第八章『混濁の戦場』
戦場を荒らす大蟹の甲羅を引き裂いたのは同胞だった。
「同士討ち?味方を、討ったっていうのか?」
「ジェイミー…貴様はまた、またそんな事をしてッ!」
シュートとサイバは困惑した。
そして、
「ーーーーッッ!!!」
ビークの怒号。発狂し、何と言っているか意味の解らない叫びが宇宙に木霊する。
そして、ジェイミーの《ラルガ》の大型回転斧が巨体の《カニバル》に最後の止めを撃とうとした。
「ーーーッ!!」
ブーストを最大限にして、武器を振りかぶろうとする《ラルガ》に突進し、機体をぶつけて引き離す。かなりの衝撃が両機を襲い、互いのコックピットを守るが装甲が剥がれ露わになった。
「おいビークさんよォ!なァにガン垂れてんだァ!オォ!?」
「…貴様は、貴様は絶対に!絶対にッ!」
ビークの額からドロリと夥しい量の血が流れた。
「同士討ち?味方を、討ったっていうのか?」
「ジェイミー…貴様はまた、またそんな事をしてッ!」
シュートとサイバは困惑した。
そして、
「ーーーーッッ!!!」
ビークの怒号。発狂し、何と言っているか意味の解らない叫びが宇宙に木霊する。
そして、ジェイミーの《ラルガ》の大型回転斧が巨体の《カニバル》に最後の止めを撃とうとした。
「ーーーッ!!」
ブーストを最大限にして、武器を振りかぶろうとする《ラルガ》に突進し、機体をぶつけて引き離す。かなりの衝撃が両機を襲い、互いのコックピットを守るが装甲が剥がれ露わになった。
「おいビークさんよォ!なァにガン垂れてんだァ!オォ!?」
「…貴様は、貴様は絶対に!絶対にッ!」
ビークの額からドロリと夥しい量の血が流れた。
「何なんだ?一体、何がどうなっているんだよ?うぉっ!」
機体に衝撃。シュートは状況が掴めないでいる。
「よそ見をしている場合なのか!地球軍のガードナーとやら!!」
黒い、竜宮零のガードナーが《01》が隙を突く。
増加装甲のお陰で比較的に無事だった。
「機体は破壊させてもらう。だがパイロット、貴様は連れ帰る!」
「そいつはガードナーなんだぞ?!だったら俺たちの、俺の…」
「火星には拾って頂いた恩義がある。それを返すまではな、例え私が地球側の人間だった可能性があったとしても、裏切るわけにはいかないんだっ!」
黒いガードナーは左腕を突き出し構える。六門の砲塔の先が光り、やがて回転を始める。零のヘルメットに映り込んだ《01》の四肢にマーカーが点滅する。
「厚い装甲だろうと撃ち貫く…発射!」
螺旋を描き飛ぶレーザーは、大きく広がってねらった場所まで突っ込んでいく。
「んなくそぉ!」
シュートは必死で回避運動を取るが、レーザーはどこまでも追跡していく。
「なら、イリュージョンウォール展かっ…がぁ!」
いつのまにか見失った一条のレーザーが背後から肩を打ち抜いたのだ。そして、バリアの展開に遅れが生じてしまい、次々と腕部脚部を破壊する。
「そこまでの用だな。それではライフルも使えまい。さぁパイロット。降参して出てくるがいい」
「…く、くそ、01動け、動け、動けよ!なあ」
コクピットから機体の破滅の音が聞こえる。だがシュートは認めたくなかった。
「何なんだよ…」
思えば何だったのだろう。
「戦いたくないと逃げて、いざ戦ってみればこの様で…俺は、何がしたかったんだよ?!こんな、わけわかんない戦争に巻き込まれて…畜生!畜生!動け01!負けっぱなしで良いのか!俺たちは!逃げてばっかで解決するわけないだろ?なあ動いてくれよ、頼むから…」
悲痛な叫びを吐露する。
「パイロットよ、出て来ない無理矢理にでもコクピットをこじ開ける!」
黒いガードナーが手を掛けようとする。
その時だった。
機体に衝撃。シュートは状況が掴めないでいる。
「よそ見をしている場合なのか!地球軍のガードナーとやら!!」
黒い、竜宮零のガードナーが《01》が隙を突く。
増加装甲のお陰で比較的に無事だった。
「機体は破壊させてもらう。だがパイロット、貴様は連れ帰る!」
「そいつはガードナーなんだぞ?!だったら俺たちの、俺の…」
「火星には拾って頂いた恩義がある。それを返すまではな、例え私が地球側の人間だった可能性があったとしても、裏切るわけにはいかないんだっ!」
黒いガードナーは左腕を突き出し構える。六門の砲塔の先が光り、やがて回転を始める。零のヘルメットに映り込んだ《01》の四肢にマーカーが点滅する。
「厚い装甲だろうと撃ち貫く…発射!」
螺旋を描き飛ぶレーザーは、大きく広がってねらった場所まで突っ込んでいく。
「んなくそぉ!」
シュートは必死で回避運動を取るが、レーザーはどこまでも追跡していく。
「なら、イリュージョンウォール展かっ…がぁ!」
いつのまにか見失った一条のレーザーが背後から肩を打ち抜いたのだ。そして、バリアの展開に遅れが生じてしまい、次々と腕部脚部を破壊する。
「そこまでの用だな。それではライフルも使えまい。さぁパイロット。降参して出てくるがいい」
「…く、くそ、01動け、動け、動けよ!なあ」
コクピットから機体の破滅の音が聞こえる。だがシュートは認めたくなかった。
「何なんだよ…」
思えば何だったのだろう。
「戦いたくないと逃げて、いざ戦ってみればこの様で…俺は、何がしたかったんだよ?!こんな、わけわかんない戦争に巻き込まれて…畜生!畜生!動け01!負けっぱなしで良いのか!俺たちは!逃げてばっかで解決するわけないだろ?なあ動いてくれよ、頼むから…」
悲痛な叫びを吐露する。
「パイロットよ、出て来ない無理矢理にでもコクピットをこじ開ける!」
黒いガードナーが手を掛けようとする。
その時だった。
一閃。手を伸ばした黒いガードナーの右腕が落ちたのだ。
「なんだと?!新しい機影に気付かなった?不覚!何者だ!」
背後に振り返る。それは対機動兵器用の大太刀を持った機体だった。ただ近年の人型マシンと比べると一回り大きな姿だった。
「ガードナーV…あれは」
「…シュート、無様だぞ。戦闘中の私語は慎めとあれほど言ったはずだ」
「親父…」
V字を象った肩の装甲、アグリットかつての月面戦争で駆った機体。Vガードナー隊の1号機だ。
「何だあの機体、アレは…うぅ、いや…思い出せない」
「…レインの亡霊か。火星軍め、嫌らしい事をする。だが、それも今日ここで終わらせる。月も、あの時の雪辱を晴らす!」
アグリットの《V1》は太刀を構える。
「…参る!」
頭部のバルカンを乱れ討ちながら黒いガードナーへ接近する。
「ふん、旧式のガードナーの分際で、私を止めるとは!」
零は残った左腕の大型ブレードで応戦する。
激しい攻防戦。片腕を失いながらも猛攻に耐える零。鍔迫り合い状態が続く。
「実体剣ならレーザーで折れるさ!」
黒いガードナーのブレードが光を帯びる。出力は最大、もと刃より伸びていく光の剣は《V1》の左肩ごと太刀を両断する。
「…見事だ、だが接近されたのが命取りだ!」
背中の飛行ユニットからバズーカが現れる。
「…接近されては避けれまい!」
「親父、殺しちゃ駄目だ!ソレに、乗ってるのは兄貴かもしれない!」
「…何?気は確かか?彼奴はあの時、死んだ。俺はあの時確かめた。生きているはずはない。お前も見ただろう?あの場に居て」
「でも声が、兄貴に似てるんだよ!じゃあ、何でプロトゼロがここに居るんだよ!」
シュートは必死に叫ぶが、アグリットにはシュートが冷静さを失いおかしくなったかと思っていた。
「戦いの最中に、よそ見をしているほど余裕があるわけないだろ!私を侮辱するな!」
怒りを露わにする零。
「とっておきだ!食らうが良い」
両腕を広げ、虹色の輝きを放つドームが黒いガードナーの周りに形成されていく。取り付いていた《V1》は弾き飛ばされ姿勢を崩してしまった。
「バカな?!イリュージョンウォールはプロトゼロには搭載されてはいないはず…何故だ!」
「コイツにはこう言う使い方もある」
胸の装甲が開く。覆っていたフィールドがひし形発射口へ収束されていく。
「消し飛べ!旧式のガードナーよ!!」
圧縮された虹色の光条が唸りを上げて《V1》へ駆け抜けていく。それは空間をも歪曲させ目標を一撃で粉砕、回避もままならずに、塵一つの欠片も残さなかった。
「…」
シュートは絶句。
「邪魔者は片づいた。これで貴様を連れ帰れる…通信?こんな時に」
零は通信内容を聞くと、非常に残念な表情を浮かべた。
「パイロット、今回はここで捨て置く。だが必ず、貴様を手に入れる。それまで生き残ることだ…また会おうシュート」
踵を返し、黒いガードナーは去って行ってしまった。
「…」
後に残るのは、無惨に残る機体の残骸と虚空の宇宙だけだった。
「なんだと?!新しい機影に気付かなった?不覚!何者だ!」
背後に振り返る。それは対機動兵器用の大太刀を持った機体だった。ただ近年の人型マシンと比べると一回り大きな姿だった。
「ガードナーV…あれは」
「…シュート、無様だぞ。戦闘中の私語は慎めとあれほど言ったはずだ」
「親父…」
V字を象った肩の装甲、アグリットかつての月面戦争で駆った機体。Vガードナー隊の1号機だ。
「何だあの機体、アレは…うぅ、いや…思い出せない」
「…レインの亡霊か。火星軍め、嫌らしい事をする。だが、それも今日ここで終わらせる。月も、あの時の雪辱を晴らす!」
アグリットの《V1》は太刀を構える。
「…参る!」
頭部のバルカンを乱れ討ちながら黒いガードナーへ接近する。
「ふん、旧式のガードナーの分際で、私を止めるとは!」
零は残った左腕の大型ブレードで応戦する。
激しい攻防戦。片腕を失いながらも猛攻に耐える零。鍔迫り合い状態が続く。
「実体剣ならレーザーで折れるさ!」
黒いガードナーのブレードが光を帯びる。出力は最大、もと刃より伸びていく光の剣は《V1》の左肩ごと太刀を両断する。
「…見事だ、だが接近されたのが命取りだ!」
背中の飛行ユニットからバズーカが現れる。
「…接近されては避けれまい!」
「親父、殺しちゃ駄目だ!ソレに、乗ってるのは兄貴かもしれない!」
「…何?気は確かか?彼奴はあの時、死んだ。俺はあの時確かめた。生きているはずはない。お前も見ただろう?あの場に居て」
「でも声が、兄貴に似てるんだよ!じゃあ、何でプロトゼロがここに居るんだよ!」
シュートは必死に叫ぶが、アグリットにはシュートが冷静さを失いおかしくなったかと思っていた。
「戦いの最中に、よそ見をしているほど余裕があるわけないだろ!私を侮辱するな!」
怒りを露わにする零。
「とっておきだ!食らうが良い」
両腕を広げ、虹色の輝きを放つドームが黒いガードナーの周りに形成されていく。取り付いていた《V1》は弾き飛ばされ姿勢を崩してしまった。
「バカな?!イリュージョンウォールはプロトゼロには搭載されてはいないはず…何故だ!」
「コイツにはこう言う使い方もある」
胸の装甲が開く。覆っていたフィールドがひし形発射口へ収束されていく。
「消し飛べ!旧式のガードナーよ!!」
圧縮された虹色の光条が唸りを上げて《V1》へ駆け抜けていく。それは空間をも歪曲させ目標を一撃で粉砕、回避もままならずに、塵一つの欠片も残さなかった。
「…」
シュートは絶句。
「邪魔者は片づいた。これで貴様を連れ帰れる…通信?こんな時に」
零は通信内容を聞くと、非常に残念な表情を浮かべた。
「パイロット、今回はここで捨て置く。だが必ず、貴様を手に入れる。それまで生き残ることだ…また会おうシュート」
踵を返し、黒いガードナーは去って行ってしまった。
「…」
後に残るのは、無惨に残る機体の残骸と虚空の宇宙だけだった。
カレンは洗濯物をフローリングの床にぶちまけてしまった。
「…まぁいいわ、洗い済みだし、畳むとしすか?」
まだ顔に少女の様なあどけなさが残る顔立ちだが彼女は立派な母親である。この顔で息子が二人も居ると言うと大概の人は驚くだろう。それぐらい若く見える。少なくとも十代後半には。
「私も人暴れしたかったなぁ…あの人ったら、『女は家で掃除と格闘してろ』だもんねぇ」
棚の上に飾ってある旦那の写真を睨みつける。
「ま、終わったら久しぶりに二人とも帰ってくるしカレーでも煮込んで待つとしますかぁ?なーんて…二人、ねぇ」
その隣、家族四人でハイキングに出かけた時の写真に目を向ける。
「あの子、カレーが好きだったのよね…って、いけない!いけない!アタシが信じなきゃ!そんなはわけ絶対ないんだからね?!」
母は信じる。
「みんな早く帰っておいで…アグリット、レイン、シュート」
カレンは早々と山積みの洗濯物を畳終え、カレーの仕込みに入った。
「…まぁいいわ、洗い済みだし、畳むとしすか?」
まだ顔に少女の様なあどけなさが残る顔立ちだが彼女は立派な母親である。この顔で息子が二人も居ると言うと大概の人は驚くだろう。それぐらい若く見える。少なくとも十代後半には。
「私も人暴れしたかったなぁ…あの人ったら、『女は家で掃除と格闘してろ』だもんねぇ」
棚の上に飾ってある旦那の写真を睨みつける。
「ま、終わったら久しぶりに二人とも帰ってくるしカレーでも煮込んで待つとしますかぁ?なーんて…二人、ねぇ」
その隣、家族四人でハイキングに出かけた時の写真に目を向ける。
「あの子、カレーが好きだったのよね…って、いけない!いけない!アタシが信じなきゃ!そんなはわけ絶対ないんだからね?!」
母は信じる。
「みんな早く帰っておいで…アグリット、レイン、シュート」
カレンは早々と山積みの洗濯物を畳終え、カレーの仕込みに入った。