帰郷2



  • しつこくいいますが昭和年代ですが一部現代言語が混じっています。まぁパラレルワールドとしてください。
  • パラレルなので神様がチラリと出てきます。
  • 帰郷の続きです、多分。舞台は秋田県(パラレル)です。

「ひゃんひゃん」
庭で犬の声がする。老犬になってもボディプレスを仕掛けてくるなかなか剛毅で人懐っこい元気な奴である。
私は実家に帰ってきていた。大学が9連休になったのでやることが無かったから帰郷したのだが……。

「あぁ、それ洗っておいてね! じゃ、行って来るから!」
「あぁい……」
外での仕事はできるのだが家では仕事をしない母に家事を押し付けられていた。父はなんやかやでやってくれるのに……。
「だから帰るのは嫌だったんだ………」
皿を洗いながら愚痴る。
「ぐちなんだね、わかるよぉ」「よくわからないけどわかるよぉ」
足元でてぃんてぃんと跳ねながら相槌をうつ二体。相変わらずのメルヒェンあふれる生命体・ゆっくりちぇんだ。
ある日偏頭痛の酷い朝に現れたこ奴らは私の生活にかなりの癒しと少しの理不尽さを持ちながら入り込んだ生物(ナマモノ)だ。
最近(といってもここ一年ほど・私にとっては二、三ヶ月だが)この世界に現れて多くの動物学者を敗北へと導いたらしいが私はそんなものは知らん。
ある者はゆっくりを饅頭生物だといい、またあるものは妖精だといった。まぁそんなこともどうでもよろしい。
とりあえず彼ら、いや彼女ら?がここにいるのは変わらないのだから。
「わかってないのにわかると使っちゃいかんぞ、子ちぇん」
「わかったよぉ」
別の思考をしていた頭を元にシフトしつつ子ちぇんに注意をする。わからないものはわからない、と認めることも大切だ。
皿洗いも終わり、テレビをつける。またゆっくりの特集だ。今度はなんだ、どうせまたペット特集とかだろうと邪推しながらしばらく見る。
自称・ゆっくりのブリーダーとやらがゆっくりの飼い方・躾け方などを教えている毒にも薬にもならん番組だった。
なんというかコイツがつれてきているゆっくり達の顔はどことなく暗い。
フランソワとかジェームズとかゆっくりにふさわしい名前なのか、とコイツを少し問い詰めたくなってきた。
「おねぇさん、なんであのひとたちはれいむたちにべつのおなまえをつけてるの?」
「難しい質問だなぁ……」
あの人たちはゆっくりをいつものペット感覚で手に入れるから名前をつけた。彼らにとってゆっくりの名前は犬や猫の品種名と同義なんだろう。
だけど、ホントのところゆっくり達にとっては彼らの言う品種名こそが『名前』なんじゃないのだろうか?
「あの人たちはちぇんやれいむとかの名前を名前と思ってないんだよ」
「ちぇんはちぇんだよ!! わかるねぇ!」「そうだよ!! わかってねぇ!」
「うん、ちぇんはちぇん、わかるよ」
 普通のペットなら名前を付けるべきなんだろうが私が『飼っている』とは正直言いがたいため、それにこ奴らが『ちぇん』と名乗っている以上
(第一わたしは殆ど大学に出ているため、一緒にいないに等しい。食べ物と居場所を用意しているだけを果たして飼っているといえるのだろうか?)
つけないことにしている。母は大層不思議がったがちぇん達から言ってこない限り私は名を付けないだろう。

そんなこんなでテレビを消してふと時計を見る。私の家の時計の時間はどれもバラバラだ。
「さて、そろそろ10時か」
「あさのまんなかあたりだねぇ」「そうだねぇ」
「公園まで散歩するか?」
「さんぽ?」「おさんぽ?」
「あぁ、寒いから襟巻き巻くけどいいか?」
「すこしちくちくするけどいいよぉ」「がまんするよぉ」
というわけで公園まで散歩に出ることにした。
「あ、先生もいるからな」
「いぬさんはぺろぺろなめてくるからにがてだよぉ」「にがてだよぉ」
「あの子なりのスキンシップだから我慢してくれ………
てぃんてぃんとコミカルな音を立てながら朝の道路を歩く一人と二体のゆっくりと一匹の犬。
ここは新興の住宅街のため、この時間通る車はあまり無い。
「うぅむ、まだ雪が降らんのか………」
今私が住んでいるところはあまり雪が降らない。なんというか冬が来ても物足りないのだ。そう、言うのならばあそこの冬は白さが足りない。
「ゆきはさむいよぉ」「わからないよぉ」
「ひゃんひゃん」
あぁ、最初に会っていたとき確か野原に住んでいたと言ってたな。確かにこやつらが冬眠?いや冬篭りか、とかをせにゃならんとしたら大変だろう。
「やっぱり大変だったか?」
「ごはんはもんだいなかったけどやっぱりさむいのはこたえたよぉ」「わからないよぉ」
「子ちぇんはいなかったからわからんものなの」
「わかったよぉ」
よく見るとちぇん達の尻尾(先生の尻尾もだが)はモコッとしている。 
やはりコレはアレか?毛代わりのシーズンがあるのか? 夏が近づくとちぇんの毛がモサッと落ちるのか?
そんなこんなを考えてるうちに公園に着いた。

「ひろいよぉ!」「ひろいよぉ!」
ブランコ・鉄棒・滑り台に砂場とまぁオーソドックスなものは揃っている。
「とりあえず何をしてみたい?」
「すべりだい!」「すべりだい!」
ブランコとか言ってこないでホント良かった……。とりあえず二体を掴んで階段を昇り、やり方を説明する。最初は親ちぇんに滑らせた。
万が一にも子ちぇんがつぶされないようにだ。
「すぃー!」「すぃー!」
実に楽しそうだ。跳ねて坂道を戻り、また滑る。
本当はマナー違反なのだがここは目を瞑ろう、ゆっくりは階段を昇るのは一仕事だ。
「しかし、なんでどんな足場でもてぃんてぃんと響くのだろうか……」
など当てども無く考えつつ二体の様子を『先生』と一緒にベンチに座って見ていた。残念ながらこの公園にドッグランは無い。
『若い者は良いねぇ……』とばかりにちぇん達を見ながら舌を出している『先生』。 いや待て、私は未だ現役で若いぞ。
「おねぇさんおねぇさん、すなばでもあそんでいいの?」
「問題ないぞ」
言うや否や砂場に飛び込んでいくちぇん二体。
「おやまをつくろうね!」「つくろうね!」
さすが親子、といったところかかなり息の合ったタイミングで大きな山を作っていく。ある程度大きくなったところで子ちぇんが飛び乗り
「ずっし~ん!」
山を崩した。
「もういっかいつくるよ!」「つくるよ!」
そしてまた同じことを続ける。 アパート近所の公園でもやってたが遊び……なのか、これ? 『賽の河原ごっこ』らしいのだが。
腕時計を見やるともう昼に近い。
「そろそろ帰ろうか? お昼だし」
「わかったよ!」「わかったよ!!」
そういって遊びを中断し、家に帰る。
昼を食べ終えたら遊びつかれたのかちぇん達(先生も)は寝てしまった。
日光の当たるところに心なしか移動して丸くなっている。『先生』は枕代わりにされているためか寝苦しそうだが。
「とりあえず毛布もってくるか……」
毛布を二階から取り出し、ちぇん達にかけておく。一階にも毛布はあるのだがそれは父と母の使う布団類だ。
下手に使ったら……確実に私は消される。

さて、やることもないのでイヤホンを付けて、テレビを見ることにする。
また当たり障りのないニュースだったのでゲーム機でもやることにする。

き、キノコのくせに生意気なっ!!甲羅で無限残機アップをして進まざるを得ない。

そんなこんなで小一時間も遊んでいたらちぇんが起き出した。
「おねぇさんおはよ~」「おはよ~」
「もう夜に近いからこんばんはぁだな」
「じゃあこんばんはぁ」「こんばんは~」
あ、そうだニュースの時間だからチャンネルを変えてみる。
『わりぃごはいねぇがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』
「「ひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」
しまった、地元の伝統・客人神のナマハゲさんではないか!! これは子供の(感性を持つ)ちぇんにはキツい……
「がくがくぶるぶる……」 「ぶるぶる……」
オノマトペまで自分で言うのか……。
「あ、安心しろ! あの人たちはかなり遠いところにしか現れない!!」
「ほ、ほんとに?」 「ほんとに?」
「あぁほんとだ」
「「ゆっくり安心したよ!!」」

なんとか安心させることができた。まぁ、男鹿に行かない限りあの人達には遭遇しないだろう……。

その夜―――
「今度の年末なんだけどね?」
「はい?」
「今度の年末、母さんのお友達の所に行くから付いて来なさいね?」
「ゲェッ!?」
母の友達が住んでいるところは………男鹿だ。そしてあの人達が出没するシーズンもまた年末なのである。
「ど~する私!?」
「どぉしたのぉ?」「どうしたのぉ?」
「い、いやなんでもない」

さぁどうしようか……。


後書き・
えぇと、とりあえず書いてみました。私の地元を舞台に使っていますがそれ以外は実在の人々は一切合切関係ありません。
あと、昭和にドッグランって言葉あったんでしょうか……。



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最終更新:2008年12月05日 21:18