ヤマノエイは、日本の漫画家。京都府出身。
「週刊少年ジャンプ」で『さむわんへるつ』を連載している。
プロフィール
氏名 : ヤマノエイ
生年月日:????年10月26日
出身地:京都府
経歴
2021年11月期、
『金曜ミッドナイト・トーキング』で第56回JUMP新世界漫画賞の準入選&超新星賞を受賞。
作者紹介ページでは、当時24歳と表記されている。
『金曜ミッドナイト・トーキング』は2022年1月24日に少年ジャンプ+、2022年8月5日発売のジャンプGIGA 2022 SUMMERに掲載された。
また、同年10月27日発売のジャンプGIGA 2022 AUTUMNに、『ゲット・バック・TVショウ』が掲載された。
その後は、週刊少年ジャンプ本誌に読切を掲載。
2023年18号 『フォローミー、ゴースト』
2023年51号
『フレイム・ブルー』
2024年18号 『となりのホーム』
以上、3作品の読切が掲載された。
2025年42号より、週刊少年ジャンプにて『さむわんへるつ』を連載している。
人物
趣味・特技は古着集めと掃除。
古着集めという趣味からは、服装や小物、身につけるものへの関心がうかがえる。実際にヤマノエイ作品では、登場人物の服装や髪型、アクセサリーなどに個性が出ており、キャラクターの魅力を視覚的に立たせる描写が多い。
また、掃除を趣味・特技として挙げており、作者コメントではルンバへの愛着をたびたび語っている。
好きな漫画として、『アイシールド21』『いぬまるだしっ』『夜廻り猫』『宇宙兄弟』などを挙げている。
『さむわんへるつ』
エピソード#3 歩くの疲れたでは、
くらげが「私がアイシールド21ならな〜〜」といったボケを発している。
作者コメントでは、ラジオ、犬、食事を好むことをたびたび述べている。特にラジオへの関心は強く、読切作品『金曜ミッドナイト・トーキング』や連載作品『さむわんへるつ』では、深夜ラジオ、ネタメール、常連リスナー同士の関係性が重要な題材となっている。
食べ物に関する話題も多く、崎陽軒の弁当、チキンナゲット、明太子ごはん、ソルベットグミ、アイス、カステラ、鶏白湯ラーメンなどについてコメントしている。甘いものから食事系まで幅広く言及しており、食への関心の高さがうかがえる。
また、ルンバを「お迎え」したことや、目玉シールを貼って「命が宿った」と表現したことなど、日常の物に愛着を持つ様子も見られる。くらげ型の加湿器、マグカップ、ふかふかのタオル、着る毛布など、生活の中の小さなものやかわいらしいものへの言及も多い。
作風としては、ラジオ、テレビ、SNS、お笑い芸人など、現代のメディア文化やエンタメを題材にすることが多い。
これらは単なる舞台装置ではなく、人と人をつなぎ、登場人物の心を動かすものとして描かれている。
フレイム・ブルーの巻末コメントで、
阪神タイガースの日本一を喜んでいることから、阪神ファンであると思われる。
読切一覧
ジャンプGIGA
金曜ミッドナイト・トーキング
ヤマノエイ氏にとって、初めて掲載された読切。
2022年1月24日、少年ジャンプ+に掲載。
その後、ジャンプGIGA 2022 SUMMERにも掲載。
『金曜ミッドナイト・トーキング』は、漫画深夜ラジオとネタメール投稿を題材にした青春物語。主人公は、男子高校生の佐々木未明。彼は深夜ラジオ番組「ロングホープスの金曜ミッドナイト・トーキング」、通称「金ミド」を4年前から聴いているリスナーである。
彼は最初から積極的にネタメールを送る常連リスナーだったわけではなく、番組を聴く側として、「金ミド」の空気やリスナーたちの投稿に親しんでいた。
そんな未明の日常に大きな変化を与えたのが、クラスメイトの瀬尾海月である。未明は海月に片想いしているが、ある日、海月の好きなタイプが「うなぎポテトくらい面白い人」だと知る。うなぎポテトとは、「金ミド」でたびたび読まれる人気リスナーのラジオネーム。未明にとって海月は好きな女の子であり、うなぎポテトは「金ミド」の中で輝いている「面白い人」だった。
未明は「うなぎポテトくらい面白くなれば、瀬尾さんに近づけるかもしれない」と考える。もともと好きだった「金ミド」が、ここで海月への恋心とつながり、未明はただ聴く側から、ネタメールを送る側へ踏み出していく。
しかし、「金ミド」の投稿世界は簡単ではない。
番組には、うなぎポテト、ヘイトフルエイト、コメットなど、何度もメールを読まれる常連リスナーたちがいる。未明は「米なし玄米」というラジオネームでメールを送るが、なかなか読まれない。自分が送ったメールは採用されず、常連たちの名前ばかりが番組で呼ばれていく。そのたびに、未明は自分に自信を失っていく。
特にうなぎポテトは、未明にとって大きな存在である。
未明はうなぎポテトに憧れ追いつきたいと思う一方で、自分との差を強く感じてしまう。好きな人に近づきたいという気持ちは、やがて「自分も読まれたい」「自分も面白いと思われたい」という切実な欲求へ変わっていく。
そんな未明が出会うのが、インディーズ芸人の宮元である。宮元は「金ミド」の常連リスナーで、ラジオネームはヘイトフルエイト。未明にとっては、番組の中で何度も名前を聞いてきた“面白い側”の人物である。宮元は、未明に対して簡単に面白くなる方法を教えるわけではなく、むしろ「自分ならどう答えるか」を考えるように促す。
その後も、未明はメールを送り続ける。しかし、結果はなかなか出ない。うなぎポテトやヘイトフルエイトたちの名前は何度も呼ばれるのに、自分のラジオネームはまったく呼ばれない。「金ミド」は好きなラジオだったはずなのに、読まれない苦しさのせいで、未明にとってだんだん苦しい場所にもなっていく。
そして未明は、もう一度宮元のもとを訪れる。読まれない焦りや海月に近づきたい気持ちが強くなり、視野が狭くなっていた未明に対し、宮元は「ラジオを道具にするなよ」と指摘する。
この宮元の指摘は、未明にとって大きな転換点となった。
未明はもともと「金ミド」が好きだったはずなのに、いつの間にか「海月に認められるため」「うなぎポテトみたいになるため」という目的に引っ張られ、ラジオを苦しいものとして感じ始めていた。宮元の怒りは、未明を責めるためだけではなく、未明自身が本当に「金ミド」を好きだったことを思い出させる言葉でもある。
また、宮元自身も未明と似た過去を持っている。宮元は、元相方に自分の面白さを認めさせたい、気づいてほしいという思いから「金ミド」に投稿を始めた。最初はなかなか読まれず、苛立ちもあった。しかし聴き続けるうちに、「金ミド」そのものが楽しくなり、番組を好きになっていった。
宮元もまた、誰かに認められたいという気持ちからラジオに入り、最後にはラジオそのものを大切にするようになった人物だったのだ。
未明も、何度も読まれない苦しさを味わいながら、少しずつ変わっていく。常連たちのネタに悔しさを感じる一方で、やはりそのメールで笑ってしまう。読まれないことが苦しいのに、ラジオの時間から離れられない。そして未明は、思い出す。自分は「金ミド」が好きだったのだと。
その直後、未明のネタメールがついに読まれる。
大喜利のお題「夏のサンタはなにしてる?」に対して、未明が送った答えは「まだトナカイと反省会してる」だった。
そのメールはロングホープスに読まれ、笑われる。未明は初めて、自分の言葉を「金ミド」の中に届けることに成功する。
宮元からも「ほんまにおもろかった」と伝えられ、未明はようやく一歩を踏み出す。ただ、未明の気持ちは「読まれたから満足」で終わらない。彼は、自分がただ面白くなりたいのではなく、海月のために面白くなりたいのだと改めて口にする。
一方で、宮元も未明との関わりを通して、自分の過去に向き合う。元相方であり、ラジオネーム「コメット」として「金ミド」を聴き続けていた八巻に会い、この二年間のことを謝る。二人のやり取りはきれいな和解というより、悪態や照れが混じった不器用なものだが、それでも止まっていた関係が少しだけ動き出した。
物語の終盤、未明は朝の公園で海月と再会する。そこで海月は、自分がラジオネーム「うなぎポテト」であることを明かす。
未明は、海月に近づくために、うなぎポテトのように面白くなろうとしていた。しかし実際には、そのうなぎポテトこそが海月本人だった。つまり未明は、好きな人に近づこうとして、知らないうちに好きな人自身と同じ土俵で戦っていたのである。
海月は、未明の最後のメールを「好きだった」と伝える。ここで恋がはっきり成就するわけではない。けれど、未明の言葉は確かに海月に届いていた。未明がずっと求めていた「面白いと思われたい」という願いは、一通のネタメールを通して、確かに叶ったのだ。
「金ミド」がまたいつものように始まる。ロングホープスの声が流れ、海月、宮元、八巻、未明が、それぞれの場所で「金ミド」を聴いている。そして未明はまたスマホを手に取り、メールを送ろうとする。ラジオは続いていく。未明の恋も、投稿者としての挑戦も、ここで終わりではなく、ここから始まっていく。
| お題(オープニングあるあるのコーナー) |
回答メール |
ラジオネーム |
| 「日常のあらゆるあるある」 |
「ウインナーの袋 開ける場所分からん」 |
ヘイトフルエイト |
| 「小学生はお兄ちゃんがいると貰えないプリントがある」 |
うなぎポテト |
| 「お父さん 朝ドラに出てた人しか知らん!」 |
うなぎポテト |
| お題 |
大喜利メール |
ラジオネーム |
| 「アメリカン忍者って どんなの?」 |
- |
コメット |
| - |
薄口ワンタン |
| - |
ヘイトフルエイト |
| - |
逆襲の里芋 |
| 「夏のサンタはなにしてる?」 |
「短パンのおしゃれ」 |
ヘイトフルエイト |
| - |
一寸先はゴミ |
| - |
ただ単に田中 |
| - |
コメット |
| 「まだトナカイと反省会してる」 |
米なし玄米 |
去年、地下鉄で迷って半泣きになりながらジャンプに持って行った漫画です!お好きな音楽やラジオと一緒に読んで頂くのがオススメです!
はじめまして、ヤマノと申します!掲載嬉しくて人生で一番大きい声出ました!わーー!
ゲット・バック・TVショウ
ヤマノエイ氏にとって、2作目の読切作品。
ジャンプGIGA 2022 AUTUMNに掲載。
『ゲット・バック・TVショウ』は、紛争後の世界を舞台に、「不要」とされたエンタメの価値を問い直す物語。
長い紛争が終わってから10年、戦後の復興を急ぐ政府は、社会を立て直すために、物事を「必要なもの」と「不要なもの」に分けて管理している。政府は社会の復興と秩序維持を優先し、娯楽やテレビ番組を「生活に不要なもの」として取り締まっている。
そんな中、ハヤマ、カナメ、ミカミ、コガたちが所属する「街角放送局」は、電波ジャックによって政府の規制に逆らいながら人々にテレビ番組を届け続けている。
物語の中心人物であるハヤマは、テレビやエンタメを単なる暇つぶしとは考えていない。彼にとって番組作りとは、荒れた世界の中に残っている面白さや楽しさを見つけ、それを誰かに届ける行為である。
世界は治安が悪く、汚く、ごちゃごちゃしている。
それでもハヤマは「この世界が好きだ」と語る。なぜなら、その中にはまだ人を笑わせたり、心を動かしたりするものが残っているからである。
一方、政府側の監査官であるヲハリは、「街角放送局」を摘発するために現れる。彼女は当初、社会の安全や秩序に直接役立たないエンタメを不要なものだと考えている。
しかし、ハヤマたちの番組作りを間近で見ていくうちに、その考えは少しずつ揺らいでいく。「街角放送局」が扱う内容は、カレー屋から漏れる匂い問題や犬のくしゃみ、街の景色など、一見すると「しょうもない」ものばかりである。
しかし、そのしょうもなさこそが、人々の表情を和らげ、世界を少しだけ楽しいものに変えている。
終盤、「街角放送局」は解体の危機を迎える。ハヤマは放送局の終わりを受け入れようとするが、ヲハリはそこで立ち止まる。彼女は、「街角放送局」の未来を見たいと考え、本当にエンタメが無益なのか、その行く末に賭けてもいいと思うようになる。ヲハリは、エンタメを排除する側から、その価値を自分の目で確かめようとする側へ変化するのであった。
そして最後の生放送は、夜の街を一望できる場所からの放送。自分の家から撮影現場を見れるかもと思った視聴者たちによって、街のあちこちでカーテンが開かれ、窓が開き、さっきまで暗かった街を、部屋の光が輝かせていく。
静かだった街に明かりが広がっていくことで、テレビが人々の心に届いていた事実が目に見える形で表される。
この反応によって、「街角放送局」の解体は撤回される。なぜなら、もはや政府にとってその放送を単なる「不要物」として処理できなくなったからである。エンタメが本当に無益なら、人々は反応しない。しかし実際には、多くの人が放送を見ており、呼びかけに応えて電気をつけた。
「街角放送局」の放送は、戦後の暗い世界において心に余白を生み出す存在として、人々に必要とされていたのである。
掲載が決まったの嬉しすぎて一人でアイス3個食べました!バニラ、抹茶、チャイ味でした!楽しく読んでいただければさらに幸せです!!
作画中はハルカミライの「星世界航行曲」を聴いてました!ノリノリでハッピーでした!
週刊少年ジャンプ
フォローミー、ゴースト
ヤマノエイ氏にとって、3作目の読切作品。
「週刊少年ジャンプ」2023年18号に掲載。
『フォローミー、ゴースト』は、SNS時代の承認欲求と除霊を組み合わせた、現代的なオカルト作品。物語の中心となるのは、インフルエンサーの少女・バンリと、彼女を撮影するカメラマンの少年・オレンジである。
本作の世界では、人々の「見てほしい」「認められたい」という気持ちが集まることで、「怨念」と呼ばれる存在が生まれる。怨念は人に取り憑き、その人の承認欲求や劣等感を暴走させる。取り憑かれた人間は、自分の中にある不安や寂しさを刺激され、冷静な判断ができなくなり、自分でも望んでいない行動を取ってしまう。つまり怨念は、単なる悪霊ではなく、誰にも受け止められなかった承認欲求や孤独が形になった存在である。
バンリは、人気インフルエンサーとして活動する少女である。自信満々で、可愛く見られることにも強いこだわりを持っているが、彼女はただ注目を集めたいだけの人物ではない。自分の「可愛い」を発信することで、誰かに勇気を与えたり、自分のように悩んでいる人の背中を押したりしたいと考えている。
そんなバンリを撮影しているのが、カメラマンのオレンジである。オレンジは、バンリを最も可愛く撮ることにこだわっており、彼女にとって特別な存在である。二人の関係には、初めて会ったときの出来事が大きく関わっている。当時のバンリは、今のように自信に満ちたインフルエンサーではなく、背が低いことや、自分の好きな服が似合わないことに悩み、外見にコンプレックスを抱えていた。
しかしオレンジは、そんなバンリをからかったり、表面的に撮ったりしたわけではなかった。彼は、バンリの中にある「可愛くなりたい」「変わりたい」という気持ちや、本人もまだ気づいていない魅力を見ていた。バンリにとってオレンジは、自分を初めてちゃんと見てくれた存在であり、だからこそ彼の撮る写真を信頼している。
作中では、バンリに憧れる少女・ひなたが怨念に取り憑かれてしまう。ひなたは、もともと写真投稿を積極的にしていたわけではない。彼女はただ、憧れのバンリとツーショットを撮れたことが嬉しく、その写真をSNSに投稿しただけである。しかし、その投稿に反応が集まったことで、ひなたの中にあった「見てもらえる嬉しさ」や「もっと認められたい」という気持ちが無意識に刺激されてしまう。そこに怨念が入り込み、彼女は自分の意思とは別に飲み込まれていく。
バンリにとって「可愛い」とは、ただ他人から褒められるためのものではない。自分が自分を好きでいるための武器であり、誰かに勇気を渡すための表現でもある。そのため、彼女は怨念に取り憑かれる危険を理解しながらも、ひなたを助けようとする。ファンの子一人を救えないで何がインフルエンサーか、という姿勢に、バンリの強さと責任感が表れている。
終盤、バンリ自身も怨念に飲み込まれそうになる。しかし、オレンジはそんな彼女の姿を撮影し、バンリの最高の一枚を切り取る。オレンジのカメラは、単に可愛い写真を撮るための道具ではない。バンリが抱えてきた弱さ、努力して作り上げてきた強さ、そして誰かを救おうとする姿まで写し取るものとして描かれている。
その写真はSNSに投稿され、多くの人に見られ、「いいね」を集める。すると、バンリにまとわりついていた怨念は消えていく。ここで怨念は力ずくで倒されるのではなく、「見てほしい」という気持ちが正しく受け止められることで浄化される。承認欲求を否定するのではなく、明るい表現へ変えることで救いが生まれるのである。
ラストでバンリは、オレンジとともにもっとかっこいいインフルエンサーになると語る。オレンジもまた、バンリの外見だけでなく、彼女が前に進もうとする姿そのもののファンであることを示す。二人の関係は、インフルエンサーとカメラマンでありながら、互いの表現を支え合う相棒と呼べる関係なのだ。
ラジオと犬とチキンナゲットが好きです!もしよかったらそれだけでも覚えていってもらえると嬉しいです!
担当さんに教えて貰った ピロウズの「Come on,ghost」聴きながら書きました。
- the pillows「Come on,ghost」
フレイム・ブルー
ヤマノエイ氏にとって、4作目の読切作品。
「週刊少年ジャンプ」2023年51号に掲載。
『フレイム・ブルー』は、高校を舞台にした青春ファンタジーである。舞台は、全寮制の私立青星館高校。この学校には、閉鎖された校舎裏の礼拝堂に封じ込められていた悪魔がいた。
半年前、その事情を知らない生徒が扉を開けてしまい、悪魔が放たれてしまった。悪魔は人間の愛や恋などの浮かれた生暖かい感情を嫌い、閉鎖的で抑圧された負の気に満ちた箱庭を理想としている。そのため、校内で恋愛をしようものなら、悪魔の力で石に変えられてしまうのだ。
物語の中心となるのは、逢澤灯と炭谷火恋。二人は青い腕章をつけている。悪魔によって恋愛が封じられ、生徒たちが自分の気持ちを押し殺すようになった学校で、逢澤と火恋は恋愛の自由を取り戻すために動く抵抗勢力のような存在である。
その活動内容から、恋愛の手助けになることが多く、生徒たちからは「恋のキューピット」と呼ばれている。
今回、二人のもとに現れるのが、1年A組の瀬戸である。
瀬戸は幼馴染である3年生の小川さんに想いを寄せている。
小川さんは卒業後、県外の大学へ進学する予定であり、瀬戸に残された時間は少ない。しかし、この学校では恋をすれば石になると恐れられているため、想いを伝えることはただの告白ではなく、大きな危険を伴う行動になっている。
逢澤と火恋は、瀬戸が小川さんに気持ちを伝えられるように手助けする。しかし、悪魔は恋愛に向かおうとする者を見逃さない。恋心や告白の気配を察知し、瀬戸たちを石に変えようと迫ってくる。学校全体に広がる悪魔の恐怖は、実際に生徒たちから「好き」と言う勇気、そして自由を奪っていた。
瀬戸は、小川さんのことを諦められないくらい好きだと語る。恋をすれば石になるかもしれないという恐怖の中でも、その気持ちをなかったことにはできない。逢澤もまた、その姿を格好いいものとして受け止める。恋は怖いものだが、それでも誰かを想い続ける気持ちは、人を前に進ませる力として描かれている。
告白すると決心した瀬戸。火恋と逢澤は、瀬戸が小川さんのもとへ向かえるように悪魔を引きつける。そこで逢澤は、悪魔に向かって「結婚して!!」と言い放つ。これは単なる突飛なギャグではない。恋をすると石にする悪魔に対して、逢澤はあえて恋の言葉をぶつけることで、悪魔自身を恋愛の当事者に引きずり込むのである。
それまで悪魔は、恋する生徒を一方的に裁き、石にしてきた存在だった。しかし逢澤から「結婚して」と真正面に言われたことで、悪魔は他人の恋を罰するだけの立場ではいられなくなる。恋を封じる側だった悪魔自身が、恋の言葉に向き合わされる。その結果、悪魔は動揺し、巨大で恐ろしい姿を保てなくなり、小さな獣のような姿へと変わってしまう。
その間に、瀬戸は小川さんのもとへ向かい、ついに自分の想いを伝える。彼は小川さんに「好きでした、ずっと」と告白し、「来てくれてありがとう」と感謝を伝える。
瀬戸の告白後、学校には少しずつ変化が生まれる。恋をすると石になるという恐怖に支配されていた空気が揺らぎ、逢澤と火恋の活動も生徒たちの間で知られるようになる。青い腕章をつけた二人は、恋に悩む生徒を助けてくれる存在として語られていく。瀬戸の勇気ある行動は、青星館高校に「好きと言ってもいい」という空気を取り戻すきっかけにもなった。
ラスト、物語は半年前へ戻る。悪魔が解放され、学校が異常な空気に包まれ始めた頃、逢澤は一人で旧校舎の礼拝堂へ向かい、悪魔を何とかしようとしていた。それを見た火恋は、思わず「そんなの危ないよ」と止めかける。しかし、その途中で気づく。逢澤は、みんなが恐れて動けない状況で、逃げずに自分から何かを変えようとしている人物だった。
その姿を見て、火恋は「この人とならきっと何か変えられる」と感じる。そして、その出会いを「運命」だと感じていたのだった。
本作では逢澤の「運命の人」への憧れも重要な要素になっている。逢澤は、雑誌に書かれていた「今日、イニシャルがSの人と見つめ合えたら、それは運命を変える相手」という占いを意識している。
この「S」の伏線は、終盤で二重に効いてくる。まず、悪魔は英語で言えば"Satan"であり、イニシャルはSである。
逢澤が悪魔と向き合い、「結婚して」と告げる場面は、占いの通り「Sの存在と見つめ合う」場面になっている。
そしてその行動によって、実際に悪魔の力は崩れ、学校の運命は変わり始める。
しかしラストで半年前の出来事が描かれることで、もう一つのSである炭谷火恋の存在も浮かび上がる。占いはあくまで“今日”のものだが、逢澤の運命を変える相手として見るなら、炭谷とはすでに半年前に出会っていたとも読める。
つまり、今日の占いが悪魔との決着を導きながら、同時に、逢澤がまだ気づいていなかった炭谷との関係にも意味を与えている、とも受け取れるだろう。
『フレイム・ブルー』というタイトルは、日本語で「青い炎」という意味を持つ。青い炎は静かでありながら強い熱を持っている。瀬戸の小川さんへの想い、逢澤の運命への憧れ、火恋が逢澤に感じた可能性は、どれも赤い炎のように派手に燃え上がるものではない。しかし、内側には確かな熱がある。その静かで強い熱こそが、本作における青春の炎なのだ。
ヤマノと申します!最近一番おいしかったものは まいたけの天ぷら!買ってよかったものはふかふかのタオルです!
阪神日本一あまりにもうれしいです〜〜!めちゃくちゃ元気をもらいました〜!
『フレイム・ブルー』は、少年ジャンプ編集部の公式Xアカウントにて公開されている。(→
『フレイム・ブルー』)
となりのホーム
ヤマノエイ氏にとって、5作目の読切作品。
「週刊少年ジャンプ」2024年18号に掲載。
『となりのホーム』は、大学受験当日の女子高生・古森ももかと、炎上によって夢を諦めかけた芸人・火野ニューウェーブの偶然の出会いを描いた物語。舞台は駅のホームと電車内。
人生の大事な日に受験票をなくした少女と、芸人の夢を諦めて地元に逃げ帰ろうとしていた若手芸人が、一本の電車で偶然出会い、互いの人生を少しだけ前へ進める物語である。
主人公の古森ももかは、大学入試に向かう18歳の少女である。
受験当日、彼女は駅のホームで受験票を落としてしまう。しかしその場では気づかず、そのまま電車に乗り込む。ドアが閉まった後、ようやく受験票がないことに気づき、ももかはパニックになる。
そんなももかに声をかけたのが、20歳のピン芸人・火野ニューウェーブ。火野は、ももかが受験票を落とす様子を目撃しており、ホームに落ちていたももかの受験票を拾っていた。
彼は「落としたで」と知らせるためにももかを追いかけ、彼女と同じ電車に乗り込んでいた。
しかし、火野が持っていたのは受験票の外側だけで、肝心の本体のカードが見当たらなかった。実はそのカードは、火野がホームでももかに声をかけようとして手を挙げた時、前にいた「もこもこ(の服を着た)のおっさん」に手が当たり、その拍子におっさんの服にくっついてしまっていた。
そのおっさんも同じ電車に乗ったと思われるため、火野とももかは車内で一緒にカードを探すことになる。最終的にカードはおっさんの服についている形で見つかり、ももかは無事に受験へ向かえることになる。
火野は現在、芸人として大きな挫折を抱えていた。
彼は以前、「リズミカルにライオンを狩りをする」という内容のフリップネタを動画投稿サイトに投稿した。しかしその直前に、日本中で愛されていたライオンの「タイヨウ君」の死が報じられていた。火野自身はタイヨウ君の死を知らず、ネタもタイヨウ君を示唆したものではなかったが、タイミングがあまりにも悪かったため、「タイヨウ君の死を茶化した芸人」と誤解され、大炎上してしまう。
この炎上によって、火野は「自分は最低の人間だ」「人前に立つ資格がない」と思い込むようになっていた。彼はこれまで積み重ねてきた努力、受けた恩、芸人としての夢を全部放り出して、地元へ逃げ帰ろうとしていた。
しかし、ももかに受験票を届けるため、彼女を追って本来とは逆方向の電車に乗ってしまう。火野はそのことに気づき、ももかに対して「お前のおかげで逆方向の電車に乗ってしまった」というように軽口を叩く。
ももかは自分を追いかけ、受験票を届け、一緒に探してくれた火野の姿を見ており、最高なところもあると伝えた。
火野が自分を責めても、ももかは、タイヨウ君の死を知らなかったこと、きちんと説明して謝っていたこと、そして今ここで自分を助けてくれた感謝を火野に伝えた。
受験会場の最寄りに着き、降りていくももかに、火野は「ありがとう 頑張れよ」と声をかける。
すると、ももかは火野に向かって「あんたもがんばれ」
「あんたはええ人や」「スマホの画面に映らへんあんたをきっと誰か見てる」「アタシは見てるぞ」と叫ぶ。
火野はネット上の批判によって、自分のすべてを否定されたように感じていた。しかし、ももかは画面越しの情報ではなく、目の前の火野の行動を見ていた。世間が見ていない火野の優しさを、ももかだけは確かに見ていたのである。
そして、ももかと別れた後、火野がたどり着いたのは劇場の最寄り駅だった。地元へ帰るはずだった火野は、ももかを助けるために逆方向の電車に乗ったことで、結果的にもう一度、自分が立とうとしていた場所の近くまで戻ってきていたのである。
火野は自分の意思では劇場へ戻れなかった。今までの努力も、恩も、夢も全部放り出して地元へ逃げ帰ろうとしていた。
しかし、目の前で困っているももかを助けようとした結果、彼はもう一度夢の場所の近くへ運ばれる。これは単なる偶然でありながら、火野がもう一回這い上がるための運命のようにも見える。
ラストでは、二年後のももかが描かれる。大学生になったももかは、火野ニューウェーブが出演するラジオの新番組の告知を見ていた。かつて炎上で自信を失っていた火野は、再び人前に出る仕事を続けていた。ももかは火野のことを「人生の恩人同士」として思い出す。火野はももかの受験を救い、ももかの言葉は火野の人生を救った。二人は一度きりの出会いでありながら、互いの人生の分岐点で支え合った存在だったのである。
ヤマノエイ氏に関するふつうのおたより
質問と返答
※読者のラジオネームの敬称は省略いたします。
『週刊少年ジャンプ』2026年14号
- ヤマノ先生のエイという名前は サメの仲間のエイから来ているのでしょうか!(RN:ポラリス)
ミメイ:関係ないらしいよ
『週刊少年ジャンプ』2026年27号
- ヤマノエイ先生の1番好きな犬種は何ですか?(RN:花まるオムライス)
くらげ:犬はみんなかわいいけど、柴系のミックス犬が一番
好きなんだって!
最終更新:2026年06月07日 02:56