偉大な作者様の許可を頂いたので。 
愛でスレ的ゆっくり加工場 
~番外編「幸せのかたち」 
ある春の日。 
「ちぇん!
おさんぽたのしいね!」 
「わかるよー!あったかいね!!」 
女はゆっくりらんしゃまとゆっくりちぇんを連れて、散歩をしていた。 
街外れの山の加工場から引き取ったらんしゃまは、 
おんなの飼っていたちぇんとすぐ仲良くなった。 
向こうに、誘拐未遂を起こす程お気に入りのちぇんがいたことは忘れているようだ。 
「いままでみたこともないふしぎなものがいっぱいだよ! あっちのちぇんにもみせたいね!!」 
……自分の考えを訂正せざるを得ない。というか、心を読まれたの?表情にでてる? 
そんな取り留めの無いことを考える1人と、 
ひたすら楽しそうな2匹は散歩を続けていた。 
そんなとき。 
「ん?」 
「ゆ?どうしたの、おねえさん!?」 
女の目に、見覚えのある顔が映った。……あの男の顔が。 
「……久し振り。」 
「へっ?」 
いきなり声を掛けられた男はすっ頓狂な声を出した。 
「……って、貴女ですか。こちらこそお久し振りです。」 
「ゆ!たよりにならないおねえさん、ひさしぶり!!」 
れいむも一緒だった。 
説明すると、この男は山の加工場を切り盛りする変人で、 
れいむはそこにゆっくりと住むゆっくりの1匹。 
男の加工場には自分の亡骸を食べて貰いたい多くのゆっくりが、 
ゆっくりと過ごしたその人生(ゆっくり生?)の結果を、 
饅頭やら人形焼やらに加工してもらうために住み込んでいる。 
その味は格別らしく、滅多に出回らないブランド饅頭と持て囃されるほどだ。 
「ゆ!やっぱりあらわれたねおにいさん!らんは、おいなりさんにならないし、ちぇんもわたさないよ!!!」 
もっとも、加工されたり食べられたりするのを拒むゆっくりもいるのだが。 
「んな訳ないだろ。お前はそこのおねえさんに任せたんだから。」 
「そうだよ、らんしゃま。このお兄さんは嫌がる子を饅頭やお稲荷さんにしたりしないよー。」 
男はそんなゆっくりに対しては、説得めいたことをせず、ただ丁重に葬るだけだ。 
なんせ、 
「なんせ、お馬鹿だしさ。ね?」 
「……いや、振られても、困るんですけど。」 
「それより、あんた何でこんなとこに来たんの?」 
挨拶もそこそこに、女は尋ねる。 
「いや、ゆっくりの引き取りですよ。」 
「引き取り?」 
「遺体を、です。」 
女の顔が少し曇る。自分の飼っていたありすのことを思い出したからだ。 
「飼い主さん曰く、自分を少しだけ飼い主さん当人に 
食べて貰う約束をしてたそうなんですが、 
大分大きくなってるので残りは引き取って貰うしかない、と。」 
「れいむはおてつだいにきたんだよ!!」 
れいむにその手伝いが出来るかは置いておこう。 
「わかんないよ―…。」 
話を聞いていたちぇんは戸惑っているようだった。 
仕方がない、と女は思う。 
このちぇんは、ゆっくりんピースに育てられていたのだから……。 
「分からなくていいさ。お前はお前だ。俺の引き取るれいむとは違う。 
大切なのは、理解より許容だしな。」 
「…ゆー……?」 
不思議そうな顔をするちぇんに、女は苦笑した。やっぱり分からないか。……ん? 
「あんたが引き取るのって、れいむの遺体?」 
「ええ。だからこいつを連れて来たんです。」 
男はそう言って自分のれいむの頭をなでる。 
「……そう。」 
女はどうとも言えず、相槌だけを打つ。 
「あ、そうだ。良ければ手伝って貰えませんか?」 
「へ?」 
今度は女の方がすっ頓狂な声を出した。 
「いや、知り合いに手伝って貰おうと思ったんですけど、忙しいらしくて。 
1人で頑張ろうと腹を括ってたらあなたが現われたので。」 
「……女の細腕に頼る気?」 
「細腕にしては痛かったですよ、あの鉄拳は。」 
女には何も言えなかった。 
トラックの荷台に、かなり大き目のゆっくりれいむの遺体を積み込み終わると、女は大きく息をついた。 
「ふぅ!重かったぁ~。」 
「有り難う御座います。……やっぱり1人では無理だったなぁ。」 
男はそう言うと、れいむの亡骸を見た。 
「幸せそうだ……。」 
「そう、だね。」 
乾燥した肌は散々いじった結果だそうらしいが、 
まるで眠っているかのようなれいむの顔は、 
いじられ続けたその生涯が満ち足りていたいたことを語っていた。 
男は考える。 
かつて望んだ通りに食べてやれなかった自分のれいむは、幸せだったのだろうかと。 
女は思う。 
ゆっくりの幸せとは、やはり1つでは無いのだと。 
「れいむ、どう思う。」 
男は、今、側にいるれいむに尋ねる。 
「すごく……おおきいです。」 
……。 
「おい……。」 
「ゆ!ばをなごませただけだよ!」 
といいつつも、おふざけが過ぎたのは分かってるらしい。 
「ゆ~、まじめにいうと、れいむもしんじゃうなら、こんなふうにゆっくりしにたいかな……。」 
そう言って考え込んでしまった。 
「すまん、れいむには難しかったか。」 
「ゆ!ばかにしないでね!れいむおばかじゃないよ!!」 
「誰も言ってないよ、れいむ。それに、そういうことを考えられるのは、お馬鹿じゃない。」 
女はそう言って、れいむを撫でてあげた。 
「それじゃ、加工場に戻ります。みんな待ってるだろうし。」 
そう言って、男はトラックに乗り込む。 
「そうだね。……あ、ちぇんに宜しく。らんしゃまは元気だって。」 
「ゆぅ、おにいさん!ちぇんをおまんじゅうにしないでね!!」 
「ちぇんも、おなじちぇんがおまんじゅうにされるのはかなしいよ!」 
「相変わらず、ってか、気の合う子見つけたな。らんしゃま。」 
「らんしゃま。ちぇんのことはちぇんがきめるよ!」 
れいむがそう言うとらんしゃまはどこかしっくりこない顔をしながらも 
「……わかったよ……。」 
と言った。 
男のトラックが走り出す。 
「わからなかったよー。なんでみんなたべられたいの?」 
ちぇんは尻尾を振りながら、しきりに尋ねる。 
「とうようのしんぴだよ!」 
らんしゃまはいい加減なことを言う。 
女はそれを微笑ましそうに見て、だいぶ遠くに行ってしまったトラックを見た。
荷台には、やはり満足気なれいむの顔があった。 
―― 
ええと、「
ゆっくりのいる生活」の作者さま、有り難う御座います。 
そして、ごめんなさい。 
この作品、どこが愛でなのか自分でもよく分かりません。 
せっかく許可を頂いたのに、このザマ……orz 
とほほだよ!! 
あ、あと、愛でスレ的~の舞台は読む人に任せた、幻想郷とも現代ともつかない世界なのですが、今回は現代ということで。 
お目汚し、すみませんでした。 
by.ゆっくり怪談の人 
-  れいむはゆっくりした一生を生きたんだねーわかるよー  -- 名無しさん  (2009-09-11 19:55:47)
-  死後に自分の遺体を大学病院なんかに献体として提供するようなもんかな?  -- 名無しさん  (2010-11-27 19:10:14)
-  ドナー登録のほうが近いかもね。あっちも家族間でも意見が食い違ったりして難しい。  -- 名無しさん  (2011-05-21 22:36:46)
-  れいむ死んだかと思ったww  -- 名無しさん  (2012-12-16 07:18:31)
最終更新:2012年12月16日 07:18