ちるのの変

####################################################################################
##ゆっくりと人間で淡いなんやらがあるので注意してください。 ##
##今回は某動画サイトの有名な東方アレンジを元ネタ……というかインスピレーション元に##
##しています。 ##
####################################################################################

ちるのの変

「あたいってばさいきょーね!!!」
とある森に一頭のゆっくりちるのが居ました。
このちるのは別の遠くの森から引っ越してきたばかりなので、
まだ、友達はいませんでした。
「あたいってばひとりぼっちー!!!」
そんなちるのは、友達を作りにしばしば森のゆっくりたちの広場に訪れるのです
が、
「あたいってばさいきょー!!!」
を示す為に色々なものを凍らせてしまうので、困ったちゃん扱いをされていまし
た。
けれども、当のちるのは「さいきょーを証明出来れば友達が出来る」
とばかり思い込んでいるので、自分が疎まれているのにまるで気が付かないので
した。
そんなちるのは今日も広場でひとり、葉っぱを凍らせて遊んでいました。
「やったー!!!やっぱあたいってばさいきょー!!!」
ちるのが、そうはしゃいでいたときです。
「へぇ、すごいなぁ。」
後ろから人の声がしました。
ちるのが振り返ると、そこには一人の青年が立っていました。
「おじさんだれ?」
ちるのが聞くと、青年は、おじさんはひどいなぁ、と苦笑いしながら、
自分が近くの街に住んでいるのを教えてくれました。
「ちょっと森林浴に来たんだけど、まさか野生のゆっくりに遭えるとはね。」
「めずらしーの?」
「街では野良なんかは滅多に見ないんだよ。たまにちぇんが居るくらいでね。」
「ふーん。」
ちるのには青年の言ってることがよく分かりませんでしたが、
青年と話しているとなんだか楽しくなってきました。
「みてみて、あたいさいきょーだから、
こんなおおきないしだってかちんかちんにできるよ!!!」
ちるのは唐突にそう言うと、そばにあった大きめの石を凍りづけにしました。
「はぁはぁ……、やったー!やっぱあたいってばさいきょー!!!」
おおきなものを凍らせて、少しばかり疲れたちるのが満足気にそう言うと、青年は
「すごいね。でも大丈夫?疲れてない?」
と、ちるのの頭を撫でました。
その途端、ちるのは
「ゆー!!」
と叫んで、どろどろに溶けてしまいました。
「うわっ!」
青年は驚きましたが、溶けてしまったちるのをまじまじと見ていました。
ちるのは、驚くと溶けてしまう、というのは良く知られたことだったのですが、
青年がそれを見たのは初めてだったのです。
「あぁ、ごめんね、驚かせちゃったかな?」
「ま、ま、ま、」
ちるのはとても慌てながら、
「またきてねーっ!」
と言って何処かに行ってしまいました。

「……どうしたんだろうな?あの子。」
青年は首を傾げるばかりでした。


次の日。
ちるのはひとり、広場で色々なものを凍らせていました。
「ゆぅ……、さ、さいきょー!!」
手当たり次第凍らせていったので、あたりは氷だらけです。
「ゆ!!ゆっくりやめてね!!ちるの!!!」
そんなちるのを止めたのは、森のれいむでした。
「たくさんこおりができちゃうと、みんなさむくてゆっくりできなくなっちゃうよ!!」
「やだー!!もっとさいきょーになるー!!!」
ちるのは駄々を捏ねますが、れいむがそれで納得する訳はありません。
「いいからやめてね!!!」
「やだー!!!」
二頭が言い争っていると、
「そうだよ。やめないと駄目だよ、ちるの」
人の声が聞こえました。
れいむとちるのはびっくりして後ろを振り向きます。
そこには、昨日の青年がいました。
「ちるの、さすがにこれはやりすぎだと思うよ。」
「でも、でも、おじ……おにいさんがすごいっていったから!!」
青年は少し悲しそうな顔をしました。
「……ごめんね、れいむ。昨日僕が褒めたから、ちるのはちょっと
はしゃぎ過ぎちゃったんだ。」
青年はそうれいむにいうと、しゃがんでちるのに目線を合わせました。
「確かに物を凍らせられることはすごいことだけど、
……友達に迷惑をかけるのは駄目だよ。」
ちるのはそれをきいてしょんぼりしました。
「さいきょーなのに……。」
青年はちょっとちるのが可哀想になりました。
「言いすぎた、かな?ごめんね。」
そっ、と頭を撫でます。
「ゆー!!!」
……ちるのはまた溶けてしまいました。
「ゆ!!ちるのなんでとけちゃったの!!?」
れいむはびっくりしました。ちるのが溶けるところを見たことが
なかったのです。
「あ、あたいってばどろどろね!!!」
「ゆっくりしてるね、ちるの!!!」
れいむはなんだかこの状態のちるのが気に入ったみたいです。
青年はそんな様子を見て安心しました。
そして、すっと青年は立ち上がって、
「……ごめんね、ちるの。しばらく僕はこの森に来れそうにないんだ。
あったばかりで悪いけど、みんなと仲良くね。さようなら。」
と言って広場を後にしました。
「さよなら~!!!……ゆ?ちるの?」
いつの間にか元に戻っていたちるのは、顔を泣き腫らしていました。

「おにいさん……。」
ちるのは夕暮れの中で、とぼとぼと巣の帰り道についていました。
ちるのはあの青年に伝えたいことがありました。
でも、それは口から出てこないのです。
「さいきょーなのにこまった……。」
とちるのが悩んでいると、
「おお、ちるのちるの。」
きめぇ丸が木の枝に腰掛けながら、新聞を読んでいました。
それを見たちるのは、
「ゆ!!いいことおもいついたー!!!やっぱあたいさいきょー!!!」
と、先ほどとは打って変わって元気いっぱいに巣に戻って行きました。


次の日。
「けーね!!あたいにじのかきかたおしえてね!!!」
ちるのは森のゆっくりの一頭、けーねの巣を訪れてそう言いました。
「それはいいが、どういうかぜのふきまわしだ、ちるの?」

けーねはちるのにそう聞きましたが、
「いいからおしえてー!!!」
ちるのは答えません。
そもそも風の吹き回しの意味が分かりませんでした。
ですが、けーねは教えることが好きなので、細かい事情は気にしませんでした。

早速授業が始まります。

「これが『あ』。」
けーねが棒を咥えて、地面に文字を書いていきます。
「あ!」
ちるのは繰り返して、同じように……と言いたい所ですが、
だいぶきちゃない字で『あ』を書きました。
「これが『た』。」
「た!」
けーねはまず、『あたいってばさいきょーね!!!』を書ける様に、
ちるのに教えていくことにしました。
とはいえ、ちるののおつむはあまりいい方ではありません。
一日二時間で5文字ずつ教える予定にしたのですが、
ニ週間経って、か行までと、『が』『ぎ』『ぐ』が出来た程度でした。

そんなとき。
「お久し振り、ちるの。」
あの青年がやって来ました。
「ゆっくりしていってね!!!」
けーねはそう答えましたが、「あ、あた、……。」
ちるのは結局黙ってしまいました。
「どうした、ちるの?……すまないな、おにいさん。
ちるのはなんだかはずかしがってるみたいだ。」
けーねがそう言うと、青年は軽く笑って答えました。
「はは、いいよ。それより、ふたりはなにしてたんだい?」
「ゆ!わたしがもじをおしえてたんだ。」
青年とけーねが和気あいあいと話し合っていると、
「さ、さいきょー!!!!」
と、ちるのがいきなり叫び出しました。
そして、地面に字を書き始めました。
『あたい、お い が き』
空白まじりにそう書いて、ちるのはもじもじ、けーねと青年を交互に見ていました。
「?どうしたんだい、ちるの?」
青年がそう聞くと、ちるのは顔全体を真っ赤にして、またも何処かへ行ってしまいました。
「ゆ!ちるの!!どこにいくんだ!!!」
けーねの言葉も聞こえていないようです。
「……ほんとにすまない、おにいさん。いったいどうしたんだろう、ちるのは……。」
青年は地面に書かれた文字をじっと見ていました。



ちるのは自分の巣に戻って泣いていました。
自分の思いを伝えたいのか、伝えたくないのか、さっぱり分からないのです。
青年と一緒にいたいのに、直ぐに逃げ出したくなる、さいきょーじゃない自分を、
もどかしく、情けなく思っていました。
「あたいってば……へん。」
ちるのがそう呟いていると、
「変じゃないよ。」
巣の入口から、青年の声がしました。
「ゆ!?おにいさん!?」
ちるのはまた、驚いて溶けてしまいました。
「な、なんでそこにいるの?!」
「けーねに教えてもらったんだ。ちょっと、アイスでも食べないかな。」
青年はそう言って、アイスクリームのカップを巣の前に置きました。
「あいす……?」
「うん。冷たくて美味しいよ。」
溶けたちるのはズルズルと巣の入口から出て来ました。
「また溶けてたんだ。ま、これでも食べよう。」
青年はアイスを木の匙で掬って、ちるのの口元に寄せました。
「はむ。……しあわせー!!」
アイスを食べたちるのは、たちまち元どおりになりました。
「はは、現金だな。じゃ、僕も一口。」
同じ匙で青年もアイスを食べると、ちるのの頬は少し赤くなりました。
「……やっぱよくわかんないけど、いいや!あたいってばさいきょー!!!」



少しばかり遠くから、けーねとれいむは
ちるのと青年の様子を眺めていました。
「ゆ!ちるのはなにしてるの!?けーね!」
れいむの質問にけーねは
「ちょっとばかり、むぼうなことだな。でも、しっぱいしてもゆっくりできそうだ。」
と答えます。
「……わかんないよ、けーね!!」
「れいむはどんかんだな。あとでおしえてあげるから、やぼはいいっこなしだ。」
「ゆぅぅ、あとでちゃんとおしえてよね、けーね!!」
そんなれいむの言葉も上の空です。
けーねが次にちるのに教える文字と例文は、もう決っていました。

それは、ちるのが伝えたい言葉。
『あたい、おにいさんがすき』



――
ゆっくり怪談の人


  • 愛は種族を越えるのかー。きちゃない字書いちゃうちるの萌え -- 名無しさん (2009-05-02 20:37:53)
  • ホロリときた -- 名無しさん (2009-05-17 00:34:23)
  • きゃー! きゅあー! おにいさん!ちゃんとおへんじしてあげてね! -- 名無しさん (2009-05-25 18:41:40)
  • ちるのっ!ちるのっ!ちるのっ!ちるのっ!ちるのっ!ちるのっ!ちるのっ!ちるのっ! -- 名無しさん (2009-07-09 09:10:04)
  • 顔だけでも普通に愛せるが胴つきだったら抱くぜ!!!!! -- 名無しさん (2011-04-30 19:43:44)
名前:
コメント:

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2011年04月30日 19:43