小さな集落の、はずれのはずれ。かつては学校だったであろう建物を再利用した場所。
人っ子一人通らない、閑散とした雰囲気のそこは、天美ヶ原防衛団――――孝一達の所属する防衛組織の本部だ。
つい先程任務を終了して帰還した中村孝一と坂口祐介は、中庭の池の前に座り込んで休憩の真っ最中だった。
「まったく、なんでこんなところを本部に選んだんだろうねぇ。娯楽施設のゴの字も無いじゃないか」
社屋以外、見渡す限りの瓦礫と雑草を見て、坂口が愚痴を零す。
「お前ほぼ毎日言ってんな、それ」
「だって実際そうじゃん、本当に何も無いし」
「卓球ならあるぞ」
「もう飽きたよ」
投げやりな返事をして、坂口はその場にごろりと寝転がった。……とか言いながら毎回結構楽しんでいるくせに、卓球。
孝一も寝転がり、無言で流れる雲を追う。
遠く、体育館を改装した格納庫から作業の音――――検査のために坂口の機体をバラしているんだろう――――が聞こえてくる以外はいたって静かだ。
「そういえばお前、良かったのかよ? あんな扱い方して」
「何の事だよ」
「壱式だ、ヒトガタ壱式」
「ああ!」と叫んで手を打つ坂口。完璧に忘れていたようだ、おめでたい奴め。
「副隊長のと違って俺達の機体は白兵戦用にチューンされてるんだから、あれくらいでイカれる程ヤワじゃないだろ」
孝一ら天美ヶ原防衛団 ヒトガタ部隊が第一小隊は、副隊長であるアルファ・ツーが後衛を、隊長のアルファ・ワン、そして孝一、坂口らアルファ・スリーとアルファ・フォウが前衛を務めている。
……というか孝一と坂口が射撃が下手くそなだけで、隊長と副隊長はオールラウンダーだったりするのだが。
「まあそうだけどもよ。第一小隊は休みに入るからって、一応バラして検査するらしいぜ」
「マジかよ」
とーん、てーん、かーん。とーん、てーん、かーん。
広がる青い空の下、作業の音だけ虚しく響く。ここは小さな集落のはずれのはずれ。天美ヶ原防衛団。
「……ああ、マジだ」
「なんだ今の間」
「気にすんな」
雲がゆっくり流れていく。――――ああ、お前はどこへ行くんだ。こちとら休暇なのにどこにも行けやしねぇ。
上半身を起こし、肩と首を回す。ああ、いつも狭いコクピットに収まっていたせいか肩凝りが酷い。
「伊吹のやつ、怒ってんだろうな」
坂口がぼそりと呟いた。
伊吹 藍。整備班に所属する、孝一らと同年代の少女だ。歳が近いため交友も深く、入浴後に卓球で白熱するメンバーのひとりでもある。
「そりゃお誰かさんのおかげでピカピカにした壱式の装甲が早くも傷だらけだからな、怒りたくもなるだろ」
「まあ、そうだけどさ……お、第二小隊の壱式だ」
ずしゅん、ずしゅんと足音のするほうを見ると、暗い青色に塗装されたヒトガタ壱式が四機、出撃していくところだった。
「演習かな」
「さあな」
本来ならアナウンスが入るところだが、いかんせんスピーカーが壊れていてそれが無い。
「いつまで放置しとく気だろうね、スピーカー」
「さあな」
「素っ気ないなぁ」
「疲れてるからだ」
「俺だって疲れてるよ」
そう言って、おもむろに坂口が立ち上がった。
「どこ行くんだよ」
「ちょっくら何があったのか確認してくる!」
「おいおい、そっちはガレージ……」
ああ、行ってしまった。まあいいや、整備班の連中にたっぷりシメられて来るがいい。
……さて、俺は一眠りするとしようか。
人っ子一人通らない、閑散とした雰囲気のそこは、天美ヶ原防衛団――――孝一達の所属する防衛組織の本部だ。
つい先程任務を終了して帰還した中村孝一と坂口祐介は、中庭の池の前に座り込んで休憩の真っ最中だった。
「まったく、なんでこんなところを本部に選んだんだろうねぇ。娯楽施設のゴの字も無いじゃないか」
社屋以外、見渡す限りの瓦礫と雑草を見て、坂口が愚痴を零す。
「お前ほぼ毎日言ってんな、それ」
「だって実際そうじゃん、本当に何も無いし」
「卓球ならあるぞ」
「もう飽きたよ」
投げやりな返事をして、坂口はその場にごろりと寝転がった。……とか言いながら毎回結構楽しんでいるくせに、卓球。
孝一も寝転がり、無言で流れる雲を追う。
遠く、体育館を改装した格納庫から作業の音――――検査のために坂口の機体をバラしているんだろう――――が聞こえてくる以外はいたって静かだ。
「そういえばお前、良かったのかよ? あんな扱い方して」
「何の事だよ」
「壱式だ、ヒトガタ壱式」
「ああ!」と叫んで手を打つ坂口。完璧に忘れていたようだ、おめでたい奴め。
「副隊長のと違って俺達の機体は白兵戦用にチューンされてるんだから、あれくらいでイカれる程ヤワじゃないだろ」
孝一ら天美ヶ原防衛団 ヒトガタ部隊が第一小隊は、副隊長であるアルファ・ツーが後衛を、隊長のアルファ・ワン、そして孝一、坂口らアルファ・スリーとアルファ・フォウが前衛を務めている。
……というか孝一と坂口が射撃が下手くそなだけで、隊長と副隊長はオールラウンダーだったりするのだが。
「まあそうだけどもよ。第一小隊は休みに入るからって、一応バラして検査するらしいぜ」
「マジかよ」
とーん、てーん、かーん。とーん、てーん、かーん。
広がる青い空の下、作業の音だけ虚しく響く。ここは小さな集落のはずれのはずれ。天美ヶ原防衛団。
「……ああ、マジだ」
「なんだ今の間」
「気にすんな」
雲がゆっくり流れていく。――――ああ、お前はどこへ行くんだ。こちとら休暇なのにどこにも行けやしねぇ。
上半身を起こし、肩と首を回す。ああ、いつも狭いコクピットに収まっていたせいか肩凝りが酷い。
「伊吹のやつ、怒ってんだろうな」
坂口がぼそりと呟いた。
伊吹 藍。整備班に所属する、孝一らと同年代の少女だ。歳が近いため交友も深く、入浴後に卓球で白熱するメンバーのひとりでもある。
「そりゃお誰かさんのおかげでピカピカにした壱式の装甲が早くも傷だらけだからな、怒りたくもなるだろ」
「まあ、そうだけどさ……お、第二小隊の壱式だ」
ずしゅん、ずしゅんと足音のするほうを見ると、暗い青色に塗装されたヒトガタ壱式が四機、出撃していくところだった。
「演習かな」
「さあな」
本来ならアナウンスが入るところだが、いかんせんスピーカーが壊れていてそれが無い。
「いつまで放置しとく気だろうね、スピーカー」
「さあな」
「素っ気ないなぁ」
「疲れてるからだ」
「俺だって疲れてるよ」
そう言って、おもむろに坂口が立ち上がった。
「どこ行くんだよ」
「ちょっくら何があったのか確認してくる!」
「おいおい、そっちはガレージ……」
ああ、行ってしまった。まあいいや、整備班の連中にたっぷりシメられて来るがいい。
……さて、俺は一眠りするとしようか。
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