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いやよいやよも好きのうち(1)
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soh1
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※「銀魂」の2次創作オリジナル小説です。読む前に、かならず注意事項を確認してください!
「……たく、ちくしょう、本気で殴りやがったな。まだ、頭がずきずきしやがる」
沖田総悟は、万事屋の当主、坂田銀時に拳で殴りつけられた頭を右手でさすりながら、独りごちた。
狂ったように蝉が啼いていた。森の木々にぶつかって音が反射するのか、重なりあう音の波が脳の髄をじわじわとむしばみ、しめつける。ふと傍らを見ると、喧嘩両成敗という理由で殴られた娘のほうも、顔をしかめ、頭の上をさすっていた。よほど痛かったのだろう、うっすらと目尻に涙がうかべている。
それとも、悔し涙か?
そういえば、あの時もそうだったと、かぶき町の長屋の路地で、“カブト相撲”に興じる子供たちの一群に行き合ったときのことを思い出した。
そういえば、あの時もそうだったと、かぶき町の長屋の路地で、“カブト相撲”に興じる子供たちの一群に行き合ったときのことを思い出した。
ひっくり返された小さな桶に群がる子供たち。
人工的な狭い土俵の上にのせられた昆虫。
カブトムシがぶつかり合うたびにあがる、血気盛んな子供たちの奇声。
そんな場所に、誰よりも真剣なまなざしでカブトムシを応援する赤いチャイナ服の娘がいた。
人工的な狭い土俵の上にのせられた昆虫。
カブトムシがぶつかり合うたびにあがる、血気盛んな子供たちの奇声。
そんな場所に、誰よりも真剣なまなざしでカブトムシを応援する赤いチャイナ服の娘がいた。
その姿を目の端でとらえた瞬間、首筋のあたりがかっと熱くなり、気づけば子供たちに声をかけていた。
「おう、おう、仲良く遊ばなきゃいけねえよ。……ってことで、おれも、混ぜちゃ、くれねえかい?」
着物のたもとから、五寸はあろうかという、黒々と光る堂々としたカブトムシを取り出して見せると、子供たちは感嘆ともつかぬ声をあげた。
近頃、総悟が最も気に入っている遊びは、カブト相撲をやっている輩を見つけては決闘を申し込み、相手のカブトムシを巻き上げることだった。
テレビ番組に触発された子供たちの間で流行し、それがやがて大人たちを巻きこんでの大ブームとなった“カブト相撲”。
べつに、大江戸最強のカブトムシの持ち主として有名になりたいわけじゃない。
負けた相手から略奪したカブトムシを売り払い、金儲けがしたいわけでもない。
テレビ番組に触発された子供たちの間で流行し、それがやがて大人たちを巻きこんでの大ブームとなった“カブト相撲”。
べつに、大江戸最強のカブトムシの持ち主として有名になりたいわけじゃない。
負けた相手から略奪したカブトムシを売り払い、金儲けがしたいわけでもない。
ただ、自分が戦う代わりに小さな虫ケラを戦わせ、勝利しては、まるで自分のことのように狂喜し、騒ぐ阿呆どもを手痛い目に遭わせて、ひとしきり蔑み、嗤ってやりたいだけだった。
真選組の副長である土方は、総悟がなにかしでかすたびに「おまえ
は、どうかしている」というが、あながち間違っていないのかも知れないとも思う。
は、どうかしている」というが、あながち間違っていないのかも知れないとも思う。
口に入れるものすべてにマヨネーズを塗りたくる、犬の餌以下の食べ物しか受けつけない外道に言われる筋合いはないとも思うが、「どうかしている」といわれるたびに、肝の奥底が一瞬冷えるのもまた事実だった。
果たして、“カブト相撲”は、総悟の勝利に終わった。
「リベンジなら、いつでも受けてたってやるぜぃ。カブト相撲なんて、他力本願な勝負に興じる卑怯モンに、そんな甲斐性ねぇだろうけどな」
総悟はそう吐き捨てると、子供たちのカブトムシを容赦なく奪ってその場を去った。
子供たちは、みな悔し涙を流した。
もちろん、赤い服の少女、神楽もそのうちのひとりだった。
もちろん、赤い服の少女、神楽もそのうちのひとりだった。
いい気味だと思った。
痛い目をみて、せいぜい悔い改めろ。
思えば、あのときはやけに気分がよかった。今は最低の気分だが。
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