて呼びかけるが、その途中で後ろから誰かがぶつかってくる。
何だ?と思って振り返ると、目の前には落ち武者の生首が。


「…亜ぎゃがやが宇x来!」


レティはもう何を言ってるのか判別不能な叫び声を上げて、
てゐと同じ逃走ルートで逃げ出したのであった。


~☆~


「うっわ!ひでぇ!予想以上にひでぇ!」

「レティ副長の意外な一面を見た感じだぜ。」


そんな様子を見て笑う奴らがいる。
茂みに潜んでいた⑨課のゆっくり達だ。

「…あの、仮にも部下が上司を笑って言い者なんかど?」

凄い勢いで笑い転げる⑨課の一員を見てれみりゃはそう問いかける。
⑨課隊員達は笑いながらもこう答える。

「いいのいいの!」

「こんな副長、滅多に見れないし!」

そう言って再び笑い出す⑨課隊員達。
(…なんて言うか、⑨課って思ったより砕けた職場なんだどね…。)
武装警察と聞いて⑨課にはお堅いイメージがあったれみりゃ。
だがまぁ、実際の所がゆっくり達の組織。
レティやゆーぎのようにクソ真面目なのが中心にいるからそう見えるだけで、
部下達はその辺にいるゆっくりと余り変わらないのだ。


「フム、落ち武者はなかなか旨くいった感。」


「ナイス落ち武者!」

「見事な落ち武者!」


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          ,' i  ' ; ゝ、人人ノ/_ノノ / ノ   、  
          i ヽ .| (ヒ_]     ヒ_ン ) / /  i  '、
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          ヽ V 人   ヽ _ン    ヽ  人   '、
          、_)ノ ノ  >.、_    ,.イ/ ( ノ (._   ヽ
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全身真っ黒なタイツ姿で戻ってきたてんこに
⑨課隊員達は賞賛の言葉を贈る。
その手に握られているのはリアル造形な落ち武者のマスク。
全身黒タイツに落ち武者のマスクを被って廊下の向こうから歩いてくる、
黒タイツが闇にとけ込んでしまえば端から見ても空飛ぶ落ち武者の生首にしか見えないと言うわけだ。

「…まぁそれでもあんなに至近距離で見れば体があることに気づくと思うんだけど…。」

それに気づかない程二人は動揺していたのか。
一体どれだけお化けが苦手なのかあの二人は。

「でもさ、ホントにこれでちるの隊長の言う通りにお化けが出るのかな?」

「さぁ、でも、特に上手く行く理由も根拠も無いのに
 何故か上手く行ってしまうのが隊長の作戦だからな、
 出ると思っていいんじゃね、おばけ。」

「そっか、じゃあ取りあえずスペルカード用意しとく?」

「そうだな、準備しておくに越したことはないぜ。」

「幽霊に効きそうな弾幕ってどんなのかな。」

「夢想封印とか効きそうだよな、まぁ、まりさは今は妖精意地滅光しか持ってないんだけど…。
 れいむ、もし持ってたら交換してくれないか?」

「う~ん、一枚しか持ってないから難しいな…
 「二重結界」じゃだめ?」

「じゃあそれで良いぜ、トレード成立だ。」

おまえ等ホントに戦う気があるのかって位和気藹々にスペルカードを交換しあってる⑨課のゆっくり達。

「…ん~?」

そんなゆっくりを眺めながられみりゃは考えている。

「おいぃ?れみりゃ如きが何考え後としてるんだよ。」

「如きって、てんこちゃんそれは失礼すぎるど。」

てんこの発言にチョット怒りを覚えながらも、
れみりゃはてんこの質問にこう答える。

「…なんだか、このちるのの考えた作戦、とんでもなく大きな穴があるような気がして…。」

「ほう?私個人としてはちるのはあまり気に入らないが、
 それでもこの作戦は悪くない気がするんですがねぇ?」

「う~ん、そうなんだどか…?」

それでも、何か引っかかるものを感じるれみりゃ。


「……。」


その時、てんこが何故かいきなりビクリとなる。
「 ? てんこちゃんどうしたんだど?」
てんこが妙な動きをしたのでれみりゃは思わずそう問いかけてしまう。

「な、なんか聞こえて急にオカンが走った感。」

てんこは震えながらそう呟いた。
それに対してれみりゃは頭にハテナマークを浮かべている。

「れみりゃにな何も聞こえなかったど?てんこちゃんの気のせいじゃないのかど?」

「おぃい!あれが聞こえないとかおまえの耳は節穴が開いているだろ!」

逆上してれみりゃに向かってそう叫ぶてんこ。
そりゃあ、耳には穴が開いているもんだとれみりゃが思っていた次の瞬間。

「ぁ…の…。」

「え!?」

今度はれみりゃの耳にも確かに聞こえた…。
か細いが…確かに女の人の声らしきものが。

「どうやら今度はおまえの耳には聞こえたみたいだな、
 ヨミヨミですよ?おまえの顔を見れば。」

てんこはニヤリと笑いながらそう言ってくる。

「ち、違う!れみりゃは声なんて聞いていないど!
 ね、ねぇ、あんた等も聞いてないよね!」

そう言ってれみりゃは⑨課の隊員達の方へと全身を向ける。
そこで、れみりゃは気づく。

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 (  ,ハ    |,r-r-|   人! :  .   : | ||ヽ、 `ニニ´ .:::::,イ| ||イ| / :
,.ヘ,)、  )>,、_`ニニ´_,.イ  ハ :    : レ ル` ー--─ ´ルレ レ´:


彼女たちの様子が、何処かおかしいという事に。
目を見開き、何かにおびえた表情でこっちを見ている。

「…?ど、どうしたんだど?」

「おいぃ、何でそんな表情をしているのか理解不能状態。」

異常を感じたれみりゃとてんこは隊員達に話しかける。
その何かにおびえた表情は変わらない。
しかしその代わりに震える指先でれみりゃとてんこの背後を指さした。

「え?何?後ろ?」

「いったい何が言いたいのですかねぇ?」

その行動を二人は自分の背後に何かいるぞと言うサインと解釈した。
取りあえず、二人は背後を向いてみた。


…そしてれみりゃはずっと自分が気になっていたことの答えに気づくことになる。
ちるのが建てたてゐとれてぃを利用した囮作戦。
この作戦の致命的な落とし穴。
それは。


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         =!川!;|||||!l|||l|:l|l||||ー'‐'.;:::
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          ::::::::|:::      ノ }:::
           ̄~|:::      川リ ̄
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お化けが、囮をねらうとは限らないと言うことだ。
むしろ、隠れて動かないこちらをねらってくる可能性の方が高いと言うことを。

「うわぁああああああああああ!」

赤く爛れきったその顔は、れみりゃとてんこ、そして⑨課の隊員達を絶叫させるには
十分な恐ろしさだった。


~☆~


「…何か今、悲鳴みたいなものが聞こえなかったかしら?」

落ち武者の遭遇地点からちょうど反対側の廊下まで逃げたレティは、
落ち武者が追いかけてきていないかと、振り向いて確認していた。
その途中、レティの耳は遠くから木霊する叫び声を聞いたような気がし、
近くにいるてゐにも聞こえたかどうか確認していた。

「いや、私は聞いてないよ?」

帰ってきたのはそんな素っ気ない返事?

「ほんとに?あんた私より耳が良いはずでしょ?」

レティはそう言っててゐの方へと振り向いた。


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「いやぁ、だって今耳がないから。」

何か、妙に頭の上ら辺がスッキリしちゃっているてゐは笑いながらそう言った。
レティは目を丸くしててゐの頭の上を見た後、辺りをキョロキョロ見回した。
…庭に何か白いものが二つ転がっていた。

「アイアンテイディ捨てるな馬鹿ー!?」

レティは庭に落ちているてゐの耳を拾い上げると、
すぐさま戻って元の位置に戻そうとする。

「あ、勘弁勘弁、戻すならもう少し後で。」

てゐは抵抗しながらそう言ってくる。

「どんだけ叫び声とか聞きたくないのよ!
 こんなモン庭に捨てられても困るのは私達なんですけど!」

そう叫びながらレティは無理矢理耳をてゐの頭の上にくっつけようとする。
…が、旨くくっつかない。

「ああもう、やっぱりこのままじゃくっつかないじゃない!
 糊か何か用意しないと…!」

そんな事を呟いた次の瞬間。


スッ。


いきなり彼女の目の前に木工用ボンドが差し出された。
「あら、どうも。」
目の前に差し出されたボンドをレティは直ぐに手に取る。
そして、取れたウサミミにボンドをタップリくっつけて、
てゐの頭に押しつけた。

こうして、てゐの耳はあるべき所に戻ってきたのであった。

「ふう、ボンドで固定したし、コレで完璧ね。」

一仕事終えて汗を拭うレティ。
てゐはそんなレティにこんな疑問を投げかけた。

「…ボンド?そんなの何処から出てきたの?」

「親切な誰かが差し出してくれたのよ。」

「…それって誰さ。」

…それを聞いたレティはピタリと動きを止めた。
あのとき差し出されたボンド、
そのボンドを持っていた手は、妙に細くてすらりとしていた気がする。
…銅付きゆっくりの手ってあんな手をしていたか?イヤ、していない。
てゐとレティはちょうど庭側から、強い視線を感じ取る。
…二人は恐る恐る、視線を庭側に向けた。

そこにいたのは全身が赤く爛れた髪の長い女性。

「ハァ~イ。」

そいつがニカリと笑って実にフレンドリー?な挨拶をしてきた。



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    /      ハ├──-//i-―  ̄=_  )":" .  
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   i::::::::/::::::ハ_ニ;、,レ レ、_;、ゝ::::|:Y
   ハ:::::::レヘ::i' (◎)   (◎)ハソ:::ハ
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   ノ:::::::::::::ハヽ、  ヽ _ン  ノ::::i:::(
  イ:::/::::::/:::イヽ>, -r=i':´イ:::ハノ
  〈rヘ:::::!::レ´   `y二」ヽレ':::〈

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    //         `ヽ`フ
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  (     !ノ-!‐ノ ! ノ|/ー!、!ノ  ,.ゝ
 (  ノ レ rr=-,::::::::::r=;ァi"/! ノ
  )  ,.ハ '|  ̄ ,rェェェ、 ̄ !  ヘ( 
   ) '! ト.、  |-r-r,| ,.イ _ _     .'  , ..
    ノヽ,! i` 、`ニニ´  - ― = ̄  ̄`:, .∴ '    
         ヽ-'' ̄    __――=', ・,‘ 
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      | |   ) /
     ノ  )   し'
    (_/            


次の瞬間、レティとてゐは右ストレートと右耳ストレートを
同時にその女性の顔面に叩き込んでいた。


~☆~





「…あいつ、行っちゃったどか?」


木製の引き戸に耳を当てながられみりゃはそう呟いた。
ここは詰所の庭の隅っこにある古ぼけた倉庫の中。
お化けに遭遇したれみりゃ達はそれはもう脱兎の如き勢いでその場から逃げ出した。
そして逃げ回っているときにたまたまこの倉庫を見つけて身を隠し、今に至る。


「う~ん、こんな事しても外の様子なんか解らないどね…。」


そう言ってれみりゃは引き戸から耳を離す。
壁に耳を当ててたのはあいつが追いかけてきていないか足音などで確かめるため。
しかし実行した所で聞こえてきたのは。

「ラーメェン…。」

と言った感じの地獄から響いてくるような声。
どうやら詰め所の周りにまだサブリアンが徘徊しているようだ。
この声がじゃまで足跡なんて聞き取れない。

「コレは参ったど、何時までもここに止まっていても仕方ないし、
 かといって迂闊に外にでれないし…。」

れみりゃはどうしたものかと考えてる。


               彡⌒ヾ、
               ハVヾ  )   _,, ---―ァ
          r‐-―┴-ーノ"⌒ハ::ィヽ.;:::::::::::/
          \:::::::::::::::::/´    `  ヽ:::::/
            \:::::::ノ イ. ハ} /l V!ハ丶ヾ
             く` ノV i'「\ヽ|/ /}ハlヾ ノ
  i´`Y´`Y`ヽ(⌒)   ヽ `ヽ、,゙ー‐゙*゙ー‐゙i;},ゞ
  ヽ_人_.人_ノ `~ヽ   \\弋 ナ十弋 |    ,(⌒)
    \___    \   \トメ‐十ー/   ノ  Y`Y´`Yヽ
            \_ 〉     ̄ ̄ ̄  (´ ̄   .i__人_人_ノ
                          ` ̄ヽ


「…どうよ、何かヤマメッポさがグッと増してね?」

「増してるぜ!蜘蛛の巣が良い演出になってるな!」

その隣で一緒にここに逃げ込んだ⑨課の部下二人がヤマメごっこをして遊んでいた。
勿論、つけているマスクもてゐ達を驚かすために用意していたヤマメマスクである。
決して、あのヒーローの事ではない。

「…あの、遊んでないであんた等も何か良い案が無いか
 考えて欲しいんだけど。」

緊張感不足はゆっくり故仕方無いとは言え、
今は何でも良いから明暗が欲しい。
三人よれは文殊の知恵とも言うし自分だけではなく、他のゆっくりの意見も欲しかった。

「ほむ、なら私の考えを言わせて貰うが。」

と、そこへてんこがれみりゃに向かってそう言ってきた。

「お、一体何だど?」

そう言ってれみりゃが耳を傾けると、てんこはこう言った。


「進撃の巨人の表紙は実はあの漫画がループもので、
 表紙は他のループでの出来事が描かれているという奴がいるが、
 私はあれは後世に伝えられてる絵か何かで。
 都合の悪い部分とか色々隠匿されてるから実際の内容と表紙の絵が違うと思うんだが。」




                          _  ト 、
                          \ `ヽ! ,ハ
                        ,. -─-\, | /,. -‐─-..、.,    /|
                      ∠.,,__   `>'´::::::::::::::::::::::::::::`::、/ /
                         __`>'´-‐-、::::::::::::::;:'´ ̄i`Y   ./__
                         \__:;:. ''"´ ̄`○)i   ノ ハ/  __/  
                         /         ´ ヽ、__ノ::::`''<i    
                        /  .  /    __ ヽ.    \:::::::::::::\  
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           , -=- 、       i. ! .i__!_ノ ''ァ‐テ‐、!__ハ |/  !      !     ヽ/;;;;;;;ソ、
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         { /-,,,_  ,ヾ" // | lll | lll | |;,_  ̄     ./´ '., ./:/ /, - =、',l lll| lll|.  \\
            〉三三ニフ //  l lll | lll | | `''=-z,,-=/  {;;'.,/ //   ,':i. ̄ ̄    \\
         ,.' ,.'   //    | lll | lll | |=,,_    /   ヾ;'.,:/    ,':,'.|         \\
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      ,.' ,.'  //            | ';、  /       ヾ;;;;'.,  /:∧',|            \\



「誰が進撃の巨人について考察しろと言ったど。」


れみりゃのツッコミが速攻で帰ってきた。


「おぃい、私はお前が考えてくれと言うから考えてみたんだが?」

「ズレてる!おもいっきり内容がズレてるど!
 この状況で何で進撃の巨人!?もう少し空気読もうよ!」

てんこの明らかにズレている思考にはれみりゃは怒りさえ覚えてしまう。
「そうだよ!」続いてそう叫んだのは⑨課の部下のゆっくりれいむの方だ。

「おぉ、そのままガツンと言ってやるんだど!」

さっきまで遊んでいたこいつが妙にかっこよく見えた瞬間である。

「あのマンガはループ物だよ!れいむは絶対そう思う!」

その直後にれみりゃはこのゆっくりが非常に格好悪いモノに見えた気がした。

「おいぃ?何かってに進撃の巨人をループモノにしたがるわけ?
 俺の知ってる限りその根拠は何処にもないのは決定的に明らか。」

「根拠はあるよ!作者がオルタに影響受けてるところとか、第一話のやりとりとか!」

「…確かに作者は進撃の巨人はマブラウオルタのパクリと言っているが、
 話の本筋までマブラウの影響受けているとかあり得ないでしょう?
 それと、第一話のやりとりこそ単なるオルタの影響を受けた結果で
 それ以上でもそれ以下でもない可能性がある。」

「でも!根拠は第一話のやりとりだけじゃないよ!
 2000年後の君へと言うサブタイトルもループモノの根拠じゃないかな!」

「ループモノだったら2000年なんて具体的な数字は出てこねぇでしょ?
 どっちかと言うと、「2000年後の君へこのメッセージを送る」、とかそう言う意味合いの方がしっくりくるぞ。」

「う…。」

二人のやり取りをれみりゃは呆然と眺めている。
なんだコイツラ、何でおまえ達こんな所で進撃の巨人について語り合ってるんだ。
今はそう言うことやってる場合じゃないだろ…。
と、そんな事をれみりゃが思っていると。

「おいおい、こんな所で無駄なことを語り合っていてもしょうがないだろ。」


と、ここで⑨課隊員のまりさが二人の間に割り込んできた。
「そ、そうだど!こんな時に何で暢気に進撃トークを…。」
れみりゃが便乗して話を流れを変えようとしたが…。

「この手のマンガはな、簡単には先を読ませてくれねぇよ。
 おまえ等読者側がループモノだそうじゃないとか言っている間にも、
 制作者側はさらに予想の斜め上をいく展開を考えている門なんだよ。
 考えても見ろ、おまえ等エースが海賊王の息子だなんて予想できたか?
 ほむらがまどかの力を奪い取って悪魔になるなんて予想できたか?
 作り手側の頭の中身なんて、読者が覗けるわけがないんだよ。」

「ん?」

まりさの話を聞いてれみりゃは首を傾げる。
何だろう、まりさの話に不穏な空気を感じる。


                /ヽ  ∧
               /;;;;;;;/ /;/  /;〉
            _ 、_   /;;;;;;;/ /;/  /;/
    __,==‐`゙ヾヽ`ヾV;;;;;;;;/ /;/_  /;/
 _,≦ ̄           /;;;;;;;/__/;/;;/  レ __  /〉
≦´       __/;;;;;;;;;;;;;;;レ;;;;/、   /;;//;;;/
´          /;;;;;;;;;;;;;;/ ̄ ̄/;;/ Ⅵ レ' /;;;;;;/
          /;;;//;;;/    /;;/   `゙/;;;;;;/
        レ'´ /;;/   /;;/    /;;;;;;/
          ∧/    レ'     /;;/
         NVヘトヘ、、      レ' ソ
'⌒ヽ /NVレソ″    ヘハ       彡
ミ}! |ミ`^           ⅤWミ、   彡
ー' /゙      -=ミ、       ヽ  〃
        《\ ゙'!  u    ㍉"i|!
         ≧_゙=、  /′  /
           ̄__,≧='__ノ∨
     u         fミ彳イ
     。    _,    〃/´
     r―=、 ト、   / ノ
    寸^ ヽ >, `´<
\    二ニ=-'´/ . .
: : :\      / ゜。
: : : : :.\  /_゚
ー=ニニ=-: : : : : : |!
: : : :-=三三=-:(_
: : : : : : : : : : : : : :Ⅵ
: : ;彡=‐: : : : :/:∧
: : : : : : : : : : : : : : : ∧


「だからこれからの話なんてものは制作者に任せて、
 まりさ達はライナーの魅力について語り合おうぜ!」

目をキラキラと輝かせて二人にそう訴える間りさを見てれみりゃは確信した。
ああ、コイツもバカだ!


「は?まりさもバカじゃない!?何で裏切り者について
 語り合わなくちゃ行けないのさ!」

「れいむ、その発言はエレン側に感情移入しすぎていることを表している!
 そんな気持ちでループモノか否かについて語り合っていたなんてお笑いモノだぜ!」

「おいぃ!ライナーについてだけ語り合おうなんて言ってるお前も視野が狭すぎる!
 彼について語り合うなら仲間のアニやヘルベルト、
 イヤ調査兵団、イヤイヤ進撃の巨人の登場人物全員について語り合わなくちゃ行けないでしょう!」

「クッしまった!それは盲点だったぜ!」

「後てんこちゃん、ヘルベルトって名前は間違ってるよ!」

「くっ!とんでもない事実判明後もこいつの名前は
 覚えない覚えにくい!」

…完全に3人の世界である。
我慢していたれみりゃも、すでに限界突破していた。


「お前等なぁ!進撃トークはネット掲示板でやれって
 言ってるんだどぉおおおおおおおおおおお!」


次の瞬間、れみりゃはアラン限りの大声でそう叫んでいた。
その直後に、れみりゃの耳にこんな音が聞こえてきた。


ザッ!


「……。」

今、足音が聞こえたような、
それも、中ではなく外の方から。

「…まさか。」

いや、まさかではない、れみりゃは直感する。

ザッザッザッザッ。

足音は確実に大きくなっている。
それは誰かがこの物置に近づいてきていることの証明だ。


「その日、私たちは思いだした、お化けの恐怖を…。」

「こんな所で暢気に進撃の巨人について話している場合ではないと言う事実を…。」


「進撃第一話のナレーション風に話してる場合かぁあああああ!」

実に淡々とした口調で語るゆっくり二人組に向かって、
れみりゃは激しく、情熱的にツッコミを入れた。

ザッザッザッザッザ。

そうこうしている内に足音はどんどん近くなっていく。

「う、うわぁああああああ、どうするんだど、どうするんだど!」

軽くパニック状態に陥るれみりゃ。

「落ち着けれみりゃ、こっちに歩いてきているのが
 お化けとは限らないでしょう?」

それをてんこが宥める。

「い、言われてみれば…確かにそうだど…。」

その言葉でれみりゃが何とか落ち着きを取り戻す。


スーッ。


そんなタイミングで引き戸が少し開いた。

    _____________
   |__/⌒i__________/ |
   | '`-イ/;;::       ::;ヽ       |
   | ヽ ノ |;;:: ィ●ァ  ィ●ァ ::;;|     |
   |  ,| |;;::          ::;;|      |
   |  |. |;;::   c{ っ    ::;;|      |
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引き戸を今まさに開けようとしている細い指と、
隙間からのぞき込む充血した瞳が見えた次の瞬間。


「そぉい!」


     /(   _,,....,,....,,....,.,,.( ( r r ∠            ニ 三 |┃
    ( /''r''''ヽ:::::::::::::::::::::::::::;;;;/./ニ>              |┃
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    ノ   ヽ ヽ ゝヽ人人、/_ノノ  i  ',          ...ニ三|┃
   `  i  \ヽrr=-,:::::::::::r=;ァ|  ノ  i             ....|┃
   ,'   |    ).)" ̄ ,rェェェ、 ̄"' |/' | !           .三|┃
  ノ   |   ,ノ    |,r-r-|  人 V ノ ,.、   __        ..|┃
/     |   ( >、.._ `ニニ´i.イ ヽ  ヽ(_,i !,,.-''" ノ       |┃
      人  ヽ  /ヽ二ン ヽ  \ \.! ヽ -=ニ__        |┃
    〈  人  \ 〉/:::::{::}::::ヽ i !, ヽ,!   !  ‐--,'     ニ 三 |┃
    )   \  ''ヽ:::::::人::::;::ヽ   r/ ヽ   ー,--'        |┃
   く     人  (::::ノ|・|ヽ:::ヽ、_ /!  7`\ ̄         .|┃
  人 /=∞=/)._ \ ヽ||・||)   !`ー,ヽ-' ∧ \         .|┃
/  .〈  ヽ、/   ) . /||・||(  /     ヽ\ )         |┃
     \, .\ヽ  ( ( (||・||)  >   人 \) )/          |┃
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          ,r-<          `ヽ、.         .三|┃
          _i」:::::i  _ゝへ__rへ__ ノ_,  `l          ..|┃
     ,ィ'^{  く::::::::::`レ ゝ-'ー' ̄ ̄`ヽ_ト-、__イ、 .,}^ヽ、     |┃
   / { ハ ヽ_<\::::::::ゝ´,イ,.イノヽ! レ ヽ,_`ヽ_>´ ハ } \    |┃
  / i !{ \ハ   ト、´!::: ( ◎)    (◎)y゛,ィ `Y  }! i ヽ   .|┃
 L_, { ヘ   _}》 ハ  !::::   ,rェェェ、    .! ヽノ_ ノ  }  _」  |┃
   `'Y⌒Y⌒   (,ハ::::::::  |,r-r-|    lヽ ヘ.⌒Y⌒Y´   |┃
      〈  i  ハ  i 〉:::::::: `ニニ´   ,.ィ' ヘ.,〉      三|┃
       ヽヘハノ∨\ト`>...,,_____,.、.ィiノ^Y、(         ....|┃
                                   .三|┃
                                   ..|┃
                                   |┃
                                    |┃



てんことれみりゃは力技で僅かに開いた引き戸を閉めていた。
すぐに扉の向こうから「ぎゃあ」という叫び声が聞こえる、指を扉でおもいっきり挟んだからだ。


「て、てんこちゃん!絶対にこの扉を開けさせるなど!」

「解ってる!あの指がちぎれる勢いで扉を閉めるべきそうすべき!」


それでも構わずに二人のゆっくりは力を合わせて扉を閉め続ける!
扉の隙間から見える手が痛みで悶えまくるが、それでも二人は扉を閉める手を一向にゆるめない!
そしてれみりゃは呆然とこっちを見ている⑨課隊員二人に向かってこう呼びかけた。

「何してるんだど!何でもいいからつっかえ棒になる物を持ってくるんだど!早く!」

すると、隊員達はこんな事を言い出した。

「…その日、れいむ達は気づいてしまった…。」

「また進撃ナレ!?ツッコム余裕もないのにぼけるのは止めて欲しいど!」

「そういいながら結局ツッコむ肉まんがいた!」

「てんこちゃんも随分と余裕だどね!実際は一辺も気が抜けない状態なのに!」

必死で扉を閉めながられみりゃとてんこはそんなやりとりを繰り広げる。
そして⑨課二人はそんな二人のやりとりなぞお構いなしに、ナレーションの続きを始めた。


「…この物置の扉が引き戸二枚で構成されているという事実に…。」

「しかも扉は両方とも固定されていないという事実に…。」

「…え?」

最初、れみりゃは二人が何を言いたいのか解らなかった。
きっと読者の皆さんの中にも文字を読んだだけじゃイマイチイメージできないのではないか?
なので、ここはAAで説明する。


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              ┃|::::├┬┬┬┤:[|||[|├┬┬┬┤::::|┃ 
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    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


要するに扉はこんな状態なのである。
引き戸の中ではよく見かける、二枚の板で構成されたタイプの扉。
真ん中を錠前などで固定することで、二つの扉を纏めて固定して開かないようにする扉。
こういうタイプの扉の場合、二つの扉を別々に固定する方法が無い限り、例えば一方の扉を開けられないようにしても。


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               ̄| 、、       |   ||
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                      /|   ||
                        |   ||
                      /|   ||
                    //|   ||
                ////|   ||
      _________|   ||
                   r──-、
                   {二二  |
                    {二二  |
                     匸二..__ノ
                       ||ノ
                       ||


こんな風にもう一方の扉から簡単に開けることができてしまうのだ。
あっさり開いたもう一方の扉から涙目(指挟んでいるからまだ痛い)で覗き込んで来たそいつとれみりゃの目があったその時。


ゴオッ!


ドガアッ!


いきなり扉の向こうから飛んできた謎の物体がそいつの顔の側面に直撃!
お化けはそのまま物置の中に横向きにぶっ飛んでいく!


「う、うわあっ!?」


自分達の方に向かって飛んできたお化けに驚いて思わず横に飛ぶ⑨課隊員。
そしてお化けは、ズザザァッ!と顔面をこすり付けるようにして、地面に倒れ込んだ。

「び、びっくりした…。」

「な、何が起きたの?」

何が起きたのか理解できずに混乱するゆっくり二人の前に、
コロンとある物が転がり落ちる。


   ノl、       /|
.   i  ヽ、    __ノ {
   {   __>---<´   }
.  ,ゝ ´,r- ,  ,.-、ヽ ./
  ソ /NVヽ. /V∨|`フ
  /,| l|( 0 ) ( 0 )|く`i
  iソl   __二__   |く|.}
  `人  ´、_.ノ  .l ヾ
.   ヽヽ、     ノ ./
   ヽ/ヽー-─.´`V


「こ、これって希望の面?」

「あいつ、これを投げつけられて気絶したんだ!」


希望の面はぶつかった衝撃で無惨にひしゃげている。
こんな変形するくらいの勢いで投げつけられたら、
さしものお化けも気絶するのも頷ける。
…で、問題はそんな事をした奴が何者か、と言うことだ。


ザッザッザッザッザッ!


と、また外から足音が聞こえてくる。
しかも今度は一人じゃない、複数だ。

「ま、まだ外に何かいるんですかねぇ。」

今更物置に引っ込んでいても、意味はない。
ならば外に出た方が逃げれる可能性がある。
迷ってる時間はない、四人は顔を見合わせ、コクリと頷いて一斉に外に出た。


「う…。」

「うわぁ…。」


外の光景を見たれみりゃ達、もはや驚く言葉も出てこない。



   ノl、       /|   ノl、       /   ノl、       /|   ノl、       /|
.   i  ヽ、    __ノ {.   i  ヽ、    __ノ {.   i  ヽ、    __ノ .   i  ヽ、    __ノ {
   {   __>---<´   }  {   __>---<´   }  {   __>---<´   }  {   __>---<´   }
.  ,ゝ ´,r- ,  ,.-、ヽ ./.  ,ゝ ´,r- ,  ,.-、ヽ ./.  ,ゝ ´,r- ,  ,.-、ヽ ..  ,ゝ ´,r- ,  ,.-、ヽ ./
  ソ /NVヽ. /V∨|`フ   ソ /NVヽ. /V∨|`フ   ソ /NVヽ. /V∨|`フ   ソ /NVヽ. /V∨|`フ
  /,| l|( 0 ) ( 0 )|く`i  /,| l|( 0 ) ( 0 )|く`i  /,| l|( 0 ) ( 0 )|く`i  /,| l|( 0 ) ( 0 )|く`i
  iソl   __二__   |く|.}  iソl   __二__   |く|.}  iソl   __二__   |く|.}} iソl   __二__   |く|.}
  `人  ´、_.ノ  .l ヾ  `人  ´、_.ノ  .l ヾ   `人  ´、_.ノ  .l ヾ  `人  ´、_.ノ  .l ヾ
.   ヽヽ、     ノ ./ .   ヽヽ、     ノ ./ .   ヽヽ、     ノ ./.   ヽヽ、     ノ ./
   ヽ/ヽー-─.´`V     ヽ/ヽー-─.´`V     ヽ/ヽー-─.´`V     ヽ/ヽー-─.´`V



希望の面を被り、首から下は全身をスッポリ隠すマントを身にまとった不気味な奴ら。
そんな奴らがれみりゃの周りを囲んでいる。

「その日、私たちは思いだした。」

「初めて蜃気楼のEDで見たときの衝撃を…。」

「誰も予想の付かないことをしでかすのが制作者側の使命であるという事も…。」

「イヤもう良いから、三度目は要らないから!」

れみりゃはうんざりした表情で、ツッコミを入れていた。
そして、今は進撃第一話ナレーションをしている場合でも、そいつにツッコミを入れている場合でもなかった。

希望の面を着けた不気味な連中はドンドンこっちに近づいてきているのだ。

「お、おいぃ!あれは一体何なんですかねぇ!?」

余りに得体が知れないそいつ等を見ててんこがそう叫ぶ。
それに対して、れみりゃはこう呟いた。

「わ、解らない…解らないけど…まさか、工場長の祟り…?」

「え?それってもしかしてリーダーの作り話?」

そう、MMRリーダーに扮したてゐがでっち上げた、
工場町とじこと希望の面の昔話。
…確かにあれはてゐの作り話にすぎない。
しかし、しかしだ。

「最初は作り話でも長い時を経て伝えられていく内に、
 その話は真実になり力を持つ…そんな話を聞いたことあるど。」

「あ、あの、それってどう言うこと?」

⑨課隊員の問いかけにれみりゃはこう答えた。

「…でっち上げの作り話が詰所に漂う何か怪しい力で本当になって
 その結果あんな化け物を呼び寄せたのかも知れないど!」

「そ、そんな無茶苦茶な…。」

れみりゃの話を聞いた⑨課隊員は困惑している。

「おいぃ、推論話は後でやるべき、今は目の前の異常事態をどうにかすべきでしょう?」

てんこはれみりゃ達にそう言ってくる。
確かに、今は目の前の現状を何とかするのが先決だ。

ザッ。

と、その時、希望の面の一人が前にでてくる。
他の希望の面と比べて明らかに豪華なマントを身にまとっている。。
…もしかしてこいつらの代表みたいなものか?
れみりゃとてんこはそう直感した。


「…ねぇてんこちゃん。」

「ん?」

「今こっちに近づいてきた奴、もしかしてこの群のリーダーなんじゃないかど?」

「それは私もそう思っていた所だが。」

「…あいつを一撃でぶっ飛ばしたら他の連中もビビって逃げ出すんじゃないどか?」

「それは一理あるな。」

てんことれみりゃは顔を見合わせて頷く。
そして、リーダーと思われる希望の面が一層れみりゃ達に近づいた次の瞬間…。


「うぉりゃぁああああああああ!」


れみりゃの姿が相手の視界から消えた。
と、思った次の瞬間にはもう目の前にいた。
てんこはれみりゃが相手の顔面にめり込んでいくのを
野球のピッチャーがボールを投げ終えたときのポーズで、じっと見つめていた。
何故そんなポーズを取っているのかって?
実際に野球のピッチャーのフォームで思いっきりモノをブン投げていたからだ。
その投げていたモノはボールではなく、れみりゃであっただけの話である。


「そおりゃぁあああああ!」


とにかくてんこの力を借りで驚異的な早さで敵の顔面にめり込んだ!
そしてそのまま倒れ込む希望の面の顔面に張り付いたまま離れない!
驚異のもち肌を利用し、敵の顔面に張り付き窒息させる!
これぞ胴無しゆっくり奥義が一つ「地獄のもち肌」!


「どうだ!どうだ!このまま窒息するまで離れないんだど!」


希望の面は両手を出して顔に張り付いたれみりゃを引き剥がそうとする!
周りの希望の面も最初は慌てふためくだけだったが、
尋常じゃない状況だと気づいて、力を合わせ、れみりゃを引っ張っていく!
しかしいくられ見りゃを引っ張ってもみょーんと伸びるだけで一向に剥がれない!


「ようし!この調子で一気に窒息まで…!」


「ま、待って!」


と、そこでいきなりドクターストップをかける奴が居た。
⑨課隊員の二人である。

「なんだど!こっちは今忙しい…。」

「だから待って!身体の方を見て!」

「とんでもない事になってるから!」



「…?」


ゆっくり二人の言ってることが今一理解できないれみりゃ。
身体をミロとは、こいつの身体を見ろと言うことか?
なんでそんな事しなくちゃいけないのか、疑問に思いつつもれみりゃは身体のある方へ顔を向けてみた。

マントがめくれて、その下にあるモノが見えている。

赤い表面に白い模様、…なんか何処かで見たような。

「…まさか。」

あれほど引っ付いて離れなかったれみりゃが顔の上からあっさり降りる。
そして、希望の面を把持してみた。


「う、うわぁああああああああ!」



         :  ∧ :
         :  |::::| :
      : /´ ̄'!☆|"´ ̄\ :
     : / /   |::::::|     \ :
   :  / ノ    |:::::::!     \__\ :
  : ∠〃 {ノノ_ハ_V   レ'、_i_l>\__> :
   : /'レ小(●),  、(◎) 从l  \ :
     : |('/ ̄ 'ー=-(# ̄///) :



白目をむいて泡を吹くその素顔を見て、れみりゃは恐怖ではなく衝撃で、叫び声をあげていた。

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最終更新:2014年04月30日 22:34