三対一。
普通に見れば圧倒的にイグニスの不利な立場だ。
メーア、ラガッツォ、リコ。当人も含めてだがほぼ十全な武装を得た状態。
なので本来であれば不利だが、三対一と言う構図にはそもそも慣れている。
様々な苦難を乗り越え、KOFを優勝した者たちも三人でやってきているからだ。
「マスカーニャ! トリックフラワー!」
イグニスの周囲に浮かぶ蕾の爆発。
威力は小さくなく、マジカルリーフに負けず劣らず視界を眩ませる。
煙で周囲が見えなくなるものの、やってることは似たようなものだ。
(威力は高い攻撃だが目くらまし、本命は……)
ゆえに左右後方からの不意打ちの警戒。
数が多ければ警戒をするのは至極当然だが、
「正面からだぜ!!」
ラガッツォからの正面、右ストレートだ。
相手は炎を出せる。直撃で受けはしないし、
炎がどの程度出力できるか判断できないので、
ギリギリの回避はせず多めに距離を取るものの、
「と見せかけて上からも!」
距離を取ったところをメーアのドラグホーンの横薙ぎの一撃。
一撃で首を刈り取らんとした明確な殺意のこもった一撃ではあるが、
それすらもマントであり疑似生命体であるイーリスランスにより正面からの攻撃は防がれる。
「そのマントずるくないですか!?」
「だから困ってんだろうが!」
メーアとラガッツォ両方の攻めを、
届きそうなものだけはマントで防ぐ。
炎を放出しても焼ける気がしない耐火性。
どうすれば攻めれば届くのか悩ませていると、
イグニスのガーリアンソードが揺らめいていく。
「マスカーニャ! 蕾で二人を掴んで!」
攻撃が迫ると踏んで、リコのマスカーニャが回収。
距離を取ることになるがその間にメーアが槍を振るう。
当然距離を取ってるのだ。虚空を振るうだけに留まるそれだが、
水の泡が数発飛び交い、それがイグニスに被弾し爆発を起こす。
たかが泡の爆発。そう思われるが彼が怯むほどの威力を誇っている。
リコの知っている技、あわやバブルこうせんとはわけが違う。
「私がただの槍使いだと思いましたか? 魔法も使えるんですよ!」
聖水の加護の力を持つメーアにとって、水属性の魔法を行使自体は難しくない。
こんな性格をしているが、実力主義の帝国騎士として生きてきた彼女の実力だ。
若くして騎士団長へ上り詰めているだけあって、相応の威力を誇っている。
「魔法……サイコパワーなどの類でもない未知なる方法か。」
イーリスランスはイグニスの思い通りに動くものだ。
言い換えればイグニスの想定外には動けないということ。
今回はたまたまの一撃ではあったが、三人にとっては大きい情報になる。
「ならば───」
「マスカーニャ、ふいうち!」
「ニャア!」
剣での攻めに入る、その寸前背後に回り込むマスカーニャ。
存在には気づけたものの、対応することはできず顔面に大きな蹴りが叩き込まれる。
相手の攻撃に合わせて必ず先制攻撃ができる。それがふいうちの大きな強みだ。
失敗した際のリスクは大きいが、殺し合いと言う盤面ではその強みはさらに強くなる。
攻撃しない方がまれなのだから。
「隙だらけだぜ!」
ふいうちでできた隙に炎を噴出させての再び右ストレート。
顔面にクリーンヒットし、整った顔立ちに傷をつけながら殴り飛ばす。
今までで一番連携でうまくいったダメージに三者は少しばかり頬を綻ばす。
とは言え、殺し合いとは縁遠いリコにとっては少々表情を曇らせるものになる。
ポケモンバトルで大切な何かをかけた戦いは少なくないが、命のやり取りは別だ。
数度地面を転がりながら、自分の火傷した頬へと手を触れながら三人を一瞥する。
「どうやらテメエがまともに食らってる間は剣もマントも機能しなさそうだな!」
何とか攻略の糸口はつかめた。
うまいこと連携を続けて相手の不意を突きつづける。
初対面の二人とそれをやり続けるのは流石にきついものがあるが。
「邪魔なのは獣か。」
優先順位を変更し、ガーリアンソードが動き出す。
蛇腹剣も相まってアーボックやハブネークかのようなしなやかに、
しかしそれらの比にはならない速度で動く刃はそれだけで凶悪だ。
「アクロバットで躱し続けて!」
迫る刃を華麗に、同時に機敏に動きながら躱し続けていく。
思うように捉えることができないまま剣は追尾を続けるものの、
途中でガキン、と甲高い音を立てながら動きを止めさせられる。
追尾を優先した結果、剣が絡まってうまく稼働できない状態へと追い込む。
別にただの糸ではないのだ。巻き戻すようにすぐに解けばいいものの、
当然そこを二人が攻めない理由にはならず、メーアの槍が彼を牽制し、
ラガッツォの拳が殴るもののやはりマントのガードは固い。
「マスカーニャ、トリックフラワー!」
イグニスの眼前に蕾が出現し、爆発。
マスカーニャのトリックフラワーは数、配置共にある程度好きにできる。
だからこそトリックフラワーと言う名を冠するのかもしれないのだが、
そのおかげでリコのやりたいことを、マスカーニャはうまくやってくれる。
今までは目くらましの要因かと思えば、まともに食らってみれば威力はすさまじい。
リフレクターと言った防護を無視して攻撃を行う強力な攻撃技でもあるので、
イーリスランスの防御を突き抜け、大きな隙となったところにメーアの魔法が炸裂。
爆発で吹き飛んだところを更にラガッツォの追撃のアッパーカットが入り、宙を舞う。
さらなる追撃をかけようとしたところ、剣による迎撃により失敗して距離を取らされる。
「此処までやれるとは。異界も侮れぬか。」
「降参するなら今がチャンスですよ?」
「舐められてんだよ。全力出すまでもねえって。」
「なんですと!?」
フフン、と誇示するように胸を張るメーア。
だが彼が本気を出している様子は見受けられず、
ラガッツォに突っ込まれると思わず反応してしまう。
「ならば見せよう、我が力の一端を。」
「───ッ、嬢ちゃん、避けろ!!」
「え?」
ラガッツォが気付いた時には手遅れだ。
メーアの足元に魔法陣が展開されているのに気づくものの、
すぐに彼女は黒い球体の中へと閉じ込められ、イグニスが光の球を投げつけると爆発を起こす。
ガラスが割れるような音とともにメーアは解放されるが、無傷だった彼女は一瞬にしてボロボロな姿に晒される。
「カハッ……!!」
(なんだ!? 足元から魔法陣が現れたのは分かったがこの威力かよ!?)
発生が速すぎて言葉にしても回避は極めて困難な技。
これを隠していたのは大技の一つだからだろうことは分かる。
隠してなければこれを三人に全員揃って使えそれで終わりだからだ。
今回二人ではなくメーアだったのは、たまたま一番近くにいたからなのか、
それとも単に舐めた態度を取った彼女に対する返礼なのか。定かではないが、
一瞬で形勢が逆転したことで二人と一匹はその状況に戸惑わずにはいられなかった。
「私の力の前には何者も無力だ。」
「マ、マスカーニャ! アクロバットで距離を取らせて!」
戸惑いが隠せないのはあるものの、彼女の容態を見るためにも時間が必須。
剣をかいくぐれるアクロバットで華麗に剣を躱し、ガードこそされるものの距離を取らせることに成功する。
ガーリアンソードの射程は10m。ギリギリではあるものの三人との射程の外へ追い出される。
さらなる追撃のため動くイグニスだが、レデュエの放送が始まったのもあり一瞬気をそらす。
三人にも絶好のチャンスではあったものの、リコたちにとってはそれどころではなかった。
「大丈夫ですか!?」
「いやこれ、かなり、キツイ……!!」
爆発を受けたような痛みに全身が悲鳴を上げている。
吐血し、血を大地にまき散らしながらなんとか立ち上がるが、
膝はガタガタで、立っているのもつらいところを感じざるを得ない。
(あー、フルス、何してるんだろなぁ。)
立ち上がりながら思い出すのは妹の薬師となったフルス。
いつも自分のことを愚姉だの一族の恥と揶揄して追い回してくるが、
メーアはこのちゃらんぽらんな性格で帝国の四馬鹿とされるぐらいの有名人だ。
教官を何度キレさせたのか、もはや多すぎて分からないと言えるレベルになる。
何故、今そんなことを思い返すのか。自分の性格だからなのかと一瞬思ったものの、
(あ、これ走馬灯か? 冗談でしょ?)
『否定して~~~』と叫びたいものの、
このボロボロの状態で相手は本気を出し始めての三対一。
誰が足手まといになるか。それについては容易に想像がついてしまう。
認めたくないが、自分が一番切り捨てるのに向いてしまうのだと。
「柄じゃないんだけどなぁ……お二方! 派手にやるから逃げてください!」
此処は一先ず誇張でもいいので二人を引き離す。
無論死ぬつもりはない。絶対生き延びて悠々自適に暮らすつもりだ。
ただ、こんな性格でも騎士は騎士。他人を見捨てて生き延びようとは思わないし、
他人が巻き添えになる可能性のあるものを使う以上二人がいるのは危険なのだと。
「え、でも───」
「時間は有限です! そこの人。その子、頼みますよ。」
今までで一番真剣な眼差しでラガッツォを見やる。
彼にとっては別に珍しくない、幾度となくいろんな奴が見てきた、
戦う者として覚悟を決めた者の顔つき。どこか死相が見えるようにも思い、
一瞬だけその意味を問おうかとも思ったものの、それを言えばリコは止まってしまう。
彼女は戦いの経験はあるようだが人の生き死についてはかなり経験が浅いように見受けられる。
「……チッ、分かったぜ。行くぞ! 殿はあいつに任せろ!」
だからそれを言うことなく、イグニスから背を向け走り出す。
納得はできない。もっとうまくやれる方法があったはずだ。
けれど思いつかない。相手の本気は思った以上の強さだと。
リコは一瞬だけ足を止めそうになったもののこの状況を打開できる。
その言葉を信じて彼女を一瞥しながら走り、マスカーニャが後方を守りながら去っていく。
「神を前に一人で挑むこと、誉めてやろう。」
「あー、神とかもう沢山であってるので結構です。」
神を相手にしたし、帝国にも王国にも亜神は何人も見てきた。
今更神を名乗る相手が出てきたところでありがたみは薄いものだし、
ましてや神を名乗る割には王子や皇帝でもないのに結構な負傷を負っている状態だ。
余計に神を名乗るのはちゃんちゃらおかしいと思えてならない。
だから呆れ顔で手をぶんぶんと、間に合ってますと否定する。
「よし……行くか!」
一呼吸と一度目を閉じると、
残る全身全霊を使って走り出す。
かなりの負傷をしているはずなのに、その速度は素早い。
槍の射程に入る前に、指揮棒のごとくガーリアンソードを振るう。
イグニスの意のままに動くそれは接近するメーアへと容赦なく襲い掛かる。
今は一人だけ。妨害してくれる仲間がいない今近づくだけ傷を負うということだ。
躱しながら接近するものの裂傷はいたるところに刻まれ、赤い筋を作っていく。
それでも歩みを、走ることを止めはしない。槍の射程に入るまでは。
「ハァ!!」
下から上への切り上げ。
何の変哲もないない攻撃であり、
イーリスランスによって容易く防がれてしまう。
しかしそのことを当然彼女も予測していたこと。
更に立て続けに腹部を中心に突きのラッシュを見舞う。
正面からのラッシュも、いずれも防がれて傷にすらならない。
このマント破りたくて仕方ない、などとごちりながらも続けるも、
「見え透いた策だ。」
マントの端がふわりと浮き上がると、メーアを『殴った』。
防護服としての性能もさることながら、イーリスランスは攻撃にも転換可能だ。
それを受けて彼女が吹き飛ばされている間に、ガーリアンソードが頭上を舞う。
すると頭上で水泡が爆発し、イグニスに雨のように水が降り注いで身体を濡らす。
「先ほどの切り上げの時泡を上へと放っていたようだが、その程度か。」
切り上げの際に保険としてメーアはさりげなく上空へ水泡を放っており、
隙を狙ったもののやはりその程度ではだめかと内心ごちりながら立ち上がろうとするが、
これ以上は限界で、ドラグホーンも手から落ちるほどに力がなくなりつつある状態だ。
「これで終わりだ。」
この程度の策しか用意できないということは、
もうこれ以上の策と言ったものは彼女にはないのだろう。
立ち上がりかけている彼女へと剣を伸ばして突き刺す。
「炸裂装甲(リアクティブアーマー)!!」
だが、彼女から突如爆風が発生しだして剣は届かない。
距離を取っているはずなのに爆風は威力は凄まじく、イグニスが吹き飛ばされるほどだ。
「呪術師まがいのことができるとは、便利なものですね……!!」
槍以外にも、メーアは二人よりも多く支給品を確認できていた。
おかげでデュエルモンスターズのカード、炸裂装甲を忍ばせることが。
だが初見だから威力がどの程度かわからず、三人の時は使用できなかった。
実際に使ってみれば、とてつもない威力だ。一人であってよかったと心底思える。
「そこだあああああ!!」
残る力を振り絞って、
もう一度槍を握り水泡をありったけ飛ばす。
もう走る力は残されてない。これでとどめはさせるかは賭けだ。
この先も生き残るかどうかも考えてない。誰かが拾ってくれればいいな、
そんな希望的観測を持ちながらの決死の一撃。
「落ちよ。」
だが、しかし。
イーリスランスの先端部分から4つの閃光を放出する。
攻撃は届くことなく、文字通り水泡へと帰すことになり、
「だから、ずるいですってそれ……」
何でもありかよそれ。
攻撃に防御に、あまつさえビームも出せてしまう。
ずるすぎると思わず愚痴を零さずにはいられなかった。
(あー、もうやっぱやるもんじゃないなぁ、こういうの。
……でも、せめて騎士らしく戦えただけよかったのかな、これ。)
あのまま二人を置いて逃げるよりは、
妹や皇帝に顔向けできる死に方を選べたのかもしれない。
この頑張りが、妹や王子に届きますように。そんな風に思いながら、彼女は胸を剣で貫かれた。
【メーア@千年戦争アイギス 死亡】
「悔いることはない。お前は、神である私の礎になるのだからな。」
特に何か感慨も、苛立ちも感じることなく、
イグニスは彼女を一瞥すると支給品を手に取っていく。
元より基本の武器はそろっている。他人に奪われ、
先のような予期せぬ展開に見舞われぬように警戒と言ったところだ。
確かにあの実力の相手に思ったよりも負傷することになったが、さして問題はない。
「さて、追うべきか。」
新世界の神にならんとする男は考える。
二人を追うべきか、このまま別の標的を探すか。
その結果は、まさに神を名乗るイグニスのみぞ知る。
【E-10/深夜/1日目】
【リコ@ポケットモンスター(2023)】
[状態]:精神的不安(中)
[装備]:マスカーニャ&マスカーニャのモンスターボール@ポケットモンスター(2023)
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜2
[思考・状況]
基本方針:殺し合いはしない
1:あの人(イグニス)を止める!
2:ライジングボルテッカーズのメンバーを探したい。
3:エクスプローラーズもいるのかな……
[備考]
※参戦時期は126話、オレンジアカデミーに向かう途中。
※放送をほとんど聞いていません。
【ラガッツォ@グランブルーファンタジー】
[状態]:ダメージ(中)、疲労(中)
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜2(義手が武器扱いの為1減少)
[思考・状況]
基本方針:殺し合いをする気はねえ。
1:ベリアル、噂しか聞いたことねえがやべえな。
2:あいつ(イグニス)を此処で倒さねえと後がやべえ。頼むぜ嬢ちゃん(メーア)
3:知り合いはいるのかねぇ……親父がいるとかねえよな。
[備考]
※参戦時期はNight Pareidoliaエピローグ。フェルディナンドが願う前。
※放送をほとんど聞いていません。
【イグニス@THE KING OF FIGHTERS】
[状態]:ダメージ(中)、疲労(中)
[装備]:イーリスランス@THE KING OF FIGHTERS、ガーリアンソード@THE KING OF FIGHTERS
[道具]:基本支給品×2(自身、メーア)、ランダム支給品×0〜2(自身0~1、メーア0~1)、ドラグホーン@グランブルーファンタジー、炸裂装甲@遊戯王OCG
[思考・状況]
基本方針:優勝し神になる。
1:残り二人を屠るか、それとも。
[備考]
※参戦時期は2001の死亡後。
※放送をほとんど聞いていません。
【炸裂装甲@遊戯王OCG】
メーアに支給。攻撃宣言時にそのモンスターを破壊できる罠カード。
本ロワでは破壊=ダメージと言う定義で、当たり所が悪いでもなければ即死はしない。
6時間に1回使用可能。
| 006:聖数3の二乗 |
投下順 |
008: |
| 時系列順 |
| 27:我こそ最強 |
メーア |
GAME OVER |
| ラガッツォ |
|
| リコ |
| イグニス |
最終更新:2026年04月03日 19:42