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創作発表板 ロボット物SS総合スレ まとめ@wiki

第1話「出会い」

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sousakurobo

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最初に思った。ここは何処だ?
次に思った。一体何の冗談だ?
詳細は不明だが、途轍もない事態に遭遇してしまったようだ。
現実と全く変わらぬ仮想訓練を毎日行い、殺すのも殺されるのも慣れたもの。
何千万発使ったか分からぬほどあらゆる弾薬を消費してきたが、実際の現実で使った量は極僅かに過ぎない。
今日は一年に一度、毎年恒例の実弾訓練の日だった。
仮想空間で相手と直接戦闘した方が訓練として現実的ではないかと思いながら愛用の25mm機関砲を的に向けた直後、周囲の風景が無骨な訓練室から平原へと変化した。
簡易仮想訓練プログラムが起動したのかと思ったが、コンピュータは否定。理由は不明だが本当に平原のど真ん中に突っ立っているらしい。
機体越しとはいえ生まれて初めて踏み締める大地の感触に感慨が込み上げるが、浸っていられる状況ではない。
このような事態に至っては訓練どころではなく、情報の収集及び解析を全力で行う。
莫大な情報を一瞬で処理したコンピュータは人間の脳に負担がかからないよう極限まで簡略化した情報を思考制御装置を通して流し込む。

ここは何処だ?
さっきまでリアルタイムで更新されていた地球の全地形情報と自分の周囲の地形を照合した結果、該当無し。
一体何の冗談だ?
それが本当ならばここは地球上ではない事になる。
認めたくはないが通信に全く反応が無い理由として矛盾しない。
何の脈絡も無くいきなり何処とも知れぬ平原に放り出されるとは、唐突にも程がある。
まぁ、誰もいない事に比べれば百倍マシであろう。
理解不能な状況に遭遇したと同時にコンピュータが自動で作動させた最大設定の索敵は、正面からこちらへ真っ直ぐ向かってくる者達を完全に捉えていた。
正確には向かう先に突然自分が現れたのだろう。
ファンタジーに出てくるような異形の化け物共が丁度百匹、若い女性を追っていた。
若い女性といっても只の女ではない。
腰まで届く波状の赤い長髪、妖艶な肢体でありながら清純さを感じさせる容貌。少女と大人の女の美と魅力を兼ね備えた、男だけでなく女でも見惚れるであろう絶世の美女。
そこまではいい。
問題は、彼女の側頭と背中に悪魔のような黒く禍々しい翼が、尻からも悪魔のような尻尾が生えているという事だ。
一目見るだけならコスプレかと思うかもしれないが、この機体のコンピュータの情報解析力はそれが飾りではなく本物の翼と尻尾であると看破した。
機械人間でないのは確かである。改造人間か、人工人間か、ただ遺伝子を弄っただけの強化人間か。そこまでは分からないが、どれにせよこのままでは彼女は確実に化け物に追いつかれるだろう。
全く強化されていない第一世代人間に比べれば高い身体能力を持っているようだが、凄まじく疲労しており限界を超えている。
コンピュータの解析は現在の速度を保てるのは最長でも十秒と判断。
その解析情報を得てから一秒、女性は石に躓き転倒し勢い激しく地面に体を叩きつけてしまう。
必死に立ち上がろうとするが、既に体力は限界を突破しておりまともに体を動かす事すら困難なようだ。
可憐な顔は土と擦り傷からの出血で赤黒く染まり、瞳からは涙が止まる事なく溢れ出ている。
目を血走らせながら追ってくる化け物共が彼女をどうするつもりなのか、子供でも理解出来よう。
愉快とはいえない光景になるのは想像に難くない。
立ち上がれないと悟った女性は這って逃れようとするが、迫る死を僅かに伸ばすだけに過ぎない。
彼女の先にあるのは終わりだけだ。
自分が何もしないのであれば。
索敵と同時に起動した遮蔽は自機の姿を完全に消している。目では見えず、音は聞こえず、匂いもしない。レーダー、熱などその他あらゆる様々な索敵探知手段からも逃れられる。
二世代も旧式の機体なので遮蔽の性能は低く、高度な索敵能力や情報解析力を持った相手には容易く発見されてしまうが、化け物相手には十分だった。
鋭い五感をしているようだが所詮生物、こちらに全く気付いていない。
故に、女性を見殺しにしてこの場をやり過ごせる。
何処かと連絡が取れるのならそうしていたかもしれない。
襲っている相手が人間、それも明らかに軍人であれば家族親友でも見捨てただろう。
だが現在何処へも情報の送受信は出来ず、相手は人外。
女性から今の状況における有益な情報が得られる可能性を考え、心を決める。
一切束縛されないのはとても楽だ。何があっても何をしても、責任という重荷を背負うのは自分だけでいい。
自らの感情と矜持を、異常事態における緊急的対処という衣で包む。
化け物の注意をこちらに引きつける為に全遮蔽を解除し、極めて微小な機体の動作音を極限まで増幅する。
着用している軽装甲強化服、その外側の全高3m重量500kgの重装甲強化服……これを着用した兵士は重歩兵と呼ばれる……を走らせながら、武装を確認する。

基本 全高3m 重量500kg
全高3.15m 重量1000kg以上

右腰 連装100mm対戦車ミサイル発射筒×1
右肩 7連装100mm多目的ミサイル発射機×1
脚部3連装50mm弾発射機×2
25mm重機関砲×1
12.5mm重拳銃×1
左腰 6連装6.25mm機関銃×1
150cm振動熱斬刀×1
60cm振動熱斬刀×2
頭部着脱式長針弾発射機×2
短針弾発射機×2 左肩、7連装100mm多目的ミサイル発射機の上
腕部伸縮可変鋼線射出機×2

備考
機動靴装備(全高+15cm) 展開式軽装甲盾「折り畳み傘」×2

軽装甲強化服武装
12.5mm軽拳銃(アーマーマグナム)×1
30cm振動熱斬刀×1

右肩7連装100mm多目的ミサイル発射機の100mm自在弾又は脚部3連装50mm弾発射機の極熱拡散弾一発で化け物を殲滅出来るが、今後の事を考え弾薬の消費は最低限に抑えなければならない。
最悪の場合、二度と戻れないかもしれないのだから。
情報解析では素手でも殲滅可能と判断されたが、念の為に一発のみ使う。
女性と化け物が姿を現したこちらに気付き視線を向ける。
それに合わせるように、右腕に構えた全長2.5mの25mm機関砲の砲口を化け物の一つに向け単発射撃。
電力によって加速され、音速の約十倍の速度で発射された直径25mm長さ25cmの振動熱誘導徹甲榴弾を食らった化け物は爆裂四散し細胞の一つ一つまで完全に破壊され、焼け焦げた黒い塵となり霧散した。
消音装置で完全に消せたのをわざと増幅した発砲音が重々しく轟く。
時が止まったように全ての動きが一瞬停止した。
この機を逃すつもりはない。
足底に装着した機動靴の自在車輪が唸りを上げる。
最大出力のローラーダッシュ。
時速100km以上で全力疾走しながら25mm機関砲を左手に持ち替え背中の鞘から150cm振動熱斬刀を抜刀する。
女性の側まで辿り着き、彼女を背後に化け物共と対峙する。
熊と狼と人を足したような化け物が三匹、奇声を発しながら正面左右から同時に飛び掛る。
生身の人間なら成す術も無く牙と爪に切り裂かれ骸を晒すだろうが、重歩兵に対しては無謀だった。
迎撃に最適な位置へ移動し、左脇に構えた刀を右へ薙ぎ払い三匹同時に斬断する。
三匹は斬られる際に振動熱斬刀の刃から波紋のように伝わる振動波に全身を分解されながら、破壊されつつ離れていく細胞へ逃げも離れもしない特殊熱を極大熱量で送り込まれた。
結果、蒸発。
三匹は最初から存在しなかったように消滅した。
150cm振動熱斬刀は対戦車用の重歩兵究極の武装である。当然だった。
右への薙ぎ払い後、一切の無駄無き動作で、刀を持ったままの右手で薬指と小指を使い右大腿部に取り付けられた鞘から60cm振動熱斬刀を抜き25mm機関砲の先端に着刀する。
刀と薙刀のような銃剣の二刀流で残り九十六の敵を迎え撃ち、襲い掛かってくる化け物の大群を次から次へと斬り裂いていく。
思考制御とコンピュータの補助で操縦する重装甲強化服は自分の体以上に動かせる。
コンピュータ補助によって全く訓練をした事の無い素人でも神業の域の動作を容易くさせられるのだ。
と言っても「使える」と「使いこなす」では天地の差がある。
五歳の頃から今日まで十三年間現実と全く変わらぬ仮想訓練を行ってきた。

肩を落とした鉄の背中が何処までも続く。
鉄の軋みと男の呻き。
飽きる程繰り返した強敵(とも)との熾烈なる戦い。
殺し殺され屍の山を築き血の河を越えて、凄惨なる地獄に心は乾き、炎の匂いが染みついて、むせる。
訓練によって鍛えに鍛え、神業の神業と言うべき境地にまで達した自分にとって、現代の戦いの基本である高速高機動戦に全く及ばない化け物の動きは遅すぎて話にならなかった。
戦場に存在する全ての敵の動きがmm単位で知覚出来、どの様にどう動くのか正確無比に未来予測が可能。
故に、触れる事すら出来ず殆どの化け物は振動熱斬刀の刃で塵と化した。
最後となった化け物が背中を向け逃げ出すが、見逃す慈悲も情けも容赦も無い。
150cm振動熱斬刀を鞘に納刀して腕部に装着されている発射機から伸縮可変鋼線を射出、左大腿部の鞘に納められた60cm振動熱斬刀の柄に絡めて抜き放ち、最大出力で腕を振るう。
大きく弧を描く最も外側、60cm振動熱斬刀の刃に斬り裂かれ化け物は消滅、生まれて初めての実戦は完勝で幕を閉じた。
凄まじい速度で腕部に収納されていく伸縮可変鋼線を途中で60cm振動熱斬刀の柄から離す。
数百キロで飛んできた60cm振動熱斬刀の切っ先を人差し指と中指で掴み、クルクルと回転させて鞘に戻す。
25mm機関砲を右手に持ち直して着刀された60cm振動熱斬刀を外して鞘に戻し、背後に向き直る。
足を外に向けた、いわゆる女の子座りの姿勢で女性はこちらを見ていた。
不審や警戒に思われるのを避けて、完全に消去出来る機体の動作音と足音をある程度残しながら女性のすぐ正面まで歩き、止まる。
彼女の目にはどう映っているのだろうか。
右肩のみ紺色の真っ青な機体。
横書き三行の白字で海上都市 姫路 守備隊と書かれた盾を左腕に装着している、この三式重装甲強化服ブルーショルダーカスタムを。
情無用、命無用の鉄機兵がただ一人で化け物を殲滅した様を見て恐怖を感じているのだろうか。
どう話しかけたものかと思案していると、女性が口を開いた。
「貴方は……」
問うのではなく独り言に近い言葉だった。だが、まず自分から名乗るべきであろう。己が何者であるかを。外部音声越しに淡々と、静かに告げる。
「海上都市姫路守備隊重歩兵小隊隊長、清水静(しみず せい)」
それが彼女へ語る最初の言葉だった。

予告

次元を越え世界を越えて、今、男と女は出会った。
物語の幕が開き、運命の歯車が廻り始める。
盛大に奏でられる無音のプレリュード。
音を立てて動き出した舞台の壇上で、男は自らが主役である事をまだ、知らない。

次回「二人」

来週も静と異世界に付き合って貰う。

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