無限桃花~千年の怨霊~
「金色に輝く妖狐に‥‥‥天狗ですか‥‥。伝説級の妖怪達ですね」
黒丸は眉の間にしわを寄せた。
桃花の口から語られた寄生は、もはや黒丸達『ヤタガラス』の力ではどうする事も出来ないレベルの物だった。
桃花の口から語られた寄生は、もはや黒丸達『ヤタガラス』の力ではどうする事も出来ないレベルの物だった。
「では、我々にはその天狗‥‥婆盆を探して欲しいと?」
「はい‥‥‥この前あんな事言った手前、すごい勝手な事だってのは解ってるんですけど‥‥」
「いいんです。どっちにしろ我々は桃花さん抜きでの活動は考えていなかった。あの後もなんとかして口説いてこいと上司に言われましてね。心がわりした理由は聞きません。一緒に戦っていただけるなら十分です」
「‥‥そうですか」
「しかし‥‥桃花さんの言うように、婆盆が無縁天狗だというなら、そう簡単には見つからないでしょう。我々は寄生専門として長い歴史はありますが、妖怪退治は専門外です。まったく未知の領域なんです」
黒丸は渋い顔をしたままだった。『ヤタガラス』にとっては、妖怪などどうでもいい存在だった。あくまでも寄生、それも人間に取り付く物だけを対象としていたのだ。
しかし桃花の話から推測すると、その寄生は妖怪にすら取り付く。妖狐や天狗、九十九神といった、神に近しいレベルまで。
しかし桃花の話から推測すると、その寄生は妖怪にすら取り付く。妖狐や天狗、九十九神といった、神に近しいレベルまで。
「その‥‥金色の妖狐‥‥悪世巣と言いましたか。どうやって倒したか、覚えてないんですか?」
「はい‥‥覚えてるのは‥‥地面に押さえ込まれてる所までで‥‥」
「そうですか‥‥‥その妖狐、恐らく天狐でしょうね」
「天狐?」
「ええ。九尾の狐の上を行く、神格を持った狐です。ほら、稲荷神社とかに奉ってある。我々は一応神社庁の人間ですから。そこら辺は詳しいですよ」
桃花は悪世巣の姿を思い出す。確かに、あれは妖怪と呼ぶにはあまりに美しく、そして威厳ある寄生だった。
「妖狐は歳を経て尻尾の数を増やし、九尾になる。それはさらに力をつけると今度は尻尾が減っていき、やがては無くなる。桃花さんが見た炎の尾は一本でしたよね?なら相当な奴でしょう。御稲荷様も一本だ」
御前稲荷‥‥桃花の記憶にはうっすらとその名前があった。そうか、奴が‥‥
「多分、野狐と名乗ったのは寄生の大元‥‥影糾でしたか。その配下となったので、力を持ったまま神格を失ったか、何者かの配下に成り下がった事で自らを天狐と呼ぶには相応しくないと思ったか‥‥野狐とは、妖狐の中で最低辺のランクですから」
黒丸は淡々と語っていたが、相変わらず表情は硬い。
「あの‥‥他には『ヤタガラス』のような組織はないんですか?寄生じゃなく‥‥妖怪専門の‥‥」
「残念ながら政府内にはありません。寄生は人間に直接被害を出す為に遥か昔から現実的な脅威として認知されていました。だから公家社会の時代から、幕府、明治新政府そして現在まで『ヤタガラス』は存続している。
妖怪はまったく別の、それこそ陰陽師や僧侶などの領分でした。そして彼等とはあまり交流はない。寄生と妖はそれほど掛け離れた物と考えらえて来たからです」
妖怪はまったく別の、それこそ陰陽師や僧侶などの領分でした。そして彼等とはあまり交流はない。寄生と妖はそれほど掛け離れた物と考えらえて来たからです」
「そうなんですか‥‥」
桃花は落胆した。あの天狗、婆盆はどう見ても妖怪だが、組織力をもって動ける『ヤタガラス』では見つけられない。
かと言って、かつて修業した京都の陰陽師には頼れない。組織力不足もあるが、彼等はあくまで伝統を受け継いでいるだけであり、戦いに向く連中では無いのだから。
陰陽師の血を受け継ぎ、かつ寄生とも戦える存在は、桃花一人だ。
かと言って、かつて修業した京都の陰陽師には頼れない。組織力不足もあるが、彼等はあくまで伝統を受け継いでいるだけであり、戦いに向く連中では無いのだから。
陰陽師の血を受け継ぎ、かつ寄生とも戦える存在は、桃花一人だ。
「そんなに落ち込まないで下さい」
黒丸はそう言った。
「いくら相手が妖怪とはいえ、寄生である以上はまだチャンスはあります。我々は都内での寄生の動きだけなら常に監視している。その中で怪しいのをさがせば‥‥」
「監視?どうやって!?」
「都内の至る所に結界が仕込んであります。寄生がそこを通れば、連中がどういう動きをしているのか、大まかな事は解る。もっとも、下っ端の寄生はほとんど勝手に動いてるだけですが。
その中で、規則性のある奴を捜せば、或はそれが婆盆かも知れません」
その中で、規則性のある奴を捜せば、或はそれが婆盆かも知れません」
「それじゃあ‥‥もしかしたら‥‥」
「ええ。今までも規則正しい寄生は居ましたがほとんどは何でもない奴だった。しかし以前、そう、桃花さんと最初にあった時にいた亜煩のような例もある。
婆盆も役割があるならば、ある程度は規則性があってもおかしくない」
婆盆も役割があるならば、ある程度は規則性があってもおかしくない」
黒丸の提案は『ヤタガラス』にとって婆盆を捜す唯一の方法だった。
桃花一人では到底出来ない事だが、黒丸達なら集団で動ける。それは大きな力だ。
桃花一人では到底出来ない事だが、黒丸達なら集団で動ける。それは大きな力だ。
「見つけたら手をつけずにすぐに連絡しますよ。我々じゃ相手にならないでしょうから」
「ありがとうございます‥‥私のわがまま聞いてもらって‥‥」
「とんでもない。寄生と戦うのが仕事ですから」
黒丸はそういって部下に内線で指示を出す。一刻も速く婆盆を見つけだす事。それが寄生を、『ヤタガラス』の目的を達する為の近道だと悟っていた。
黒丸は受話器を置き、机の上の紙コップのブラックコーヒーを一口飲む。そして、先程からの疑問を口にした。
「寄生の大元‥‥‥影糾‥‥一体何者なんですかね‥‥」
「影糾が‥‥ですか?」
「ええ。寄生に憑かれたら、それは寄生と同じ能力を得る。他者に寄生する能力です。
天狐は神に近い存在。それすら配下にし、かつ神に自分の能力を植え付ける。一体、どれほどの大物なのか‥‥‥‥影糾」
天狐は神に近い存在。それすら配下にし、かつ神に自分の能力を植え付ける。一体、どれほどの大物なのか‥‥‥‥影糾」
黒丸は再び表情を硬くした。