ゆっくりパークの春夏秋冬 part 6
--一月--
「むっちゅ! むっちゅ!」
明け方、ベッド寝ていた俺は、そんな小さな声を聞いて目を覚ました。
「むっちゅ! むっちゅ! けほけほ……むちゅぅ! むちゅむちゅ!」
声は壁際から聞こえてくる。俺はランプをつけて、壁に目をやった。
光のせいで目がさめたか、コタツから顔だけ出しているれみりゃが顔を上げた。
「うう……なんだぞぉ?」
改めて小屋を作るってやるのもめんどくさかったので、れみりゃ親子はコタツで寝かせている。
「なんでもない、寝てろ」
「んむ……ちゅぶちゅぶ」
コタツ布団のすそをしゃぶりながら、れみりゃはまた寝付いた。
俺は壁際に顔を寄せて、音源を捜した。すると、外の犬小屋とつながっている小穴に、紫色のものが詰まっていることに気付いた。
「なんだこりゃ」
指先でつつくと、ぷにぷにして柔らかい。と、そいつがくるりとこちらを向いた。
驚いたことに、それはピンポン玉ぐらいの小さなゆっくりぱちゅりーだった。
俺と目が合うと、ぷるぷる震えながら言う。
「ちゅ! あ、あなたはゆっくちできるひと?」
「ゆっくりしてる人らしいね、俺は。それよりおまえは、まさかれいむとぱちゅりーの子供か?」
「ちゅっ! そのちょうりよ! あなたはあたまのいい ひとみたいね!」
子ぱちゅりーは感心したように目を見張った。
しまったな、と俺は思った。あの二頭、冬ごもり中に子作りをしちゃったか。
れいむとぱちゅりーがすっきりをして、ゆっくりゆっくりを連発する妊娠期間ののちに、新生児を産み落として大喜びするシーン、ぜひとも見たかったんだが。
知らないうちに産んじまったとみえる。まあ、やるかもしれんとは思っていたが……。
「にんげんちゃん! たいへんなのよ、ゆっくちおはなちをきいてね!」
子ぱちゅの言葉に、俺は我にかえった。どうした、と聞いてやる。
「むちゅっ、おかあちゃまとおかあちゃまと、おねえちゃまたちが、こっちりちちゃっちゃたの! ゆっくち、たちゅけてね!」
「なに? こっちりした?」
ゆっくり言葉は分かりにくいが、こっちりと言われれば見当がつく。固まってしまったのだろう。おれはあわてて、覗き穴から子ぱちぇを引っぱった。
「むちゅううう! ひっぱらないぢぇぇぇ! つぶれちゃうぅぅ!」
目を閉じて口を△にして、ぷるぷると痙攣したので、あわてて離そうとしたが、その瞬間に、ぽむっと音を立ててこちらへ抜けた。
小さな紫ボールが、ころころん、と手のひらに落ちてくる。けほけほ! と咳きこんで顔を見上げた。
「おおう……」
俺はごくりと唾を飲んでしまった。
こんなに小さいのに、小指の先にすっぽりはまるぐらいの三日月のナイトキャップをきちんとかぶり、つぶらな瞳をしぱしぱと瞬いている。ほっぺたはふよふよとしてやや青白く、生気がないが、それは外の寒気のためだったらしい。見る間につやつやした濃い白さを取り戻した。
「むちゅぅぅ……こっちのおうちは、とっちぇもあったかいのね……」
室内の空気を味わうように、もたもた、もたもたと左右を見回す。そうやって体を動かすと、小さな足の裏がぴたぴたと手の上で動く感触がした。
「うらやまちいわ!」
そう言って、ちゅっ、と伸び上がった。
なんとも可愛らしい。食べてしまいたいぐらいだ。
俺はにやけそうなのを苦労して我慢し、尋ねた。
「向こう、寒いのか」
「しろいのがぴゅーぴゅーふいて、ちゃむいちゃむいなのよ!」
なんてこった、隙間があったのか。
「よし、助けてきてやる。おまえはこのベッドの上にいろ。下手に動くなよ、踏んづけちゃうから」
「きゅっ、ゆっくちりかいちたわ!」
さすがあのぱちゅりーの子供だけあって、落ち着いたものだ。俺はその子を置いて、ストーブをつけてから、上着を羽織って裏口を出た。
ここ数日、吹雪は小止みになっていた。まだ曇りだが、夜明けが来て空は明るい。ひうひうと弱い風が渡っている。
小屋の周囲の雪は五十センチほどにもなっていたが、横手の犬小屋は、まだそれほど積もっていなかった。だが、俺はひと目見たとたんに頭をかいた。
「うわぁ、こいつはしまったな……」
つららだ。
男物の傘ぐらいあるつららが、ぐっさりと発泡スチロールを貫いている。軒にできたやつが重くなって落ちたのだろう。
「おいおい、大丈夫か?」
犬小屋の前に回って雪をかき分け、発泡スチロールの扉を開けて、中を覗き込んだ。少しは暖気が漏れて来るかと思ったが、ひんやりとして外と変わらない。見れば、天井を貫いたつららが部屋のど真ん中に突き立っていた。冷蔵庫状態だ。
薄暗い室内に目が慣れると、つららの奥に、思い思いの姿勢でじっとしている丸いものが見えてきた。
母れいむ、母ぱちゅりー、そして秋までは赤ちゃんだった、二匹の子れいむたちだ。
どれもこれも、まったくの無表情のまま、少し傾いて静止しているのが不気味だった。なるほど、これはこっちりだ。
おや?
他の赤ん坊たちが見当たらん。子ぱちゅりー一匹しか生まれなかったのか?
と思っていると、母ぱちゅの頭の上でナイトキャップがもぞもぞ動き、ピンポン玉くらいの連中がもぞもぞと顔を出した。紫が一匹に、赤黒が二匹だ。
「むちゅむちゅ! ほんとうだわ! おちびちゃんをあなにいれたら、にんげんがきたわ!」
「おかーしゃんの いったとおりだね!」
「ゆっくちたすかりしょうだね!」
なるほど。つまり子ぱちゅの伝令は最終手段で、それまでは母ぱちゅの帽子の中でなんとかしのごうとしたんだな。
俺の性格を知っている母ぱちゅが、最初から頼ったら怒られるかもしれないと考えて、そのように言いつけたんだろう。
俺は片手を差し出した。
「よーし、いま中に入れてやるからな」
「むちゅ? なか? なかってどこ?」
「そうか、知らないのか。中っていうのはもっとゆっくりできる場所だ。乗りな」
そう言って手を近づけると、赤ゆっくりたちは意外なことに、もぞもぞと後ろへ下がってしまった。ったのだ。
「怖がるなよ、いじめないから」
俺が言い聞かせると、赤れいむがぽそりとつぶやいた。
「おかーしゃんたちとはなれたら、ゆっくちできないよ……」
「そうだわ! ぱちぇはおかあちゃまとはなれたくないわ!」
「ゆん、れいむもはなれたくないよ!」
そう言うと、きゅっ! と三匹一致して、こちこちぱちゅりーの髪に噛みついた。
俺は微笑が漏れるのを抑えられなかった。こいつらは、自分たちだけが連れて行かれると思っているのだ。
伸ばした指先で、小さなほっぺたをすりすりとくすぐってやりながら、俺は言い聞かせた。
「心配するな、母ちゃんも姉ちゃんも連れてってやるから」
「むちゅっ!? そんなのむりよ、れいむおかあちゃまも、ぱちぇおかあちゃまも、ぱちゅりーよりずっとずっと おもいのよ!」
「そうか? ほれ」
俺は冷蔵庫の野菜を取り出すようにして、ひょいひょいと大小四匹のゆっくりを救い出した。「むちゅぅぅ!?」と赤ゆっくりたちは母親にしがみつく。
二匹の子ゆっくりを両手でつかみ、両脇に二匹の母を収めて、俺はザクザクと歩き出した。
「ゆーっ、ゆーっ!」「むちゅむちゅぅぅ!」
親の頭の上で、赤ん坊たちが悲鳴をあげてうろうろした。生まれてからずっと巣の中で暮らしていたから、おびえているのだ。驚かさないよう、俺はそっと声をかけた。
「さあ、落ち着いて見てみろ。これが外の世界だからな」
「ゆう……」「むちゅ……?」
少しずつ静まった赤ゆっくりたちが、景色を眺めた。
丘の上だ。眺望はいい。
白一色に染まった雪原と、氷結して灰色に輝く池が見えた。
まばらな黄色いススキの茂みの間を縫って、小川が黒く流れている。
森の梢は重い雪に埋まり、まるで粉砂糖をたっぷりとかけられたようだ。
弱々しい日光のもとで、ゆっくりパークは静かに冬に耐えていた。
「ひろーい……」「とってもすてきな ながめね……!」
目をキラキラさせて眺めていたかと思うと、やにわに赤れいむの一匹が、ぴょんと跳ねた。
「ゆっくちあしょびにいくよ!」
「あっ、こら!」
止める間もなかった。初めて見る景色に浮かれて、どうしても行きたくなったんだろう。
だが、ひゅーっと落っこちた赤れいむは、雪の中にポスッと沈んでしまった。
杖で突いたような穴の底から、悲鳴が聞こえる。
「ゆきゃあああぁぁ! うごけにゃいよおおおおぉぉ!? ちべたいぃぃぃぃ!!」
「この馬鹿……」
小さな赤れいむはあっというまに凍ってしまうだろう。俺はあわてて親たちを下ろし、雪の中からちびをつかみ出して、親の頭に戻した。
「ぶるぶるぶる、ちゃむいよー!」
「真冬に出歩くゆっくりがあるか。遊ぶのは暖かくなってからだ」
「ゆゆ? あっちゃかくなったら、あしょびにいけるの?」
「おう、そうだ。ここから見えるのは全部、ゆっくりできる場所だからな」
「じぇんぶ?」「ゆーっ、ゆっくちたのちみだよ!」
暖かくなってから、か。俺はちくりと後ろめたいものを覚えた。
が、まあ先のことは先のことだ。
ゆっくり一家を抱えなおして、ザクザクと裏口へ向かった。
途中でだいぶ慣れてきたようで、赤ん坊たちは観光気分できゃっきゃとはしゃいでいた。
「おちょらをとんでるみたいだね!」
「むちゅ! にんげんさんは、おかあちゃまをぜんぶはこべて、えらいわね!」
「へえへえ」
適当に返事をしながらドアを開けて、ひとまず上がりかまちに一家を置いた。
「ふう……」
息をついて奥を見ると、こたつのれみりゃ親子が、最初の子ぱちぇをつかんで食べていた。
「おまっ……!?」
俺は靴を脱ぐのももどかしく、コタツへダッシュしたが、そこにあったのは意外な光景だった。
「よぉくあったまるんだぞぉ~ ころ☆ころ」
「むちゅうう! やめりゅのよ、ぱちぇはおもちゃじゃないのよ!」
母みりゃと子みりゃたちが、交互に手のひらで子ぱちぇを包んで、温めているのだ。
子ぱちぇは怒っているが、れみりゃたちに食べようとする気はないようだ。
俺が突っ立っていると、母みりゃが振り向いて言った。
「おかえりだぞぅ。ころころ、あっためてるんだぞぅ」
「お、おう。サンキュー。しかしおまえ、それ……」
「なんだぞぅ?」
「食べないのか」
「う゛う゛? たべないぞぉ? れみりゃはごはんとおやつしかたべないって、おにーざんとやくそくしたんだぞぅ♪」
「そうだぞぅ!」「だじょー」
子供たちもそう言って賛同した。
なんと、教育の効果がちゃんとあったのか……躾けておいて言うのもなんだが、びっくりだ。
「よし、偉いぞ。じゃごほうびをやるからな」
俺は取るものとりあえず、氷砂糖をくれてやった。動物の調教みたいだが、こいつらはモノで誉めるのが一番通じるだろうしな。
と思ったら、なんだかもじもじしながら、頭を差し出してきやがった。
「うう……おにーざん」
「なんだ」
「れみぃ、おかしより、いいこいいこしてほしいぞぅ……」
「なに?」
ぶちゃむくれた肉まん面で俺を見上げて、何やらわくわくしている。
俺は、黙って帽子を持ち上げ、れみりゃの頭をなでてやった。
水色に近い透明な髪は、ちょっとごわごわしていた。れみりゃは気持ちよさそうに目を閉じる。
「うっうー♪ おにーざん、やさしいんだぞぅ……!」
「そうか」
なんだが落ち着かなくなってきたので、早々に切り上げた。れみりゃはうっとりと両のほっぺたを押さえ、そのさまを子みりゃたちが「ままいーな゛ー!」と見つめていた。
そういえばこいつら、うちへ来てからちっとも、さくやーってのを言わない。
つまらんなあと思っていたが、それはつまり、幸せだったからなのかもしれない。
とりとめのないことを考えていると、コタツの上の子ぱちぇがつぶやいた。
「むちゅ……れみりゃはおとーちゃまがいて、うらやまちいわ!」
「馬鹿ヤロ誰がおとうちゃまだ」
怒鳴り返してから、俺はストーブの前に新聞紙を敷いて、玄関の凍結一家を持ってきた。そこへコタツの子ぱちぇも混ぜてやった。
「ほら、おまえのおかあちゃまだ。ゆっくりしな」
「むちゅちゅう! みんなもゆっくちしにきちゃのね!」
「むちゅぅぅ、おちびちゃん! ゆっくちなかへきたよ!」
「ゆっゆっ! れいむもあいちゃかったよぉぉぉ!」
母ぱちぇの頭の上で、盛大に泣きながら再会のすりすりを交わす姉妹。大げさなやつらだ。
いや、そうでもないか。妹ぱちぇが穴に詰まっていたら、そこで一家全滅していたわけで。
大冒険だったな。
ひとしきりすりすりを済ませると、四姉妹はいそいそと横一列に並んで、赤熱したストーブに顔を向け、ゆっくりし始めた。
「ゆぅぅ……あきゃいのは、とってもゆっくちできるよ……」
「むちゅ、からだが、ぽよぽよしてくるのよ……」
数が多いのでおさらいしておこう。中央にサッカーボール台の母れいむと母ぱちゅりー、左右にメロン大の姉れいむ。そして母ぱちゅりーの上に、赤ぱちゅりー二匹と赤れいむ二匹。
総勢八匹だ。この先見分けるのが大変そうな数だ。
しかし、まあ、しょうがない。この寒さでは自分ルールなどと言っていられない。危急の秋というやつだ。寒さが緩むまでは、中で飼ってやるとしよう。
口がおごらないことを祈るばかりだ。
そうと決めると、俺はミルクを軽く温めて、スープ皿で持ってきた。ずらりと並んで饅頭壁とでも言うべき状態になっている、一家の前に置いてやる。
「飲みな」
「ゆゆっ? これはなあに?」
「牛乳といってな……まあ飲めば分かる」
ぴょこぴょこ、と親から飛び降りた赤ゆっくりたちが、平皿の縁によじ登って、おそるおそる舌を伸ばした。
「ぺーろ♪ ぺーろ♪ ……ゆゆぅー!?」
「おいちいわ! とってもゆっくりしたあじだわ!」
目を丸くしたかと思うと、夢中になってぺろぺろ舐めだした。
「ぺーろぺーろ、ぺろぺろ♪」
「ちゅっ、あせるとおぎょうぎがわるいわ! ……ぺーろぺーろぺろぺろ!」
自分に言い聞かせつつも、ついつい焦っちゃってる子ぱちぇ。
わからんでもない。冬ごもりゆっくりは水分を取らない。飲み物自体が初めてで、目新しいんだろう。
「ぺろぺろぺろ、ちゅっ!?」
あまり身を乗り出しすぎて、子ぱちぇが一匹ひっくり返った。ころりんぽちゃん、とミルクの海に浮かんでしまう。
「ぢゅーっ! ぢゅーっ! むぢゅぅうう! たすっ! ざぼっ! むぎゃっ!」
いかん……可愛い……。当人必死だが、ピンポン玉ぐらいのゆっちゅりーがちゃぽちゃぽともがいているのは、妙に危機感がなくて、ついつい眺めてしまう。
「ゆゆううう!? おちびちゃあぁぁん!?」
「むちゅちゅう、ゆっくちちて! ゆっくちちゅるのよ!」
残った三姉妹が、ぴょんぴょん跳ねて声援を送るが、届いているやらいないのやら。
などと思っていたら、斜めにぷくぷくと沈みながら、ちびぱちゅが白目でつぶやいた。
「もっちょゆっくち、しちゃかっ……」
うわやばい、これは死ぬ。
そのとき、おれの横からぷっくりした短い腕がニュッと伸びて、溺死寸前のちびぱちゅをつまみあげた。ピンピン、と振って水気を飛ばす。
「ちびちゃんがおぼれてるんだぞぅ! たすけてあげるんだぞぅ!」
れみりゃだった。人間の子供によく似た、大げさなほど慎重な手つきで、ぶよぶよになってしまったちびぱちゅの頬を、むきゅっとつまむ。
「ぴゅうっ!」
口からミルクの噴水を吐いたちびぱちゅが、ぱちぱちと瞬きして、むせた。
「けほっ、こほっ……ゆ、ゆっくちちてってね!」
「ゆっくりするんだぞぅ♪」
そう言って、れみりゃはちびを皿の縁に戻した。姉妹たちがわらわらと群がって、ちびぱちぇを気遣った。
「ゆっくちちてね!」「うわぁぁあん、おちびちゃあぁん!」
「ちゅー、ちゅー……ちぬかとおもったわ!」
ちびが無事だと分かると、姉妹はれみりゃに向き直って元気よく言った
「「「ありがちょうね! ゆっくちちていってね!」」」
「れみ☆りあ☆うー」
れみりゃは華麗にして高貴な決めポーズ(だと本人の規定するところの不恰好な姿勢)でもって、答礼した。
はからずもこの出来事が、両一家の公式的な関係を決定した。
なかば凍りついていた親ゆっくり二匹が目を覚ましたのは、まさにこの瞬間だった。
「ゆゆゆ……ゆっくりしていってね!!!」
「むきゅぅ……ゆっくりしてってね」
寝起きの半ば機械的なゆっくりコールの直後、ゆっくりが最大最悪の天敵と認定していた捕食種を目前に見て、れいむとぱちゅりーは悲鳴を上げそうになった。
「ゆぎゃああああ!? れみりゃだ――」
その悲鳴を、子供たちの歓喜の声がかき消した。
「ゆっ、おかーしゃんがゆっくちおきたよ!」
「おかーしゃん、おかーしゃんだ! すーりすーり♪」
「ゆっくち! おかーちゃまもゆっくちちゅるのよ?」
「あたらちいおともだちよ! ゆっくちちょうかいするのよ!」
「む、むきゅ?」「ゆゆっ? おちびちゃんたち……?」
戸惑う両親に、ちびたちは懸命にれみりゃとの仲立ちをしようとする。
だが両親は疑いの目でれみりゃを見つめ、用心深く子供たちを隠そうとした。
「ゆう……おちびちゃんたち、ゆっくりこっちへおいで?」
ま、無理もないことだ。先日まで食うか食われるかということをしていた相手と、いきなり仲良くできるわけがない。
だが俺としても、この状況は見過ごせなかった。好むと好まざるとに関わらず、こいつらはしばらくうちで同居するのだ。
なんらかの補助をしてやるべきだろう。
「よーし、おまえら、ちょっと聞きなさい」
「なんだぞぅ?」
「ゆ? ゆっくりした人がおうちにいるよ?」
「はいはい寝ぼけない、ここは俺のうちだよ。さて、れいむにぱちゅりー、おまえたちのうちが寒くてゆっくりできなくなったので、今日からはここに住むことを許します。ついては、このれみりゃ一家と仲良くしなさい」
「ゆううううう!? れみりゃとなんか、なかよくできるわけがないよ! おにーさんはれいむたちをゆっくりころすきだね!」
「まって、れいむ……そうじゃないとおもうわ」
口を挟んだのはゆっちゅりーだ。ちらちらと俺を見て、れいむに言い聞かせる。
「おにーさんはわるいひとじゃないから、だいじょうぶだとおもうわ。きっちゆっくりできるわ」
「そうだよ! いっしょにゆっくちちていってね!」
ここぞとばかりに子供たちも応援する。れいむは不満そうだったが、しぶしぶうなずいた。
「ゆゆ、ぱちぇがいうならそうするよ。れいむ、なかよくするよ!」
「だそうだ。わかったな、れみりゃ」
「うー?」
「こいつらに手を出したら、おまえが翌日の晩飯になるってことだ」
「わ゛っ、わ゛がっでるぞぉ! なかよくするんだぞぅー」
れみりゃは這いよって、れいむをもそもそと撫でた。
「ゆっくりするんだぞぉ」
「ゆ゛っ!」
びくっと震えたものの、れいむもかすれた声で言ったのだった。
「ゆ゛、ゆっぐりじでいっで、ね……?」
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- れみぃが良い子すぎて可愛すぎて生きてるのがつらい -- 名無しさん (2010-12-05 19:17:38)
最終更新:2010年12月05日 19:17