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無限桃花外伝~彼方より~

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匿名ユーザー

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無限桃花外伝~彼方より~

投稿時間:2010/10/18(月) 02:02:09


 彼女は寝ていた。寝息は静かで、穏やかで、幼さと色気を同時に保有していた。
 濃い藍色とどこと無くピンクが混ざった長い髪は、彼女の身体に纏わり付き、艶やかに、かつ妖しく輝いていた。
 彼女は――無限彼方は、まだ幼い身体に潜む邪悪さと恐るべき破壊の力を抱えたまま、眠り続けていた。

「……。ん~。一味はいらない~。コチュジャンとかマジ無理だって~。汁だくとか素人かよ」

 寝ながらにして牛丼の夢を見る所は流石と言うべきか。
 辛いのは嫌いなようである。寝言でさりげなくカミングアウト。
 ただ寝ている姿は、完全に年相応の女の子である。目が覚めても、普段の行動はスナック好きの普通の娘。
 それだけ見れば、彼女がなんの為に誕生したのか、予測する事は難しいだろう。
 彼女は、世界に稲妻を落とす為に生まれたのだ。

「寝ていれば大人しいんですけどねぇ……」

 寝ている彼方の横で、彼女を見守る者は言った。白い髭と頭髪の穏やかな優しい表情の老人。婆盆。
 彼は、彼女を護る為にこの場所に居る。千年前に誓った約束。生まれ変わっても、また天神に仕える。
 主たる天神が無限彼方という少女に転生したならば、婆盆は彼方に仕えるのみ。それこそが、自らの宿命と信じている。
 しかし、新たな主は少々お転婆が過ぎる様子。

「あーあー。またポテチ食い散らかして。……あ。コーラこぼしてる。というか冷蔵庫にあった私のシュークリームも食べたんですか……」

 彼方のジャンクフード好きは筋金入りである。
 買い置きしたお菓子はみるみる減っていく。うっかり冷蔵庫にお菓子など入れておこう物ならば、瞬時に彼方の胃袋へワープする。油断大敵。

「まったく……。これでちゃんとご飯も食べるんですから手に負えない。よく太らないですねぇ」

 彼方の身体は幼いながら、女性として完成に近づいて行る。
 きっと、成長すればさぞかし美しい女性へとなるだろう。現在ですら、既に十分魅力的と言える。現在は十六歳だが、見た目で行けば十八~二十歳でも通用する。
 彼女の姉も大人っぽいが、彼女は恐らく一つ上を行くかもしれない。

「ぬ~……。ポテチはうす塩より醤油バター……」
「食べる事ばかりですかこの子は」

 寝言。それは普段の彼方の言動と変わりない。
 食べ盛りなのは成長期の証。だが、彼方はちょっと食べ過ぎである。
 婆盆にとっては手間のかかる娘その物と言えた。

「……まったくこの娘は……」

 婆盆にとってはまさしく娘。六歳の頃から、ずっと一緒に。婆盆はその成長を見守って来たのだ。千年前の復讐を達成する為に。
 彼方は、自分の主であり、娘。

「……姉さん」

 寝言。度々口に出す、彼女の姉にして宿敵。無限桃花。

「避けられませんか……?」

 婆盆は言った。

「やはり、彼方は桃花と戦うんですか? 実の姉と。生き別れた姉と。
 私の娘は、そんな辛い戦いをしなければならないのですか? 主よ……」

 語りかけた。彼方に向かって。
 だが、語りかけた相手は彼方そのものでは無く、彼方の奥底に潜む、かつての主。恐るべき破壊の権化、闇の天神へ。

「姉さん……」
「彼方……」
「……。殺す」
「そうですか……。そうですよね」

 宿命は、変えられない。
 それが彼女達が選んだ道だったのだから――




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