創作発表板@wiki

念抹寄生

最終更新:

eroticman

- view
だれでも歓迎! 編集
*
作者:◆KazZxBP5Rc
投稿日時:2010/12/20(月) 22:40:37


「ところで姉さん。」
「ん?」
それは、師走のある日の夜のこと。
風呂上がりの姉・桃花の長くて綺麗な黒髪に、妹・彼方がドライヤーを当てているとき。
「“サンタの呪い”って知ってる?」
「いや、知らない。何かの伝説?」
「違うよ。今月に入ってからできた噂。サンタの服を着た人が、次の日から逆にクリスマス廃止を訴えるようになっちゃうんだってさ。」
「ふぅん。」
桃花はココアの入ったカップを両手で持ち、口に付ける。
まだ飲めそうにないのでここはふーふーしておく。
「怪しいわね。」
「でしょ。」
ドライヤー片手に、彼方は満足げに微笑んだ。

次の休日、彼女たちの家は朝から姦しかった。
「なんで私がそんなこと!」
「姉さん、こういうのは幸(と書いて「おっぱい」と読む)の豊かな人間がやるものなの。」
「豊かって……私だって別に人並みよ?」
「どうせ私は人並みの幸も得られなかった悲しい女よ……。」
彼方は大げさな身振りで桃花に訴えかける。
その手にはサンタの衣装が提げられていた。
「はぁ……分かった、私が着る。」
「やった!」

街にポニーテールのミニスカサンタが現れた。
本人曰く人並みな胸も膨張色の赤によって強調され、寒いのか丈が気になるのかしきりにスカートを抑えている。
どこの店の客引きでもないのに往来で立ち尽くすその姿は、通行人の注目の的だ。
そんな桃花を彼方は陰から見守っていた。
「うわー、あれ絶対やりたくないなあ。」
押し付けた本人のくせにそんなことをつぶやきながら。

待つこと五分くらい、ついに現れた。
「ネンマツ、ツマンネ。」
大きな雪玉の胴に、小さな雪玉をいくつも連ねた長い腕。その体に似合わない、細かい造形で悪魔をかたどった雪の顔。
異様な姿をした“それ”を周囲の人間は気にしない。いや、認識できていない。
“それ”は桃花たちが“寄生”と呼んでいるものの一体だ。
寄生は森羅万象のあらゆるものに、その名の通り寄生する。
そしてその寄生を認識し、撃退できるのは、退魔の力を持つ桃花たちの一族だけなのだ。
「“サンタの呪い”事件の犯人はあいつで間違いないようね。」
彼方は寄生を確認すると、左手の掌の上に影のようなものを生み出した。
影はみるみるうちに手の両側から細長く伸び、ひとつの形をとる。
それは弓だった。彼方の退魔の力が形となった武器だ。
彼方が弓を構える。右手には影の矢がセットされていた。
「ネンマツ、ツマンネ。」
寄生は桃花に向かってゆっくりと背後から近づいている。
慎重に機を見て、
「今だ!」
彼方は射た。

「ジョヤァァァァァァ!」
「しまった!」
矢は命中はしたものの、急所からは外れていたようだ。
寄生は大きな声をあげて暴れ狂う。
しかしそれでも周りの人間は何も感じない。ただ一人を除いては。
「たあっ!」
既に、影の剣を大きく振りかぶった桃花が、寄生に飛び掛かっていた。
一閃。寄生の体が縦に真っ二つに割れる。
「セイ……ボ……。」
そして寄生は消滅した。

こうして戦いはあっけなく幕を閉じた。
物陰の彼方は肩を落としてつぶやく。
「まあ、姉さんなら心配いらなかったかな。」
姉との力の差を改めて実感させられた戦いだった。


余談だが、寄生と同じ向きから桃花を見ていたとある男性は、この出来事の後、数十分も道に立ち尽くしていたらしい。
「ピンク……。」


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
ウィキ募集バナー