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ガンダム総合スレ「蒼の残光4」

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「……まずは一匹」  アラン・コンラッドはコクピット内で呟いた。声に高揚感はなく、冷静に事実のみを言 葉として発したものだった。 『敵艦隊よりMS、出撃します』  僚機からの通信が入る。アランもモニターで視認した。 「よし、こちらも展開する!」 『僕が相手しようか?』  別の声が回線越しに伝わる。 「いや、オリバーはまだだ。お前には敵の援軍を片付けてもらう」 『わかった。待機しておくよ』 「貴様ら油断はするな。戦歴なら腑抜け揃いの連邦でもそこそこ骨のある連中だぞ!」  アランのドーベンウルフが先頭を切って突撃する。決して高機動なMSではないのに、 その動きは素早かった。  襲撃者の戦力は総勢わずか十四機に過ぎない。ドライセンが五機、ガ・ゾウムが七機、 それにアラン・コンラッドのドーベンウルフとオリバー・メッツのゲーマルクだ。  待機を命じられたオリバー・メッツはゲーマルクのコクピットからその様子を眺めていた。  否、感じていた、と言うべきか。色の濃いバイザーの奥の彼の両目は閉じられたままだ った。  このゲーマルクは盲目ながら高いNTである彼に合わせ、メインカメラからの画像デー タをサイコミュデータに変換して脳に送信する特殊なOSが搭載されている。全天周型モ ニターの全画像データを全て変換するにはインターフェースの転送レートの限界を超える ため、オリバーの頭を向けた方向の視界のみを送信するようになっていた。  危なくなったら援護をするするつもりでいたが、アランら同胞達の戦いは熟練だった。 特にアランはドーベンウルフを巧みに操り、単機で複数の敵機を撃破していた。 「ここまでは順調だな」  オリバーは頷いた。後は援軍の規模か。出来るだけ敵の主力をこちらに引き付けなけれ ばならない。いきなり巡洋艦を一撃で落としたのも相手に主力を投入させる決断を迫るた めのものだ。  アランのドーベンウルフはこの一戦でエースの資格を獲得していた。ビームライフルと ハンドビームを駆使して連邦のジムⅢを確実に仕留めていく。インコムすらまだ見せては いない。  何と言っても数の上では圧倒的劣勢である。「虎の子」のドーベンウルフ、ゲーマルク を最大限に使い、僚機の消耗も防がねばならない。戦いはこれで終わりではなく、手の内 を見せるのも最小限に抑える必要がある。 「全く注文の多い作戦だ」  それでもやらねばならない。アランにはやってのける自信があった。  ジムⅢが小隊を組んでアランに向かってきた。二機が前方上下から攻撃し、一機が後方 から狙う。一年戦争以来数に勝る連邦軍が採用してきた教科書通りの戦い方だ。 「対処方法も研究されてるんだよ」  推力を全開にして真横に移動、相手が座標を合わせ直したところで今度は逆方向に加速、 回頭の遅れた一機を確実に仕留める。そのまま円を描くように飛行して挟まれないよう位 置を取りながら二機を撃墜した。 「ふうー」  アランは息を吐いた。僚機の損失はゼロ。ここまでは上出来だ。  オリバーの緊張した声が聞こえたのはその時だった。 『アラン、気をつけて。恐ろしく速いのが一機近づいてくる』  戦闘宙域が迫った所で、ユウはシュツルムブースターを切り離した。Gチェイサーモー ドのまま飛行する。 「敵機確認。十四機か」  予想外に少ない。仮にも一個艦隊に攻撃を仕掛けるなら、陽動にしてももう少し戦力を 投入してくると思っていた。  映像からデータベースでMSの種類を特定できるか検索をかける。データベースと言っ てもMSのコンピュータに保存された情報のみだが、よほど極端なカスタム機か、全くの 新設計機でもない限りは引っかかるはずだ。 「ガ・ゾウムが七、ドライセン五……ドーベンウルフにゲーマルク?」  ユウは目を疑った。ネオジオン製のMSの中でも最後期の設計で、どちらも最後のグレ ミーの反乱以外に運用記録がなく、出撃した全機が帰還することなく全滅したため、戦闘 データはほとんど残されていない。しかも大部分が内乱によって失われたため、連邦軍の データとしても非常に乏しく、カタログスペック以上の実力は全くの未知に等しい。  しかし、いずれにせよ敵の中にゲーマルクを動かせるNTと、ドーベンウルフを預けら れるほどのエースがいると考えなければならない。 「まずは数を減らす」  一瞬でユウは方針を立てた。只でさえ厄介すぎる敵を前に、更に十二機も敵がいてはさ すがに勝負にならない。  Gチェイサー形態のまま最も近い位置にいるドライセンに接近、敵が照準を合わせるよ りも速くバックパックに積載された長砲身ビームの一撃で破壊。同時に半格納されていた 下半身を射出、下半身は飛行形態――AEではフライングVと名付けられた――に移行し 旋回。ガ・ゾウムが一機Gチェイサーに対しビームを撃ってきたがこれはスピードを捉え られず、命中せず。ユウはGチェイサーを操り、戦いを挑んできたガ・ゾウムの背後を取 ろうと緩やかなカーブを描きつつ旋回。敵がユウを追って機体を反転させた瞬間、フライ ングVのビームガンで背後から撃ち抜かれた。 「……」  ユウは声には出さず会心の笑みを浮かべる。サイコミュなしのレーザー誘導では複雑な 動きは出来ないが、使い方次第ではビット的な扱いが出来そうだ。  ユウを手練れと認めた敵は三機で囲い込もうと動く。ユウは速力で囲みを突破すると、 フライングVと合流、MS形態に変形した。 「試してみるか」  ユウはバックパックの長砲身ビーム砲を引き抜き、片手で構えた。MSと同じほどの全 長を持つビームライフルが狙いをつける。 「気をつけろ!うかつに仕掛けるな!」  アランが警告を発する。言われるまでもなく三機は分散して包囲体勢をとった。先刻ル ロワ艦隊のMSがアラン相手にとった同じ戦法である。  それに対するユウの対処もほぼ同じであった。ただし、ドーベンウルフとBD-4では 決定的に加速性能が違う。最初のダッシュで包囲していたはずの三機を置き去りにし、そ の全てを自分の前方に捉えた。  彼らはここでミスをした。何度でも包囲をやり直すべきだった。そうせず、三機は一斉 に間合いを詰めに行った。  一機落とされる間に残りの二機が仇を討ってくれるとの計算があったのだろう。その覚 悟は立派であったが、相手がバウではなく、そのカスタム機である事を考慮すべきであっ た。  ユウはトリガーを引いた。BD-4の抱えるビームライフルからメガ粒子が放出される。 それは一条ではなく、十二条の光の矢となって、三機全てに降り注いだ。 「何だと!?」  アランが絶句した。一本の銃身からビームが散弾のように分散して撃ち出されたのであ る。三機のMSは中破し、爆発はしないものの作戦続行不可能は見て明らかだった。  これがAEが試作した新型対MS兵器、ビームライオットガンだった。コクピットから の切り替えでスラッグ(単粒)、バック(十二粒)、バード(二十五粒)、スネーク(四 十粒)に撃ち分けられる。分散率が上がるほど一発の威力は低下するが、スラッグショッ トの攻撃力は一〇・八メガワット。Zのハイパーメガランチャー以上の破壊力を誇る。整 備能力や補給能力に致命的な欠点を持つジオン残党にとって、MSを完全に破壊せずとも 行動不能にするだけで戦力を削ぎ落とす事が可能であり、無益にパイロットを殺害する事 もないという「人道的見地」から開発された、との触れ込みだった。まだ巨大すぎるため、 試験的にBD-4の武装として採用されたのである。 「まんざら使えない武器ではないようだ」  ユウの感想だった。 「たった四十秒で五機が落ちただと……」  アランの背筋に冷たいものが流れた。彼がこの任務に同行させた兵は決して凡庸ではな い。少数で一個艦隊と増援部隊を相手にするのに足手まといは連れて来られない。全員が アラン自ら選抜し、その実力を信任したパイロットだった。それをこのただ一機の援軍は 戦闘宙域に到達して四十秒で五人、行動不能に陥れたのである。  目前の蒼いバウが尋常ならざるカスタムを施されている事は間違いない。その巨大なビ ームライフルが彼の知らぬ新兵器である事も認めよう。だがそれを差し引いてなお、その 戦闘能力は異常だった。 「これが……『戦慄の蒼』」  改めてその異名の意味を知った。この一見して扱いづらい機体を自在に操る操縦技術、 迷いなく一番近くにいた敵を叩いた老獪さ、共にエースと呼ばれる中でもトップクラスの ものだ。対峙した者に敗北を覚悟させるほどの威圧感を放つパイロットなど、他に何人い るだろうか。  そう思った瞬間、一条のビームが奔った。連邦の蒼いMSはそれを紙一重でかわす。 「オリバー!?」 『アラン、援軍は僕が相手するんだったね。出るよ』  ゲーマルクがアランのドーベンウルフの脇を追い抜いた。既にマザーファンネルを射出 し、臨戦態勢をとっている。 「オリバー、油断するな!奴は噂以上の腕だぞ」  アランが警告する。オリバーは聞こえたのか否か、既に返答はない。アランは舌打ちし、 残る同胞に指示を出した。 「後から来た蒼い奴には構うな!艦隊攻撃に集中!」  オリバーは既に眼前の蒼い敵以外彼の意識に入っていない。 「BD-04だと?まだマリオンの亡霊を引きずるか、ユウ・カジマ!」  アラン・コンラッドの警告を聞くまでもなく、そのパイロットとしての技量は今の一連 の動きで把握した。パイロットとしての資質に恵まれ、連邦のパイロットには珍しく多対 一の戦闘にも慣れている。しかし、やはり情報通り、NTではなかった。 「ファンネルを相手にした事はまだないだろう?冥土の土産話に喰らっておけ」  マザーファンネルからチルドファンネルが展開した。  ユウは相手の出足が止まった一瞬の間にルロワとの回線を開いた。 「提督、ご無事ですか?」 「カジマ中佐か、私は無事だ。だが、『ラビッツフット』が沈んだ」 「それは司令部で確認しました。現在の損害は?」 「艦艇(ふね)で大破したのはそれだけだ。搭載MSは全損、その後の戦闘でさらにMS が十二機大破。『ラビッツフット』乗員の生存は今のところゼロだ」  ユウもルロワも、会話に一切の感傷は交えなかった。戦闘中の感傷など自殺の権利を買 うに等しい事を一年戦争以来幾多の戦乱を生き抜いた二人は知っていた。 「カジマ中佐、貴官にMS隊指揮権を移譲する」 「了解、ユウ・カジマ、艦隊MS指揮権を受領。マーティン!」 『はっ』 「まず小隊編成を完全に保っている部隊は各艦艇の護衛に回せ。欠員の出ている隊は貴官 が糾合し、迎撃行動を開始」 『了解しました。欠員なき小隊は艦の護衛、欠員ある隊は小官と共に迎撃行動を行います』  マーティン中尉が答えた瞬間だった。ユウに向けてメガ粒子の奔流が押し寄せた。ユウ は間一髪、その射線から逃れた。 「ゲーマルクか……!」  そのゲーマルクは往年の「ドム」を思わせる黒と紫に塗装されていた。宇宙での有視界 戦闘において極めて視認しにくい配色である。 「来るのか」  後年、一年戦争史を愛する歴史研究者や一部のマニアの間では 「シミュレーターでアムロ・レイを破った」  との不確かな噂と共に語られる事の多いユウだが、真偽はともかく、実戦の場で明らか なNTとの戦闘経験はこれまで一度もなかった。目の前の敵は、生涯初のNTの敵である。  それでもEXAMを相手に戦い、自身もEXAMを使用した経験から、NTの強さの本 質について彼なりの回答を見つけていた。 (NTは戦闘において常に最善手を打ってくる)  一定以上の実力者同士の戦闘では、射撃や操縦技術では優劣がつかなくなり、互いの動 きの読み合いが重要な要素を占めてくる。限られた弾数や推進剤、一機のみを相手にして いられない戦況の中、いかに短時間に相手に攻撃を当てるか、言い換えれば相手に回避不 能な状況を作り出せるかが勝敗を分ける。命懸けの詰め将棋を行っているに等しい。  NTはこの詰め将棋を最短手順で、しかも直感的に正解に辿り着く。それに対抗するに はこちらも相手の攻撃の先を読みきって最善手を打たなければならない。少しでも読み誤 ったり、操縦をミスすれば即座に死に直結する。しかし、敵の意図を感覚的に察知し、し かも同時に複数の敵味方の位置を正確に把握する空間認識力を有するNTを相手にそれを 行う事は至難であり、それが戦場におけるNTの最強論に繋がっている。  ユウはゲーマルクに関するデータを呼び出し素早く目を通した。全身に武装。ジェネレ ータ出力は高いがビーム兵装に多くを割かれ運動性は高くない。ファンネルは二十八基。 ファンネルコンテナ自体をサイコミュで遠隔操作するマザーファンネルにより、理論上は キュベレイ以上の広範囲をカバーする。  OTのユウにとって経験こそが敵の意図を読む材料となる。NTと言えどもMSでMS を破壊する事が目的である以上、攻撃パターンが大きく変わる事はないはずだ。  しかし、ユウにはファンネルを相手にした経験がない。小型無線式攻撃端末を駆使して の全方位攻撃。それは未知の領分だった。 「やるしかない」  ユウは意識を集中し、全天周モニターを見回して確認した。ファンネルで攻撃するなら ば、最初に狙ってくる方向は……。  ユウはスラスターを全開し、斜め前方に飛び出す。ユウが〇・〇一秒前までいた場所に 下方と後方からビームが奔った。  脚を前方に振り出し、脚部のスラスターで強引に減速、BD-4の鼻先を光の柱が十文 字に掠めた。  ユウはビームライオットガンを構えた。しかし次の瞬間射撃体勢を解き、真上に向けて 最大加速、ファンネルの砲火から逃れた。 「…………!」  ユウは音には乗せずに舌打ちした。Gで身体中の骨が砕けそうだ。  サイコミュと言えど全能ではない。ファンネルの追尾能力を超える機動力で動けば躱わ す事も可能だ。しかしそう長くは通じないだろう。ファンネルは二十八基あるのだ。 「反撃も出来ないとは……!」  ユウは唇が乾く感覚を覚えた。こんな事は十年ぶりだ。 「やるしかあるまい」  レバーを握る手に力を込めた。  一方、オリバー・メッツも声に出して苛立ちを口にしていた。 「何故だ、何故当たらない」  ユウとは対照的にオリバーには実戦経験はない。経験の不足をNTとしての能力でカバ ーする事になる。模擬戦闘ではほとんど無敵であり、アランですら彼のオールレンジ攻撃 を三度躱わす事はなかった。ユウは既に三度、彼の死角からの攻撃を躱わしている。 「僕がまだ緊張してるのか」  あくまでユウのパイロットとしての技量は認めず、自分が能力を発揮できていないと言 い聞かせる。 「……そうさ、まだ二方向からの攻撃しかしてない」  ここからは本気で行かせてもらう。 ノート RAZ-107 アーツェット(BD-4)② 武装 ビームアサルトライフル; バウの標準兵装。特に改修点はない。 シールド; 通常の防御専用型。メガ粒子砲内臓型の専用シールドも試作されたが、ユウは実戦には持ち出していない。 45㎜バルカンポッド; 近接牽制兵器の必要性を訴えたユウに応え、急遽製作された武装。小型のバウの頭部に合わせ、弾薬も小型のもの が採用されている。装着時はGチェイサーに変形不可。シールドに収納可。 小型ミサイルポッド バックパックに搭載された14×2のミサイルポッド。基本的にGディフェンサーと同一規格。 ビームサーベル ビームガン兼用のビームサーベル。腰に移設されており、フライングV(下半身パーツの飛行形態)の兵装となる。 ビームライオットガン バックパックに装着して運搬されるアーツェットの主武装。Gチェイサー時はビームキャノンとして運用される。 本文にある通り、4種類の異なるビームを射つ大型ビームショットガン。同一の銃身に異なる複数の収束リングを 実装する事による整備性の悪化や高拡散型ビームの使用頻度の低さから、後のサザビーに装備されたビームショット ガンではビームの射ち分けは通常のライフルとバックショットの2種類のみとなり、それぞれ別銃身から射ち出す 仕様に変更されている。 おまけ:ユウ専用ハイザック(RMS-116); 正式採用される以前に複数の工廠で製作された先行生産機の中のルナツー工廠型。生産性とコストへの過剰な要求 によって性能を制限された量産機と違い、設計時の要求性能に近いスペックを持ち、ビーム兵器の同時運用が可能。 ユウはこの機体を更に機動性重視にブラッシュアップしてグリプス戦役を戦った。 リニアシートは採用されているが、全天周モニターではない。 戦後民間の好事家に払い下げられ、ホビー機に改装。ギュネイ・ガスによってシャア救出に使用される。

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