船の甲板にてミンティアとパイレーツ、二人の実力者が互いに得物を構え、見合う。ミンティアは両手で剣を、パイレーツも右手にカットラスを構えている。
「この一刀で斬り捨てる…!」
「アタシに前に立って、そう言った奴はゴマンと見てきた。そしてそんな奴らの悉くを魚の餌にしてやったさ。」
そう言って口角を上げた瞬間、パイレーツの左手が跳ね上がり、その手にはいつの間にかフリントロック式の小型銃が握られていた。
そして彼女が引き金を引くと同時に銃口が閃光と共に弾け、弾丸が発射される。
しかし、ミンティアは放たれた弾丸を首を捻って避けると姿勢を低くしてパイレーツへと向かう。
「不意打ちか、卑怯者め!」
迫るミンティアに向けてパイレーツは銃を撃ちまくる。だが、銃弾をかわし、迫りくる彼女を前にしてパイレーツに焦りは見えず、むしろ笑みを浮かべている。
「そんな姿勢を低くするなんて、頭をサッカーボールにでもして欲しいのか?」
次の瞬間、パイレーツはつま先に仕込んだ刃の靴で蹴りを姿勢を低くしたミンティアの顔面目掛けて放つ。
「舐めるな!」
そう叫ぶとミンティアはそれをも、顔を逸らしてかわす。
だが、ミンティアはかわしたため、パイレーツは蹴りを放ったため、互いに体勢を崩した状態。ミンティアはそれでも無理矢理反撃を放つ。
だが、ミンティアはかわしたため、パイレーツは蹴りを放ったため、互いに体勢を崩した状態。ミンティアはそれでも無理矢理反撃を放つ。
「おおっと。」
だが、パイレーツは薙ぐように放たれた斬撃を前へと跳んでかわす。そして転がりながら体勢を立て直し、一方のミンティアもまた、体勢を整え、追撃に移る。
「まだまだ!」
ミンティアが甲板を蹴り、パイレーツへと迫る。それを迎撃すべく、彼女は銃を向けようとしたその瞬間。
横から放たれた矢が彼女の手から銃を弾き飛ばす。
横から放たれた矢が彼女の手から銃を弾き飛ばす。
「あ?」
思わぬ横槍に、彼女の口から間の抜けた声が漏れる。見れば樽にもたれかかりながらも、弓を構えているオパーレンがいた。
彼女は傷だらけの顔で笑みを浮かべながら言う。
彼女は傷だらけの顔で笑みを浮かべながら言う。
「へっ……パーラディオン四騎士を……舐めないでもらいたいね…!」
「チィッ!おいおいコイツは…!」
「援護、感謝する!」
ミンティアは紫電の如き速さで、あっという間にパイレーツの間合いを侵略する。パイレーツの顔から余裕の色が消える。
「斬り捨て、御免ッ!!」
「デンジャラァァァッスッッ!!」
振るわれた鋭い一閃。それはパイレーツの胸を斬り裂き、血飛沫を散らす。だが、パイレーツはギリギリで上体を逸らしており、致命傷を避ける。そしてバックステップでミンティアと距離を取ろうとする。
「逃すか!」
逃すまいとミンティアがさらに踏み込もうとした瞬間。ポロポロとパイレーツから円筒状のものが落ちる。
「あ、やべ。落っことしちゃった。」
「爆や──!!」
それは既に火がついた爆薬だった。まるで自然に落としたように転がったそれに、ミンティアの反応が一瞬遅れる。
次の瞬間閃光と共に爆発が起こり、二人を吹き飛ばす。最初から予測していた分、パイレーツは爆風を受け、裾を少し焦がしながらもフワリと着地する。一方の不意打ちの爆発を受けたミンティアはたまらず甲板を転がりながら吹き飛ばされる。
次の瞬間閃光と共に爆発が起こり、二人を吹き飛ばす。最初から予測していた分、パイレーツは爆風を受け、裾を少し焦がしながらもフワリと着地する。一方の不意打ちの爆発を受けたミンティアはたまらず甲板を転がりながら吹き飛ばされる。
「くぅうぅぅうぅ!!」
彼女は呻きながらも体勢を立て直し、立ち上がる。だが、身体は傷だらけ、額からは一筋の液体が流れる。
「ふぅ。デンジャラスだぜ……」
胸から流れる液体を指でなぞりながら、パイレーツは笑う。ミンティアも戦意は一切衰えず、負けじと剣を構える。
「仕切り直しといきましょうか。海賊。」
「うおおおおっ!」
迫り来る銀色の飴から赤の少女、アイベリーが逃げ回る。魔法使いのような格好をした半透明の少女、ガムビショップを中心にまるで鞭のように振るわれるそれはアイベリーを追いかけつつ、彼女を援護しようとするブルベリン達の攻撃からガムビショップを守る盾としての役割も果たしている。
「なにそれぇっ!全然近づけないんだけどォッ!?」
「私の“銀色の林檎飴”(アルジェント•ポム•ダムール)は攻防一体の技……貴女方には破れませんよ。」
鞭のようにしなる一撃がアイベリーの背後で炸裂する。
「このっ……!調子に乗ってぇっ!」
アイベリーはマストを蹴って追いかけてくる飴の一撃を避けると、拳を構える。
「喰らえっ!」
次の瞬間彼女の腕が伸び、ガムビショップへと向かう。しかし、放たれた拳はガムビショップを覆うように差し込まれた水飴の壁に阻まれる。
しかも水飴と接触した彼女の拳は水飴の壁にベッチャリと粘着し、引っ張っても離れない。
これにはアイベリーもギョッと驚く。
しかも水飴と接触した彼女の拳は水飴の壁にベッチャリと粘着し、引っ張っても離れない。
これにはアイベリーもギョッと驚く。
「ちょっ、ちょちょっ!?離れないんだけどっ!?」
「功を焦り過ぎましたね。せめて、我等の女王の悲願の達成の為の礎となってください。」
ガムビショップが杖を翳すと、水飴が槍のように形どると、アイベリーを貫かんと迫る。
「やばっ…!」
アイベリーがなんとか致命傷は避けようと身を捻ろうとしたその時。上空から赤い焔が降り注ぎ、水飴の槍を灼いて、ヒビ割れたそれを砕く。
「!」
さらにガムビショップを覆う盾にも炎が放たれ、壁を割って、アイベリーの拳を解放させる。
「大丈夫!?」
声がした上空を見上げると、口から炎をチラつかせる苺のような角を持つ飛竜“スドラゴベリィ”に騎乗するストルビィの姿があった。
「パーラディオンか!」
「たぁぁっ!」
スドラゴベリィから剣を構えたままストルビィはガムビショップ目掛けて落下する。
そして彼女は着地すると、目の前にいるガムビショップに容赦なく剣を振るう。
放たれた斬撃にガムビショップは反応し、杖で受け止める。
そして彼女は着地すると、目の前にいるガムビショップに容赦なく剣を振るう。
放たれた斬撃にガムビショップは反応し、杖で受け止める。
「貴軍らは我々の領土を侵略している!即刻転進して、離れなさい!」
「それは、出来ない話ね!」
ストルビィの警告にガムビショップは杖で剣を弾いて応えると、水飴の槍を繰り出す。
その返答に彼女の顔が一瞬曇る。だが、繰り出された攻撃を身を捻り、剣で切先を逸らせながら、それらをかわす。
そのまま彼女は左肩のマントで半身を覆う。剣先を隠し、攻撃の軌道を読みにくくして、相手の判断を鈍らせる構えにガムビショップが舌を巻く。
その返答に彼女の顔が一瞬曇る。だが、繰り出された攻撃を身を捻り、剣で切先を逸らせながら、それらをかわす。
そのまま彼女は左肩のマントで半身を覆う。剣先を隠し、攻撃の軌道を読みにくくして、相手の判断を鈍らせる構えにガムビショップが舌を巻く。
「チッ。見た目に反してダーティなのね。」
「ふっ!」
次の瞬間マントを突き破り、剣の切先がガムビショップの腰目掛けて飛ぶ。その切先が彼女に届く寸前、薄い水飴の盾がその攻撃を防ぐ。
「そんな小手先で──!」
攻撃を防いだガムビショップが反撃に転じようとしたその時。横から飛んできた拳がガムビショップの頬を打ち抜く。
「!」
「私を忘れてないかしら!?」
その先には拳を伸ばしたアイベリーの姿が。意識外からの一撃にガムビショップの姿勢が崩れる。そしてその隙を逃さず、剣を壁から引き抜くとストルビィは彼女へと斬りかかる。その攻撃をガムビショップはかろうじて受け止めるが、背後から飛んで来たスドラゴベリィのタックルが彼女の身体を撥ね飛ばす。
「──ッ!!?」
まるで木の葉のように跳ね飛ばされた彼女の身体は宙を舞って、甲板に叩きつけられる。
「良い援護でした。助かりました。」
「いや、こっちこそ助けてくれてサンキューな!」
二人は腕を合わせ、スドラゴベリィがギャオスと声を上げる。
「ぐっ……」
呻きながら、ガムビショップが立ち上がる。だが、どう見ても満身創痍だ。そんな彼女にストルビィは剣の切先を向ける。
「降伏しなさい!決着は着きました!」
「だから、それは出来ない相談だと……」
そう言った次の瞬間、船の一つが大きな水柱と轟音と共に激しく揺れる。見れば、そこには水中から飛び上がった桃色の騎士、スピーチネルと愛騎ピーチルーパーが船に攻撃していた。
「あぁん?」
その様子が目に入ったパイレーツが怪訝な声を出す。そして水中からの攻撃を察するとハァとため息をつき。
「やぁれやれ。面倒なことをしてくれる。」
パイレーツはカットラスで肩を叩きながら二人を見る。
「降伏する気になりましたか?」
ミンティアの投降を促す言葉に、パイレーツは考えるように顎に手をやると。
「うん。投降するか。降参降参。」
そう言うと彼女は両手で持っていたカットラスと銃を地面に落とし、両手を上げて、降伏のポーズを取る。
「……なんの、つもり?」
「え?いやだから降参だよ。これ以上の戦闘はアタシも野郎共もデンジャラスだから。降参。」
まさかの降伏の姿勢にミンティアは戸惑いながらも剣を下ろして構えを解く。
「……まぁ、戦意の無いものをこれ以上攻撃するつもりはありません。降伏するのなら、貴女方に任せます。」
そう言って、ミンティアはオパーレンに目をやる。オパーレンは横に飛んで来たオウルレンジにもたれながら言う。
「…降伏するなら、騎士道に基づいて、人道的な処置を約束する。」
「ヒュゥ。優しいねぇ。前々からプディンセスの野郎は気に食わなくてね。」
そう言って、笑いながらパイレーツは“右足の踵で甲板を叩く。”
「!!」
次の瞬間乾いた音が辺りに鳴り響く。それは銃声。パイレーツが右足に仕込んでいた銃弾が彼女の降伏宣言で油断していたミンティアに向かって放たれたのだ。そして目の前に広がる光景に周りにいた者達の目が見開かれる。
「お……」
ミンティアの口から思わず声が漏れる。
「“オパーレン殿”!!」
「がっ……!」
ミンティア目掛けた放たれた弾丸が放たれる直前で、パイレーツの企みに気づいたオパーレンが割り込み、代わりに銃弾を浴びたのだった。この妨害はパイレーツも予想外だったようで、顔を顰める。
「おいおい、マジか。オマエ狙いじゃなかったんだけど。てか、なんで気づいてんだ?」
「ゲスがなにするかは……目を見れば、分かるんだよ…」
そう言うと、彼女は膝をつく。銃弾はオパーレンを貫いており、被弾箇所からオパーレンの血がとめどめなく溢れる。
「オパーレン殿!なんで、私を…」
「ヘヘッ……客人を、傷つけちゃ……四騎士の、名折れなんでね。」
駆け寄ったミンティアに、オパーレンは笑って見せる。それを見たミンティアは一瞬泣きそうな顔になるが、すぐに気を引き締めると、怒りの形相でパイレーツに向き直る。
「貴様……!騙し討ちなど、どこまで卑怯なんだ…!」
「ケケッ!卑怯で結構!プライドなんぞじゃ、部下も、自分の命も守れねぇんだよ!」
次の瞬間、いつの間にか拾っていた銃の引き金が引かれ、銃弾が放たれる。
だが、放たれた弾丸をミンティアは一瞬で切り捨てる。
だが、放たれた弾丸をミンティアは一瞬で切り捨てる。
「覚悟しろ!」
ミンティアが駆け出す。地面が砕ける程の踏み込みで、彼女は雷鳴もかくやのスピードでパイレーツに迫る。
「ケケッ!」
パイレーツがミンティアの進行方向に銃弾を放つ。しかし放たれた弾丸の悉くを彼女は斬り捨てて、パイレーツとの距離をゼロに詰める。
「距離を詰めたぞ。」
ミンティアの憤激と共に放たれた斬撃を、パイレーツはバックステップでかわすが、拳銃の銃身が切断される。
「チィッ!」
パイレーツもそれを投げ捨てると、反撃にとカットラスを振るう。しかしミンティアが返す刀で振り返した剣とぶつかると、カットラスの刃がへし折れる。
「おおうっ!?」
パイレーツはすぐさま強烈なバックステップで距離を取る。しかしミンティアはそれを逃すまいと同じく駆け出す。
「逃さない!」
迫る彼女にパイレーツは裾に仕込んでいたナイフを投擲する。寸分の狂いもなくミンティアの額目掛けて放たれたそれを首を傾けることで、頬を裂かれながらもかわす。
尚も向かってくるミンティア。しかし、今度はパイレーツは腰に巻いたベルトを取り外すと、それを鞭のようにしならせ、ミンティアの額を叩く。
普通ならまともに喰らえば意識が飛びかねない一撃。
尚も向かってくるミンティア。しかし、今度はパイレーツは腰に巻いたベルトを取り外すと、それを鞭のようにしならせ、ミンティアの額を叩く。
普通ならまともに喰らえば意識が飛びかねない一撃。
「──それが、どうした。」
だが、ミンティアは倒れない。強い光を宿した眼はパイレーツを捉えている。
「プッ!」
尚も近づこうとする彼女にパイレーツは口を窄ませ、仕込み針を吹き出す。眼を狙って放たれた針に対し、ミンティアは腕を寸前で差し込んで受ける。腕に針が突き刺さるが、一切スピードを落とさずパイレーツに肉薄する。
「おいおい、マジかよ。」
「もう、手品はおしまいよ!」
間合いに入られたパイレーツがベルトを投げ捨て、ナイフを繰り出すより、速くミンティアが剣を振りかぶる。
次の瞬間振り下ろされた斬撃がパイレーツを斬り裂く。その一撃は深く、傷口から血がしとどに溢れる。
次の瞬間振り下ろされた斬撃がパイレーツを斬り裂く。その一撃は深く、傷口から血がしとどに溢れる。
「カッ……」
その一撃は確実にパイレーツの核を傷つけ、致命傷を与えていた。彼女の身体から力が抜け、大の字に倒れる。
「……ヘヘッ、やったな客人。大手柄だぜ…」
「オパーレン殿!」
パイレーツが倒れたのを見届けたオパーレンがよろめきながら、ミンティアに笑いかける。
そんな彼女をミンティアが支える。そして迎撃の手が緩まったことにより、オウルレンジが降り立ち、心配そうにオパーレンに寄り添う。
そんな彼女をミンティアが支える。そして迎撃の手が緩まったことにより、オウルレンジが降り立ち、心配そうにオパーレンに寄り添う。
「早く、彼女を治療出来る場所に!」
ミンティアがオパーレンの肩を抱え、立たせたその時。
「か、かかっ……」
パイレーツが笑う。だが、ミンティア達がそれを無視して離脱しようとする。
「この、アタシが負ける、とはな……カカッ。けど、よ。アタシは、寂しがり屋で、ね。死ぬなら、諸共だ…」
「……何?」
ブリリアント•アラモード 侵攻軍馬車内
「…クイーン•プディンセス。パイレーツが敗れました。」
馬車の椅子に座るクイーン•プディンセスに“ガムビショップ”が報告する。
その報告を聞いたクイーン•プディンセスはつまらなさそうに顔を顰める。
その報告を聞いたクイーン•プディンセスはつまらなさそうに顔を顰める。
「ふん。パイレーツの奴。存外使えないわね。まぁでも四騎士の内三人を誘き寄せたのは評価するわ。」
「死して尚、陛下のお役に立てるとは、パイレーツ殿も身に余る光栄でございましょう。」
彼女に緑の魔人リビコッコが大仰に言う。そのわざとらしい言い方にガムビショップが苦虫を噛み潰した顔をする。
そんな彼女の表情を知ってか知らずか、プディンセスが指示を出す。
「“人形”を起爆させなさい、ガムビショップ。パイレーツ諸共、パーラディオン共を消し飛ばすわよ。」
「貴様、道連れとはどういう……」
ミンティアが今にも消滅しそうなパイレーツに詰め寄ろうとしたその瞬間。
アイベリーとストルビィに対峙していたガムビショップに異変が起こる。
突如瞳から光が消え、ピタリと動きが止まる。
「?なんだ?」
突然動かなくなったガムビショップに二人が警戒を強めた次の瞬間。
彼女の身体から水飴のような粘液の柱が飛び出し、船の甲板に突き刺さっていく。
彼女の身体から水飴のような粘液の柱が飛び出し、船の甲板に突き刺さっていく。
「危ないっ!」
それを見たストルビィはアイベリーの腕を掴むと、脚でスドラゴベリィの背を叩いて飛翔させる。
その直後に彼女達がいたところにも水飴の柱が次々と襲い掛かり、船を覆っていく。
「わ、悪い!助かった!」
「いえ、お気になさらず。それよりも、何を……」
上空へと避難した彼女達が再び様子を見ていると、中心にいるガムビショップの胸の辺りがチカッチカッと赤く発光していることに気づく。
「あれは…?」
「ガムビショップの奴、分身を寄越してきたからなんかあるだろーなー、とは思ったが……。結構デンジャラスじゃねぇか…」
そう嘯く彼女にどこからかガムビショップの声が聞こえて来る。
『パイレーツ。あなたの戦闘不能を感知しました。今より30秒後に人形を起爆させます。逃げれますか?』
「ケケッ。見りゃ分かんだろ。無理だよ。」
パイレーツが笑いながら言う。彼女の言う通り、その身体はズタボロで、あちこちから出血している。
最早そう永くないことは素人目から見ても明らかだった。
それでもパイレーツは笑いながら、言った。
最早そう永くないことは素人目から見ても明らかだった。
それでもパイレーツは笑いながら、言った。
「気にすんなよ。生存競争に負けた。それだけさね。」
『……そうですか。残念です。』
そう言うと、ガムビショップの交信が途切れる。パイレーツは倒れたまま空を見上げる。
「マジメだねぇ……。そんなんじゃあこの先、デンジャラスだぜ。」
パイレーツがうわ言のように嘯く。そんな彼女にミンティアは近寄ると、胸ぐらを掴んで詰め寄る。
「道連れとは、どういうことだ!?あの水飴のリビモンは何をしようとしている!」
「ヘヘッ。さぁね?ただ一つ言えることはすぐにデンジャラスな事が起こる、って事……か。」
そう言いかけて、パイレーツの瞳から光が消える。
「ククッ……悪いなぁ、野郎ども…。先に、逝って、待ってるぜ……」
そして、ガクンッと糸が切れた人形のように彼女の身体から力が抜ける。そして、砕けて砂のように風に流されていった。
「…ッ!すぐにこの場を離れなくては!」
ミンティアが走り出すと、すぐにスドラゴベリィに乗ったストルビィとアイベリーが近くに飛んで来る。
「ミンティア!」
「アイベリー姉様!」
互いに無事だったことに少しホッとするが、すぐにミンティアはストルビィに言う。
「ストルビィ殿!多分あの水飴のリビモン、何かを仕掛けるつもりだ!すぐにここから、離脱した方がいい!」
見れば、ガムビショップの人形の胸の赤い点滅は早くなり、徐々にその身体が光始める。その魔力の高まりにストルビィは直感で、何かを察すると顔が真っ青になる。
「まさか、自爆するつもり!?」
ストルビィはすぐさま、他の隊に伝えようとして、気づく。
「オパーレン?何を」
「…へへ。最後に…カッコいい所を見せようと思ってね。」
見れば震えながら立ち上がったオパーレンが弓矢を構えていた。核を砕かれ、傷だらけの身体は今にも消えてしまいそうな程弱々しいが、彼女はそれを強靭な意志で奮い立たせる。
「オパーレン!それをすれば君は…!」
一方のスピーチネルもオパーレンの状態に気づき、彼女を制止しようと声をあげる。
だが、オパーレンはそれを遮るように笑みを浮かべて叫ぶ。
だが、オパーレンはそれを遮るように笑みを浮かべて叫ぶ。
「ストルビィ!スピーチネル!客人達!後は…頼んだ!」
彼女の矢を引く腕に、さらに力が入る。
「──母なる故郷よ。我が最後の行いを見よ。我、友を守り、未来へ導く篝火とならん。」
力を入れる度、骨が軋み、全身が悲鳴をあげる。視界が滲み、意識が遠のく。
───いや。まだ。まだ死ねない。
「これが、パーラディオン四騎士が一人、オパーレンの──」
───この一射に全ての力と望みを。友と故郷への祈りを。
「最後の煌き!!」
手を離し、矢を放つ。放たれた矢は橙色の軌跡を描いてガムビショップへと飛んでいく。
全身が砕けていくのを感じる。手足から始まり、全身の感覚が無くなっていき、視界が白く染まっていく。
全身が砕けていくのを感じる。手足から始まり、全身の感覚が無くなっていき、視界が白く染まっていく。
だが、彼女は最期まで笑顔だった。友と故郷のために果てる。それはなんとも。
「我ながら…騎士道……ここに、極まれり……だな。」
放たれた矢は見事ガムビショップの赤く点滅している箇所を貫いた。矢の一撃を受けたガムビショップから光が消え、次々とヒビが入り、割れていく。そして完璧に砕け散り、粉となって消えてしまった。
「や、やった…のか?」
アイベリーが呆然と呟く。それを証明するかのように静寂が戻る。
「オパーレン……」
ストルビィが声を漏らす。さっきまで彼女がいた場所に、彼女の姿は無く。ただ、役割を終えた弓が一つ、落ちているだけだった。その側に哀しそうに佇むオウレンジが悲痛な声色で鳴く。
「……ストルビィ。」
呆然とする彼女に寄り添うようにスピーチネルは近づくと、声をかける。
「……オパーレンはこれ以上ないくらい、立派にやった。彼女の意思を無駄にしないために、早く戻ろう。」
「…うん。分かってる。分かってるの。でも……」
ストルビィの視界が滲む。ポタポタと彼女の眼から熱い液体が溢れ、地面に落ちる。
脳裏を過ぎるのは共に彼女と過ごした日々。無鉄砲で大雑把、だが誰より勇敢で正義感に溢れたオパーレン。
「オパーレン……ッ!」
「……残存部隊はボクと共にフルーツバレーに戻るよ!動けないものは浜まで運んで!」
スピーチネルは嗚咽を漏らすストルビィの背を優しく叩くと、残存部隊を纏めて移動を開始する。
「ストルビィ……。」
アイベリーが声をかける。それに気づいたストルビィは涙を拭うと、スドラゴベリィに跨る。
「……お見苦しい所を見せました。私も戻ります。ブルベリン。彼女達を。」
ストルビィが指示を出すと、腕に包帯を巻いたブルベリンな彼女達の前に来る。彼女の駆るリビモンに相乗りしながら、アイベリーは尋ねる。
「…一応聞くけど、大丈夫?」
アイベリーの問いかけにストルビィは先程とは打って変わって強い瞳で答える。
「…大丈夫です。……私は、オパーレンの意思を無駄にはしない。」
「……反応、消失。申し訳ございませんクイーン。核を撃ち抜かれたようです。」
クイーンプディンセスの前に膝をつき、頭を垂れながらガムビショップが申し訳なさそうに報告する。
報告を受けたクイーンは空中に映し出された何かのメーターのような魔法陣を見て、ため息をつくと、ガムビショップに視線を移す。
「……いいわ、パイレーツと、あっちの主戦力級のリビモンの“回収”が確認出来たし。ただし、ガムビショップ。次の戦いでは私の期待を裏切らないでね。」
「はっ。寛大なるご処置。痛み入ります。」
それだけ言うと、クイーンは話は終わったとばかりに彼女から視線を外し、近くに控えているポップポーンの一人に問う。
「目的地までは後どれくらいかしら。」
「はっ!目的地までは後三時間程で到着予定でございます!」
兵士の報告に、彼女はそう。とだけ言って椅子にもたれ掛かる。
「もういいわ。下がっていいわよ。」
「はっ。」
ガムビショップを下がらせ、彼女が自分の馬車から出たのを見ると、彼女は天井を見上げる。
「……キング・パルフェ……」
クイーンはポツリと漏らすようにその名を呼ぶ。
キング・パルフェ。自分達を統べる比肩なき光輝燦然の王。常に輝きと共にあり、また、周りを輝かせる人。
そんな彼の伴侶となり、共に自国を統治することが、彼女は何よりも嬉しく、誇らしかった。
しかし、ある日突然彼は消えてしまった。突然の主人の不在に国に動揺が走った。だが、彼女に困惑は許されなかった。王なき今、彼らを統べ、導くのは女王たる彼女にしか出来ないのだから。
国の統治に忙殺され、頼る者がいない重責と不安、そして王の行方は未だに不明という孤独感に彼女が苛まされているある日。
緑のローブを纏った一人の怪人が現れた。怪人は言う。
そんな彼の伴侶となり、共に自国を統治することが、彼女は何よりも嬉しく、誇らしかった。
しかし、ある日突然彼は消えてしまった。突然の主人の不在に国に動揺が走った。だが、彼女に困惑は許されなかった。王なき今、彼らを統べ、導くのは女王たる彼女にしか出来ないのだから。
国の統治に忙殺され、頼る者がいない重責と不安、そして王の行方は未だに不明という孤独感に彼女が苛まされているある日。
緑のローブを纏った一人の怪人が現れた。怪人は言う。
『我は王に助けられた者。王は我を庇い、負傷しながらも怪物を撃滅したが、封印されてしまった。助けるには魔力を集めるしかない。』
戯言とも思える彼の言葉に最初こそ彼女は疑いはしたが、彼から託されたと言われた指輪を見て、考えが変わった。
それはかつて、彼女から彼にプレゼントをした指輪そのものだったからだ。
示された王との再開への解答。最早彼女に躊躇も容赦もなかった。最速で、最高で、効率的に魔力を集める。
それが多くの血と涙と怨嗟の上で築かれるものだとしても。
示された王との再開への解答。最早彼女に躊躇も容赦もなかった。最速で、最高で、効率的に魔力を集める。
それが多くの血と涙と怨嗟の上で築かれるものだとしても。
「……この身がどれほど汚れても。キング。もう一度貴方に会えるなら……。」
進むしかない。血塗られた道を。もう引き返せないし、引き返す気もないのだから。
街を出たフルーチェとジュジィの二人は森を散策していた。
「取り敢えずどこ行くー?なんか目的地決めよーよ。」
ジュジィの言葉にフルーチェはガムビショップから貰った地図に目を落とす。
「そうやなぁ。取り敢えずこのフルーツバレーっていうとこに行ってみるか。」
「地図の見方わかんのー?」
「カンやカン。多分あっちや。」
「ダメだこりゃ。」
そう言いながらザックリと目的地を決めると、二人は歩を進める。
「……にしても、のじゃロリ猫の奴また勝手な行動を取りやがって。」
「いきなりだったもんねー。まぁ、今に始まった事じゃないけど!」
額に手をやるフルーチェに、ケラケラと楽しそうにジュジィが笑う。
遡る事数刻前。街を出て、アイベリーとミンティアの二人を捜索を開始しようとした、丁度そのタイミングでいきなり彼女はこう言い出したのだ。
「あっ。ワシなんかやりたい事できたから先探しといてくれ。」
フルーチェが止めるよりも早く、彼女はどこかへと消えてしまったのだ。
「まぁ、アイツの事だから心配はせんでええやろうけど…困るわぁ。団体行動せぇへんの。二人見つけたら先帰ろか。」
「アハハ!それはアリかもね!多分ほっといてもいつか帰ってくるよ!」
二人がそう談笑していると、近くの草むらがガサガサと音を立てて揺れている事に気づく。
「「!」」
それに気づいた二人が警戒しながら、その茂みの方を見ていると、草むらをかき分けて何かが飛び出す。
「チピッ」
「……へ?」
「おー?」
二人の前に姿を現したのは、妙に甘い香りがするクリームのような装飾をつけた小さいピンク色の恐竜型リビモンだった。まんまるでつぶらな翡翠色の瞳は二人をジッと見つめており、時折コクリと不思議そうに首を傾げる。
「……なんやこのちんちくりん。」
「この辺に住んでいるリビモンかな?」
珍妙な来訪者にフルーチェが呆気に取られる中、ジュジィはポケットからお菓子を取り出すと、こちらを見つめるリビモンの前に差し出す。
「おー、よしよし。可愛い子だねぇ。そうだ。このお菓子あげるから、フルーツバレーまで案内しておくれー?」
「お前テキトーな事を……」
ジュジィの気まぐれにフルーチェが呆れていると、ピンクのリビモンはジッとお菓子を見た後、パクリとそれを食べる。そして、満足そうに目を細めると、リビモンはクルリも背を向け、歩き出す。そして一定距離まで進むとこちらへと振り返る。
「おっ、どうやら案内してくれるみたいだよ!早くいこーよー!」
「……マジかいな。」
ピンクのリビモンの案内に、スキップ混じりで進むジュジィの背を、フルーチェは追いかけるように歩いて行くのだった。
クリームのような粘質状の液体の沼の中で一匹の獣が瞼を開ける。
多人数が歩く地面の振動。そして沼から顔を出せば、憎き敵の匂いが鼻をつく。
多人数が歩く地面の振動。そして沼から顔を出せば、憎き敵の匂いが鼻をつく。
かつてこの土地には沢山の同胞がいた。殺し殺され、食う食われるの食物連鎖の関係であったが、それでもこの土地に生き、共に営む同胞に間違いなかった。
だが、突然よそから現れた侵略者の手によって、全てが奪われた。多くの同胞がその手にかかり、消滅していった。
最早残されたの自分と小さな同胞が一匹。種としては絶滅だ。その事実はもはや覆しようがない。
それでも。この怪物にはこの土地の絶対的頂点捕食者としての誇りがあった。同胞への想いがあった。
種としての絶滅は確定している。だが、まだ自分は終わっていない。自分にはまだ自分で“終わり方を選ぶ権利がある”。
侵略者を恨んではいない。自分達の種族は侵略者との生存競争に敗れたのだ。それは自然の摂理であり、文句を言うつもりはない。だが、やられっぱなしというのも癪だ。
沼から浮上した怪物、“ダイナキューティ・ラムプ”は地面を踏み締め、咆哮を上げる。
自分はまだここにいる、まだ生きているのだと証明するように。
「ふふー♪ふふふー♪」
とある一室にて緑の怪人、リビコッコが鼻歌混じりに空中に浮かべた呪文をまるで奏者のように手を振りながら組み替えていた。
彼が作業に没頭していると、後ろから声をかけられる。
「随分と楽しそうですねぇ。」
話しかけられたリビコッコが振り返ると、そこには白い蝙蝠のような怪人、ファルファレロがいた。
「おや、ファルファレロ。貴方が来るとは珍しい。」
「ちょっと私の遊んでいた玩具が壊れて暇してましてね。他のメンバーの様子をちょっと見学に。」
「あー、500年も長持ちしたのに、それは残念だねぇ。」
「全くその通りですよ。…にしても、貴方も結構面白そうなものを作りましたねぇ。」
ファルファレロはリビコッコの前に鎮座する“巨大なモノ”に目をやる。
それに気づいたリビコッコは得意げに鼻を鳴らす。
それに気づいたリビコッコは得意げに鼻を鳴らす。
「フフッ。いいでしょう?コレ、自信作なんです。」
リビコッコが笑う。その眼は怪しく、不気味に輝いていた。
軍略室で一人、グレーストが地図を睨んでいると、パタパタと足音を立て、一人のブルベリンが部屋に入り、慌てた様子で手足でジェスチャーを加えながら彼女に報告する。
それを聞いたグレーストは目を閉じ、立ち上がると、武器を取る。
「慌てるな。こういう事態はある程度想定していた。」
そう言うと、グレーストは軍略室を後にする。その後ろについて行きながら、ブルベリンが報告を続ける。
「敵はフルーツバレー前面に展開。前線で指揮をするのはナイトクリーム、か。……何?」
グレーストはブルベリンの報告の内、ある一つを聞いて、目を見開く。
「“クイーン”自ら打って出て来ている、だと?奴の馬車を確認した、と?」
今まで遠征は部下任せにしていたクイーン自らがこの局面にて指揮を取る、と言うのか。その報告を聞いたグレーストは思案を巡らせ、ある一つの答えに辿り着く。
「……成る程。つまり、“我ら”が最後、ということか。」
万が一にでも女王が倒れれば、プディンセスの軍隊は文字通り瓦解する。しかし、そのリスクを承知で彼女は自ら戦場に出て来た。
つまりそれは“最後の敵対勢力”に全力を注ぎ込みに来たことを意味していた。
つまりそれは“最後の敵対勢力”に全力を注ぎ込みに来たことを意味していた。
「……こんな時、“切り札”がいてくれたらな。…いや、今更言ってもせんなき事か。」
一瞬思いを馳せるが、すぐにグレーストは切り替え、外へと出る。
そこには彼女のブドウの房のような立髪に強靭な肉体を持ち、装甲に身を包んだ馬型のリビモンにして愛騎、“グレイプニル”が待機していた。
そこには彼女のブドウの房のような立髪に強靭な肉体を持ち、装甲に身を包んだ馬型のリビモンにして愛騎、“グレイプニル”が待機していた。
「行くぞ。我が愛騎よ。この土地は必ず守り通す!」
グレーストはグレプニルに飛び乗ると、そのまま手綱を握り、前線へと駆ける。
両雄衝突の時はすぐそこまで迫っていた。
To be continued…