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宇宙世紀〇〇八九年もあと一週間で終わろうとしていた。 街はクリスマスカラーに彩られ、ビルにイルミネーションが灯り、いくつかのコロニー では雪を降らせて雰囲気を盛り上げていた。 ほとんどのコロニーが季節を地球圏の北半球大西洋エリア、即ち西ヨーロッパと北米東 海岸の気候に合わせて制御されている。これは人類が今尚この地域を文化の中心と考える 風潮が残っている事を示している。出身地による差別も依然として残り、平等や公正は欠 片も実践されていない事を、多くの人間が知っていた。 サイド3、かつてジオニズムの聖地ともされ、公国から共和国に名を変えた今もジオン を冠するこのコロニーでもそれは例外ではない。雪こそ降ってはいないが、冬らしいその 気温の中、人々はクリスマスの空気に浮かれていた。 そんな中でも、普段と全く変わらず業務を遂行する人々もいる。地球連邦軍ジオン共和 国駐留軍指令本部はその一つであり、MS部隊隊長ユウ・カジマ中佐はその中の一人である。 「…………」 書類に目を通したままコーヒーが入っているはずのカップに手を伸ばす。デスクの一角 を手が探っていると、淹れたてのコーヒーの注がれたカップが指の触れる位置に置かれた。 ユウは気づく事なくコーヒーを口に運び、一口すすってデスクに戻した。 やがて目を通し終わると、書類にサインし、『決済済』と札の付いたトレイに入れる。 そこでようやく、彼は書類以外のものに視線を向けた。 「シェルー少尉、いつからそこに?」 「三十分ほど前からですわ、中佐」 サンドリーヌ・シェルー少尉はにこやかに事実を告げた。広報部の女性士官である彼女 はMS部隊の執務室に常駐するべき用事はないのだが、慢性的な人員不足の余波を受け、基 地全体のスケジュール管理を行う広報部がそのまま幹部の秘書官を兼務しているのだった。 非戦時には作戦立案能力など問われないのでこれで十分ではある。 「すまない。この後の予定は?」 「本日はこれ以降の職務はありません。それをお伝えしに参りましたの」 「そうか。ありがとう」 「今日はもうお帰りになられては。せっかくのクリスマスですし、奥様とお過ごしになら れてもよろしいかと存じます」 シェルーの提案を聞くまでもなく、クリスマスのディナーは予約している。ただし、今 からでは少々早すぎるようだ。 「まだ帰るには早いようだが」 「家でゆっくりと語ってはいかがですか?僭越ながら、中佐はもう少しご自宅でお過ごし になる時間を長く取られルべきでは考えます。何と言っても今はようやくに訪れた平和な 時なのですから」 広報部少尉は屈託なくそう言った。まだ士官学校を卒業したばかりで、実務能力につい てはまだ未熟だが、気配りのできる繊細な神経をユウは評価していた。 「そうだな。たまには早く帰ってみるか。家内に邪魔者扱いされるかもしれないが」 彼には珍しい冗談に、シェルーが声を立てて笑う。 「その時は何かお手伝いをして、ご家庭でも軍同様有益な人物である事を証明なさればい いのですよ」 「努力してみよう」 席を立ち上がったユウは、ふと思いついた疑問を口にした。 「少尉、君はいいのか?クリスマスをオフィスで過ごすつもりか?」 「後心配なく。彼と勤務シフトは合わせてありますので」 「……そうか。それではメリー・クリスマス」 「メリー・クリスマス、中佐」 ユウはオフィスを後にした。 ユウ・カジマ中佐は一年戦争からの歴戦のMSパイロットであり、現役では数少ないト ップエースである。しかし、その軍人としてのキャリアはいささか数奇なものとなってい る。 宇宙世紀〇〇五六年生まれ。十八歳で士官学校に入学したユウは、飛び級により一年早 く〇〇七七年に卒業、一年間の基地勤務の後、戦術兵器開発局に転属された。ここでユウ は次世代の宙陸両用兵器の開発に携わる事になる。後にV作戦の落とし子とされるセイバ ーフィッシュやTINコッド等は、ここでの基礎研究が転用されたものである。 ルウム戦役の大敗後、連邦軍は人型戦術兵器――MSの開発に着手、既に鹵獲したMS -06ザクのデータをフィードバックさせ、一つの完成形、RX-78ガンダムとして結 実させた。 連邦軍はこの機体の量産化モデルを開発、RGM-79ジムと命名された機体はガンダ ムとは別に量産機としての運用データが求められ、そのテストパイロットとしてユウは選 出された。 これが彼の運命を大きく変える事になる。 北米での運用テスト中、彼は全身を蒼く塗装したMSと交戦する。RX-79BD-1 と呼ばれるそのMSは、連邦軍の極秘プロジェクトであった。通常のジムでBD-1と互 角の戦いを見せたユウは、口封じの意味も含め、BD-1テストパイロットに任命される。 部分的にはRX-78すら上回る機体を得て、ユウのパイロットとしての才能は完全に開 花、爆発的に撃墜数を伸ばし、中尉に昇進するまでになった。その後、ソロモン宙域でB Dは大破、計画の存在自体が公式記録から抹消されるとユウは撃墜記録そのものを失って 少尉に降格、その五時間後に「ジムの量産化におけるテストパイロットとしての貢献度を 鑑みて」再び中尉に復位する。 ア・バオア・クー攻略戦には胴と肩を蒼く塗ったジムコマンドで出撃。ここで彼は戦闘 終了までに二十三機のMSと、チベ級重巡洋艦二隻、ムサイ級軽巡洋艦一隻を撃墜、「戦 慄の蒼」「蒼い死神」の異称で呼ばれる事になる。 戦後大尉に昇進、軍は彼を「NTではないが、NTに極めて近い存在」として危険視し、 MS開発局のテストパイロットとして前線参加を禁じた。RMS-106ハイザックや、 RMS-117Bガルバルディβ等、ジオン系MSの技術解析や転用を多く手掛けた。 アースノイドでありながら超人的なMS技術と反応速度を有する事から、オークランド 研究所でニュータイプ機の研究をしていた時期もある。 その後、グリプス戦役でティターンズが連邦との対決姿勢を表面化させると、エウーゴ でもカラバでもない連邦軍人として、専用のチューンを施したハイザックで参加、セダン の門攻防戦で功を立てる。ネオジオン抗争終結後の軍再編の中で中佐となり、今はここ、 ジオン共和国駐留軍で一三〇機のMSを指揮する立場にある。この地で連邦の軍服を着る 事はそれだけで危険を伴うが、民衆と友好的な関係を築こうと望む司令官のギィ・ルロワ 提督や、広報部の活動が実を結び、それなりに安定した関係を築いていた。 エレカを自ら運転し、官舎に戻るったユウは、ドアホンのベルを鳴らした。 「――はい?」 スピーカーから声が聞こえる。ユウはドアに埋め込まれたカメラに自分の顔を向けた。 「ユウだ」 ドアのロックが外れる。ユウはドアを開け、中に入った。 玄関に出迎えたのは、青い髪と赤い瞳を持つ、若い女性だった。 「ユウ、早いじゃない」 「ただいま、マリー」 ユウは出迎えた女性に軽いキスをすると、外套(コート)を預けた。 「どうしたの?こんなに早いなんて」 「今日はもう用済みだからとっとと失せろ、とさ」 「シェルー少尉?」 「ああ」 いつの間にあの新任士官と妻が知己となったのか、ユウには心当たりがない。 「お茶でもどう?ケーキもあるわよ」 「もらおう」 自室に入り、服を着替えてリビングに入ると、マリーが紅茶とケーキを並べていた。 ケーキはイチゴをたっぷりと使い、砂糖菓子の人形が乗っていた。 (クリスマスケーキか……) 食事は店を予約してある。その前に家に戻る予定でない事はマリーも承知していた。そ れでもかすかな期待を込めて、ケーキを用意しておいたのだろうか。 「……少尉に礼を言わないとな」 「え、何?」 「いや」 ユウは曖昧にごまかした。今は基地での話などせず、妻との時間を楽しもう。そう思っ たのだ。 しかし、彼の願いは適わなかった。携帯端末(モバイル)が基地からの連絡を知らせて きた。 「…………カジマだ」 マリーはキッチンに消えている。軍の話を聞かないようにとの配慮だ。 「シェルーです。お寛ぎの所申し訳ございません」 「いや、いい。何かあったのか?」 「六八艦隊のジャック・ベアード少佐から中佐宛に連絡が入っています。退席したとお伝 えしましたが、せめて話だけでもと仰せられて……お繋ぎしてよろしいでしょうか?」 ジャック・ベアードか。ユウ同様、一年戦争以来の前線叩き上げの指揮官で、グリプス 戦役ではエウーゴに属していた男だ。元はMSパイロットだが、今は佐官として分艦隊の 指揮をを任されていたはずだ。 「繋いでくれ……いや、これじゃなく、家の回線に回してくれるか」 ユウはリビングのモニターを自分に向け、映像を待った。程なく、彼と同年代の、制服 姿の男が映し出された。 「久しぶりだな、ベアード少佐」 「お久しぶりです、カジマ中佐」 二人は簡単な挨拶を交わした。それほど親しい関係ではないが、面識はある。 「お休みの所申し訳ありません。ですが、お耳に入れて頂きたい噂がありまして」 「休みは気にしないでいい。噂とは?」 「はい、新年の記念式典についての事なのですが」 「一月一日か」 〇〇九〇年一月一日は一年戦争終戦十周年の節目となる。大々的な記念式典が各地で開 かれ、ここ、ジオン共和国も例外ではない。 「それが、何か?」 「実は、ジオン残党が式典を狙って何か企んでいるようなのです」 「企む?」 ユウは眉をひそめた。ジオン残党のテロリズムなど目新しい噂ではなく、式典を狙うテ ロの情報などこの一週間で手足の指では足りないほどの報告が届いている。わざわざルナ Ⅱ艦隊の士官が連絡をしてくるとも思えない。 「もちろん、そのような噂は既に食傷気味なほどに届いていることでしょう」 ユウの心の内を察したか、ジャックは先回りをした。 「ですが、ここにまだ内偵中の極秘事項が加わると、気にしないわけにもいかなくなりま す」 「…………」 「木星船団の運ぶヘリウムですが、これの搬出記録が改竄されているとの情報があるので す」 ユウの表情が厳しくなった。ミノフスキー・イヨネスコ式熱核反応炉は、大出力エネル ギー炉の小型化に革命的貢献をし、いまや軍用のみならず、一部コロニーのエネルギー源 としてなくてはならないものとなっている。旧来の熱核反応炉も数多く稼動しており、そ のいずれもがヘリウムを反応に使用しており、木星船団はそのヘリウムの最大の供給源で あった。そのヘリウムの搬出記録が改竄されているという事は、ヘリウムの横領が行われ ている事を意味する。そんなものがジオン残党の手に渡っていれば、何らかの大出力兵器 の稼動が可能になるということである。 「しかし、なぜそんな重大な事を隠しているんだ。疑惑とは言え、公開で捜査するべき話 だろう」 「木星は政治力で見れば、独立国家レベルですからね。事は慎重を要するのですよ」 ジャックは苦笑していた。が、すぐに表情を引き締めた。 「しかし、諸々の条件を考え合わせれば、看過できる問題ではありません。特に中佐のい るサイド3は警戒しすぎるという事はないと思われます」 「……そうだな、気をつけておこう」 ユウはそう答え、暫く考えてから 「しかし、なぜ俺に?ルロワ提督に話すべきではないのか?」 更に言うなら、六八艦隊の司令官は何をしているのか。 「……ルロワ提督は、温厚でジオン共和国の反連邦感情を緩和させるには適任だと思いま す。ですが、非常に当たって同じく適任であるかは判断しかねます」 婉曲な表現だが、要はルロワでは頼りないと言う事である。連邦から密かにエウーゴに 参加した硬骨の士は、ユウとは別の正義感で動けるのだろう。 「とにかく、情報感謝する。警戒レベルを上げておこう」 「よろしくお願いします、中佐」 二人の古参兵は、互いに敬礼をして別れを告げた。 翌日、ユウは本部に入る前にMSドックに立ち寄った。 朝から多数の整備クルーが立ち働いていた。ユウがその中を歩いていると、見知った女 性士官が彼に声をかけてきた。 「ユウ、どうしたの?珍しいじゃない」 「ジャッキー、もういたのか」 「誰かさんのおかげでこんな人手不足の基地に配属されたもので。休む暇もありません」 そう言って屈託のない笑いをユウに向けた。 ジャクリーン・ファン・バイク少尉。連邦軍のMS整備の専門家であり、ジオン共和国 駐留軍では隊の整備主任を務めている。まだ二十代後半の若さだが、一年戦争時既に軍に 在籍し、現場叩上げでこの階級まで上がった人物で、ユウが着任にあたり唯一人事面で希 望を出した人物でもある。 「で、御用は?まさか私を朝食に誘いに来たわけじゃないでしょ」 「久しぶりに俺のMSのフィッティングをしておこうと思ってな。今のうちに完全に調整 しておきたい」 その言い回しにジャクリーンが眉根を寄せる。 「出動がありそうなの?」 ユウは表情を変えずに否定した。 「いや、そういうわけじゃない。ただ、受領して三か月になろうとするのに、まだ調整も 終わってないというのはアナハイムに報告しにくくてな」 「放っておけばいいのよ、そんなの。前線の高級指揮官にテストパイロットを依頼する方 が悪いんだから」 「以前ならそう言って上層部(うえ)から叱られるのは俺の上官だったんだが、今は俺が 叱られる立場になった」 ジャクリーンが噴出した。 「OK。私が手伝ってあげるわ。着いてきて」 二人はドックの奥にある特別ベッドに向かって歩きだした。 「機体の整備は?」 「いつでも乗れるように万全よ。後はあなたの感覚に合わせてレスポンスやリアクション を微調整するだけ」 「わかった」 「あと、あなた向けに少し外観をいじってあるわ。気に入ってくれるといいけど」 「おいおい」 「大丈夫よ、変えたのは色だけだから。ほら」 ジャクリーンが機体を指差した。 機体はネオ・ジオン製MS・AMX-107バウをベースとし、追加武装などを兼ねた 大型バックパックに換装した再設計機だった。機体番号もRAZ-107アーツェットと 変更している。 エウーゴとAEによるΖ計画のプランの一つであった設計図がアクシズに持ち出され、 アクシズで完成したMSがバウである。戦後アクシズ内や地上で鹵獲されたバウを分析し たAEは、本機がΖ計画の要求性能をほぼ満たした上で更に量産すら成功させている事に ショックを受け、これをベースとした高性能機の研究を開始した。下半身をほぼ新設計し、 背部にはGディフェンサーを再設計したジェネレータ内蔵型大型バックパックを搭載して、 新たな機体番号を与えられたのである。もっとも、この詳しい内情は現場には伝わってい ない。 ユウは眉を上げた。受領したとき、機体は淡いグリーンに塗装されていたが、今目の前 にある機体は頭部も手足もブルーに塗られていた。両肩には「B」「D」、スカートアー マーには「04」と白字で書かれている。 「どう?」 ジャクリーンは悪戯っぽく訊いてきた。 「……怒られても知らんぞ」 「大丈夫よ、このくらい。もう整備班の間ではBD-4で通ってるわ」 ユウはカラーについてはこれ以上の追求をせず、 「整備性はどうなんだ」 「まあ、元がネオジオン製だからいいとは言えないわね。もっともベース機のパーツは 40%以下だって話だし、噂じゃ元はアナハイムの設計が盗まれたなんて話も聞くし、思っ た程じゃないわよ」 「そうか」 「私としては整備性より操縦性の方が不安よ。加速は凄いけど旋回性能は皆無に近いもの。 もし実戦があるとして、これで戦える?」 「まだ何度かしか飛ばしていないが、何とかなるだろう。というより、これで戦わざるを 得ない。そのためにも最終的な調整を済ませておきたいんだ」 ユウはそう言ってフィッティングに入った。 RAZ-107(或いはBD-4)のコクピットはごく一般的なレイアウトである。最 新式のアームレイカーに換装されているかとも思ったが、特別なカスタマイズもなく、ベ ース機体の仕様そのままであった。ユウはこれでいいと思っている。大型スラスターの加 速性能は一種暴力的であり、アームレイカーよりしっかりと握れるレバー式の操縦系統の ほうが安心感があった。一つには、年齢と共に考えが保守的になっているのかもしれない。 これからこのコクピットを自分に馴染ませなければならない。自分が機体の癖に慣れる のではなく、機体を自分の癖に合わせる。シートとレバー、ペダルの位置の微調整はもち ろん、操作のレスポンス、中立部分の遊びの設定、外部からの入力に対するキックバック のインフォメーション等、様々な条件を自分に合わせてフィットさせていく。連邦軍屈指 のエースパイロット、ユウ・カジマの能力をフルに引き出すためのコクピットを作るため の工程であった。 「ユウ、始めるわよ」 ジャクリーンが呼びかける。ユウは無言で親指を上げる。 フィッティングはドック内のコンピュータと直結し、シミュレーション戦闘を行いなが ら調整していく。実際に宙域を飛行しながらデータを蓄積しつつ修正していく事もするが、 リアルタイムで微調整しながら最適なレスポンスを探るには、常にメカニックがモニター 出来る環境が必要であった。ミノフスキー粒子の影響下では、空間航行中のMSの全デー タをリアルタイムでチェックする事は困難であった。 機体をプログラムで指定された操作を行い、機体のレスポンス、キックバックの強さ等を 確認する。 「右からの入力をマイナス2、左のペダルの遊びをプラス1……」 ユウが調整を要求する。ジャッキーはそれに応じてコンソールを操作する。通常ならモ ニターとコンソール操作を二人一組で行うところ、彼女は一人で行っていた。年齢は若く とも、ノンキャリアでありながら二十代で中尉にまで登った天才であり、ユウが最優先で スカウトしたメカニックである。 テストは模擬戦闘に移っていた。全周囲モニターに投影されるCGを相手に戦闘を行い、 姿勢変化に対する入出力を確認していく。 「ユウ、被弾してみて」 「被弾?無茶言うな」 パイロットとしての本能に反する行動である。 「被弾したときの挙動に対するデータが足りないの。あなたったらほとんどの攻撃をかわ しちゃうから」 「…………仕方ない」 ユウは仮想敵機の攻撃を意図的にシールドで受けた。衝撃を模した振動がシートやレバ ーに伝わる。 「OK、ユウ。それじゃ、最後は全力で戦ってみて」 その言葉を待っていた。ユウは標準兵装であるビームライフルを構えると、最大加速で 移動しつつ三連斉射を行い、それだけで二機を撃墜した。脚部スラスターを使って強引に 方向を転換しさらに一機。背後からの攻撃を予測してかわすとこれを迎撃。三十五秒間で 四機のマラサイが撃墜された。 ジャクリーンが思わず口笛を吹く。 「現実にGがかかってるわけじゃないとはいえ、大したものね。さすがは『戦慄の蒼』」 「これで完了か?」 「これ以上は実際の戦闘データでもない限り無理ね。でも、テスト運用になら十分以上に 機体性能を引き出せるはずよ」 ジャクリーンは保証した。だが彼女はなんとなく気が付いていた。ユウが近い将来の実 戦を予測している事を。
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