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F-2-087

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匿名ユーザー

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「La Folie 1 」


87 :La Folie:2011/01/18(火) 03:15:52 ID:tsNUAEqx

近未来設定です。
ちょいグロありなので苦手な人は気をつけて下さい。
次から投下します。

88 :La Folie 1/25:2011/01/18(火) 03:19:39 ID:tsNUAEqx

不気味なほど白い世界に、俺は居た。何処かの病院の廊下だろうか。
付け入る隙のないような、全き白は俺の侵入を拒むように沈黙していた。
完璧でない者を排除するような、冷ややかな色の上を歩く。
鼻腔をかすめる、薬品の匂い。――それに混じって、甘ったるいような、香水めいた香りが漂ってきたことに気付き、
匂いの発信元を探る。しばらく歩いていくと、何かの気配を感じとある一室の前で立ち止まった。
……ここだ。この部屋から、吐き気を催すほど甘い匂いが湧いている。

くちゃくちゃ、ぐちゃぐちゃ。
ぴちゃぴちゃべちゃべちゃ。

白い扉の向こうから何かを咀嚼する音が聴こえている。

……誰、だ。
そこにいるのは誰だ。

ぐちょぐちょげちぇげちょ。
ぴちゃぐちゃげちゃげちゃ。

開けるな。開けるな。決して開けてはナラナイ。
恐怖心が扉を開けるなと囁いている。
開けろ。開けてしまえ。ほら、早く。
俺は好奇心に突き動かされ扉に手をかけて――

「――っ」

……夢か。

ベッドから飛び起き、俺は息を吐いた。
毎夜頻繁に見る悪夢とはいえ、慣れることはない。
いつも、あの扉を開く所で夢は終わる。
あの先に何がいるのか、見てみたいようで、決して見たくもない気がした。

時計を見ると、もう昼近くになっていた。
遅刻だな。……あんな夢を見たせいだ。
「くそっ」
誰にともなく悪態をついて、立ち上がった。

乾いた風を皮膚に感じながら、俺は天を仰いだ。
電脳情報によって作られた人工の空が広がっている。
スクリーンに映し出された鈍色の空に太陽はない。
いつもと代わり映えしない、曖昧で暗澹とした世界。


昨日も、一昨日も、そして何年も前から、
この第一塔と呼ばれる居住区域は同じ風景だった。
永遠に変わらぬ景色ほど、おぞましいものはない。
その居心地の悪さに吐き気を覚えながら、俺は刑具……銃を収めているホルダーに手をやった。

見慣れた区画を抜け、道を通り、目的地の血管通りへ向かう。
名前の通り血塗れたように赤い路面と、
壁に埋め込まれた水道管がびくびくと脈打つ様は何度見てもグロテスクという感想を覚えた。

「ミツルちゃん。遅かったね。寝坊?」
そんな情景に全く不似合いな穏やかな口調で、目の前の女、マナは話しかけてきた。
「違う。お前と一緒にするな」
「そっかあ。あんまり遅いから家まで迎えに行こうと思ってた所だったんだ、無事に来てくれてよかった」
「俺が来るの遅くても迎えにはくるなよ」
「え、でも、ミツルちゃん遅刻ばっかしてたらお給料減っちゃうよ」
「いいから来るな」
「恥ずかしがりやだなあミツルちゃんは。近所の目とか気にしてるの?」

それもある。
何しろ、こいつの外見はあらゆる意味で一目をひく。
片側だけやたら伸びた金髪に十字の髪飾り、……片方しかない翼。
本来ならば、第二世代には一対の翼があるはずだが、
本人曰く、生まれつきひとつしか翼しかないらしい。


「とにかく家には来るな」
「は~い」

俺の突っぱねるような物言いにも気分を害した様子はなくただ嬉しそうににこにこ笑っている。
こいつはいつもこんな調子だ。
物心ついた時から傍にいるせいか、小動物のように妙に懐いており、
何を言っても怒る気配がない。
きっと何処かのネジが抜けてしまっているんだろう。

――多少の哀れみを覚えつつ、俺は血管通りの瘡蓋扉を開いた。

湿った空気が、皮膚を撫でる。
微かに匂う、血と黴の匂い。赤茶けた砂と、高く伸びた岩の列がどこまでも広がっている。
地面に不規則に空いた穴からは蒸気が勢いよく立ち昇り、周囲に熱湯を撒き散らしていた。

血管通りに、瘡蓋扉。
名づけた奴は相当な皮肉屋だと思った。
此処は確かに血が流れ、臭い物に蓋をする場所だ。
第一塔から外界に繋がる、転送所、そして同時に
俺達のような能天使と呼ばれる人天使達が、あぶれ者共に鉄槌を下す処刑場。
果てしなく広がる、高原。


足を踏み入れると同時に何体かの奴らが蠢く気配を感じ、背中合わせに配置しているマナに呼びかけた。
銃を抜く。

「マナ。来るぞ。仕事だ」
「分かってる。大丈夫だよ、安心してミツルちゃん」

顔を見ていないので分からないが、恐らくマナは先ほどと同じ表情で笑っているのだろう。
平時のこいつの「大丈夫」はあまり当てにならないが、この時ほどマナが頼りに思えることはない。
三節混と呼ばれる旧時代の刑具を携えて、マナはじっと遠くをにらみつけた。
ずる……ずるっ。
何かをひきずる不気味な音が近づいてくる。
白く霞んだ霧の向こうにソイツはいた。

「う……ァ」

霧が晴れ、姿が露わになるとソイツは目とおぼしき器官をぐるりと回してこちらを捉えた。
かろうじて五肢の存在が判別出きる肉の塊、ぽっかりと顔に広がった空洞から、ばしゃばしゃと透明な液体を吐き出しながら蠕動する。
肥大化したイソギンチャクのような風貌。
食屍鬼――異形の姿を持つ、化物。

「ぐあぶぎゃあああああああ」

耳がはちきれそうな金切り声。
すぐさま銃弾をぶちこみたくなるのを押さえ、俺は聞いた。

「一応聴いておく。お前に意識はあるか」

食屍鬼は俺の台詞が終わる前に叫んだ。

「ぎゃえおぶぷはああぎゃあああ」

無駄か。だが上司に定められた規則だ。

「……お前に後二回、チャンスをやる。もし俺の問いかけに返事をするなら収容だけで済む。お前に理性はあるか」

「ギイイイイイいいぎああああァッ」

うるさい。奴の体液が飛んだ。後一回だ。

「お前に精神はあるか」
返事の代わりに奴は自らの手を伸ばし、俺に攻撃を仕掛けてきた。
そうか、それが返事の代わりか。


「ミツルちゃん、危ないっ」
奴の攻撃をマナが三節混で弾き、怯んだところに足蹴りをくらわせた。
触手と化した手を、マナへ伸ばす食屍鬼。
マナはそのまま奴の上半身に足を付き回避を兼ねて宙返る。

残念だったな。
三回もチャンスをやったのに、全部棒にふるなんて馬鹿な奴。
……もっとも賢かったなら、初めからこんな所には来なかっただろうけどな。

「来世ではもっと上手く生きろよ」
もっともお前に生まれ変わる余地があればの話だが。


俺は奴の頭部に標準を定め、引金を引いた。
魔弾が醜い姿をした化物を一直線に撃ち抜く。
白い光が走り、正常な意識も、理性も、そして精神すら失った化物を浄化した。

「任務ご苦労様でした。今日はもう家に帰って疲れを癒しなさい」

神殿に住まいを構える俺達能天使のリーダー、サマエルに任務の報告に行くと、疲れを労いそう告げられた。
今日は殲滅した敵が少なかったため、あまり疲れていなかったが、休めるのはありがたい。
黙って従う事にした。

「今日はレラジェ来てなかったね。別の仕事かなあ」

部屋から出てきたマナが不思議そうに首を傾げる。

「……だろうな」

レラジェというのは俺達の同僚の一人だ。
人天使、階級は能天使。趣味は弱いものを甚振る事と拷問で、
過激派か保守派かといえば間違いなく過激派であり、ぶっとんだその性格からはみ出し者の烙印を押されている。
天使なんて異名が丸っきり似合わない男。
どちらかというとその殺伐とした風貌と嗜好は悪魔と呼ぶに相応しい。
レラジェが仕事に姿を現さないのはいつものことだった。職務放棄、ではない。


奴はこの“食屍鬼狩り”と呼ばれる能天使の仕事が三度の飯より好きと豪語してはばからず、
暇な時間は用もないのにこの食屍鬼が現れる場所にふらりと現れては食屍鬼を狩っているらしかった。
そんな男が姿を見せないのはサマエルに別の職務を言いつけられているからに違いない。

神殿を出て、居住区域へ急ぐ。
第一塔――。

俺が居住する塔はそう呼ばれている。数ある塔の中でも主に
人天使と呼ばれる第二世代が住まう地下施設だ。
勿論、天使といっても神話や聖書に登場する天使とは違う。


天使というのは第二世代を呼ぶ名だが俺はこの呼び名があまり好きではなかった。
……大災厄と呼ばれる世界戦争を経て地球の殆どの地域は焦土と化し、多くの人々は死に絶え
核兵器が齎した汚染により地上は生物の住める場所ではなくなった。
戦争で生き残った数少ない人間達は、地上を棄てて地下にいくつかの施設を作り、そこで生活することを余儀なくされた。
しかし、戦禍が齎した被害は、地上の汚染に留まらず、人間の身体にも影響を及ぼした。
出産率の著しい低下。放射能に汚染された人間は生殖機能を失ってしまったのだった。


そうした事態に研究者達は旧時代まで禁断とされていた技術に手を染めた。

人工のクローン。
論理的な問題から、今まで人間のクローンを生み出すことは法律的に禁止されてきたが、
あまりにも低い出産率を危惧した独立政府によってこれが承認された。

そうして生み出されたのが俺達の世代、所謂第二世代だ。
何故第二世代が天使と呼ばれているのか。答えは簡単だった。
俺達第二世代には背中から生えた翼があるからだ。
何のために在るのか、詳しいことはよく分からないが、大きい小さいなど形は様々であれ
背中から一様に白い翼が生えている。
悪趣味な遺伝子科学者が造形したに違いないそれは第一世代、戦争の生き残りである人間と第二世代を見分ける差異でもあった。


考え事をして歩いていたせいか前から走ってきた小さな子供にぶつかってしまった。

「うわっ!!」

子供はよろけて前につんのめり、転倒しそうになった。
咄嗟に手を差し出し、体を支えると少年は一瞬何が起きたのか分からないといった様子でぽかんとこちらを見上げていたが、
しばらくして頬を緩ませた。少年の首から下がっている身分証――

階級の最下層である下級天使であることを現す三角のプレートが揺れていた。
少年の頬には真新しい傷があり、よく見ると体の露出した部分あちこちに怪我をしていた。


「お兄ちゃん、ありがとう」
「……別に」

何と返していいか分からず、横を向く。
少年は軽く会釈し、立ち去った。
少ししてから、先ほどの少年が走ってきた道の方から、同じ年頃くらいの騒がしい餓鬼共がずらずらとやってきた。

「ちっ、いねえよ。レンの野郎。……逃げ足だけは速い奴」
「下級(デベ)の負け犬だからな」
「俺達の顔見るだけで、とんずらしやがって」
「今度見かけたらタダじゃおかねえ」

こいつら、さっき来た奴を虐めでもしてたのか。
俺の視線に気付いたのか、餓鬼共はこちらを一瞥した。

「……行こうぜ」

餓鬼共が遠くへ離れていく。
……あの餓鬼共が、さっきの奴を虐めていたとしても俺には関係がないことだった。
そうだ、俺には無関係な出来事だ。
面倒な出来事に首を突っ込むのも、巻き込まれるのも、善人ぶって誰かを助けるのも御免だった。
そんなのは、何処かの英雄気取りのお人よしにやらせておけばいい。
早く帰ろう。俺は帰路を急いだ。


家に帰り、テレビをつける。
ニュースが流れ次々と情報を伝えてくる。

人口の減少――
独立政府は難民救済法を承認――
第七地区では汚染が拡大し侵入に制限が――

聞いたことのある情報群の中で一つだけ引っかかったトピックがあった。

第二塔では薬物が問題化――

地下施設は俺達が住む塔だけではなく、他にも旧世代の人間が住む第二塔から
立ち入ることを許されていない第三塔、犯罪者を収容する第四塔まで存在している。
第二塔は第一塔に比べ、貧困の差が激しい事や治安が悪いことが問題化していた。
塔毎に政府が存在しており、第一塔の政府と第二塔の政府は別物で、故に法律も塔が違えば驚くほど違ってくる。
例えば俺の住む第一塔は犯罪に厳しく、薬物の取り締まりも厳格だが、聞くところによると第二塔では
一部の薬物は合法ドラックと呼ばれ、一般人が容易く手に入れることが出来、摂取しても法に触れることはないという。

話題になっていたのは合法ドラッグの中のスターダスト、通称Sと呼ばれるドラッグで、
最近第二塔ではこのドラッグの過剰摂取で死亡する者や、自傷行為に走る若者が後を絶たないということだった。
議会では薬物の取り締まりの厳格化を議論するも、
幾つかの急進的な党の反発で、法案の成立には到っていないらしい。

モニターの中では、専門家が厳しい顔をして、スターダストの解説をしていた。


「このスターダストと呼ばれるドラッグにはいくつもの俗称があります。
例えば有名なところでいうとS、星、きらきら、なんかですね。
名称の幻想的な色合いとは打って変わって、スターダストが引き起こす症状は危険なもので……、激しい恐怖や、妄想、幻覚や多幸感
などを誘引するんですね。
他にも情緒を鈍らせて攻撃的にしたり、私は何でも出来るという万能感を与えたりします。

それで気分が大きくなってしまって、ビルから飛ぼうとして飛び降りたり、自分の体を痛めつけたりしてしまう。
スターダストに中毒性は薄いなんて噂もありますが、これは全くの出鱈目で。
薬が抜けた後でも副作用やフラッシュバックが継続したりなど
人体に多大なる悪影響を与えます。
興味本位で絶対薬物に手を出してはいけませんよ」

薬で幸福感を得ようなんて、馬鹿らしい。
そんなのは所詮、一時の儚い快楽に過ぎないだろうに。
ドラッグが自分の破滅と引き換えにするほど、素晴らしいモンだとは到底思えない。
バカだな。ジャンキーとかいう人種は。

テレビを消すと部屋に静寂が戻ってきた。
昼間の戦いで、疲れたのだろうか。俺は眠気を覚え、横になった。


「ミツルちゃん、おはよう」
……一瞬、何処に居るのか分からなかった。
マナがこちらを見下ろしている。朦朧とした頭がようやく事態を飲み込んだのは十数秒してからのことだった。

「お前、なんで俺の部屋にいるんだよ」
「ミツルちゃんが起きてこないから、心配になって来ちゃった。えへへ」
「えへへじゃない。
扉、ロックがかかってただろ。どうやって外し……」
「俺だよーん」

突然マナの背後から現れた金髪野郎に俺は殺意を覚えた。
犯人はこいつか。
「レラジェ……」

ぼろぼろに改造された能天使階級用の制服。
頬に入ったタトゥー。
一目見たら絶対に忘れないその風貌。
妙なビーズの飾りが付いた長髪を指で弄びながら、野郎はにたにたと卑猥と形容しても過言でない笑みを浮かべた。


「お前の部屋、つまんねーなァおい、
無機質つーか生活感皆無。
せめてホルマリンとか、拷問具とか、人体模型とか、そういうイカシタ家具を置くべきだよなあ」
「レラジェ、それ家具じゃないよ」
律儀に突っ込みを入れるマナ。
「あぁ? そーか? 俺の部屋には全部配置してあるぜ、ヒーハー」
「え~気味悪いよ」
「ンだとオ、んじゃあマナちゃんよお、お前の部屋には何が置いてあんだよ」
「えっとね、クマのぬいぐるみとひよこのぬいぐるみとうさぎのぬいぐるみと」
「ぶへへへっ!! 随分少女趣味なモン置いてんだなァ、ひゃはは。
クマちゃんにひよこちゃんでちゅかー糞ラブリーでちゅねー」
「むー……!!」

こいつら人の家でなんて騒がしいんだ。
俺はいい加減げんなりして立ち上がった。

「出て行け」
扉を指差すと、マナはシュンとした顔を浮かべた。

「……うん。寝てる間に勝手に入っちゃってごめんね」
「もう二度とするなよ」
「分かった」

玄関の扉にしょぼしょぼと歩いていくマナを眺めながら、レラジェは軽快に唇を吹く。

「お前の言うことならなんでも聞くんか。犬みてぇだなあ、おい」
「何他人事みたいな口聞いてるんだ。お前も出て行くんだよ、ホラ。
不法侵入罪で警備機能呼ぶぞ」
「エー。仕方ねえなあ、俺様もみっくんの言う事聞いて大人しく家を出るかねえ。
しょぼしょぼワンコと化してな。わんわん」

みっくん……おどけて犬の真似をする奴に再び殺意が湧きあがるが殴ってやろうかと思った頃には既にレラジェは扉を開けていた。


「毎日毎日激務だよナー」
だるそうに血管通りを歩きながら、レラジェは呟いた。

手にはいかにも凶悪そうな棘だらけの刑具が握られている。
会話内容とは裏腹に口調は愉快そうだった。

「ねえ、レラジェ、ソレ何?」
マナがレラジェの手にする刑具を指差して首を傾げた。
「ひゃは。教えてやるよ。これは聖エラスムスのベルトってんだ。美しいだろ」
「うーん……なんというか、名前は綺麗だけど痛そう。武器?」
「おうよ。旧時代中世の拷問具だぜ。これで敵の体躯を絞めるとあらゆる部位に棘が突き刺さってそれは悶え苦しみながら
傷が広がっていくんだぜい、動けば動くほどじわじわとなあ……」
「ええ、こっ、怖い」
「いいねえ。その恐怖に怯えた顔。イッペン試してミル?」
「やだ。絶対にやだ。死んでもヤダ」
「おや、つまんねーの。んじゃみっくんで試すかね」
「アホ。自分の首でも絞めてろ」
「エー。俺様ってば真性のSでMっ気はないから、そういうのは好かんのよ」


能天使の持つ武具は刑具と呼ばれるが、本物の刑具を所持しているのはこいつくらいのものだろう。

何しろレプリカではなくわざわざ当時使われていたものをオークションで高値で落札していることからも熱の入れようが伺える。
旧時代の産物は総じてプレミアが付いており、生活用品や廃棄物すらとんでもない値段になることがある。
拷問具なんて歴史的価値が付加されそうな代物にどれほどの値段がつくのか想像も出来なかった。
くだらない会話をしている内に高原に辿りついた。


「おっとお、早速、おでましのようだぜ、団体さん」

霧に揺らめく複数の影。
俺達を出迎えるように現れた食屍鬼は浮遊しながらじわじわと距離を詰めてきた。
食屍鬼の姿が視界に入る。
肉塊のような肥えた丸い巨体からは枝を思わせる手足らしきものが醜く垂れ下がっている。
脂肪で膨れ上がった顔には確認出切るだけでも八つの眼球があり、ぎょろぎょろと左右に動いている。

悪夢を体現したような畸形の、怪物。俺達が狩るべき存在、食屍鬼。
一日ぶりの狩りに興奮したのか、レラジェは咆哮をあげながら、敵に向かって突進していく。


「ひーはーッ!!」

腰に下げた短い鎌を振り上げ、獲物を屠る。
レラジェが鎌を食屍鬼の体躯に食い込ませるたび、奴の体内から溢れてきた赤い体液がぶしゅぶしゅとあたりに散らばった。
「ひゃっ、いいねぇ、温かいぜ、もっと出せよほら!! ひゃはは!!」

こうなってはもう止めようがない。
喜びを全身で表すようにレラジェは飛び跳ね動きまくり、食鬼屍を仕留めていく。
俺とマナは少し下がり、レラジェのサポートと仕留めそこなった敵の始末に回った。
「死ね!! 死ねえええ!!」


投下終わり。続きます。




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