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captar3 エピローグ

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シャーリー・時峰が第七機関第四区になる木崎病院の個室で目を覚ましたのは格納庫襲撃事件から2日後だった。
シャーリーは雪華で無理な機動をしたものの外傷は打撲だけであり、軽傷であったが極度に追い詰められた精神状態での戦いがたったのか疲弊が酷く目が覚めてからも1日は寝ているように医者からドクターストップがかかっていた。
シャーリーは目が覚めて、今は少し体の自由を取り戻したもののまだ復調とはいえず自分の情けなさに少し苛立ちを覚えながら先の戦いに思いをふける。
あの戦場はどうなったのだろうか?
イーグル本部鋼機格納施設への襲撃。それに対して自分が雪華に乗り、少なくとも4機の鋼獣を破壊した所までは覚えている。
もはや、何度九死に一生を得たかもわからぬ奇跡的な成果。それを手にしてなお現れた最後の増援。
それが現れたところで意識が途切れてしまった。
意識の切れる間際、薄らと覚えてるのは見覚えのある紅の光。あとはあの絶望的な戦況で何故か抱いた安心感。
それが何か推測するのはそれほど難しい事ではなかった。
何故ならあの光をシャーリーは一度戦場でその眼で見ている。

(ブラックファントム…いや、リベジオンか…)

漆黒カラーリングが施された紅の光を纏う悪魔のような機体。
その瞳を見るだけで最初はその機体がまとっている禍々しいオーラに畏れを覚えた。
だから、こそ、その機体が出すあの紅の光を忘れる筈がない。

(あれが最後の敵を排除してくれたのだろうか?)

あの状況で自分が生きている事からそう考えるのが妥当だろう。
もしあの状況でリベジオンが敵を倒していないのであれば、今、ここで生きている自分は一体何だ?という事になる。

(いや、希望的観測にすぎんな…)

そう自分の楽観的思考にため息を吐く。
リベジオン、たった1機で何機もの鋼獣を一撃で倒す化物機(モンスター)。
原理は不明だが、あれは我々の想像を絶する性能をその身に宿している。
AMB武装が開発されるまでは、あの機体だけが唯一鋼獣を倒しうる機体だった。
だが、リベジオンは軍属の機体ではない。出自はわからず、誰が何の目的で乗っているのかもわからず、どこからともなく現れ鋼獣と戦う。
そんな機体だった。それがイーグルが主導で行ったブラックファントム捕獲作戦の成功によりリベジオンの操縦者である黒峰潤也とリベジオンの捕獲に成功した。
その後、時峰九条の図らいもあり、黒峰潤也とイーグルは協力関係を結ぶことを成功した。
だから、イーグルはリベジオンそして黒峰潤也とのホットラインを持っており、いつでも連絡を取ることが出来るようになった。
もっとも二日前の事件で鋼獣と交戦していた際、リベジオンもまた別の所で鋼獣と交戦していたのだという。
だからこそ、リベジオンが自分たちの所に間に合うのかというと疑問がないわけでもなかった。

(イーグルで聞くしかないか…。)

施設の被害状況。増援にかけつけてくれたγ部隊の兵士の安否も気になる所だ。

「あら、難しい顔して考え事かい?」

その声にはっとしてシャーリーは顔をあげた。
そこには煎餅を齧った老婆が扉を開けて立っていた。

「お養母様(ばあさま)!」

驚きつい大きな声を出すシャーリー。
彼女が養母と呼ぶ老婆。名を時峰九条という。
老婆はシャーリーの声に耳を抑えながら、

「あー、はいはい、老体に大声は結構きついんでもうちょっと声量さげてくれるとお婆ちゃんは嬉しいかな…。」
「す、すみません。」

そういう発言に対して少し九条は不満そうに…。

「まったくこの娘はなんで、そう他人行儀な言葉を使うかな、あたしゃごめんでいいって前に言っただろう?」
「うっ、未だに慣れなくて…。すみません。」

そう謝るシャーリー、その表情は緊張でぎこちなかった。
その様に九条は頭に呆れたように手を当てる。

「ああ、いいよ、うん。わかった十全にわかった。今度までにはなんとかしてよ、それ。」
「すみません。」

そう何度も謝り萎縮するシャーリー。その様に苦情はため息を吐いた。
シャーリー・時峰と時峰九条は養子と養母の関係ではあるが、シャーリー自身どちらかといえば身寄りのなかった自分を拾ってもらったという意識、そして彼女への憧れと畏敬の念もありそういった感情は中々抱けなかった。
どちらかというならば師弟、この言葉が2人の関係を示す言葉としては近い。

「それよりお養母様、なんで今日はここに?ブラックファ…いえ、リベジオンに随行する任務に付いている聞いていたのですが…。」
「なんだい、かわいい娘が入院したっていうのにくるのはおかしいっていうのかい?」

九条はわざとらしく目にハンカチを当てて泣いた振りをする。

「いえ、それはとても恐縮というか、ありがたいのですが各地を飛び回っているあなたがすぐに自分の元に来れると思っていなかったもので…。一体どうやって?」
「そりゃ愛さ。」
「あ、あのですね、ちゃんと答えて―――」
「まーこの理屈が気に入らないんだったら、こう答えとくよ。あたしゃ、何処にだっていけるのさ、行きたいと思えばね。」
「そっちのがもっと酷いと思うんですけども…。」

シャーリーが九条に何か質問して、このように煙に巻かれるのは別にこれが初めてというわけではない。彼女は気づいたら『そこ』にいる事が多い。
凄い移動手段だとか、気配を気づかせずとか、そういったものを凌駕した何か神がかり的ものが彼女にはあるのではないか?と思うことは多々ある。
神出鬼没。これは時峰九条を差す時によく使われる言葉の一つだった。
彼女の常識の枠を遥かに凌駕したその能力のせいで大体の事柄が『九条だから仕方ない』『彼女ならやりかねないから考えるだけ無駄』と片付けられてしまっている。
けれど、実際の所はどうなのだろうか?シャーリーは初めてこの場でそう思った。
九条はそう考えるシャーリーを特に気にもとめもせず話を進める。

「ま、なにはともあれ、無事そうでよかったよ。例の事件に加えて入院したって聞いて慌ててきちゃったさ。」
「大事を取っての入院なだけなので、明日には退院して職務に戻る予定です。」

嘘である。あと2日は療養しろと医者からは言われている。
シャーリーなりの九条に気を使わせないようにする為の発言だった。

「そうかい…。ならよかったよ。ああ、ついでに事件の顛末聞いとく?まだ耳に入ってないんだろう?まあ、あたしが言いたいから何も言うなって言ったんだけど…。」
「あのですね…。」

シャーリーは少し呆れながらも苦笑する。

「あんたが蠍の鋼獣を倒した後に来た援軍。あれはリベジオンが撃破した。槍で一発刺されたら塵になったらしいよ。一体どんなオーバーテクノロジーなんだろうねあれ。」

予想通りといえば予想どおりだった。あの状況であの機体が来たのならばそうなる可能性が高い。

「やはりそうでしたか…その後は?」
「別に大した事ないさ、しいていうならば、貞夫は今回の件の責任で結構不味い状況に立たされてる、というよりはイーグル全体がかね。危機管理の問題の甘さをかなりCMBUからきつめに追求されたそうだよ。」

それは仕方ない事だと思った。
捕獲した鋼獣が脱走し、暴れ周り結果、データも取れない塵になった。
そもそも逃がすような警戒の甘さは追求されてしかるべきというのが普通の見立てだろう。
あの現場がどれほど奇々怪々な状態になっていたとしても…。

「どうして脱走したか…はわかったんですか?」
「いーや、警戒の為に付けた警備兵、警備システムの全てが同日同時刻に無力化されている。」
「同時刻に…ですか?」
「そう同時刻だ。」
「―――ありえない。」

システムだけの無力化ならば同時刻になんとかする術はあるのかもしれない。
だが全ての警備兵を同時刻に無力化するという事は本当に可能なのだろうか?

「だからさ、イーグル(うちら)は疑われている。事実を隠蔽するために訳の分からない情報を提出したんじゃないか…ってね。」
「それは―――」

当たり前の反応ではある。
しかし、それは秋常貞夫の人柄を知るシャーリーからは考えづらい事だった。
彼はおそらくはイーグルの誰よりも正義感が強く、清廉潔白であろうとする人間だ。
そんな人間がそういった情報を包み隠して報告するだろうか?とはシャーリーは思う。

「でも実際そんな事が可能なんでしょうか?全ての警備をまったく同時に無力化するなんて…一体どれほどの手練が徒党を組んでそんな真似を…と言うかなんでそんな事を…。」
「徒党なんて組んでないさ、たぶん一人だよ。」

そう告げる九条。その言葉には少し哀しさが混じっているようにシャーリーは感じた。

「既に犯人の目星が?」
「十中八九ね。」
「一体どんな手段で?」

そう核心を尋ねるシャーリー。
あの事件でたくさんの仲間達が死んだ。自分たちを送り出すために盾になって犠牲になった人もいた。
だからこそ、その惨劇を起こした者がいるのならばシャーリーはそれを許すことはできなかった。

「ごめんよ、シャーリー、それは教えてやれない。こればっかりはね、知っちゃいけないんだ。」
「それは私がその情報を知るアクセスコードを持っていないという事なんですか?」
「いや、違う。貞夫だってしらない、CMBUだって知らない。たぶん今回の事の顛末の意味を本当の意味で理解できているのはあたしだけ…なんだろうさ。」
「そんなまた煙に巻くような理屈…知っているのならば、お養母様は情報を共有すべきです。」

そうつい大声で言うシャーリーの頭に九条はとんと優しく手をおいた。

「悪いけどね、シャーリー。こればっかりは今は言えないんだ。しいていうならばあたしの甘さが責任だ。だからね、その怒りはこらえてくれ。もし、それでも堪えきれないんだったらあたしにその憎しみを向ければいい。」
「そんな事出来るわけが…。」

そう返答に困るシャーリー。

「あ、これ、見舞いの煎餅。割と美味かったからね、あげるよ。」

そういって九条は既に開封されて中身の半分がなくなった菓子折りをベット横の棚の上に置いた。

「ありがとうございます。」

とは礼をいうものの、ああ、この人は変わらないのだなとシャーリーは思わず笑う。
来る途中で我慢できなくなって1つ、2つと口に入れてしまったのだろう…この人は昔からそういう人だった。
そういった感慨をふけようとしたところで今、シャーリーにとても気になる事が起こった。
それが何かというのは色々言葉にするのには憚る部分があるのだが、まあ、簡単に言えば胸への違和感だ。
何かが、自分の右胸を掴んでいるような感触を感じているのだ。
おかしい。
シャーリーは今あえて自分の視線を首から下に向けないようにしている。
その違和感の正体を別になんとなくでもなんでもなく、完璧に理解しているのだが、それを見るのはなんというか理解することを答えを知ってから拒んでいるというか…。

「んーまた大きくなったかい?」
「あのですねぇ!!!」

そうシャーリーの右乳を揉みながら感想を言う九条と、それに顔を真っ赤にさせて声を荒らげて胸を触る手をはらいのけるシャーリー。

「んーこれEぐらいあるんじゃないの?」
「ギリギリDです!」
「そうなんだ…。」

期待はずれの回答に少しがっかりしたように自分の胸をちょっと触る九条。

「なんでそこで自分の乳を触って比較しようとするんですか、あなたは!!!」
「あらぁ、別にこんなヨボヨボなお婆ちゃんに色気なんて感じる奴なんていないだろう?ほら誰得?っていうに決まってるじゃないかい。」
「いやいや、そういう問題ではなくて!」

その顔を真っ赤にしたシャーリーの反応に九条のクスリと笑った後、

「んじゃ、ま、娘の発育も見れた事だし…あたしゃ帰ろうかね。」
「あのですね!」

シャーリーに背を向け出口に向かいながら手を振る。
そして出口の戸に手をかけた後、そのまま九条はシャーリーに語りかけた。

「ねえ、シャーリー。聞きたい事があるんだけどさ…。」

先ほどまでの明るいふざけたような口調とは少し違う真剣な声でいう。

「はい。何でしょうか?」

その雰囲気の違いを感じ取りシャーリーは緊張して尋ねる。九条は少し天井を見て、

「あんた、あたしと出会った事後悔してないかい?」

そう真剣にそう尋ねた。
何を聞くのかと思えば、そんな事を聞くのか…とシャーリーは息を吐く。

「そんな訳ないじゃないですか、あなたに感謝や恩義や憧れはあってもあなたとであった事を後悔するそんな事はありませんよ。」

どんな事を言われるのだろうと身構えたのが馬鹿みたいだ。
あなたがいたからこそ私はまた立ち上がる事が出来た。
あなたがいたからこそ私はあの絶望の中で立ち止まる事がなかった。
あなたがいたからこそ私は先の戦いでもその全てを背負う勇気を振り絞る事ができた。
だから、後悔しようなど無いのだ。
九条はそんなシャーリーの思いを知ってか知らずか微笑んだ後、

「そうかい。よかったよ。」

そう言って、部屋を出た。
九条が去ったのを確認して、ふとシャーリーは死んでいった仲間たちを思う。
―――彼らの為にも私はまだ戦わなければならない。
そう思う。そして、シャーリーにはまた戦う力がある。
もう失ったと思ったそれが、この手に帰ってきた。
そして、同じ志で戦う同士たちがたくさんいる。

「私はまだ戦える。」

シャーリーはその想いを胸に拳を握った。



3章  刹那を超えて 了





数分後、病室に急に帰ってきた九条さんが―――

「あ、いい忘れてたんだけど、そろそろ孫の顔みたいなーってお婆ちゃん思うんだけどさ…。」
「あのですねぇ!」

この後の問答はあえて語らないでおこう。

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