ちょっと昔の話
作者:◆wHsYL8cZCc
投稿日時:2010/12/17(金) 08:11:55
投稿日時:2010/12/17(金) 08:11:55
妖が生まれる時。そこには無数の思いが入り混じり、そして形となる。
あらゆる欲望。純粋な祈りから、恨みを込めた憤怒の思い。絶望。希望。
あらゆる欲望。純粋な祈りから、恨みを込めた憤怒の思い。絶望。希望。
混沌とした思いが一つの方向性を持って収斂し、そして誕生する。あまりに多くの願いが集まれば、当然それは強く、大きくなる。
その時、それは妖ではなく神と呼ばれる存在へと昇華するのだ。
その時、それは妖ではなく神と呼ばれる存在へと昇華するのだ。
※ ※ ※
彼女はずっと奥に居た。
閉ざされてはいたが、自在に出入り出来る上に、日本中に自分専用の寝床は用意されている。なので、不自由は無かった。
備えられた御神酒を飲む事は無いが、それは重要な物だ。
酒では無く、それに込められた願いこそが、彼女の栄養源だったから。
閉ざされてはいたが、自在に出入り出来る上に、日本中に自分専用の寝床は用意されている。なので、不自由は無かった。
備えられた御神酒を飲む事は無いが、それは重要な物だ。
酒では無く、それに込められた願いこそが、彼女の栄養源だったから。
今、彼女の身体は小さな動物の姿をしていた。
黄色い毛色に、尖った鼻先。鋭い目。
狐の姿。
一匹の狐の姿をした彼女は、妖より一つ上のクラスに位置する、強大な存在。見た目以上の力を秘めた者。
黄色い毛色に、尖った鼻先。鋭い目。
狐の姿。
一匹の狐の姿をした彼女は、妖より一つ上のクラスに位置する、強大な存在。見た目以上の力を秘めた者。
狐の妖怪では、あの九尾の狐が代表される。
長い年月を生きた末に、狐の妖怪は尻尾を増やす。そして九本の尻尾は、妖怪としての終着点でもある。
殺生石に封印されし伝説の大妖怪、九尾の狐は、狐の妖怪としては最強だろう。だが、進化はそこでは終わらない。
それ以上に強く、強大になる狐は、尻尾が減っていく。
稲荷神社にある狐の石像は殆どが一本ないし二本。稀に尻尾が無い者もある。
尻尾が減りはじめた狐。それは妖怪を超えた、神格を備えた存在である。
妖狐ではない。野を書ける魑魅魍魎の野狐でもない。
長い年月を生きた末に、狐の妖怪は尻尾を増やす。そして九本の尻尾は、妖怪としての終着点でもある。
殺生石に封印されし伝説の大妖怪、九尾の狐は、狐の妖怪としては最強だろう。だが、進化はそこでは終わらない。
それ以上に強く、強大になる狐は、尻尾が減っていく。
稲荷神社にある狐の石像は殆どが一本ないし二本。稀に尻尾が無い者もある。
尻尾が減りはじめた狐。それは妖怪を超えた、神格を備えた存在である。
妖狐ではない。野を書ける魑魅魍魎の野狐でもない。
天狐・御前稲荷。それが彼女の名前だった。
彼女が居る場所は、とある稲荷神社の本殿奥。小さな社だったが、彼女には日本各地にある拠点の一つでもある。
彼女は珍しく怒っていた。
神である自分に、それも、日本中で信仰される程の威厳ある自分に、恐れ多くも立ち向かおうという者が二人も居たからだ。
その内一人が、口を開いた。
彼女は珍しく怒っていた。
神である自分に、それも、日本中で信仰される程の威厳ある自分に、恐れ多くも立ち向かおうという者が二人も居たからだ。
その内一人が、口を開いた。
「大人しく我等が軍門に下るがよい。御前よ。我が主は、お前の強さを認め、我等のはらからへと選んだのだから」
「はぐれの天狗風情がほざきよる。その主とやらも、所詮は地に落ちた哀れな存在。今だ神に座する我に何をたわけた事を」
「我が主は地に落ちたとて今だ雷の神よ。やがてそれをも超える者となるだろう。お主の力、我が主に捧げよ。御前」
「世迷い事を……」
「はぐれの天狗風情がほざきよる。その主とやらも、所詮は地に落ちた哀れな存在。今だ神に座する我に何をたわけた事を」
「我が主は地に落ちたとて今だ雷の神よ。やがてそれをも超える者となるだろう。お主の力、我が主に捧げよ。御前」
「世迷い事を……」
炎が現れる。
それは強烈な発光を伴い、一匹の狐はそれに飲まれる。
それは強烈な発光を伴い、一匹の狐はそれに飲まれる。
そして代わりに出現したのは、巨大な身体と、黄金色に輝く美しい毛並み。威厳と力強さ。恐ろしさと優美さすら同時に持った、炎の尾を持つ狐。
「私は天狐・御前稲荷。不届きなはぐれの天狗よ。せめてもの手向け、消し炭も残らぬ程に焼き尽くしてくれよう」
「愚かな。いかにお主が強大であろうと、我が主には通用せぬわ」
「愚かな。いかにお主が強大であろうと、我が主には通用せぬわ」
閃光がほとばしる。あまりの高熱の為に、周囲の空気が瞬時にプラズマ化してしまったのだ。
空気は音より速く膨張し、熱と衝撃波とプラズマを伴い、弾けた。空気そのものが爆発したのだ。
御前稲荷が居た社は燃え上がる暇すら与えられず、吹き飛び、焼失した。
空気は音より速く膨張し、熱と衝撃波とプラズマを伴い、弾けた。空気そのものが爆発したのだ。
御前稲荷が居た社は燃え上がる暇すら与えられず、吹き飛び、焼失した。
「……なんと」
「ほう? やはり恐るべき炎の使い手よ。我が風を操る者で無かったら、たやすく消し飛んでいたかも知れぬ」
「天狗めが。よかろう。ならばさらに強く焼いてくれようか」
「結構な事だが、すでにお主の意志は読み取った。我が主は説得を諦め、無理にでも仲間にするおつもりらしい」
「なんだと?」
「ほう? やはり恐るべき炎の使い手よ。我が風を操る者で無かったら、たやすく消し飛んでいたかも知れぬ」
「天狗めが。よかろう。ならばさらに強く焼いてくれようか」
「結構な事だが、すでにお主の意志は読み取った。我が主は説得を諦め、無理にでも仲間にするおつもりらしい」
「なんだと?」
御前はその天狗が何を言いたかったのか、その真意は理解出来なかった。
気がつけば、黒い影が、足に絡みついていたのだ。
気がつけば、黒い影が、足に絡みついていたのだ。
※ ※ ※
「お前の名前は……。そう。悪の世に巣くう者。そう名乗りなさい」
「心得た」
「お前は今まで通りでいい。必要な時に呼ぶ。その時は、その力、私の為に振るいなさい」
「御意」
「我が生は影糾。いずれ、日出る国を統べる者。覚えておけ。悪の世のに巣くう天狐よ」
「……私はもはや神ではない。あなたと同様、地に落ちてしまった。野を駆ける狐。ただの狐の妖。
こう名乗ろう。悪世巣・野狐と……」
「よかろう。新たな寄生となりし者よ」
「心得た」
「お前は今まで通りでいい。必要な時に呼ぶ。その時は、その力、私の為に振るいなさい」
「御意」
「我が生は影糾。いずれ、日出る国を統べる者。覚えておけ。悪の世のに巣くう天狐よ」
「……私はもはや神ではない。あなたと同様、地に落ちてしまった。野を駆ける狐。ただの狐の妖。
こう名乗ろう。悪世巣・野狐と……」
「よかろう。新たな寄生となりし者よ」