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第10話~男と獣と人間と。その3

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第10話~男と獣と人間と。その3





セフィロスと竜崎が姉弟を家まで送り届けているとき、美伽とカノンはすでに情報を手に入れ、先ほどの
広場まで歩いている最中だった。他の2組は情報収集に苦労していたがこの二人に関しては美伽の屈託のない
笑顔とカノンの微笑みを武器に道行く人々の安心を勝ち取り難なく情報を入手していたのだった。
手に入れた情報とは、この「ヴァンゲリオ」という街では獣貴12師の一人、「クマ師」が治めており
獣貴12師の中でも1、2を争う、という表現もおかしいのだが穏健派であり、軍事部の干渉を拒否していて
軍事部が幅を利かせている他の町に比べれば随分暮らしやすいとのことだ。クマなのに穏健とは何とも奇妙な話だが。
情報入手という目的を既に達成した二人は残りの時間どうすればいいかを歩き話しながら考えていた。


「で、あのさぁ…か、カノン君、わ、私たちもうやること無くなっちゃったたし、残り、りの時間どうしようか?なんか適当に話す?」
そんな些細な提案をする美伽の顔は真っ赤でしかも口調もたどたどしい。そうその姿は正に恋する乙女そのものだった。
そんな美伽の姿をみて、その気持ちを知ってか知らずかカノンは微笑みながらとても優しい声で答えるのだった。
「うん、そうだね。僕たち二人まだろくに会話したことなかったしね。いい機会だから何か話そうか。どんな話がいいかな美伽さん?」
美伽は心の中でガッツポーズをした。好きな男の子の目の前でしかも一対一で緊張して声が裏返ってしまっていたので『変な人』だと
思われてしまったのではないかと思っていた美伽にとってこのカノンの反応は最高のレスポンスだった。そしてまたカノンに切り返す。
「あ、そ、それならさ…わ、私たちこうして異世界に飛ばされちゃったわけなんだけど、も、元の世界ではどんな風に暮らしてたとか…」


するとカノンの表情が一瞬曇る。美伽は「しまった!」と思った。せっかく接近するチャンスをつかんだのにこれでは台なしではないか。
しかしそんな心配は美伽の杞憂に終わり、すぐにまた微笑みを浮かべカノンはその問いかけに対して返事をするのだった。
「美伽さんはその名前からすると日本の生まれなんだよね?僕はヨーロッパで育ったんだ。北欧のほうだから冬は寒くてさ…暖炉が恋しかったなぁ…」
暖炉などアメリカやイギリスなどの外国映画でしか見たことがないと美伽が話すと「アハハハ」と笑ってまた答えるカノン。
「アハハ…そうだよね。日本は冬でも北欧ほど寒くはないからストーブとかでこと足りるって聞いたことがあるよ。
 でも北海道っていう地方だけは冬は北欧と同じくらい寒くなるんだってね。反対に沖縄っていうところは冬でもまるで春のように暖かいそうだね」
ヨーロッパに住んでいるのになぜそんなに日本の気候について詳しいのか美伽が尋ねた。

「日本には僕の友人が暮らしてるんだ。彼らとはとても仲が良くてね、よく文通なんかして連絡を取り合ってたんだ。だから日本についていろいろ知ってるんだ。
 日本は一部の何も知らない外国人からみたら未だに丁髷を結ってたり刀をぶら下げてるとか思われてるんだけれど他国に対してそんな偏見を抱いているからいつまで
 たっても戦争はなくならないんじゃないかな。もっとも、幼いころから両手を真っ赤な血で染め上げてきた僕にそんなことを言える権利はないか…」
と、自分の言葉ですごく悲しそうな顔をするカノンをさっきまでのもじもじはどこへやら、美伽はその肩を叩いて満面の笑みをもって励ますのだった。
「昔のことばっかり気にしてもしょうがないよカノン君。確かに過去には背負わなくちゃいけないものもたくさんあるよ?けどカノン君がいくらその手を
 血で染めて来たからってそれはあたしにとってはどうでもいいことなんだよ。だからあたしは今ここでカノン君とともに過ごせていることを神様に感謝してるんだ!」
それと同時にカノンに抱きついてさらに可愛らしい笑顔を見せる美伽。今度はカノンのほうが赤くなる番だった。女の子に抱きつかれたことなど今までい一度もなかったから。

「そう言ってくれると嬉しいよ…僕も美伽さんにこうして巡り合えたことすごく幸運だって思ってる。一期一会っていうのかな?だから離れてくれないかな…周りの人も見てるしさ」
その言葉を聞き周りを見渡す少女。見てみると、道行く人たちがすべてこちらを見ている。白い目もあれば興味津津、あるいは羨望のまなざしまでそれは様々だった。
ただ、男の子に抱きついたところを大衆に見られるのはやはりすごく恥ずかしい。顔から火が出でもおかしくないほど赤くなるのだった。淳子さんに頼めば実際にそうしてくれるだろうな、とも思った。
「あはっ…ごめんねカノン君。つい興奮しちゃってさ。勢いで愛の告白、みたいな?あ、それよりここ、一番最初の広場じゃないかな?ほらあの噴水!」

美伽が指をさす。確かにここはくじ引きをし、3組に分かれたあの広場だった。
「そうみたいだね。とりあえず、みんなまだ戻ってきてないみたいだし、僕たち二人で待ってようか」
「うん。そうだね。でもカノン君。さっきのことは二人だけの秘密だからね!」「わかってるよ。アハハ…」
そして笑いあう二人は残りの4人の到着を待つのだった。



第10話 男と獣と人間と。その3 FIN



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