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無限彼方大人編~彼方と魔王と新幹線~

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eroticman

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無限彼方大人編~彼方と魔王と新幹線~

投稿日時:2010/10/23(土) 04:13:12


「ああダメ……。強すぎるわ……」

 彼方は戦っていた。敵は恐るべき力を持ち、その圧倒的なパワーと存在感は彼方を焦らせるには十分だった。敵の放つ稲妻は容赦なく体力を奪い、一気に彼方を追い込んで行く。
 彼方は、たった四人でそれに挑まねばならなかった。

「ちょっとウソでしょ……!? この連続技は……!」

 味方の一人が倒れた。敵はあまりに強く、倒れた者はそれを受け止める力が無かったからだ。

「ダメだ……。もう……。私には勝てない……」

 彼方は言った。
 もし再び挑む機会があるならば、次こそは入念な準備をして挑もう。そう思いながら、最後の仲間が倒れるのを見届け、彼方は携帯ゲーム機の電源を切る。
 暇潰しにやっていたゲームだったが、すっかりのめり込み移動中でも暇さえあればそれをやっていた。低レベルで特攻するタイプであった為に、途中までは順調だったが序盤の山場で見事に躓いていた。シリーズ屈指の強敵と言われる某魔王は、彼方にはまだ早いようだ。

 彼方は新幹線に乗っていた。長時間の移動は疲れるが、流れる景色と携帯ゲームのおかげであまり時間を気にする事はなかった。
 ゲーム攻略に失敗したので、今度は窓枠に頬杖を突き、景色をぼーっと眺めている。
 彼方が目指す場所。それは東北地方の、とある都市である。
 なぜ彼方がそこを目指すのか。理由は一つ。寄生が出たからである。通常ならば黒丸率いる第四の自衛隊の仕事ではある。だが、彼等ではどうにもならない事もある。
 それは、市街地のど真ん中に寄生が出現した場合だ。
 実弾で撃退出来るタイプの寄生は、訓練された者ならば十分に倒せる。だが、それでも寄生という存在は危険である。なので、普通はしっかりと武装しなければならない。
 だが、寄生の存在は極秘。それ以前に、武装した自衛隊員が街中へ実戦出動など、この国ではあってはならないのだ。
 となれば、彼方の出番である。瞬時に実体化出来る村正。長年の鍛練にて習得した剣技。元寄生という経験。
 黒丸達の戦闘評価では、彼方は桃花以上であるとされていた。

 連絡を受け、すぐさま彼方は新幹線に乗り込み、目的地へと向かった。
 そしてこれが、今の彼方の職業である。

 車内販売のコーヒーには目もくれず、彼方は自動販売機のコーヒー飲料と東京駅で買ったカツサンドを胃に流し込み、ずっと景色を眺めていた。
 ゲームのレベル上げでもやろうかと思ったが、食べながらではやりづらい。なので、やりたい衝動を抑えつつ、もぐもぐ口を動かしていた。
 ゲームの魔王は強力だった。その目的も解りやすく、世界征服を狙う絶対悪である。そして、その姿はかつての自分と重なる部分もある。
 圧倒的力を持って、世界の全てを我が物にしようとした、かつての自分。
 ゲームのシナリオでは、魔王は必ず敗れる。現実でも、たとえ世界が正義でなくとも、真の巨悪が栄えた事は無い。全て倒されている。
 彼方はそれを身をもって知っているのだ。悪い魔王は、勇者にやっつけられた。
 無限桃花によって。

「向こうは寒いかな……?」

 東北地方は既に相当寒いだろう。まだ雪が降る季節でも無いが、空気は乾燥し、空は灰色になっているかもしれない。
 あの時の、決戦の日のように。





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