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ガンダム総合スレ「爆光に双子座は煌めく:4」

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爆光に双子座は煌めく:4



194 :爆光に双子座は煌めく 4:2011/04/19(火) 22:43:07.18 ID:7p7kKugH

「敵はサラミス級三隻及び、パブリク突撃艇多数! パブリクは対艦ミサイル装備の模様、
宇宙戦闘機も確認……凄い数です!」
「対空砲火用意、だが無闇に撃つな! この位置だと味方に当たる可能性がある」

 艦長が指示を飛ばし、艦橋は戦闘態勢に入る。ウルリケは自分の席で、ツヴィリング・
ザクのオペレートに当たっていた。

「サラミスはバズーカ装備のザクが相手をします! 少尉は近づいてくるパブリクを迎撃
してください!」
《了解だ。こっちから突っ込むには向かねぇ機体だからな》

 無重力の宇宙空間でも、質量は変わらない。旧型ザク二機を横に連結し、バックパック
も遙かに大型化された機体なのだから、動きは鈍くなる。コンピュータ射撃により敵機を
迎え撃つ、機動対空砲というわけだ。

 パブリクがブースターを吹かし、突撃してくる。ザクやザンジバル、ムサイの対空砲火
が火を吹き始めた。
 レーゲルも機体を前に出し、迎撃態勢に入る。的確に距離を測るための大型のモノアイ
が怪しく光り、左頭周囲に装着された三基のサブカメラも、それぞれが動いて敵を捉える。

「ケイルズ、システムは?」
《ロックオン完了。行けるよ!》

 レーゲルはにやりと笑った。重そうな対艦ミサイルを抱え、突撃艇の群れが迫ってくる。
本来はビーム撹乱膜ミサイルを発射するための機体だが、このような対艦攻撃にも使われ
るのだ。

「そら、餌だ!」

 レーゲルがトリガーを引き、両手、両肩の機銃が一斉に火を噴く。曳光弾の光が帯を引
き、数機のパブリクがそれに捉えられた。
 爆炎と共に、次々と散華していくパブリク。回避運動を取ろうとするも、推力のみに特
化した機体は小回りが利かない。まるで釣りあげられる魚のごとく、弾丸の雨に散ってい
く。射撃プログラムは快調に作動していた。

「いけるぜ、こいつは!」
《レーゲル、10時方向から一編隊回り込んでくる!》

 ツヴィリング・ザクを迂回し、防空隊の隙を突こうとするパブリクたちがいた。相手も
人間が乗っているのだから、当然状況を見極めて攻撃してくる。
 レーゲルは機銃の射撃を続けながら、機体をそちらに向けた。

「榴散弾で殺れ、ケイルズ!」
《……相対速度解析、ロックオン良し! 発射!》

 ケイルズの声とともに、腰部分の榴弾砲から砲弾が発射される。
 敵機の未来位置を予測して撃ち込まれた砲弾は、パブリク編隊の前方で炸裂。飛び散っ
た小型爆弾が連鎖爆発を起こし、パブリクが呑まれていく。爆炎がミサイルに誘爆し、そ
の衝撃に煽られた機体が仲間を撒きこんで次々と散っていく。

《次、機体を右30度!》
「了解!」

 機体位置を変えながら、二発、三発と発射する。その度に敵機が散華し、青白い爆炎が
花を咲かせた。
 レーゲルは自分の背後だけが、一発の砲弾も飛ばない空白地帯となっているのを感じた。
自分が確かに、味方船団を守っている。ツヴィリング・ザクの本領が、まさに発揮されて
いるのだ。
 不格好な大型バックパックからプロペラントタンクを切り離し、レーゲルは次のターゲ
ットに狙いを定めた。

… … …

「射撃管制コンピュータ、弾膜構築プログラムは極めて有効! 予想値を上回る能力で
す!」

 送られてくる観測データを見つつ、ウルリケは叫んだ。フィッケルも感心したような面
持ちで、モニターを覗いている。
 味方の損傷もゼロではない。サラミスのビームを受け、ムサイやザンジバルが損傷し、
補給艦パプアにも深刻なダメージを受けた物も存在する。しかしツヴィリング・ザクが守
備している区間は、敵はただ一機さえ通過できずにいるのだ。しかしこれがツヴィリング・
ザクの性能だけでは不可能な戦果だと、ウルリケは感じていた。やや癖のある機体を操る
操縦士、多数の銃器を同時にコントロールする兵装士官……彼らが完璧に連携しているか
らこそ、為せる技なのだ。

「敵サラミス級一隻、沈みます!」

 『ニヴルヘイム』オペレータの声とともに、サラミスが艦体中央部から真っ二つに折れ
るのが見えた。艦橋内に歓声が上がる。通常のザクたちによる攻撃だ。
 しかし、続いてパブリクの第二波が飛来する。モビルスーツに対抗するには物量に物を
言わせるしかない、というのが連邦の答えなのだろう。

「少尉、ヘッジホッグで迎撃を!」
《了解した。ケイルズ!》
《信管距離、計算完了、網を放つ!》

 刹那、ツヴィリング・ザク脚部のランチャーから、多数のロケット弾が射出された。尾
を引きながら加速する弾頭は、空中で数個に分裂する。

 それはまさしく『網』だった。ロケット推進装置から切り離され、惰性のみで進む小型
機雷の群れに、小回りの利かないパブリクは頭から突入することになった。
 パイロットたちはどうにか網目を突破しようと努力しただろう。しかし一機が機雷の一
つに接触し、炸裂する。その瞬間、ばら撒かれた全ての小型機雷が一斉に起爆した。激し
い爆光の網に、パブリクの編隊は次々と沈んでいく。

「すげぇな……」

 フィッケルが感嘆の声を上げた。元来艦船用の武装のため大型で、二つ装備された八連
装ランチャーに斉射一回分が装填されているのみである。しかしこれだけの戦果を得られ
れば、有用性の証明には十分だろう。

「レーゲル少尉、そのまま……」


 ……ウルリケが言いかけた時、艦の目の前を閃光が通り過ぎた。ウルリケは一瞬何が起
きたか分からなかったが、続けて飛来してくる閃光の群れに、事態を把握した。
 メガ粒子砲である。

「艦長、九時方向からマゼラン級の襲撃です!」
「上げ舵三十!」

 ソウヤ艦長が叫んだ。

 マゼラン級戦艦は輸送船団、護衛艦隊から距離を取り、断続的に粒子砲を撃ち続けてい
た。ミノフスキー粒子とモビルスーツによって陳腐化した長距離艦砲だが、下手な鉄砲も
数撃てば当たるというものだ。
 やがて、パプアの一隻が直撃を受け、轟沈する。マゼランの強力なメガ粒子砲には、補
給艦の装甲ではとても耐えられない。

「ザクは何やってる!?」

 フィッケルが怒鳴る。

「護衛モビルスーツ隊は弾薬と、推進剤の補給が必要です!」

 ウルリケの言葉で、誰もがはっとなった。
 パブリクの大群とサラミスの襲撃は、モビルスーツを消耗させるためのものだったのだ。
本命である、マゼランによる攻撃を成功させるために。

「『シュバルツバルト』大破、沈みます!」

 護衛のムサイ級が一隻被弾し、真っ二つに折れて沈む。
 このマゼランは火力を増強した改造型らしく、接近戦に持ち込もうにもムサイの火力で
は対抗できない。むしろ距離を詰めれば、その時点で集中砲火を受けるだろう。ザンジバ
ル級は大型ミサイルを搭載してはいるが、護衛モビルスーツを乗せたまま地球へ降下する
役目も担っている以上、無茶な真似はさせられない。

「このままでは的になるだけだ……」

 フィッケルが唇を噛んだとき、無線機越しに落ち着いた声が聞こえてきた。


《ツヴィリング・ザクは、まだやれるぜ》


 モニターに、レーゲルの不敵な顔が映っている。ウルリケははっと目を向けた。

「ツヴィリング・ザクに対艦用の装備はありません!」
《だが、もともと弾薬携行量が多いってウリがあるからな。マシンガンの弾は十分だ》
「小回りの利かない機体で、ザクマシンガンの有効距離に接近するのは危険です! 止め
てください!」
《だが、推力は十分だ》

 レーゲルはにやりと笑った。

《例え命令違反になろうと、やるぜ。守らなきゃならないんだろ?》
「……少尉に一任する」
「大尉!?」

 フィッケルが厳然とした口調で言った。困惑するウルリケを制し、レーゲルに向かって
続ける。

「ただし、死ぬな。ポーカーのつけを払うまではな」
《ああ特務大尉殿、あんたのイカサマ見破るまでは死なねぇよ!》

 … … …

 ツヴィリング・ザクは両腕を垂直に立てた。バックパックに搭載された小型アームがマ
ガジンを取り外し、徹甲榴弾のマガジンに付け替える。双子胴機であることと、両手でマ
シンガンを使う関係上、リロードにこのような補助装備が必要なのである。

「ケイルズ、やることは分かってるな?」
《ああ。どこまでも付き合うよ、レーゲル》

 相棒の返事を聞くと、レーゲルは真っすぐにマゼラン級を見つめ、スロットルを開いた。

「エントリー!」

 機体は勢いよく加速した。
 旧型ザクとはいえ、二機分の推力である。速度計の針が動き、レーゲル達の体にも重圧
がかかる。
 目指すはマゼランの、エンジン部分。無重力下で使用するため初速を抑えたザクマシン
ガンだが、機体速度を上乗せして撃てば、マゼラン級の装甲も貫通できるはずだ。

 一歩間違えれば空中衝突。しかしレーゲルに迷いは無かった。
 サイド3の貧民街コロニーで生まれ育ち、公国への戸籍登録さえ行っていなかった。強
制的に徴兵され、海兵隊の一員としてコロニー潰し等の過酷な任務へ投入され、徐々に精
神がすり減っていった。遂には殺した者たちの幻影にうなされ、眠れぬ日々。
 しかし、この局面で同胞を守ることができれば。生きて帰ることができれば。


 きっと、自分の誇りを取り戻せる。

《もう少しだ、加速を続けて!》
「おう!」

 前方投影面積を減らすため、頭からマゼランへと突っ込む。飛来するビームを経験と勘
で回避し、ただひたすら突っ込む。

 やがて、マゼランが目と鼻の先まで迫った。

《撃て!》

 ケイルズが叫んだ瞬間、レーゲルがトリガーを引く。
 両手のマシンガンが火を噴き、徹甲榴弾がマゼランの装甲に弾痕を穿った。

 そして一瞬の間を置き、そこから青白い炎が噴き出した。

 … … …

 『ニヴルヘイム』艦橋で、ウルリケとフィッケルはモニター映像を凝視していた。
 マゼランがエンジンから火を噴き、艦体がぐらりと横に傾く。乗員は必死でダメージコ
ントロールをしていることだろう。
 艦砲射撃は止み、しばらくすると回頭し始めた。そのまま、無事なエンジンのみを稼働
させ、ゆっくりと離れていく。

「敵マゼラン級変針、離脱していきます!」

 艦橋が歓声に包まれる。そんな中、再び無線が入った。

《……ニヴルヘイム、聞こえるか?》
「レーゲル少尉! 無事ですか!?」

 ウルリケの言葉に、レーゲルは陽気に笑って応じた。

《衝突する前になんとかかわしたさ。守ってやったぜ……もう犠牲は出ちまったけどな》
「十分だ、少尉」

 フィッケルが言う。いつになく、力強い声だ。

「帰投しろ。丁度飯時だ、食いながらポーカーといこうや」
《おう、今度こそ勝たせてもらうぜ》
《それじゃ、僕も混ぜてもらいますか》

 やがて、ツヴィリング・ザクの異形の機体が、『ニヴルヘイム』に近づいてくる。掴みど
ころの無い上官と勇猛な海兵たちの会話に、ウルリケは髪の毛を弄りながら、ふと笑みを
こぼした。

 これからも多くの兵器が、602試験隊に持ち込まれるだろう。後の人間から失敗作の烙印
を押されるような物も、その中にはあるだろう。しかしそれでも、ウルリケはこの仕事に
価値を見いだせるような気がした。

「……大尉」
「ん、どうした?」

「ポーカー、私も混ぜてください」

 … … …

 …試作モビルスーツMS-05Z ツヴィリング・ザク――技術試験報告書…

 船団護衛に於ける実戦試験に際し、MS-05Zはその迎撃能力を遺憾なく発揮。
 多数の敵突撃艇を撃墜、加えて敵マゼラン級に重大な損傷を与え、撃退せしむ。
 されど、本機の能力を引き出すには搭乗員二名の緻密な連携が不可欠であり、この戦果
は実戦運用せるサンダンス・レーゲル少尉、ウォルター・ケイルズ少尉の技量に寄る所が
大きいと、認めざるをえない。
 今回の実戦データを元に、より効果的な護衛兵器が開発されることを願う。

 ――――宇宙世紀0079年5月19日 ウルリケ・レント技術中尉


 ……その後、ツヴィリング・ザクに搭載された射撃完成コンピュータ『シューツェγ』
は、サイコミュ・システムの開発に役立てられたという。


【END】


遅くなりましたが以上で終了です。お読みいただきありがとうございました。
ちょっと最初のやつ、タイトル入れ忘れました(汗
当初はイグル―らしくパイロットは死なせようかと思いましたが、納得のいく死に様が思いつかないし、
生存させることにしました。
また続編をいくつか書くと思いますので、よろしくお願いします。




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