アットウィキロゴ

創作発表板 ロボット物SS総合スレ まとめ@wiki

eXar-Xen――セカイの果てより来るモノ―― Act.11E

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
過ぎ去った後も色濃く残る圧倒的な存在の気配――神気とも取れそうなそれに気圧され、圧倒され、しばし呆然としていた俺とベル。
普段ならまず皆の心配をする所だが、隣でぺたりと力無く座り込むベルを他所に、今の俺はそこまで頭が回らない。

(…………)

奴は一体何者だったのか? そもそも一体何がどうなったのか? まるで頭の整理が付かず、訳が分からないままに立ち竦む内。

「……色々と、聞きたい事がありそうだな。」

俺達の前に佇むアリスは、こちらに向き直りつつそう問うた。

「…………」

 それに対し、俺はただ無言を返答とする。
 言いたい、聞きたい事はそれなり以上にあるってのにそこまで思考が辿り着かない。

「だが、私から教えられる事はさして多いわけではない。あの者達の組織の名さえ今しがた知ったばかりだからな。」

 済まない、と加えてアリスは口を閉じる。
 別にアリスが謝る事なんて1つとしてありゃしないのに……って

「――イグザゼン、ソートシンク。」
「なっ!?」

 アリスの姿が瞬く間に希薄となり、俺の身体と重なって変質させ、同時に頭の中から声が響く。

「やるならやるで一言ぐらい断り入れてくれよ、ってこいつぁ……」
<これならば多少は分かるだろう? あの者が敢えて色濃く残したのであろう“歪み”の痕跡……まるで手繰って来いとでも言いたげなそれが。>

 俺の文句も聞いてか聞かずか。
 ただ、確かにアリスを、イグザゼンを通した超然的感覚をもって感じられる。椅子の上部から部屋の天井を突き抜け、更に遥か遠方へと延びる“何か”の残滓。

「…………」

 見上げて、見据える。
 果ての見えない軌跡。心象たゆたう漠然とした不安、混乱、恐怖。
 だが、この先にバールがいるというのなら迷う事もない。

「何があろうと出向いて、乗り込み、取り戻す……それだけだな。」





「――…………はぅ!? ……あ、あれ? えーと……ん?」

 ……嵐の如くピーマン追加だな、うん。

 いつか。

 そう、いつか。
遠い過去の出来事であり、かつつい最近にも感じられるその時。その瞬間。

「…………」

 僕はあの瓦礫の、鉄くずの山――グレートマインズ――の奥の奥。底の底。
外界とは隔絶され、日の光等当に届かず、闇の内に遥かに横たわる複雑怪奇にして縦横無尽に、網の目の如く張り巡らされた坑道。その最深部にいた。

 その時。その瞬間。
 僕はただの一介の労働者――鉄くずを漁り、僅かに得られる収入を糧に日々を暮らすゴミ拾い(スカベンジャー)だった。
 ギガラインにて防人を務める母の手を煩わせたくないと、15の時に家を出て、以来こうやって仕事をしていたが生活は困窮を極め、仕送りらしい仕送りも満足に出来ない日々が続いていた。

 なんとかしてここまで育ててくれた母親に頼らず、そして恩返しをしたい。そんな思いを胸に秘め、日々を過ごす……が、そう上手くいかないのがスカベンジャーというこの仕事。
 なら他の仕事を、と考えるのが普通だろうが、専門知識の欠片も無い僕に製鉄や発掘物のリバースエンジニアリングといった仕事が出来るわけも無く、
 マシンダムの操縦もそう特筆して上手いわけでもないので自警団なんてのも勤まらず、そもそも住所もはっきりしない僕に
 出来るのは結局このスカベンジャーという、「社会の最底辺」と嘲笑される仕事だけだった。

「…………」

 そんな僕がその時。その瞬間。この上ない歓喜に沸いていた。
 いつも通り借り物の作業用マシンダムを駆り採掘する内、岩盤の向こう側から覗いた明らかに人工的な光沢を帯びた“何か”。
 スカベンジャーの採掘物において、最も高価で取引されるのはこういった破損が少なくそのままでも駆動が可能な代物である。
 モノによれば一生遊んで暮らせるほどの大金が舞い込む事もあるとか噂され、そんな一攫千金を夢見てスカベンジャーと呼ばれる人々は日々ジャンクの山を漁るのだ。
 ただ、岩盤の崩落。掘り出し物を巡るスカベンジャー同士の抗争、バリードによる襲撃等により命を落とす者も多く、割に合っているかと言えば確実にノーと言えるのもまた事実。

「…………」

 周囲にいるであろう同業者に悟られぬように、内心歓喜に沸きながらも出来るだけ物音を立てずに周囲の瓦礫を取り払う。
 その“何か”――半身を掘り起こされたそれ――は複雑な文様を描かれた直径10m少々の球状の物体。
 艶やかで、透明感がありながらも、何処か底の見えない色無き色を湛え、人を引き込む名状し難い魅力を持つ。

「…………」

 僕は今までこんな奇妙で、同時に美しいと思えるモノを見たことが無かった。
 いつの間にかそれの虜となっていた僕は、まるで誘われるようにマシンダムを降り、片手をその“何か”に添えた。


――O‐R■gr■s■■on_ ■■g■t ■■■e■s.


 触れた掌より手を伝わり、耳に、脳裏に、心に、響き、轟く何者かの声ならざる声。
 それは人のモノではない。本能的に、根本的に、原初の恐怖を、畏怖を、警告を発する狂えた何か。


「!?」

 背筋に戦慄。全身に鳥肌が立ち、ほぼ反射的に跳ね飛び、尻餅を突く。
 今のは一体何だ?一体何の何だ?わけも分からず、理解出来ないまま、周囲を見渡し――

「っ!!」

 僕の正面。誰かが、何かが、そこに佇んでた。

 
 赤い、人影。


 人ではない人の形をした影。虚ろで、掠れ、揺れ動きながらも人の形を辛うじて保ったそれは一歩、また一歩、ゆらりとこちらに向かって歩み寄る。

 一歩歩む度に僕も同じぐらい後ずさる。
 恐怖と混乱、焦燥が綯い交ぜになり、わけも分からないまま身体を動かす。
 立ち上がり、逃げ出したい気持ちにも駆られるが、完全に腰が抜け、足が笑っており立ち上がれない。

「――――」

恐怖に視線は縫い止められ、ただその赤い影に向けられる。
酷く愚鈍な時間の矢は、怪異の一歩を幾歳月にも感じさせ――自らの背が背後の壁に当たった時。自身の終わりを確信した。

「――――」

 見開いた瞳孔を覗き込むように、屈んだ赤い影がいっぱいに映る。
 ゆっくりと、そっと頬を撫でる怪異の手の平。触れられた感覚は無く、まるで幻の様。
 だが、何か……人として、ヒトとして、最も大切な何か――を奪われ、失った気がした。そして――


 その時。その瞬間。


 ふっ、とぞくりとするほどに鮮やかに、艶やかに、妖艶に、その赤い怪異は口元に僅かに笑みを浮かべた――…・・・

 ――――それが、僕の最後の記憶。
 その後の事は全く覚えていない。
ただ、ただただ強い、強い「思い」に突き動かされ、酷く永い間その「思い」の手足となって……いや、その「思い」そのものとなって歩んでいた。そんな事だけは覚えている。

「…………」

 再び僕――レェン・マジェノが僕となった時。
 僕の頭は母の膝枕の上にあった。

 この上ない疲労感。
 この上ない脱力感。
 幾年もの間自分の身体を、心の大部分を占めていた“何か”がすっかり抜けてしまって、大きな穴が開いた様。
 自分の身体の動かし方すらしばらく思い出せそうに無い。

「…………僕は?」

 思いも無く、虚ろに声がただ漏れる。
 力無く、酷く掠れた声。喉を絞ってようやく漏れる。

 僕はどうしたのか?
 僕は何故ここにいる?
 僕は――?

「……なんでもないよ。」

 こんなに母の顔には皺があったか?
 こんなに母の手は細かったか?
 こんなに母は小さかったか?

 だけど。そうか。なんでもないのか。
 何でも無いならそれでいい。何でも無いならそれでいい。何でも無いならそれでいい。

「…………」

 何でも、無いなら、無かったのなら、よかったのに――……

                                                      Act.11_end

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最近更新されたスレッド
ウィキ募集バナー