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captar3 承 後編 

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―5―


「という事。各自あの尾には注意するように…。」

γ5の鋼機が剛蠍の尾で貫かれたをモニターゴーグル越しに見ながら久良真由里は自身の部隊員に告げる。
敵の戦力を図る為に生贄にされたγ5。
その事実を理解していながらもこれに異を挟むものはいない。
彼女の不興を買えば、次は自分が生贄にされるかもしれない。その恐怖がγ部隊に浸透している。
恐怖による統制、それがγ部隊の実態である。
剛蠍は胴を貫かれたγ5の鋼機に追い打ちをかけるように何度も尾を突き刺し鎌で機体を切断していく。
真由里はそれを眺めながら、

「ねぇ、充電はどうなりました?」
「は、はい、先ほど完了しました。」

目の前で起こった光景に声を震わせながら返したのはγ4だった。
つまりは準備完了。
これより前代未聞の作戦はついに決行の時を迎える。

「γ1より各員に告げます、20秒後にγ4,γ6以外は光学迷彩を解除。復唱を…。」

復唱の声が真由里の耳に響く。
真由里はその声に心地よさを感じながら

「あなたとは格が違うという事を見せてさしあげますよ、ねぇ、シャーリー・時峰。」

そう独り言を言った後、再び通信をオンにして

「時間ですわ、全機光学迷彩を解除!さあ、始めますわよ。」

真由里のアインツヴァインは光学迷彩を解除し、その姿を表す。
まだ深夜である為、その青い装甲は闇に紛れて濃紺に見える。
携えるのはγ5の鋼機が持っていたのと同じアサルトライフル一つに、腰部にハンドガンが装着されている。
それと同時に現れるのは4機の鋼機、全て同型のアインツヴァイン。
剛蠍はそれを感知し、まるで驚いたかのように辺りを見渡した。

「γ3、γ2、γ6撃て!」

その号令と共に剛蠍への一斉射撃が始まる。
ナノイーター装甲。敵の攻撃を喰らい自らの装甲に変えるシステム。
ナノテクノロジーの権威レイン・フォード博士は回収された鋼獣、呼称名『天狼』を元に実験と研究を重ねた結果この装甲には3つ打ち破る方法がある事が判明した。
1つ目は高熱量によって装甲を溶解させること…いくら物質を高速で分解するナノイーターといえども、熱の前には無力である。だが、鋼獣は冷却性にも優れており現行の鋼機が携帯出来る装備では鋼獣を溶解するにたる熱量を出すものが存在していない。
遠距離からのミサイルによる波状攻撃をするという案も存在はしていたが、街中で暴れている事が多い鋼獣を相手にする場合は二次被害を考慮するならまさに最終手段とも言え望ましいものではなかった。
かのブラックファントムは正体不明の紅の光でこの方法を実現させ鋼獣を破壊していたというがまったく持って信じられない話である。
2つ目、ナノイーターのルーチンを突くという方法である。
ナノイーターは受けた攻撃を分解し、吸収し、自身の装甲へと還元するという性質を持つ。この許容限界を超える攻撃を行うという点だ。
秋常譲二がかつて『天狼』と接敵した際に『天狼』の翼をもぐ事に成功している。これは大型外付けスラスターを弾丸のようにしてぶつけた事によって得られた成果であるが、これが何を意味しているのか?が重要になる。
つまりはナノイーターには受ける攻撃を無効化するにも許容限界が存在しているという事だ。
ナノイーターの持つ分解速度、それを超える早さと質量を与えれば、ナノイーターを超えて機体にダメージを与える事が出来る。
今、真由里の指示の元、γ部隊が実践しているのはそれであった。
金属と金属がこすれあっておこるきしみのような悲鳴をあげながら剛蠍はγ3に向かって走る。
その姿には少なからず装甲の欠けが見られ、確実にナノイーターの無力化領域を超えた事を感じさせた。

(ですが、この方法はやはりあまり現実的ではないですわね。)

そう真由里は思った。これを実行するには今の鋼機の武装では威力が低すぎる。
確かに分解速度を上回りダメージを与える事には成功しているが、鋼獣のナノイーターには再生能力もある。
10の力で攻撃しているのに、9の攻撃を無力化されて、そのまますぐに再生が始まり結果的にダメージはなかったことにされてしまう。
あくまで鋼機の武装は鋼機を破壊する事を想定して作られた武装なのだ。鋼獣を倒すような火力は必要とはされておらずそれよりも汎用性を見て作られている。
再生の許容すら超える攻撃を加えれば破壊は可能なのかもしれないが、例え数十機の鋼機による攻撃を行った所で、大破させるには相応の時間はかかる。そして敵はそれまで優しく待ってくれるような相手ではない。
敵も無傷とはいかないだろうが、鋼獣を行動不能にする前にこちら戦力が削られてしまう可能性が高い。
基本的に鋼機と鋼獣が戦った場合、敗北するのは鋼機なのだ。そしてこちらの数が削られれば結果として与えられる攻撃の手数が減り分解と再生速度が上回ってしまう。
もし分解のしづらい大口径速射砲などというものが存在していれば、この第二案で撃破することも可能なのかもしれないがそんなものを鋼機が携帯出来るとも思えなかった。

(いや、一つありましたわね―――)

と一瞬真由里の中に可能性が頭をよぎったが今は関係ないと思考切り替える。
今行ってるこれは本当の切り札を使うためのめくらましに過ぎない。準備が完全に終わるまでに、注意を引くというのが他の機体の役割だ。
そして切り札である第三案。これが使えるかどうかが人類が鋼獣に勝てるかどうかの鍵になる。
γ3が紙一重に剛蠍の尾を回避するのを確認した後、

「γ4、γ6始めるわよ」
「了解です。」
「了解。」

聞こえる二人の返答。

「γ3が10秒後にネットを発射。がんじがらめにしてやりなさい。」
「しかし、γ3があの距離では巻き込まれる可能性が…。」
「関係ないわ、今しかチャンスがない。いい?これを逃せば私達は全滅よ?なにγ3だって回避できるかもしれない。いいわよね?γ3。」

そう尋ねる真由里。
γ3からの返答はない、交戦し喋る暇もないのだろう…。
構わず真由里はカウントを初めた。

「カウント5,4,3、」

γ3の鋼機が鋼獣から離れようと大きく後ろに跳躍する。

「2.」

それと同時に、迫る剛蠍の尾。
右足に直撃し破損、破壊されバランスを失ったγ3の鋼機は着地に失敗し、機体を転がす。

「1、ぜぇ~~~ろ。」

カウント終了と同時に、剛蠍の50mほど離れた左右に二機の鋼機が光学迷彩を解除し姿を表す。
その両機の肩には大きな四角い筒のようなものが担がれている。
大砲のようにも見えるそれから何かが剛蠍に向けて発射される。
発射された弾丸は破裂しひも状のものが鋼獣に覆いかぶさるようにしてまとわりつく。
それはネットだった。
人類が鋼獣を無力するために作り上げた切り札AMBエレクトロニカルネットランチャー。
鋼獣は絡まるネットをすぐにその鎌で切り裂こうとする。
その隙を与えずに真由里は指示を送る。

「全機攻撃、ダルマにしましょう。」

それと同時に各機が発砲。
鎌に命中。普通であるならばこれは大した効力の無い攻撃である。
だが、この時だけは違った。
地表に落ちたのだ、剛蠍の右鎌が…。
何が起こったのかわからないとでもいうかのように剛蠍はその紅の瞳で自身の落ちた鎌を見つめる。
続く銃撃、次は左鎌がもがれ、これで剛蠍がネットを切り裂く手段が失われる。
続いて、右脚。まるで柔らかいものを粉砕しているかのように4本、全てが破壊され、剛蠍の腹部が地表に付く。
次に左脚、これも即座に破壊された。

「尾ももいどきますか、暴れられたら面倒ですしね。」

そういって尾に銃口を向ける真由里機。
他機もそれに合わせて発砲する。
太い尾がバターのように銃弾に貫かれ削られていき、地にもがれた。
この間40秒ほど、たったそれだけの時間で剛蠍はその脚と鎌と尾を失い文字通りダルマとなったのだ。
これは普通ならばありえない光景だ。
だがそれをこの『Anti Metal Beastエレクトロニカルネットランチャー』が可能にする。
これが第三案。
ナノマシン自体の無効化案だ。
ナノイーター装甲とはつまるところナノマシンによる装甲の形状変化で衝撃を吸収する第一段階、ナノマシンによって攻撃自体を分解する第二段階、ナノマシンによって分解した物質で装甲を補修する第三段階が存在している。
ならば、このナノマシン自体を超高圧電流を流す事によって無力化すればどうなるか?
ナノイーター装甲はその強みを失い。ただの脆い金属の塊になる。
しかし、ナノマシンそれぞれの耐電性も非常に高く、少し電流を流した程度ではその機能は失いはしない。
そこで開発されたのがこのディールダインエンジンと直結する事で高圧電流を流し続ける捕獲網である。
この兵器は充電に時間がかかり、射程が短い為あてるのが困難であるという欠点はあるものの現実的鋼獣の破壊を可能にする。
まさに人類の半減を象徴する画期的な武装と言えた。

「各機、敵鋼機にライフルを構えて待機。」

そう指示を出され、γ4とγ6以外の各機は銃口を構える。
動くための全ての武装と足をもいだがそれでも反撃の可能性がないわけではない。
最悪を想定しての真由里の指示だった。

「γ4、γ6。ディールダインエンジンとのネットの直結はちゃんと出来ています?」
「大丈夫です、」
「γ3はー。」

そういってあたりを見渡す真由里機。
その後少し驚いたように

「あら、悪運強いですわね、γ3。」

剛蠍を包むネットから少し離れた位置で転がっているγ3機を発見し、そう感想を漏らした。
後続としてやってきた鋼機運搬用のコンテナに剛蠍を積みこみγ部隊は死傷者1名で作戦を完了させた。



―6―

作戦を終え、イーグル本部鋼機格納庫に戻った久良真由里を迎えたのは賞賛の声だった。
人類の手によってブラックファントムという不確定要素なしでついに鋼獣に勝利した。
この偉業を成し得た英雄として久良真由里は拍手喝采で迎えられたのである。

「ご苦労様だったね、真由里くん。君がイーグルにいてくれて本当に助かるよ。」

そういったのはイーグル幹部の男の一人である。

「いえ、そんな事はありませんわ…一人死傷者を出してしまいましたし…一人は大怪我をしました…私の未熟さを責める所です。」
「情にも熱いのだね。君のことを仲間を生贄に捧げる女と揶揄するものもいるらしいがそんなものは大きな勘違いのようだね。ハハハ。」

脳天気に笑いながら唾を飛ばす男に真由里は少し不快な顔をしたあとまた、顔に笑みを浮かべて、

「ええ、そのような事を言われる事もあります。これも私の不得がなす所です。」
「いや、君なら大丈夫だよ、イーグルの未来は君にかかっているよろしく頼むよ。」
「はい、ありがとうございます。」

後ろ手にさっていく男に頭を下げる真由里。
そうして遠くへ去ったのを確認した後、唾を拭い

「ふん、豚が…。」

と小さく誰にも聞こえないように吐き捨てた。
その後、真由里は周りを見渡す。ふと一人の男が目に留まる。

(あれは、クリフ・ブラウン…イーグルを辞めた人間がなんでこんな所に…)

男、クリフ・ブラウンは無愛想な茶色のスーツにを身を包んでおり、その金髪をいじりながら周りを見渡していた。
人指し指にはダイヤの指輪がはめられている。
クリフは仏頂面で辺りを見渡して、整備係の女性を捕まえて話かけているようだった。
女好きで有名な彼だ、口説いているのだろうか?
その様子を覗こうと近くに歩みだそうとした真由里の右肩を誰かが掴んだ。
何かと思い一瞬からだを硬直させ身構えた真由里だったが、背後にいる人物を振り向いて見て、少し脱力した。
面倒くさそうなのに捕まったと思いその人物に声をかけた。

「なんです?シャーリー・時峰。祝辞ならもう聞き飽きたのでいいですよ?」

そういって自分の肩を掴んでいる手をよけるようにして払った。

「久良、お前!あの配置はどういうことだ!」
「どうって何をさしているのかわかりませんわ?」
「お前の部隊の三之秀次の事だ。今回の戦死者の!」
「ええ、彼は残念でしわたね…。わたしとしても申し訳なく思っていますわ。」

真由里はそう言って笑いながら三つ編み間に指を通してくるくると回す。

「残念?あれのどこが残念だ!配置をよく思いだせ!彼だけが鋼獣との距離が近い。あれでは見つけてくれといっているようなものだ!」
「そうですわね、私の作戦の不備ですわ…いかんせん短い時間で組み立てざるを得なかったもので…。」
「ならば、なんで現場で指揮しない!」
「彼は出撃する前にこういったのですよ『もし私が見つかるような事があったら一切手を出さないでください。自分でなんとか耐えてみせますから…』とね…。」

そうしれっという真由里にシャーリーは激して言う。

「嘘を言うな!貴様、彼を生贄にしたな!ああ、鋼獣への包囲網とネットの充電時間を考慮すれば、見つからずに接近するというのには少々の不安が残る。だからこそ、誰かが1機囮になって行動して時間を稼げば…その危険性は限りなく0に近い。お前はそれを見越して三之秀次を生贄にしたんだ!」

そう叫び今にも胸ぐらを掴みかかりそうになっているシャーリーに真由里は口に手を当てて苦笑して、

「妄想もここまでいくと凄いですわね、シャーリー、あなたこの間のテストで脳のどこかまでやられたのではなくて?いい医者を紹介しますわよ?」
「久良!」

そう叫びシャーリーに対して真由里は先ほどまで見せていた笑みを引っ込めて心底不快そうにしていう。

「五月蝿いですわね。イーグルを去るあなたにいう必要がまるでないことですわ…あなたの正義感、聞こえは立派ですけどね…あなたその正義感で一体何人の仲間を殺してきました?」
「それとこれとは話が――――」
「違いませんわ。」

反論するシャーリーを遮り否定する真由里。
この女は何も理解していないとそう内心で侮蔑しながら真由里は続ける。

「結局の所、戦場で人は死ぬんですよ、シャーリー。私はそれを最小限に止めようと努力している…それだけの事です。ほら、シャーリーこの間のあなたのようにあなたの部隊のほとんどが全滅するという事態を私は未だに陥ったことがありませんわ…。」
「あれは――」
「だから、あなたに何言われるいわれはないし、あったとしてもあなたにそれを言う資格がないんですよ。それでは私は報告がありますのでさようなら…。」

そういってシャーリーの肩を叩いて、背を向けて去っていく真由里。
シャーリーはその背に何も言えず、ずっとそれを見つめていた。
ふと、真由里は何かを思い出したかのように手を叩いて背中ごしにシャーリーに語りかける。

「ああ、そういえば、三之秀次が一昨日私にとある事を他の部下に言っていたんですよ、それ私偶然聞いてしまいまして…。」
「三之が?」
「ええ、確か『あなたはシャーリー・時峰に指揮官として劣っている』でしたっけ?まったくこんな事を言わなければあんな事にならずにすんだかもしませんのにね…口は災いの元って――」
「久良!!!!!!」

激昂し掴みかかろうとするシャーリーの手を取り、真由里はシャーリーに顔を近づけて笑顔を浮かべて言う。

「雪華私がいただける事になりそうですの、機密保持の為に使用者登録の解除申請時間かかるんでしたっけ?さっさと手続き終えて私に寄越してここを出てけよ、無能。」




―7―

同日、深夜。
イーグル本部鋼機第四格納庫。
本来、幾つもの鋼機が置かれている筈のこの場所に今、鋼機は一機たりとも存在していない。
代わりに存在しているのは一匹の獣。
その体の全てを機械で構成されており、全長10m近くという異常な大きさを誇ったものだ。
鋼獣『剛蠍』。
人類を虐殺する尖兵が今、手足と尾をもがれそこに鎮座していた。
その体にはジジジと音を鳴らすディールダイン発電炉に接続されたエレクトロニックネットがまかれており、その強さの大部分を担うナノイーターをも無力化している。
つまるところ今、この剛蠍は囚われの身にあるということである。
後日、CMBU(鋼獣対策ユニット)に送られる予定のそれは貴重な鋼獣のサンプルである。
『剛蠍』は詰んでいる。
この場から動くことは出来ない故に、この場から逃げる事も敵わない。
ただ、ただ、そこにいるだけしか出来なかった。
不覚。
かの聖女から与えられた使命を全う出来ない自信の不甲斐なさ。
敵に圧倒的に力で勝っていた己がいとも簡単に虜囚になった情けなさ。
この屈辱、この恥辱、剛蠍にはとてもではないが耐えられるものではなかった。
けれどこの場から逃れる術はない。
だから詰んでいる。
剛蠍自身の手ではどうする事も出来ない。これより己は標本のように扱われるのだろう…。
その未来を剛蠍は予想した。

「け・れ・ど、それじゃあ、あんまりにも簡単にいきすぎて面白くない。そう思わない?僕はそう思う。」

いつからそこにいたのか…目を見張るような美しさを持つ銀の髪の男がそこにいた。
この世にあるべきでない醜悪さの全てを詰め込んだその男はおどけたような様子で剛蠍を覗きこむようにしてみる。

「僕らとしてもさ、君が負ける事は想定してたんだけどさ、あまりに簡単にいきすぎちゃってちょっと拍子抜けなんだよね。これは面白くない。面白く無いんだ。だからさ―――」

そう言った後、銀髪の男は指を鳴らす。

「ちょっとぐらい面白くなるようにしよう。ね?」

先ほどまで格納庫にずっと響いいていたジジジという音が消える。
ディールダイン発電機の機能が停止したのである。
そしてそれの意味する所は―――――

「レディースエンドジェントルメン、楽しい楽しい低俗な道化劇(アテルラナ)の始まりだ。さあ、ありとあらゆるものをぐっちゃぐちゃにしながら楽しんでいこうじゃないか!あははははは。」

銀髪の男の背後にいる剛蠍の双眸が紅く光る。
許さない、許さない、許さない。
貴様らの全てを殺し尽くしてやる。
受けた屈辱の全てを憎悪に変えたかのように感じる禍々しい眼光だった。




―転に続く―

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