【作者当て】紅い血の女

注意。
この作品には、無茶苦茶な設定が含まれます。
というか、ゆっくり主役じゃないです。
まごうことなきスイーツ(笑)です。何書いてるの、自分。恥ずかしくないの。
彼女なんていないのにさ。



「紅い血の女」



お前は、俺から逃げないでくれるか?
俺は、ひとりぼっちなんだ。誰からも見捨てられた。
孤独なんだ。
お前が家に来てくれてから、俺はとても幸せだ。
だから絶対、俺が死ぬまで側にいてくれ……。




ぴーんぽーん。
冬真っ直中の寒空の下、僕はとある家のチャイムを鳴らした。
いつの間にかズレていた眼鏡を、格好つけて中指で押し上げていると(単にやり易い方法だからだが)、
鍵を開ける音がして、玄関のドアが開いた。
「……大江か。」
玄関にいたのは、同級生の長沢だった。
「……元気みたいだね。おばさんは?」
「お袋ならまだ仕事だ。」
「そう……。」
長沢はくるりと踵を返した。
「ま、入れよ。」
そう言うと、さっさと二階の部屋に戻ってしまった。
「全く……。ピンピンしてるじゃないか。」
僕は長沢の後をついて二階の階段を昇っていった。

見慣れた長沢の部屋に入ると、僕は本題を切り出す。
「それにしても災難だったな。その……。」
「変質者に襲われて、か?」
……相変わらず、歯に衣着せない奴だ。
「全くだぜ。お陰で折角の平日休みだってのに、部屋に引き籠もりっぱなしだ。」
「何があったんだ?」
僕がそう聞くと、長沢は押し黙ってしまった。
「学校じゃ、詳しいことは話して貰えなかった。普通だったら、手口だとか犯人の服装とか細かく言われるって
言うのに。」
「……。」
「何が、あったんだ。」
長沢はやはり、押し黙ったままだ……。


「ぅゅ……っ!ゆ、ゆっくりしていってね!!!」
突然、ベッドの上にいた、長沢の家のゆっくりまりさが声をあげた。
「ゆ!?おにいさん、おひさ!!!」
そしてぴょんぴょんと跳ねて、僕の足下にすり寄ってきた。
「みきちゃん、おにいさんだよ!!!」
そう言われたみきちゃん――長沢美紀は、少し苦笑いをして、まりさを抱えあげた。
「おう、嬉しいか?」
「うん!!!」
まりさの言葉に、僕も長沢の様に苦笑いを浮かべていた。
「何でこんなに好かれてるのかな、僕は。」
「頼りなさそうな所とか、まどろっこしい所とか、色々長所はあって、判断に困るな。」
「……全部短所じゃないか。」
僕が呆れていると、まりさは長沢の腕の中で頬をぷくりと膨らませた。
「ゆゆ!いくらみきちゃんだからっておにいさんのわるくちはゆるさないよ!!!おにいさんはとてもゆっくり
してるからまりさはすきなんだよ!!!」
「へいへい。」
長沢がまりさをあしらっている所で、僕は話を本題に戻す。
「で、何があったんだ。学校じゃ、変な噂が立ってるし。例えば、その……」
まぁ、未成年とはいえ僕らはもうすぐ高校生だ。
その……そういうのは、ねぇ?
「暴行されたとかか?」
「なッ?!」
「おねえさん!!」
やっかいな所でまりさが話に割り込んできた。
「ぼうこうってなにー?」
「乱暴されることだな。ゆっくりだと、無理矢理すりすりー、すっきりさせられ
るみたいな……」
こ、こんの……ッ!
「馬鹿!せめてぼかして言えよッ!!」
「これでもぼかしてるぜー?ま、回りくどいことはしないのがあたしの主義だからな。」
そう言ってけらけらと笑いだした。
「……その様子だと、本当に違うんだな。」
「ったり前だぜ。お前も下世話な噂が好きだなぁ。」
「僕が言ってるんじゃない。」
「ふーん、そうか。」
長沢はそう言って、ベッドにぼすんっ、と腰を下ろした


僕、大江健次と長沢は、小学生の頃からの友人だ。
特に何かあった訳じゃない。
何回かクラスが一緒になり、何故だか気が合ってしまったから、
いつの間にか親友と言うか、悪友と言うかの仲になっていた。
男勝りを越して親父臭い口調の長沢だが、見た目はいたって普通の女子だ。黒い長髪で、不良と言う訳ではない。
いや、昔は普通の女の子だった筈だ。それが最近じゃ、口調のせいでか周囲から浮いている。
「なんでだろうかな……。」
「ん?なんか言ったか?」
「いや、別に。」


「それにしても、今日は何でわざわざウチまで来たんだ?」
長沢にそう聞かれて、僕は飲んでいたジュースを噴き出しかけた。
「ゆゆ!?おにいさんどうしたの?」
「げほげほ……、いや、その……。」
「どうせクラスの連中に唆されたんだろ?『恋人の見舞いに行けー』なんてさ。」
僕は不貞腐れてそっぽを向いた。分かってるなら聞くなよ、まったく……。
クラスで僕が冷やかされるのは、今年のバレンタイン、僕が長沢からチョコをもらったからだ。
とはいっても、10円のチ□ルチョコ。……今では20円の物が殆どだというのに、コイツは10円をケチるた
めにわざわざ駄菓子屋で買ってきたのだ。
しかも義理チョコで、クラスの男子全員に配る予定が、僕に渡した後はすっかり忘れていたお陰で、僕は長沢の
意中の人扱いされた。
冗談じゃない。
しかも長沢は恥ずかしがるどころか、悪びれた様子もなく、平気でその話をするからタチが悪い。
「機嫌を直せよ、わが恋人。」
「……もういいよ、それは。それより、本当に何があったんだ?」
僕が聞くと、長沢は少し間をおいてから、
「知らん。」
とだけ答えた。
「知らない、ことはないだろ。自分のことなんだから。」
僕が問い詰めても、長沢は難しい顔をして、
「いや、本当に知らん。覚えてないんだよな。」
と嘯く。
「覚えてんのは、昨日ちょっと出かけて帰りまでで、そこから先は無し。朝起きたら病院に居たんだよ。」
「……本当か?」
「本当。なんか変質者ってのも状況判断らしいし。」
「何だよそれ。」
「だって、そりゃ、なぁ。」
長沢は僕に背を向け、後ろ髪を掻き揚げた。
「こんな痕がありゃあな。」
長沢の首には、丸で牙で噛まれたような傷跡が2つ、残っていた。
「こんなの、どう説明しろってんだ?」


日がすっかり暮れた頃、僕は家の近くの公園に居た。
長沢の家で薄気味の悪い事を聞いた僕は、少しばかり暗くなった気分を晴らすため、そこに居る愉快な連中に会
いに来たのだ。
そいつらとは……。
「ゆゆ!!!さなえ、すわこ!!!おにいさんがきたわよ!!!」
「あうー!!!ほんと?かなこ!!!」
「おひさしぶりです!!!」
この公園の遊具に住み着いている、ゆっくりかなこ、すわこ、さなえの3頭だ。
こいつらと会ったのは、小学校五年生くらいの頃。
念願のマイホームとか言って、ここに引っ越してきた時のことだ。
マイホームといっても、実は海外で老後を送っているらしい、遠い親戚の家を改築したものだったりする。
その引越した当日に近くをうろついてたらこいつらを見つけたのだ。
「ゆ!!!おにいさん、きょうはおかしあるの?!」
かなこがさっそくねだり始めた。というのも、僕は度々こいつらにお菓子やら給食のパンやらを食べさせている。
パンに関しては、単に嫌いなものといっても捨てるのが勿体無いから食べてもらっている。
菓子に関しては、なんか、その……義理みたいなものだ。
件のチ□ルチョコを売っていた駄菓子屋で買ってきたやつだから、そんな大したものじゃないけど。
「残念だけど、今日は無い。」
「ゆぅ~。おにいさんたらケチね!!!」
かなこが口を尖らせていうと、
「かなこみたいだよ!!!」
すわこがすかさず、かなこをおちょくる。
「……すわこ、あんたなまいきだよ!!!」
かなこが頬を膨らませてそう言うと、
「かなこにはまけるね!!!」
売り言葉に買い言葉。すわこは胸を張るようなポーズをとる。
「ふん!!!なら、ここでけっちゃくつけるよ、すわこ!!!」
「のぞむところだよ、かなこ!!!」
2頭はそう言うと、互いに頬を押し付け合い、
『うりうりうりうりうりうりうりうりうりうりうりうりぃぃ~!!!』
とおしくら饅頭らしきものを始めた。
「……はぁ。」
途中から、なんだか楽しそうになってる2頭を見て、僕はため息をついた。
「どうされたんですか!?」
そんな僕に寄ってきたのは、3頭の中で一番まともな、さなえだった。
「いや、ちょっと物騒な話でさ……。」
僕が事の次第を話すと、さなえは少し考えているようだった。
『すっきりー!!!』
かなことすわこが喧嘩というかなにかを終えた頃、さなえはようやく口を開いた。
「おにいさん。きょうはもうかえったほうがいいです。」
「え?いや、確かに遅いけどさ、変質者が出た所とは離れてるし……。」
「いいから、かえってください。」
さなえはそういうと、住処の遊具へと跳ねていく。
「どしたの、さなえ。」
「なんでむずかしいかおしてるの?」
そんなさなえを見つけて、すわことかなこが声をかけた。
「……ごめんなさい、かなこさま、すわこさま。おにいさんにはかえってもらいます。」
さなえはそれだけ言って遊具の中に入っていってしまった。
「どうしたのかしら……?」
「ごめんね、おにいさん!!!」
2頭が謝ったが、別に僕は怒ってはいなかった。
ただ、いつものさなえらしくなくて、僕にはすこしばかり不思議に思えた。


どこだ。どこに行ったんだ?
こんな時間に出歩くなんて、危ないじゃないか。
最近は冬にも関わらず変な奴が出るというのに。


公園を出た僕は、特に何をする訳でもなく、辺りをうろついていた。
時刻はまだ6時半。だというのに、すでに夜と言えるほど暗かった。
そして、寒い。
「変質者って春出るっていうけどなぁ……。」
そんなことを呟きながら歩いていると
「おい!」
と、声がした。いや、怒鳴られた。
……驚きのあまり、思わず硬直する僕。
「聞こえてるのか!」
再度怒鳴られたので振り向くと、そこには怒りっぽいことで有名な竹下の爺さんがいた。
「は……はい……。」
……今日はとことんついてない。
「こんな時間になに出歩いてる!」
「い、いえ、特になにも……」
「理由を聞いてるんじゃない!!」
一際大きい雷が落ちた。
正直、一言注意するだけでいいと思うんだけどな……。
それから、竹下の爺さんが嫌われている最大の原因である、長いお説教が始まった。
基本的には、怒った理由についてのお叱りから飛躍して、いつの時代も変わらない若者論、果ては現代社会の若
者の「心の闇」にまで話は及ぶ。
「兎に角、餓鬼はさっさと帰れ!帰って勉強でもしてろ!」
そう言ったあと、何だかグチグチ言いながら竹下の爺さんは帰っていった。
ふぅ、と僕はため息をつく。いつもなら長いお説教なのだが、今日はあれだけで済んだみたいだ。
早く帰れっていってるのに遅く帰らせる羽目になったら意味がない。
まぁ、もう7時を過ぎてしまったので、充分本末転倒だけれど。
兎に角今日は良いことが無かった。爺さんが言うとおり、早く帰ろう。
そう思って、僕は近道の裏路地を歩いていった。せまくて汚いが、今は一刻も早く帰りたい。
爺さんはそう悪い人では無い、と僕は思っている。基本的には間違ったことで注意はしないし、僕に限って言え
ば、締めは真っ当なことを言うし。
「まぁ、話を飛躍させてまで長いお説教を聞かせるのはなぁ……。」
そんな独り言を言っていたときだ。
ふと、僕は足を止めた。
前に人影が見えた。はっきりとはわからないが、背格好からして10歳ぐらいの、金髪の少女のようだ。
何だか見覚えのある、変な帽子を被っている。
見かけない子だな……。
こんな子がいたなら、流石に近所でも話題になるとは思うのだけれど。
そう思って彼女を見ていると、彼女は、


「おねがい。」


そう言って笑った。
その途端、僕に走ったのは、どうしようもない程の
怖さ。
笑顔は屈託の無い、むしろ綺麗で可愛いものだったと思う。
だけどそれにこめられた意味は、大人でもない僕にすら分かるほど明瞭で、そしてただただ

恐ろしかった。

逃げなくてはいけない。直感的にそう思った僕は踵を返して来た道を走った。
声を上げる余裕もない。それほど恐ろしかった。
きっとライオンと対面した獲物、それも、まさに子供の気分だ。
もつれる足を気にも留めず、僕は必死に走って




「おいついたぁ。」



すぐそばに、大きく口を開けた少女の顔が見えた。
犬歯がひどく長くて尖っていたけれど、やっぱり綺麗で――
とても、恐ろしかった。
「うわぁぁぁぁぁ!!!!」


次の瞬間だった。そう、まさに一瞬。
眩い光が通りすぎ、少女は吹き飛ばされていた。
路地に置いてあるゴミ箱にぶつかる音が、派手にしていた。
助かっ……た……?
そう思った途端、急に、僕は足に力が入らなくなり、
「うわぁっ?」
前のめりにすっ転んでしまった。
「いてて……。」
起き上がろうとして前を見ると、
「まったく、何をしてるんですか?」
見たことも無い女性がいた。
緑の長髪に、妙な髪飾りを付けて、
なによりも、何故かノースリーブを着た上で二の腕辺りに袖をくくりつけた妙な格好。
普通ならあまり関わりたくないと思わせる服装だというのに、なんだかとても優しい雰囲気のする人だ。
「だから早く帰るように言ったのに。」
ガタン、と音がした。
後ろを向くと、あの少女が起き上がり、こちらを睨み付けていた。
枝のような、翼のようななにかを広げて。
「さがっててください。」
女性にそう言われた僕は、這いずりながら慌てて後ろに下がった。
少女は軽く飛び上がり、
そのまま、滑空してきた。
女性はどこからとも無く、神主さんが持っているような、何かひらひらした紙のついた棒を取り出すと、
軽く振り上げた。
すると、さっきよりも眩い光が走り、あの少女に直撃した。
少女はさっきよりも強く地面に叩きつけられたようで、うめき声を上げている。
「帰りなさい。」
女性は毅然として言った。
「人に危害を加えるようなものに、容赦はしません。」
少女は忌々しげな顔をすると、翼を広げ、夜の空に消えていった。
しばらく訳が分からず、呆然としていると、
「駄目じゃないですか。早く帰って下さいって言ったのに。」
女性が声をかけてきた。
「え、ええと、その……、ど、どなたですか?!」
当然だが、僕はこんな奇抜で綺麗な人に見覚えが無い。
「……まぁ、仕方ないですね。この姿じゃあ。」
女性がそう言った次の瞬間、僕は信じられないものを見た。
不思議だとかいうのを通りこして、不自然だった。
目の前にいた女性が、まさに一瞬にして、
「ゆっくりりかいしてくださいね!!!」
ゆっくりさなえになったのだから。



「ええと、つまり、まとめると、……ゆっくりって人間になれるの?」
「人間ではないですね。」
ゆっくりの姿から、さっきの女性の姿に戻った……さなえでいいんだろうか?
「あくまでゆっくりです。それに、私以外の多くのゆっくりが、人間ではなくて、人間のような容姿の妖怪の姿
を取ります。『始祖返り』って言うんですよ。」
「はぁ……。」
「私達は、私達の生まれ故郷にいるすごい人や妖怪達が力を使った余波で生まれたんです。だから、普段の姿も、
この姿も、その人達の格好を真似してるんですよ。」
たしかに見直してみれば、変な髪飾りはゆっくりさなえがしているものと同じだった。
「あと、すべてのゆっくりがこんな風に姿を変えるわけじゃありません。年を経て、なおかつ自分のあるべき姿
に目覚めたゆっくりだけが、こんな姿になれることもある、ぐらいです。」
「じゃあ、かなこやすわこも?」
「いいえ。お二人はまだ私よりも若いですし……、なにより、ゆっくりがこうなれるというのは、幸せじゃああ
りませんから、隠すゆっくりも多いんです。仮に出来るとしても、私には分かりかねます。」
……というか、さなえってあの2頭より年上だったんだ。
僕の思考はかなり変な方向に飛びっぱなしだったが、ふと、ある大きな疑問が浮かんだ。
「……さっきの女の子はなんだったんだ……?」
さなえは答えなかった。
「あいつもゆっくりだったのか?長沢の奴を襲ったのも、あいつなのか?!」
「……おにいさん。このことは誰にも喋らないでくれますか?」
さなえは、真剣な顔で僕を見ていた。人間のときのさなえの顔は綺麗過ぎて――どこか恐くも感じた。





次の日。
長沢は何事もなかったかのように登校して来た。いつもの様に快濶に喋り、見事なまでに浮いていた。
本人はそれさえも楽しんでいる様な気もしたけれど。
「ちょっといいか、長沢。」
昼休み、僕は長沢を屋上に連れ出した。
周りはいよいよ告白だのなんだのと五月蠅かったが、僕はとにかく無視した。
「なんだよ、大江。」
屋上に着くと、長沢は不満気に尋ねた。
「……今日は、早く帰れよ。夜も出歩かない方がいい。」
長沢の顔が余計に機嫌悪く変わった。
「……お前はいつからあたしの親だか保護者になった?」
「大事な友達のつもりだけどね。」
僕が毅然と言い放つと、向こうも苦々しい顔をして、
「ああ、そうかい。じゃ、こっちの頼みも聞いてくれるか?」
と、言った。
「頼み?」
「あたしもお前も満足する、一挙両得なお願いさ。」
長沢がにやりと笑うのを見て、僕は無性に嫌な予感がした。

そして、下校の時間。
「……長沢。やっぱり勘弁してくれ。」
僕は本当に頭が痛い。というのも、
「勘弁も何も、な。」
「犯人捕まえるとか、無謀だとは思わないか?警察に任せればいいだろ?」
長沢が、犯人を自分で捕まえると意気込んでいたからだ。
「警察じゃ当てになんないんだよ、この場合。」
「いや、だったら余計僕らには無理だろ。」
「心配すんな。それこそびっくりするような助っ人がいるからさ。」
長沢は昼と同じくにやりと笑ったが、僕は凄まじい不安を抱えていた。


『先ほどの少女は、おそらく、ふらんが「始祖返り」したものでしょう。』
『ですが、いくら私達が本物に劣るとはいえ、「始祖返り」したのなら、先ほどのような「光の弾」を撃てない
ものはまずいません。』
『と、なれば、不完全な形で「始祖返り」を果たしたゆっくりなのでしょう。故に、彼女の本物と同じく、吸血
することで、あの姿を保っているのです。』

『一体何のために……?』

『分かりません。ですが、放って置ける訳もありません。彼女がどうあれ、ゆっくりのこの性質が、このような
形で表沙汰になれば……あまりに不幸なことになります。』
『私や、私の知り合いのゆっくり達で何とかします。おにいさんは、このことを決して他言しないで下さい。』


「そんじゃま、今日の夜8時にな。」
「……。」
「おい、聞いてんのか、……大江!」
昨日さなえに言われたことを思い出していた僕は、長沢の言葉で我に返った。
「ご、ごめん……。」
「ったく。いいか、8時だぞ。……ってヤベ!、隠れろ!」
長沢はいきなりそう言うと、電柱の影に僕を引きずりこんで隠れた。
「な、何だよ!?」
「竹下のじーさんだ!見つかると厄介だぜ……。」
電柱からこっそり覗くと、確かに竹下の爺さんが歩いていた。何かを探しているようだった。
「別に僕らを探しているような雰囲気じゃなさそうだけど。」
「だから嫌なんだよ。あいつあたしを見つけたら難癖つけて説教するんだよ。」
長沢曰く、竹下の爺さんは、完全に男口調で話す長沢には大層ご立腹なようで、姿を見るたびガミガミ言ってく
るらしい。
「女はもっとおしとやかにって……んな古臭いこと言うんじゃねぇっての。あたしの心は充分おしとやかぜ?」
僕としては、それは違うと思う。
「……どうやら行ったみたいだな。じゃ、頼んだぜ。」
「お、おい!」
長沢はさっさと帰ってしまった。


どこだ!どこに居るんだ?!
危ないじゃないか。お前はまだ子供なんだ。
昨日だって、夜遅くにボロボロになって帰ってきた。
何があったと言っても教えてくれない。
あいつと同じように、手遅れにはしたくないんだ。
だから、早く出てきてくれ……。


「塾で一般参加も出来る特別講習があるらしいから」という名目で家を抜け出してきた僕は、待ち合わせ場所で
長沢を待っていた。
長沢が襲われた通りから、少し離れた場所だ。
件の通りは、僕が近道に使う裏路地並みに人の気配の無い、寂れた通りだった。流石に不気味だから、夜ここを
通る人は、まずいない。
「あいつ……何でこんな所通っていったんだ……?」
僕がそんな独り言を呟いていると、
「お前にしちゃあ早いなぁ!!」
と、後ろから長沢の声がした。
「むしろいつも遅刻するのは長沢の方だろ。って、」
そう言いながら長沢の方を振り向くと、僕は言葉を失った。


「お、おにいさん……!!」
「うー?しりあいなのぉー?」
長沢と一緒に、あのさなえを抱えた体付きれみりゃが飛んでいたからだ。
「およ?知り合いなのか?」
長沢がさなえに尋ねる。
「うー。れみりゃはしらないんだどぉー!」
「そりゃお前も言ってたから知ってるって。聞いてんのはさなえの方。」
長沢はそう言うと、僕の方を向いた。
「で。知ってるのか?」
「あ、ああ。僕ん家の近くに住んでるゆっくりさなえだよ。……で、そのれみりゃは?」
僕が聞き返すと、長沢は大層うれしそうににやついて、
「驚くなよ。実はコイツがあたしを助けてくれたのさ。れみりゃ、見せてくれよ。」
「うー!らじゃー!!」
そう言ったれみりゃは一瞬にして、昨日のさなえと同じく、人の様な姿になった。もっとも、体付きのためか、
単により洗練された姿になった、という気もする。
「……あら。反応薄いわね。」
「変なこと言うからじゃないのか?」
「仕方ないじゃないの。にくまんのときはあんな調子なんだから。」
「……ちがいますよ。」
2人の掛け合いを遮って、さなえが言った。そして
「もう、見るのは二度目ですから、ね。」
人の姿になった。
「うわっ、お前もかよ!」
「あら、いいリアクション。」
僕と違って、長沢は大層驚いていた。


「じゃ、お前昨日襲われたのか?!」
長沢の言葉に、僕は頷く。
「それを、このさなえに助けてもらったんだよ。」
「へぇぇ。あたしの方は、襲われて直ぐにれみりゃに助けてもらったけど、血が足りなくて意識が朦朧としてた
からな。れみりゃに『何も知らない、分からないと言いなさい』って言われたっきりだったんだよな。」
「仕方ないじゃない。」
「ま、助けてくれて連絡しに昨日来てくれただけでも良しとするぜ。」
そんな息の合った掛け合いをする2人を、さなえはじとりと睨んでいた。
「……何よ。」
「言ったじゃないですか、れみりゃさん。このことに人を巻き込むのはやめよう、って。」
「仕方ないじゃない。みきちゃん乗り気なんだし。異様な強引さがあるのよね、この人。」
「嬉しいぜ。」
照れる長沢。
「褒めてないと思うよ。」
突っ込む僕。
「ともかく、お2人を巻き込んでどうするつもりですか?いくら不完全な『始祖返り』だからって、単純な力だ
けで見れば、人間にとっては脅威なんですよ?!」
「分かってるわよ。2人には囮として頑張ってもらうわ。」
まるで、当然のことのように言い放つれみりゃだったが、さなえは頭を抱えてしまった。
……僕も、気持ちは分かるような気がした。
「ひとまず、2人にはあの路地を歩いてもらうわ。出来るだけゆっくりしていってね。私達の方は、ゆっくりに
なって潜んでいるから。」
れみりゃはそう言って、
「うっうー!それじゃたのんだどぉー!」
と肉まんになった。
「……あまり賛成しかねますけど……お2人とも、もしふらんに出くわしたら……ぜんりょくでにげてください
ね!!!」
さなえもゆっくりに戻った。
「そんじゃま、作戦開始ってところだな。ビビるなよ?」
長沢は酷く楽しそうだった。
「……はぁ。」
僕はため息しか出ない。何だか、さなえの苦労が分かる気がした。


僕と長沢は2人並んで歩いていた。囮を2人使う意味が良く分からないが、多分ノリだと思う。
あのれみりゃなら充分あり得る。
「なぁ、大江。高校、どうした?」
ふいに、長沢が声を掛けてきた。
「え?ああ、例の進学校。母さんや父さんも乗り気でさ。特に行きたい高校があるわけじゃないし、学力的にも
大丈夫らしいし、そこを第一志望にした。」
「……そうか。」
……どうしたんだろうか。妙に元気が無い。
「すごいなー、お前。あたしじゃあそこは無理で、結局公立だしな。ホンット、頭いい奴って羨ましいぜ。」
「……褒めるなんて、どういう風の吹き回しだよ。」
「別に。あたしはあたし、お前はお前の道を行くだけだ。」
そう言って、長沢は黙りこくってしまう。
本当にどうしたんだ?さっきまでは犯人を捕まえてやろうって意気込んでたくせに。
今は、なんだか空回りをしてるようだった。
「それにしてもさー、お前、クリスマスはどうするよ。」
「え?ああ、普通に家で過ごすけど。」
「……ふーん。」
「長沢はどうするんだ?」
「あたしも暇だぜ。彼氏いないし、な。」
「まぁ、そうだろうね。色々難ありだし。」
「……大江もそうだろ。お前みたいな陰険な眼鏡に興味ある女なんてそうそう居ないし。おまけに、学力はいい
けど馬鹿だし、頼りないし、友達少ないし……。」
「ちょ、ちょっと、いきなりどうしたんだよ。そんなに僕のこと嫌いか?」
長沢は、いきなり立ち止まった。
「お、おい、長沢!」
「だからさ!」
長沢は僕の方を見据えていた。
「あたしがクリスマスに、いや、ずっと一緒に居てやる。」
「え?」

僕の思考はしばらくの間、堂々巡りしていた。
こいつは一体何を言ってるんだ?
こいつは自分が何を言ってるのか分かっているのか?
そして、僕も。




そして、それを打ち破ったのは、最悪な予兆だった。


「……長沢。いいか。」
「な、なんだよ!?悪いかよ!」
「……顔赤らめてる場合じゃない。」


あのときの、気配だ。


前を見ると、あの時の少女が居た。


僕と長沢は、じりり、と後ずさる。
「走れ!!!」
そして、全力で逃げた。
「れみりゃ!!さなえ!!出番だぁ!!!」
長沢が大声を張り上げる。

だが。

来ない。

「ああ、もう、あいつら何してんだよ!!」
長沢が愚痴る。僕もまるで同じ気分だ。
必死になって逃げるが、相手は空を飛べるのだ。
直に追いつかれる。
「くそっ!死ぬほど恥ずかしい思いしたからって、まだ死にたくないってのに!!」
まったく、僕も同じ気分だ!!
翼の音が耳元まで迫る。なんであの2人、来ないんだ?!


「おいついた。こんどはにがさないよ。」





居ない。こんな時間まで何をしているんだ?!
まさか、逃げ出したのか。
お前まで、俺の前から居なくなるのか。あいつと同じように。
頼む、俺が悪かった。もう叱ったりしない。プリンはいくつでも食べていい。
食べてすぐに寝てもいい。後片付けだってしなくていい。
ただ、俺の側で笑って居て欲しいんだ。
……くそ、何だってこんな時にガタがくるんだ、この体は!
絶対、絶対に見つけるぞ。無くしてたまるか!手遅れになる前に、早く家に帰って、あの笑顔を――
「倒れるような無理は、しない方がいいわ。」
……誰だ、あんたは。
「さぁ。それより、お話があるんだけれど、聞いてくれる?」
うるさい。そんなことより、俺は――
「ほらほら、無理しない。自分の体のことより、ふらんちゃんのことが大事?」
……なんで、知ってる。
「お話があるって言ったでしょう?少しばかり、酷な話だけど。」




耳元で声が聞こえた途端、少女は光に弾き飛ばされ、影が少女を押さえつけていた。
長沢が急に止まったので、それにつられた僕はやっぱり前のめりに倒れた。
「ごめんなさいね。ちょっとばかり遅れて。」
少女を押さえつけながら、れみりゃは……あまり反省してなさそうな口ぶりでそう言った。
「その……少しお説教をくらってたんです。」
僕の前に降り立ったさなえはそう言うと、少女の前へと歩いていく。
「……じゃま、するな。」
「するに決まっているでしょう。貴方は自分が何をしているのか分かりますか?」
「おじいちゃんには、わたししかいないんだ!だから!!」
「だから、こんな体が欲しいのかしら?」
れみりゃがそう言うと同時に、少女の姿は消え、体の無いゆっくりふらんがいた。
れみりゃはため息をついた。
「まぁ、分からなくも無いわね。あんまんの、それも体付きじゃあないのなら、確かに世話なんて出来ないわね。
好きな人のために自分を高めたいと思うのは、悪いことじゃない。けど、そのために誰かを犠牲にするのは止め
なさい。そんなことをして夜の姿を手に入れた所で、あなたのおじいさんは喜ぶと思う?」
「う、うう……。」
「そうよ。」
ふと、横の建物から声が聞こえた。
白い服を着た、紫の髪の女性がいた。
「あなたのおじいさんは、こんなにもあなたを大事にしてるのに。」
隣には、竹下の爺さんがいた。

「本当、だったのか。」
「ええ。」
爺さんはふらんの下に駆け寄った。
「ふらん!!お前は……!」
「う、うう……。ごめんなさい、おじいちゃん……。ふらんは、おじいちゃんをひとりぼっちにしたくなかった
の……。ねたきりになっても、いっしょにいたかったの……。」
「ふらん……。」
竹下の爺さんは、ふらんを大切に抱きかかえると、僕らの方を見た。
「……お前ら、」
僕は、てっきり爺さんに因縁をつけられると思った。長沢も同じことを考えたらしく、舌戦の構えをみせたが―

「すまなかった!!!」
爺さんから出たのは、謝罪の言葉だった。
……冷静に考えれば、自分の飼っているペットが人に危害を加えれば、普通は謝る。
まぁ、そうしない人の印象の方が強く感じる現代だけれど、――本来は、それが筋だ。
爺さんは僕たちに頭を下げると、長沢の方を向いた。
「特に、危険な状態になるまで血を吸われたお前には本当に申し訳なかったと思う。俺がいうのもおこがましい
が、……許してくれないか。」
「いいさ。別に。」
長沢は、やけに素直だった。
「あたしは、あんたと違って根に持たないのさ。」
……それが根に持ってるってことだと思うけど。
「すまん、ありがとう、ありがとう……!」
爺さんの方は感動してるから、いいのか。
「れみりゃ。」
先ほどの紫髪の女性がれみりゃに声を掛けた。
「なにかしら。お説教の続き?」
「ええ。勝手に人を巻き込むのはやめなさい。こういうのはえーきさまのお仕事なんだけど、まぁ、いいでしょう。ゆっくりなんだし。」
「これからはもう止めてくださいよ、れみりゃさん……。」
さなえは泣きそうな顔をしている。
「乗った私が言えることじゃないかも知れませんけど、酔狂なことはやめて下さい……。」
「……分かったわよ。」
れみりゃはそう言うと、翼を広げた。
「もうおじ……私のおにいさんが残業から帰ってくる時間だから、失礼するわね。」
「まぁ、言いたいことは無いし、えーきさまでもないからもういいわよ。さなえも、ね。」
「じゃ、そういうことで。」
れみりゃはそう言って夜空へ消えていった。
「私も、すわこさまやかなこさまが心配するといけないので、これで。」
さなえも、同じように飛んでいってしまった。
紫髪の女性は、僕と長沢の方を向くと、
「大変だったわね。あのふらん、どうしても体を持ちたかったらしくて、あんなことをしたみたいなのよ。」
そう言って、ふらんを抱いている竹下の爺さんを見た。
「あのおじいさん、ガンなんだそうよ。」
「え?」
意外だった。とてもそうは見えない。
「まだ初期の段階で、直る見込みはあるんだけどね。入院に必要な費用もあるそうだし。……けど、
ふらんを家に置いて入院したくはないそうよ。」
「……家族に預けりゃいいんじゃないか?でなきゃ親戚とか。」
長沢がそう言うと、紫髪の女性は首を横に振る。
「親戚からは断られたそうよ。それに、あの人……奥さんとお子さんを事故で亡くされたそうよ。だから、あの
ふらんを大事にしている。」
紫髪の女性は長沢を見つめる。
「改めていうけど、だから、本当に許してくれるかしら?」
「そこまでいわれちゃあ、なぁ。一層文句つけようがないぜ?」
長沢はそう言って、僕を見た。
「女に怪我させられた彼氏としてはどう思うよ、大江。」
「か、彼氏!?」
「なんかもう、それでいいだろ。あんなこと言っちゃたし。で、どうなんだ?」
そう言われても……。
「いや……別に、長沢がいいなら、いいんじゃないか?」
そう言うしかない。
「じゃ、この話はお開きだ。もう9時だし、帰って風呂入って寝よう。」
長沢はそう言って、1人でさっさと帰っていってしまった。
「……勝手だなぁ、あいつ。」
僕がそう言うと、あの女性は
「ふふふ、恥ずかしいのよ。あの子、なんでこの道を通ってたか知ってる?」
と言って、僕を見た。
「え?……さぁ?」
「ここを抜けると、百円ショップがあるの。そこでマフラーの材料を買ってたんですって。」
……あいつ、どこまでもケチだな……。
「でも、どうしてあなたはそんなことを……?」
大方、この人もゆっくりなんだろうが、どうしてそんなことまで知ってるのか。
「ふふふ……それはね。」
女性の姿が変わった。
「わたくし、れんあいそうだんにもうけたまわっております……ふふふ。」
例のチ□ルチョコがある、駄菓子屋のマスコット。白石さんがそこにいた。






数日語。僕はあの駄菓子屋を訪れていた。
冷蔵ケースをスライドさせると、そこに白石さんがいた。
「ゆっくりしていってね。……所で、べんちでゆっくりしたいんだけどいいかしら。」
「うん。」


「竹下のおじいさんは、」
ベンチに下ろすために抱えた僕の腕の中で、白石さんは言った。
「ろうじんほーむにはいるそうよ。」
「……そう。」
なんとなく、少し寂しい気もした。あの人のお説教をくらうことも、もうないのか。
「すこしさびしいわね。そうおもわない?あのひとには、もうふらんしかのこっていなかったのよ。」
子供さんが病気で亡くなってから、爺さんはだんだんと偏屈になり、子供が憎くなっていったらしい。
何故、自分の息子が、あそこで遊びまわっているクソガキどもと一緒に居られないのか、と。
そんな爺さんは、次第に親戚中から煙たがれていったらしい。
「けど、あのふらんも、おなじほーむに、ゆっくりせらぴーとしてつとめるそうよ。」
「ゆっくりセラピー?」
「びょうきのひとやおじいさんおばあさんを、なごませてげんきにさせるゆっくりのこと。」
「ふーん……。」
あの時の、無邪気で恐ろしい顔が浮かんだが、僕には、何だかしっくりくるような気もした。
「ねはわるいこじゃないわ。きっとうまくやってける。」
僕はベンチに白石さんを乗せると、隣りに座った。

それから何を話すわけでもなく、それこそゆっくりしていたのだけれど、ふいに白石さんが呟いた。
「『現代ほど、老人にとって孤独な時代は、なかったかもしれない』」
「……?なに、それ。」
「なんでもないわ。もうよんじゅうねんもまえのことばよ……。」
雪がちらつく。
「おいる、ってけっこうつらいものね。いろんなものをうしなっていく。だんだんと。」
「……けど、さ。」
僕は、訳もなく呟く。
「けどさ、爺さんには、ふらんが居る。ああまでして、一緒に居てくれようとしたふらんが。だから、爺さんは
辛くても、楽しい人生を送っていけると思う。」
「ふふ。そうね。」
白石さんはいつもの澄したような顔でそう言うと、体を付けた。
……どういう原理なんだろうか、これ。
僕がそう思っていると、白石さんはいきなり、
「しょうねん。じんせいのはかばへのしょうたいじょう、うけとれるかしら。」
と言い出して、前を指差した。
その先には、
「……おう。」
やけに顔を赤くした、長沢がいた。
「ゆっくりしていってね!」
……変な編み物をまとったまりさを抱きかかえて。
「すまん。マフラー無理だった。」
長沢は俯いた。
「だろうね。」
期待はしてなかった。この結果は予想出来たよ。
長沢は俯いたまま、僕の目の前まで歩いてきた。
ひどく緊張してるのが分かった。足と手を同時に出して歩いてたし。
そして、空を仰ぐと、まるで最後通告かのように、こう言った。


「だから、さ。プレゼントはあたしで我慢してくれ。」


「……よく、そんな恥ずかしいこと言えるな。」
「いいだろ。別に。」
「それに、あじはほしょうするよ!!!」
『なんのだ。』
僕と長沢は顔を見合わせた。
「きがあうわね。」
白石さんが茶化す。
「まさかえっちなことかんがえた?それはいけないとおもうよ!!!」
まりさは、小馬鹿にしたような顔で僕に言った。
「じゃあ、何なんだよ、まりさ。」
僕が聞くと、まりさは得意げに、
「けーきだよ!!!みきちゃんがつくったけーき!!!」
「うわっ、馬鹿!言うなって!!」
顔が赤いままの長沢はそう言うと、恥ずかしそうに僕を見た。
……なんだ、この乙女全開の長沢は。UMAか何かだろうか。
そんな考えが顔に出ていたのか、長沢はぶすっとした口ぶりで、
「……悪いかよ。」
と呟く。
「……まぁ、仕方ないんじゃないかな。うん。」
「どういう意味だよ。」


だって今日は、クリスマスだから。





#もう、ごめんなさいしか言えない。
#タイトルの元ネタは円谷プロの傑作特撮テレビドラマ、「怪奇大作戦」第7話「青い血の女」より。
正直面影全然無いorz

  • あまずっぱくていいですーー!!♪
    なんかどきどきしてきちゃいましたよー?これってなんだろ?だろ!?
    兎にも角にも良い作品です。ありがとうございます。
    -- ゆっけの人 (2009-01-03 18:18:26)
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最終更新:2009年01月03日 18:18