Treasure Children 後編

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 「ゆっくり愛で小ネタ8」の作者の方と、赤ちゃんゆっくりを描くここの人達全員に感謝します

 この話は、おかげで生まれました



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 意を決して、公道ではなく、わき道に入ってしまった事を、みょんはその日後悔していた。
 近道になるからと―――急がなければと焦っていたため、少し怖い道に入ったのだが―――

 後に、一生後悔することになる

 何人かの人間の男がたむろしており、こんな悪所はゆっくりだって通らないのに、薄気味悪いと思ってそばを
走り抜けたら――――予想通りというか、頭を掴まれた。


 「おい、こいつじゃ無いんだろ?」
 「もういい。みょんだし。つーか、ゆっくりならさ…………」
 「いいんじゃね?」


 掴んでいる人間は、ライターを取り出していた



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 トコトコと、ちぇんが会場に入ってきた時には、あらかたホットケーキは食べられていた。
 赤ちゃん達は至福の境地といった表情で、テーブルの上でゆっくりしており、他のテーブルでは更に小さい子ども達と、人間が
片付けの合間に残ったケーキをつまんでいたりする。
 何日も仕事が長引いてしまったとはいえ、空腹の身で、自分も食べたかったと悔やみつつ伴侶のれみりゃを探していると、一際
騒がしい一角がある。


 「どうしてこんな事するのおおおおおおおお!!?」
 「お前等が、しんようできないからだよ!!!」


 ちなみに、喚いているのが人間の方である。上から目線で(実際にテーブルに上がって)罵っているのがゆっくりの方である。
 珍しい光景があったものだ。


 「わからない、わからないよ~」
 「ちぇん、おかりなさい~」


 孫れみりゃを一人抱えた祖母れみりゃが、のそのそと飛んでくる


 「ゆぅ?誰なの?赤ちゃん?」
 「れみぃとちぇんの”マゴ”だよ~」
 「ま……ご…………?」


 その時―――ちぇんの頭に巡ったのは、義理の娘である子れみりゃが、誰との子どもを産んだのかとか―――そうした身近な
身内の事ではなかった。
 何年も思い出さなかった、遠い実家にいる家族の事が、孫という存在から電流のように呼び起こされた。


 「おちびちゃんに、赤ちゃん生まれたんだよ!!! ―――あ、もうおちびちゃんじゃないんだね……れみぃとちぇんのおちびちゃん、
 もうお母さんになったんだよ!!!」
 「あの人間は?」
 「赤ちゃん達のお母さんだよ!!!」
 「………よくわからないよ~」


 周りのゆっくり達にとって、テーブルの上で寝息をたてる10名ほどのれみりゃ・ふらんの違いは、赤ん坊といえど容易につくものだ
ったが、人間には確かに難しいだろう。同じ種類のゆっくりの見分けが即座につくようになるには、こうした託赤ちゃんゆっくり所の
様な場所で働いていても、数ヶ月はかかる。


 「ほらほら、親の愛の力とかじゃないの~?むのうな人間の親はやっぱり必要ないね!!!」


 事情を知らない、会場にいた少し大人のゆっくり達は流石に批難を始めた


 「みょんの方がひどいよ!!!」
 「この明美ちゃんとかいう人間をいじめないであげてね!!!みょんはとっととここから出て行ってね!!!」
 「うるさいよ!!!この明美ちゃんはれみぃを騙しているんだよ!!!その事を教えてるだけだよ!!!」


 母れみりゃは顔を真っ赤にしてテーブルへ向かおうとしている。
 そこを、きめえ丸がせき止める


 「どうしてじゃまするの!!?」
 「母親の問題。明美ちゃんの問題。最後まで見届けよう」
 「きめえ丸さん。やっぱりその方がいいのかな?」


 連れの彼――――人間だが―――には、もうこの問題が解っていた。


 「みょん!!!馬鹿な事はやめてね!!!」


 と―――テーブルに乗り込んできたゆっくりがいた。母親のゆゆこであった。口の周りがケーキの食べかすだらけで説得力が無い…
……しかし、みょんは流石に気まずそうに動揺している


 「お母さん、邪魔しないでね!!!」
 「何でこんなひどいことするの!!!明美ちゃんに謝りなさい!!!」
 「人間のほうがひどいでしょおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


 ゆゆこはその場で固まってしまった。「そんな事は無い」とは言えない事を、きめえ丸達は知っていたのだった。
 保育士達も駆けつけ、場は一層騒然となった。
 赤ちゃん達の人間の方の親―――明美ちゃんは、ややあってまっすぐにテーブルへと向かった。寝ている赤ちゃんを3人
軽くつかんで裏返してしげしげと見つめた。


 「……………こいつかな………」
 「うぷ~ うぴ~」
 「―――おい、起きろ~?」


 むにむにとほっぺを揉むと、さも鬱陶しそうな顔を浮かべたが、赤ちゃんはすぐに笑みを浮かべた


 「みゃみゃっ!?」
 「よ…………良かった~~~……………!!」


 明美ちゃんはすりすりを繰り返す赤ちゃんを胸の間に挟んで、ヘタヘタとその場にへたり込んだ。泣きながら笑っている。
いや、笑いながら泣き出している。
 一同はあっけに取られていたが、テーブルの上でみょんがガタガタと震え、ゆゆこが安心していた。驚いていたゆっくり達
も安堵の声をあげた。
 れみりゃの家族達も、明美ちゃんを咎めるよりも先に喜んでいる


 「「「「ぱちぱちぱちぱちぱち ――――」」」」
 「よく見つけられたね!!!あけみちゃん!!!」


 他の2人の赤ちゃんもやって来た。
 おろおろと食べ物のお預けでも食らったゆっくりの様に泣く母親を、心配したのか困った顔で擦り寄る


 「みょ、みょんっ!?おい、糞人間!!!」
 「相変わらず口の悪いみょんだなあ………」
 「何で解ったの?あんた自分の子どもに名前でも書いてたの!!?」
 「そ、そんな事はしませんよう………………」


 3人の赤ちゃんを両手の平に乗せて並べ、その羽を指先でちょいちょいと摘む


 「いや、未だに自信ないんだけど――――ここんとこ、ここんとこ」
 「ええ~どこどこ?」
 「帽子か何か?」
 「そうじゃなく、羽、羽の所ね。ここら辺がさ」
 「あ、それ髪の毛だよ」
 「―――ああそうか」


 改めて摘み直し


 「ここの何て言うんだろ?節々の所?この角度が違うのよね。れみい→、がこう、丸っこくて、れみい↑が、少し角張ってる
  くらいで、れみい↓が完全に尖ってるのよ」
 「ちょっと待ってくれ明美ちゃん。れみい→がこいつで、れみい↑がこいつか?区別本当についてる?」
 「ぷぷっ、いちいち れみぃ~↑→↓ だって。下手な発音だね!!!」
 「未熟だね!!!」


 いや、未熟どころか―――――


 「それで、他の赤ちゃんとの区別がついたの?」
 「自信はなかったんだけどね………」
 「それ凄いよ…………」


 ゆゆこがテーブルから下りてきて、明美ちゃんを尊敬の眼差しで見上げた。
 ――――心なしか、落下した事で極端にダメージを受けてしまったのか、ふらついている。


 「普通の人間じゃ解らないよ!!!明美ちゃんは立派なお母さんだよ!!!」
 「いや………そんな事ありません」
 「自信もってね!!!それから―――――うちのみょんが、本当にごめんね!!!」


 恥ずかしげに俯いて、ゆゆこは肩を震わせた。そして近寄ってもう一度謝った。
 同時に、みょんが大声で喚き始めた。


 「何だよ!!!ふざけるなっ!!!お前本当は…………え~と、あれだ………その、どうせそんなんじゃないだね!!!」
 「何が言いたいの………?」
 「れみぃを騙して、赤ちゃんまで騙してどうするつもりなの!!? それに、とっとと離れろ!!!」
 「……………」
 「とっととみょんのお母さんからも離れて!!!」
 「……………」


 テーブルから下りて、同じ様によろよろと近づくみょんに――――――思い切り、ゆゆこが文字通り噛み付いた。


 「痛い痛い!!!」
 「何でこんな酷いことするの!!!悪い子なの!!!死ぬの!!!」
 「死んじゃうよお!!!」


 状況をよく飲み込めていない保育士達や、他の面々よりも早く、きめえ丸が二人を引き離した。
 ゆゆこもみょんも泣きはらしている
 きめえ丸は何も喋れなかった。


 「無理もねえか………」
 「知ってたの……………?」
 「調べたって訳じゃないけど、有名な事件だったよな……忘れてたのが恥ずかしかったよ」


 みょんはとびょんびょこと跳ねて会場を後にした。ゆゆこがそれを追っていく。気まずい雰囲気の中、一番大人のまりさ先生が
極力明るく言った。


 「――――みんなでドミノ倒しでもしない?」


 一層気まずくなったのは言うまでも無い


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 10分後、保育士さん達の休憩室に入れてもらった。更に余って温め直したホットケーキを食べつつ、二人は資料を見させてもらっ
ていた。


 「忘れてた方がおかしかったんだ……………」


 新聞の切り抜き
 本当に痛い話だった。


 あのみょんはゆゆこの本当の子どもではない


 医療欄にその記事は載っている
 人でも財政も関係ない。混雑していたわけでもなく、ただの医療ミスで―――ある大人のゆっくりが、下腹部の手術中に、
関係の産道に当たる部分を大きく傷つけられてしまったという。実際は、まだ研修医にそんな手術を任せていただとか、本人
達もゆっくりに対して、露骨に人間より下と見なす姿勢があったとか報じられたが、そんな事は最早どうでもいい。

 ゆゆこは、子どもが産めなくなってしまった。

 どこで、みょんを引き取ってきたのかは――――――実は知り合いであったきめえ丸も知らない。


 「きめえ丸さんさ、本当はあのゆゆこさんの事好きだったんでしょ?」


 ゆっくり一の名コラムニストとなったきめえ丸も、実はそこそこいい年。しかし、ゆゆこはきめえ丸の文章の先生だった
というから、本人はもっといい年だ。


 「否定はしないんだ。」


 ――あの時
 きめえ丸は正直に師匠であるゆゆこに告白するつもりだったそうだ。
 退院した時、祝いと共に言おうと決めたその日、医療ミスは起こった。
 ほぼ雌雄両性のゆっくりの事である。その時、「自分が産む側になる」――――と言おうとしたが、言えなかった。


 「おお、卑怯卑怯」


 それっきり、きめえ丸は誰かを好きになることをやめた。
 実際、ずたずたになった生殖器官は、他のゆっくりに子どもを宿すこともできなくなっていたので、どちらにせよ、ゆゆこ
は自分の子どもを残すことができなかったのだが。
 だから―――――実の子でなくとも、みょんの事を、心底大事に育てていたという。
 告白ができなかったまま、歳月は経ち、人間の殆どは、その事件を忘れた。
 ゆゆこも、表向きは昔を忘れたように見せていた。
 みょんも成長し―――――そこそこいい年のはずのきめえ丸は、しないつもりの恋慕を覚えた。


 「おお、尻軽尻軽」
 「まあねえ。でも、確かにあのみょんちゃん可愛かったからねえ」


 そして――――そこで告白しようとした時だった。


 「人間が忘れていい話じゃないよな」





 みょんは何もしていなかった。
 ただ、近道にと、わき道から裏通りを通って家に帰ろうとしただけだった。

 そこで、医療ミスでも事故でも何でもなく―――――みょんは、同じく、子どもが産めなくなった


 人間が、火でみょんを長時間炙ったのである


 複数の人間に押さえつけられ、人間で言えば、一生歩くのが不自由になるほどの怪我だったという。
 理由は、怨恨からだったが、勿論みょんはその人間達の事を知らなかった。
 ゆっくり違いだったのだ
 元々別の知らないみょんに、嫌がらせをされたとか、空き巣に入られたとかが理由らしいが、そんな事は何の問題でもなく―――


 ―――むかついてた。 ゆっくり相手なら反撃されないし、みょんなら誰でも良かった―――


 という、逮捕された後の人間たちの言い草が、世間の怒りを買った。
 そして、みょんを立ち直れないほど追い込んだ。
 もうこの世界で、人間と共存無しに生きていくことなどできない事は解っていた。
 それに、元々あまり体の丈夫でないゆゆこも年を取っていたこともあるから、人間に見切りをつけるなんてことはできなかったのだ
が――――


 絶対的な、人間への不信感が生まれた


 友達は少なくはなかったが、一人一人に―――人間の友人や家族がいる場合は、例外なく別居を勧め、周りにプライベートで人間を
寄せ付けなかった。


 「――――まだ、好きなんでしょ?みょんちゃんの事」
 「…………」


 母親同様、子どもは産めなくなってしまったが―――――子どもを相手に宿すことはできるかもしれない。しかし、それができるなら
あそこまで自暴自棄な性格にはならなかったかもしれない
 しかし、まだ可能性は捨てきれまい
 子どもが埋めないのならば、自分が代わりに産ませてくれないか――――そう言って思いを伝えるつもりだった。


 「きめえ丸さん、よく言ってたもんね。『なけりゃ自分で作る』って。『奇跡は自分で起せ』って。コラム書き始めたのも、最近の
  雑誌が皆つまんないからだったっけ?」
 「・・・・・・・・・・・・・・・」


 その前に――――念のためと、病院で検査をしてもらったのが、先月
 そして、再確認をとったのが、この前れみりゃの出産祝いがてらに行った日だった。


 結果は、あの親子と同じだった。


 彼は、何故きめえ丸があそこまで落ち込んでいたのか理解していなかったことを恥じていた。
 資料を本棚に戻していると、今日はお泊りの赤ちゃんゆっくり達が何人か目が覚めたらしく、半べそで入ってくる。


 「ああ、起きちゃったんだね~ またお布団戻って寝ちゃおうねえ~」


 先程空気を読めなかったまりさ先生が、必死に帽子の上に乗せてあやしている。
 こちらに背を向け、震えながらきめえ丸は言った


 「子は、宝よ。何ともめんこい」
 「―――――ごめんな。俺が一番わかってなかった」


 今日はこのままお泊りする赤ちゃんや、ゆっくり達も多いらしい。
 ふと、保育士の一人がやってきて言った。


 「さっき暴れてたみょんちゃんとゆゆこさん、まだいますよ?お話してあげたらどうでしょう?」




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 暗い待合室のベンチに、みょんとゆゆこは2人でぽつんと座っていた。
 お互い、何も言い出せない。
 ゆゆこの方から切り出そうとした時、訪れた者がある
 眠った赤ちゃん3人を抱えた、母親2人と、祖母れみりゃにちぇん夫妻だった。


 「ゆう………怒ってるよね、ほんとうにごめんね!!?」
 「――――――」
 「いえ…………最初は怒ってたんですけど、今もう―――って言いますか……」


 明美ちゃんは、赤ちゃんを預けて、みょん前でしゃがんで目線を合わせた


 「あんたの言うとおり、私は母親失格だわ……。自分の赤ちゃんの事は解ったけど、そもそもさくやさんに預けたつもり
 で目を逸らしてたし、いちいち慌てて――――本当に、これから物凄く苦労はするんだろうけど、改めてもっと赤ちゃん
 を見てなきゃいけないんだって解ったよ」
 「…………………………」
 「おかげで目が覚めたわ。本当にれみぃ達を騙すつもりはないんだけど、これからもっと頑張る。一応礼は言うね」


 ゆゆこは何度も頭を下げたが、みょんはまだ黙っていた。
 とことこと暗い廊下を歩く4人の声が、2人にまで響いた。


 「れみぃ?ちぇんは今年は実家に帰ろうと思うよ!!!」
 「そうなの?なんで?」
 「ちぇんも、孫だったし、子どもだったんだよ!!!何年も会ってなかったら、ゆかりしゃまとらんしゃまに会いに行くよ!!!」
 「れみぃもいくいく~」
 「あ、じゃあ挨拶がてら私も行かせて下さい。ちなみにどこです?」
 「オクラホマだよ!!!」
 「……………」
 「じゃあ、れみぃは明美ちゃんと赤ちゃんとここいるね!!!ママとパパはゆっくり楽しんできてね!!!」


 静かになった後、みょんはぼそりと言った。


 「ごめんなさい」
 「もういいよ」
 「そうじゃないの」


 泣き顔を見せたくないのか、顔を背けて消えそうな声で言う


 「お母さんにみょんの子ども、見せられなかったよ」
 「―――――お母さんのことはどうでもいいんだよ?」


 少し開いていた2人の距離が縮まった。
 少し体を伸ばして、ゆゆこはみょんの背中にすりすりを始める


 「それ、ずっと気にしてたの?だったごめんね…………お母さん、本当にそれでも仕方ないと思ってるよ」
 「…………」
 「お母さん、みょんが元気ならそれでうれしいよ?だから、他の人間に意地悪したり、昔のこと考えて怒ったり
  しないでほしいよ?」
 「………………」
 「みょんの生き方はみょんが決めるんだよ!!!でも、他のゆっくりや人間に意地悪やめてね!!?」


 ついにみょんは泣き出して、ゆゆこに身を預けた。
 そのまま溶けてしまうのではないかと言うほど泣いた。泣いて泣いて、十数分も経った。その間謝り続けた


 「ごめんね、ごめんね!!!ごめんなさい、本当にごめんなさい!!!ごめん……ごめん………」
 「お母さん、確かに自分で子どもは産めなかったけど、みょんがいたから、もうそれだけで十分なんだよ……」


 泣きつかれた二人は、改めて正面を向いた
 そこには、ちょっと有名な絵のコピーがあった




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              _」::::::i  _ゝへ__rへ__ ノ__   `l     ~
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        _,.!イ_  _,.ヘーァ'二ハ二ヽ、へ,_7   'r ´iゝ、イ人レ/_ルヽ、ン、
        ::::::rー''7コ-‐'/__,.!/ V 、!__`ヽ/`7 ,'==(ヒ_]     ヒ_ン )==', i
        r-'ァ'"´/  (ヒ_]     ヒ_ン iヾ_ノ  .i イ ""  ,___,   ""ヽイ i |
        !イ´ ,' | ///// ,___, ////,' ,ゝ  レリイi/// ヽ_ ノ ///.| .|、i .||
        `!  !/レi'          レ'i ノ   .!Y!          .「 !ノ i |
        ,'  ノ   !         ' i .レ'    L.',.          L」 ノ| .|
         (  ,ハ          人!     .| ||ヽ、       ,イ| ||イ| /
        ,.ヘ,)、  )>,、 _____, ,.イ  ハ    レ ル` ー--─ ´ルレ レ´



 作者は不明であるが、フランスのどこぞの教会のステンドグラスが発祥だという。
 赤ちゃんを運んでくるれみりゃ。それを喜ぶれいむとまりさの2人。大体、「赤ちゃんがきたよ!!!」というタイトル
で呼ばれている。
 実に、8割のゆっくりは、赤ちゃんはどこから来るのかという質問を親に幼少時投げかけ、成人するまで、こうして
れみりゃかうーぱっくが運んでくれるものだと思い込む(残り2割は、さとりの子どもで、大人になる前に非常に悩む)


 「―――お母さん、赤ちゃんができなかったけど、うーぱっくがこの絵みたいに運んでくれたんだよ」


 みょんは何とも言えない、噴出しそうな顔で返した


 「お母さん、それ、嘘でしょ?もう何度もきいたよ。本当はどこからもらってきたの?怒らないよ?」


 初めて涙を浮かべ、それでもゆゆこは笑いながら言った。


 「――――嘘じゃないよ!!!」


 ―――そんなはずがあるか


 「お母さんのお母さんは、あなたと同じ、みょんだったんだよ。お母さんも、みょんお母さんの事が大好きだったの。
  いっつもね………お母さんがいてくれて良かったって、子どもができるのは本当に嬉しいから、お母さんにも喜ん
  でほしいって。早く良い相手をみつけてね、って言ってくれたの」
 「昔のお母さんと同じだね!!!」
 「そう。でもね。お母さん、病院に行って、子どもが作れなくなっちゃって………」


 堪えきれなくなったように、今度はゆゆこがぽたぽたと涙を流した


 「その後、みょんお母さん、私に何度も謝りながら、体壊して死んじゃったの。他に家族がいなかったから、もう私も
  死んじゃおうかな、って思ってたんだけど」


 面積の少ない、リボンの部分で母親の涙を必死に拭う。


 「朝、外に出たらね――――本当にこの絵みたいに、うーぱっくが箱を届けてくれて、中を開けたら、みょんが入って
  たんだよ!!!」
 「――――――――――」
 「これは、本当の話だよ!!!」


 さっきとは違う形で目頭が熱くなるのが押さえられなかった




 「みょんが、私の前に来てくれたから、私はこれまで生きてこられたんだよ?それから今日まで、毎日毎日悲しい事も辛い
  事もあったけど、私にとって、あなたといた時間は宝物だったよ!!!」
 「お母さん」
 「何もしないでも、みょんは、いてくれるだけで、お母さんの宝物だよ!!!」




 何度か、喧嘩後の仲直りや、本当に死にたいほど落ち込んでいた時にかけてもらった言葉だ。
 そんな時より――――――――何よりも、今、みょんの心にゆゆこの一言は暖かく広がっていった。
 今だけかもしれないが、忌まわしい人間から受けた仕打ちも、母親に対する罪悪感も、ほかのゆっくりへの嫉妬心も怒りも、
全て消えていった。
 今度は、母親が謝る番だった


 「ごめんね……ごめんねえ……!!」
 「お母さんがどおしてあやまるのおおおおおおおお!!?」





 ――――お母さんが、一番あなたを悲しませるんだよ――――





 その絵の横で、立ちすくむ人間ときめえ丸が一人


 「気まずくなっちゃったねえ……」
 「おお、でも行かねば、告げねば」


 同じく涙を堪えて、きめえ丸はそっと二人へ歩んでいった。



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 時刻はその時、0時を回ってクリスマス本番だったのだが、奇跡が起こったのかどうかは知らない。
 どこかで起こっていたかもしれない。
 実際、年末に、オクラホマ辺りではらんしゃま達が喜んでいたことだろう


 しかし、奇跡になぞ頼らなくても―――――きちんと思いを告げた事と、やはり同じ苦しみを共感
できたのか――――きめえ丸とみょんは付き合い始めた。
 一緒に一杯飲みながら、まずそうに胡瓜をかじるきめえ丸を見ることが少なくなって寂しい、と、
長年の友人である彼は回りにこぼしていた。

 なるべく早く、養子―――できれば、ゆゆこの、でなくともみょんかきめえ丸の赤ちゃんを引き取ら
せてもらおうと、2人は毎日話し合うだけで幸せだった。
 一緒にゆゆこも加わることもあり、毎日が楽しかった。
 嫌な事は全て忘れようとしていた。






 その最中、ある朝ゆゆこは息を引取っていた。





 必死に謝っていたのは――――――自分が娘にプレッシャーを与えていたためではない。
 元々体は強くなかった。
 そろそろ自分の死期が近く、悲しませてしまうことを、それとなく察していたためだったのだろう。





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 ザバザバと、船から岸に飛び移るのに失敗し、ゆゆこは濡れながら移動した。
 渡し守は何をしているのかと思っていたら、すやすやと居眠りしている。
 ゆっくりこまちだった。


 (言伝えどおり―――――――)


 こんな事が、どれほどあるのか解らない。
 しかし、川の付近にも、先の岩山にも、人影は見えない
 罪悪感――――というより、何かゲームで相手にはばれなくとも、巧妙にちょっとしたずるをする気分
になる。


 ―――もしかしたら、自分が何もしなくてもどうにかなるかもしれない

 しかし


 ―――奇跡は自分から待つものじゃない むしろ自分で作るもの―――


 大事な言葉が思い浮かぶ


 ―――あの子を喜ばせたい。 自分と同じ思いをさせてあげたい――――


 何よりも愛くるしい、娘の顔と、頼りになるその伴侶の顔が浮かぶ。
 もう一度、自分が来た道を振り返り、考えた



 ―――お母さんも、昔こんな事をしたのかな………



 意を決して、ゆゆこは公道ではなく、わき道に入っていった。



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 ―――もう、立ち直れそうにもないし、立ち直る気もない

 泣くことさえやめ、最低限の家事や手伝いだけをして、みょんはふさぎこみ続けた。
 きめえ丸は一番の理解者で、それ以上みょんの気持ちをかき乱すことはなかったが、元気づけることもなかった。
それは殆ど無理に近いと解っていたからだった。

 結局、養子としても、子どもを見せることができなかった。

 毎日、みょんはゆゆこの写真を見ては泣いた。
 泣いて、クリスマスイブの時の様に、何度も謝った。


 そんな事が続いて、49日が過ぎた頃だろうか―――――――

 明け方、配達の牛乳だけでも取ろうと、戸を開ける。
 いつも、運んでくれるれみりゃの、シルエットが朝霧の中に浮かぶ

 しかし、いつもと違い――――何やら四角い


 こんな形状は、ゆっくりの中では一種しかない


 「????」


 いつもとは違う、うーぱっくが扉の前まで飛んでくると、すとん、と下腹部から、アミ籠の様なものを落とした。
そして、そのまま去っていく


 「…………………」


 中で何かがゆっくりと動いている。
 慎重にかぶせていある布を、一枚ずつ剥がしていった。


 その中には―――――赤ちゃんがいた。



 ゆっくりゆゆこの赤ちゃんである



 「き、きめえ丸?きめえ丸?ちょっと来て!!?」
 「おお、何事何事」


 久々に感情の篭った大声を聞き、朝だというのにきめえ丸はすぐに飛び起きて駆けつけた。
 こんな異常な状況で――――脳裏に警察とか、親探しとか、そうした単語が浮かばなかった訳ではない。
 しかし、みょんは、笑って泣きながら、いや、泣きながら笑って告げた



 「赤ちゃんが来たよ!!!」






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 あの川を渡って、脇道に入ってしまってからどれ位経った解らない
 どこを経由してきたのかも忘れてしまった。

 しかし、そんな事はどうでもいい
 暖かい布に包まれ、文字通り籠に乗せられ、おそらく運んでいるのはれみりゃかうーぱっくなのだろう。
うつらうつらとしている内に、ずしりと籠が落下したらしい。
 ダメージは全くないが、目が覚めた。


 布が取り外される



 そこに―――――娘が覗き込んでいる。


 毎日、寝ているのだろうか?
 やつれ切った顔
 大きな隈
 こけた頬
 血走った目



 ―――なんて可哀想


 きっと、自分が先に逝ってしまった為、苦しんだに違いない。本当に悪いことをしてしまった。





 ―――あの子を喜ばせたい。 自分と同じ思いをさせてあげたい――――



 もう、この籠に入る前の記憶はどんどん消えていっている。もう直ぐに、この思いも消え去る
 それでも、渾身の笑顔で、彼女は新しい母親に言った




 「ゆっきゅりちていってね!!!」






                             了











  • 素晴らしい作品をありがとうございました。
    昔どこかで耳にした、
    「もし生まれ変わるのならあなたの子供になりたい。そして家族としてまた一緒に暮らしたい。」
    という言葉を思い出し、切なくなりました。

    また、あのAAは自分もお気に入りのひとつで、
    普段ガ板のまとめwikiで見ているときは可愛いなと思ったり、和んだりするのですが、
    この物語の中でこのAAを目にしたときにまず浮かび上がったのが、綺麗だなという感情でした。
    新たな魅力を発見したためか、あのAAがまた一層好きになりました。

    感想を伝えるが下手なので、あまり上手く自分の気持ちを表せませんでしたが、
    本当に良かったです。面白かったです。
    これからも頑張っていただけると嬉しいです。 -- 6スレ目 (2009-01-19 23:04:45)
  • しかしあのAAオチが着払いw
    いい話だったGJ! -- 名無しさん (2009-01-20 02:27:23)
  • ありがとうございます
    私もあのAAが気に入っていたので、自分が好きだったものを他の人が更にその魅力を
    見出してくれる事は、これ以上無い嬉しさです
    赤ちゃん好きと、ちょ○らみ氏の4コマが書くきっかけの一つですが(汗)、本当に光栄
    であります
    しかし、着払いでしたかw でもそうしたオチがある方がゆっくりらしいですねw -- 作者 (2009-01-20 17:17:21)
  • 親がいて子がいる…愛情と幸せがある証だ -- 名無しさん (2009-09-17 02:54:30)
  • 感動したー!!! -- 名無しさん (2012-06-05 15:54:28)
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最終更新:2012年06月05日 15:54