統合歴329年5月25日
守屋がギアスタジアムで初めて見るギアに見惚れているのもお構いなしに
副部長である三笠慶(ミカサ ケイ)の駆るスポーツギア・クランが専用装備のハルバートを振りかぶりながら
部長、加賀谷望(カガヤ ノゾム)のスポーツギア・スカーレットに肉迫する。
副部長である三笠慶(ミカサ ケイ)の駆るスポーツギア・クランが専用装備のハルバートを振りかぶりながら
部長、加賀谷望(カガヤ ノゾム)のスポーツギア・スカーレットに肉迫する。
重装甲でありながらスポーツギアとしては破格の出力を誇るクランに対し
機動力と追従性に特化したスカーレットは、クランの怒涛の一撃を容易く避ける。
機動力と追従性に特化したスカーレットは、クランの怒涛の一撃を容易く避ける。
この程度で捉える事の出来る相手では無い事くらい承知しているのだろう。
三笠は避けられた事に対して、何の感想も抱かず機体を反転させ、次の攻撃プログラムを入力。
ショルダーアーマーに装着されたランスを左手に装備し、スカーレットに穂先を向け、機体とランスのブースターを起動。
これで重装ギアでも高い機動力を発揮する事が出来る。
とは言え、所詮は重装型。高機動型を圧倒出来る程の機動力では無い。
少なくとも加賀谷にとっては回避に専念すれば、避け続けるのも大して難しい攻撃では無かった。
しかし、三笠も上手いもので本体と武器のブースターを巧みに操り、じわじわと加賀谷に追い縋る。
三笠は避けられた事に対して、何の感想も抱かず機体を反転させ、次の攻撃プログラムを入力。
ショルダーアーマーに装着されたランスを左手に装備し、スカーレットに穂先を向け、機体とランスのブースターを起動。
これで重装ギアでも高い機動力を発揮する事が出来る。
とは言え、所詮は重装型。高機動型を圧倒出来る程の機動力では無い。
少なくとも加賀谷にとっては回避に専念すれば、避け続けるのも大して難しい攻撃では無かった。
しかし、三笠も上手いもので本体と武器のブースターを巧みに操り、じわじわと加賀谷に追い縋る。
反撃に移ろうにも何せ相手は重装型だ。生半可な攻撃は通用しない。逆に三笠に隙を見せるだけだ。
必殺の間合いを見極め、一呼吸で仕留めなければ此方がやられてしまう。
必殺の間合いを見極め、一呼吸で仕留めなければ此方がやられてしまう。
三笠が新たに用意した攻撃プログラムのパターンもある程度、見切れて来た。
そろそろ、反撃に移る用意をしなければ…闘牛士の様な軽業でクランの攻撃を往なし背中を叩き斬る!!
そろそろ、反撃に移る用意をしなければ…闘牛士の様な軽業でクランの攻撃を往なし背中を叩き斬る!!
不発。ランスに内臓されたブースターは可動範囲が非常に広い。
戦闘プログラムに頼らずとも、適当にランスが可動するようなモーションプログラムを発動させれば
変則的なマニューバを行う事が出来る。
しかし、ランス内臓ブースターとクラン本体の背面ブースター二基の推進エネルギーに曝されたクランの
左腕に無視出来ないレベルの負担が掛かっている。
何度もこんな回避運動は取れない。矢張り、加賀谷に攻撃の隙を与えてはならない。
戦闘プログラムに頼らずとも、適当にランスが可動するようなモーションプログラムを発動させれば
変則的なマニューバを行う事が出来る。
しかし、ランス内臓ブースターとクラン本体の背面ブースター二基の推進エネルギーに曝されたクランの
左腕に無視出来ないレベルの負担が掛かっている。
何度もこんな回避運動は取れない。矢張り、加賀谷に攻撃の隙を与えてはならない。
三笠はクランの背面ブースターと、ランスの内臓ブースターで機体を大きく跳躍させた。
最大高度に到達すると新たな戦闘プログラムを発動させた。
クランは構えを取り、ランスをスカーレットに向かって投擲した。
高出力のクランが放つエネルギー、ランス自体に内臓されたブースターの推進エネルギー。
当たり所が悪ければ大惨事になる程の必殺の威力を持つであろう事は誰の目にも明らかだ。
最大高度に到達すると新たな戦闘プログラムを発動させた。
クランは構えを取り、ランスをスカーレットに向かって投擲した。
高出力のクランが放つエネルギー、ランス自体に内臓されたブースターの推進エネルギー。
当たり所が悪ければ大惨事になる程の必殺の威力を持つであろう事は誰の目にも明らかだ。
加賀谷はスカーレットの腰部にマウントされたソードライフルを構えた。
迫り来るランスに向かって、3発撃ち込むがあの勢いだ。流石に撃ち落とすのは現実的では無い。
回避運動は?既に手遅れだ。この攻撃を発動前に潰す。または退避出来なかった時点で不可能だ。
迫り来るランスに向かって、3発撃ち込むがあの勢いだ。流石に撃ち落とすのは現実的では無い。
回避運動は?既に手遅れだ。この攻撃を発動前に潰す。または退避出来なかった時点で不可能だ。
この場に留まった状態でロケットランスを無力化する方が、まだ分がある。
加賀谷はソードライフルを正眼に構え、砲弾を只管、ランスに撃ち込む。
そして、ロケットランスがスカーレットを貫こうとした瞬間、砲弾がランスの軌道に歪みを起こした。
勢いがあるからこそ、適切な部位に適切な力を加えれば簡単に崩れ去る。
目で見て分かる程の歪みならば対応は容易い。正眼に構えたソードライフルを、其の侭ランスに叩き付ける。
加賀谷の目論見通り勢いを殺されたランスは素直に地に堕ちてくれた。
加賀谷はソードライフルを正眼に構え、砲弾を只管、ランスに撃ち込む。
そして、ロケットランスがスカーレットを貫こうとした瞬間、砲弾がランスの軌道に歪みを起こした。
勢いがあるからこそ、適切な部位に適切な力を加えれば簡単に崩れ去る。
目で見て分かる程の歪みならば対応は容易い。正眼に構えたソードライフルを、其の侭ランスに叩き付ける。
加賀谷の目論見通り勢いを殺されたランスは素直に地に堕ちてくれた。
三笠はまだ慌てない。高高度から投擲したロケットランスで倒れてくれるのならば、それで良し。
だが、この程度で加賀谷を倒せるなんて思う程、見縊っていない。此処までがフェイントみたいなものだ。
だが、この程度で加賀谷を倒せるなんて思う程、見縊っていない。此処までがフェイントみたいなものだ。
加賀谷の意識がロケットランスに向いている今こそが遂に訪れた必殺のチャンスだ。
機体の全エネルギーを全て背面部のブースターに回す。
持てる手は使い尽くした。この攻撃が不発に終わっても仕切り直しは無理だ。
だから、ここまで来たら後先を考える必要が無い。
ハルバードを両手に持ち替え上段に構え、スカーレット目掛けて突撃する。
機体の全エネルギーを全て背面部のブースターに回す。
持てる手は使い尽くした。この攻撃が不発に終わっても仕切り直しは無理だ。
だから、ここまで来たら後先を考える必要が無い。
ハルバードを両手に持ち替え上段に構え、スカーレット目掛けて突撃する。
いくら加賀谷とは言え、これは対応出来まい!この勝負、俺の勝ちだ!
後一瞬でハルバートの有効射程距離。三笠は勝利を確信した。
これが他の部員なら、確実に三笠の勝利なのだろう。
加賀谷にとっても一撃必殺の好機が訪れている事を三笠は気付いていなかった。
これが他の部員なら、確実に三笠の勝利なのだろう。
加賀谷にとっても一撃必殺の好機が訪れている事を三笠は気付いていなかった。
「的がデカイと狙い易い。」
クランが勢いよくハルバードを振り下ろした結果…背面ブースターが正面からでも見えていた。
だから、ただの一撃。たったの一撃。ただ一度だけトリガーを引くだけ。
だから、ただの一撃。たったの一撃。ただ一度だけトリガーを引くだけ。
ソードライフルから吐き出された砲弾はブースターに突き刺さり、小気味の良い音を立て動きを止めた。
ブースター一基で重装ギアの姿勢制御など出来る筈も無く、スカーレットから明後日の方向へ
何も無い地面にハルバードの一撃を見舞った。
更に二基のブースターが健在である事を前提に組まれた攻撃プログラムは
ブースターが片方停止している事などお構いなしの動きを取ろうとする。
慌てて、動きを修正しようとするが間に合う筈も無く、満足な着地姿勢も取れず地面に叩き付けられた。
ブースター一基で重装ギアの姿勢制御など出来る筈も無く、スカーレットから明後日の方向へ
何も無い地面にハルバードの一撃を見舞った。
更に二基のブースターが健在である事を前提に組まれた攻撃プログラムは
ブースターが片方停止している事などお構いなしの動きを取ろうとする。
慌てて、動きを修正しようとするが間に合う筈も無く、満足な着地姿勢も取れず地面に叩き付けられた。
「勝負あったな。」
「こ、このヤロー…また俺の負けかよ!」
特に目立ったダメージも受けずに鮮やかに勝利した加賀谷であったが
悔しがっている三笠の様子を見て少し驚いていた。
悔しがっている三笠の様子を見て少し驚いていた。
「あれだけ派手に墜落したのに元気そうだな。
腕は兎も角、身体の頑丈さだけはレベルアップしているじゃないか。」
腕は兎も角、身体の頑丈さだけはレベルアップしているじゃないか。」
「チッ…厭味かよ。」
「勝者の余裕って奴だな。」
目の前で繰り広げられた鋼の巨人の戦いは、ただただ圧巻としか言い様が無く
守屋は呆然とする事しか出来なかった。
守屋は呆然とする事しか出来なかった。
これが出来の良い玩具だって?冗談じゃないぞ、クソ親父…
元々、スポーツギアに興味はあったが、初めて見るギア戦に完全に心を奪われてしまった。
間近でギアの戦いを見る為だけにスポンサー契約をする連中の事を
酔狂で馬鹿な連中だと思っていたが、心の中でそれを撤回した。
間近でギアの戦いを見る為だけにスポンサー契約をする連中の事を
酔狂で馬鹿な連中だと思っていたが、心の中でそれを撤回した。
目の当たりにしたからこそ分かる。コレはそういうものなのだと。
霧坂は呆然としている守屋を横目で見て、ほくそ笑んだ。
(堕ちたな。)
興奮冷めやらぬ内にスカーレットの外部スピーカーが鳴り響く。
『霧坂、新入部員を連れて来たのか?』
「転校生の守屋一刀君でーす。見学希望って事だったんで連れて来ましたー!」
スカーレットの集音目標が霧坂になっていた為、小声で喋っても聞き取れるのだが
霧坂が叫び声をあげた為、スカーレットのコクピット内で霧坂の叫び声が何倍にも増幅され鳴り響いた。
耳や鼻から出て来ては不味いモノが噴出しそうになるが、気分を害するわけでも無く、コクピットから叫び返す。
霧坂が叫び声をあげた為、スカーレットのコクピット内で霧坂の叫び声が何倍にも増幅され鳴り響いた。
耳や鼻から出て来ては不味いモノが噴出しそうになるが、気分を害するわけでも無く、コクピットから叫び返す。
『そうか!でかしたぞ!』
ただ五月蝿いだけで、意趣返しにもならないだろう。
それよりも、こんな早くに守屋一刀を連れて来てくれた事を素直に喜んでいた。
それよりも、こんな早くに守屋一刀を連れて来てくれた事を素直に喜んでいた。
加賀谷はギアを守屋達の傍に移動させ、コクピットハッチを開きギアから降りた。
丸い銀縁眼鏡に綺麗に切り揃えられた頭髪…加賀谷の容貌は所謂、優等生という奴で
守屋には、あの激闘を征したした男とは到底、信じられなかった。
丸い銀縁眼鏡に綺麗に切り揃えられた頭髪…加賀谷の容貌は所謂、優等生という奴で
守屋には、あの激闘を征したした男とは到底、信じられなかった。
「君が守屋一刀か。スポーツギア部、部長の加賀谷望だ。宜しくな。」
「宜しくお願いします。…と言っても、入部するか如何かは別問題ですよ?」
(無理しちゃって、もう…入部する気満々の癖に。)
それにしても偶然とは言え、二人が実機訓練の最中で好都合だったとも思っていた。
二足歩行のロボットが、派手に動き回って戦うのだから、その魅力に取り付かれるのは当然だ。
女の私でも、そうなのだから男なら尚更の事だろう。何よりもアレコレと懐柔する手間が省けた。
二足歩行のロボットが、派手に動き回って戦うのだから、その魅力に取り付かれるのは当然だ。
女の私でも、そうなのだから男なら尚更の事だろう。何よりもアレコレと懐柔する手間が省けた。
「二人とも、こっちに来てくれ。良い物を見せてやろう。」
加賀屋は二人を促し、レギュラー陣が使っているギア格納庫とは別の格納庫へ向かって歩き出した。
霧坂は思い当たる節があったのか、顔を輝かせた。
霧坂は思い当たる節があったのか、顔を輝かせた。
「良い物ってアレですか!?」
「アレって?」
加賀屋は慌てて、霧坂を制止した。
「待て!此処でバラすな!口で言うよりも直接見せて驚かせる方が面白い!」
霧坂は仕方の無い人だと思ったが、加賀谷が言う事も尤もだと思い、口を噤んだ。
加賀谷は二人を格納庫に招き入れ、格納庫のスポットライトのスイッチを入れた。
スポットライトは一機のスポーツギアを照らした。
極端に大きな腕部と脚部持つが、重装型と言う訳でも無い。
肩部と腰部には装甲が無く防御力が高そうには見えない。
だが、間接の可動範囲は非常に広そうだ。
極端に大きな腕部と脚部持つが、重装型と言う訳でも無い。
肩部と腰部には装甲が無く防御力が高そうには見えない。
だが、間接の可動範囲は非常に広そうだ。
「あれ…このギア…」
「気付いたか?」
そう、この使われている形跡の全く無いギアにはブースターとスラスターが無い。
走る、跳躍は出来るだろうがこれでは滞空性能と機動力は無いに等しい。
走る、跳躍は出来るだろうがこれでは滞空性能と機動力は無いに等しい。
「MCI搭載ギア、アイリス・ジョーカー」
Motion Link Control Interface 略称MCI
搭乗者の動作を、ギアに反映させるコントロールシステムで
高い身体能力を要求されるが、ただ動かすだけならば通常のギアよりも容易で
新たな選手層を獲得する為にスポーツギア用に再開発されたのである。
搭乗者の動作を、ギアに反映させるコントロールシステムで
高い身体能力を要求されるが、ただ動かすだけならば通常のギアよりも容易で
新たな選手層を獲得する為にスポーツギア用に再開発されたのである。
ただ動かすだけならば容易ではあるが、大会出場レベルとなると並の身体能力では
容易く返り討ちに遭ってしまう。そして、ギア部の部員は総じて身体能力は並以下なのだ。
態々、スポンサーが高い金を出して容易した最新システムを導入した新型ギアは
陽の目を浴びる事も無く、予備格納庫で埃を被っていたと言う訳だ。
容易く返り討ちに遭ってしまう。そして、ギア部の部員は総じて身体能力は並以下なのだ。
態々、スポンサーが高い金を出して容易した最新システムを導入した新型ギアは
陽の目を浴びる事も無く、予備格納庫で埃を被っていたと言う訳だ。
「と言うわけでな。入部するなら即レギュラー入りで、君の専属ギアにアイリス・ジョーカーを預けよう。
ついでにMCI対応訓練シミュレーターの独占使用権のおまけ付だ。こんなお買い得商品他には無いぞ?」
ついでにMCI対応訓練シミュレーターの独占使用権のおまけ付だ。こんなお買い得商品他には無いぞ?」
「一応、今回は見学って事なんですが…」
とは言うものの、既に気持ちは固まっている。新型ギアの専属選手となれば入部する他無いと思っていた。
ある意味、意地みたいなものだ。霧坂に勧誘して来たクラブには入部しないと言った手前、素直に入部するのは
何と無く、負けた気分で良くないのだ。何がと言われても困るが、兎に角良くない。
ある意味、意地みたいなものだ。霧坂に勧誘して来たクラブには入部しないと言った手前、素直に入部するのは
何と無く、負けた気分で良くないのだ。何がと言われても困るが、兎に角良くない。
「急いで返事が欲しいわけでも無いし、強要するわけでも無い。ゆっくり考えてくれ。」
「じゃあ、入部するか如何かは一先ず置いといて…ちょっと乗ってみない?」
何て魅力的な…いや、滅茶苦茶な事を言い出すんだ、この女は。
いきなり部外者に乗せるのは流石に色々と不味いだろう。
いきなり部外者に乗せるのは流石に色々と不味いだろう。
「そうだな。良かったら乗ってみるか?」
そんな、あっさりと了承されても…良いのか?乗るぞ?寧ろ、乗りたい。
「良いんですか?」
社交辞令で一応、聞いておくが、心の中では何でも良いから、さっさと乗せろと地団駄踏んでいるのは内緒だ。
「現時点では君以外に任せられる生徒が居ないからな。君が乗らないなら、アイリス・ジョーカーもただの置物に過ぎない。
万が一、大破する事になったとしても誰も君を咎めはせんよ。その辺はスポンサーも了承している。」
万が一、大破する事になったとしても誰も君を咎めはせんよ。その辺はスポンサーも了承している。」
となれば乗るしかあるまい?
慣れない浮遊感と振動に戸惑いつつ、ゆっくりと格納庫から歩み出た。
成る程。搭乗者の動きを、そのまま機体に反映させるという操縦システムだが思いの他、面白い。
確かに、ただ動かすだけならば簡単だし、誰にでも出来るだろう。
だが、スポーツギアの醍醐味であるバトルとなると、如何だろう?
折角だし、レギュラー陣に軽く手合わせを頼もうかと思案していると見慣れないギアがスタジアムに現れた。
成る程。搭乗者の動きを、そのまま機体に反映させるという操縦システムだが思いの他、面白い。
確かに、ただ動かすだけならば簡単だし、誰にでも出来るだろう。
だが、スポーツギアの醍醐味であるバトルとなると、如何だろう?
折角だし、レギュラー陣に軽く手合わせを頼もうかと思案していると見慣れないギアがスタジアムに現れた。
「7機目のギア?八坂はどれだけ金持ってるんだよ…」
遂、独り言を漏らしていると、霧坂から通信が入った。
「守屋君、下がって!八坂のギアじゃない!先輩達に出てもらうから!!」
普段の飄々として厚かましい態度は見る影も無い。
全然、親しい間柄では無いが、霧坂の焦った様子に新鮮さを感じていた。
全然、親しい間柄では無いが、霧坂の焦った様子に新鮮さを感じていた。
何はともあれ、ギア戦に関しては超が付く程のド素人だ。
アイリス・ジョーカーに内臓された武器がどんなものなのかすら知らない。
この場は大人しく引き下がろうと後退しようとするが、侵入者がそれを許す筈も無く
両手首に内臓されたハンドガンを発砲しながら、ブースターを吹かし距離を詰めてくる。
反射的に両腕で身体を庇ったお陰でアイリス・ジョーカーも防御姿勢を取ってくれた。
極端に大きな両腕が盾の代わりになり深刻なダメージを受けずに済んだ。
アイリス・ジョーカーに内臓された武器がどんなものなのかすら知らない。
この場は大人しく引き下がろうと後退しようとするが、侵入者がそれを許す筈も無く
両手首に内臓されたハンドガンを発砲しながら、ブースターを吹かし距離を詰めてくる。
反射的に両腕で身体を庇ったお陰でアイリス・ジョーカーも防御姿勢を取ってくれた。
極端に大きな両腕が盾の代わりになり深刻なダメージを受けずに済んだ。
「相手は違法ギア……だったら、此方を逃がしてくれる道理なんて無いよな。」
後退を諦め、交戦する覚悟を決めた。
幸い敵も格闘戦をお望みのようだ。
ならば、下手に距離を取られて飛び道具で攻撃されるより勝機がある。
それに、今の防御である程度、戦い方も理解した。いつも通りにやれば良い。
幸い敵も格闘戦をお望みのようだ。
ならば、下手に距離を取られて飛び道具で攻撃されるより勝機がある。
それに、今の防御である程度、戦い方も理解した。いつも通りにやれば良い。
「霧坂。逃げられそうにない。殺されない程度に交戦するから早く先輩達を!」
「わ、分かった!死なないでよ!?」
こんな所で死んでたまるかと思いつつ拳を構える。
違法ギアはアイリス・ジョーカーに飛び蹴りを放ちつつ、ダガーを引き抜く。
ブースターの推力が乗った飛び蹴りを左腕で打ち払う。思った通りだ。何一つとして難しい事は無い。
躊躇い一つ無く反撃に意識を切り替える。打ち払った左腕を翻し、違法ギアに叩き込もうとする。
だが、左腕は甲高い異音を発し、紫電を発した。
違法ギアはアイリス・ジョーカーに飛び蹴りを放ちつつ、ダガーを引き抜く。
ブースターの推力が乗った飛び蹴りを左腕で打ち払う。思った通りだ。何一つとして難しい事は無い。
躊躇い一つ無く反撃に意識を切り替える。打ち払った左腕を翻し、違法ギアに叩き込もうとする。
だが、左腕は甲高い異音を発し、紫電を発した。
(どうなった?)
守屋の切り返しが早すぎて、アイリス・ジョーカーの限界追従速度を越えている。
そして、守屋はそれを理解しておらず無理矢理、追従させようとした為、半ば自爆に近い形で左腕を破損させてしまった。
そして、守屋はそれを理解しておらず無理矢理、追従させようとした為、半ば自爆に近い形で左腕を破損させてしまった。
(まるで自分の身体じゃないみたいだ…ジョーカーの癖に合わせろって事か…)
動作が1テンポ遅れる。追従して欲しい時には無反応な癖に、如何でも良い動きには追従してくれる。
敵に何かされたわけでも無いのにバランスを崩し転倒しかける。
戦闘中にそんな無様が出来るかと丹田に力を込め必死に踏ん張る。
如何にか持ち直したが、時既に遅し。
違法ギアのダガーがアイリス・ジョーカーの頭部に叩き落とされようとしていた。
敵に何かされたわけでも無いのにバランスを崩し転倒しかける。
戦闘中にそんな無様が出来るかと丹田に力を込め必死に踏ん張る。
如何にか持ち直したが、時既に遅し。
違法ギアのダガーがアイリス・ジョーカーの頭部に叩き落とされようとしていた。
誰も咎めはせんよ。加賀谷の言葉をふと思い出す。だからと言って、分かりました。と言うわけにもいかない。
幼少の頃から戦闘技術を叩き込まれておきながら、肝心な場面で遅れを取って、屈しろと?
12年間、戦闘技能を叩き込まれて来たのは何だったんだ?こんな無様、他人が許しても俺自身が許さん。
幼少の頃から戦闘技術を叩き込まれておきながら、肝心な場面で遅れを取って、屈しろと?
12年間、戦闘技能を叩き込まれて来たのは何だったんだ?こんな無様、他人が許しても俺自身が許さん。
身体を沈め、斬撃を避けるが相手も素人では無いのだろう。
攻撃が避けられたからと言って、慌てるわけでも無く次の攻撃に繋げて来る。
攻撃が避けられたからと言って、慌てるわけでも無く次の攻撃に繋げて来る。
(腕にせよ、脚にせよ、振り回せば機体が持っていかれてしまう。
その度に姿勢制御に気を取られていては敵に付け入る隙を与えてしまう。ならば…)
その度に姿勢制御に気を取られていては敵に付け入る隙を与えてしまう。ならば…)
違法ギアの右腕をダガー毎、撃ち払おうとするが紙一重の所で避けられる。
「馬鹿が!」
違法ギアの操縦者の声が聞こえた。こちらの声が届くかどうかは知らないが、短く返した。
「自覚している。」
機体を引っ張ろうとする右腕に逆らわず、その勢いを利用し機体を反転させ、回し蹴りを放つ。
アイリス・ジョーカーが転倒しかけると決め付けていた違法ギアは完全に油断していたのだろう。
避けようともせず、ダガーを構えていた違法ギアの頭部にアイリス・ジョーカーの
アンバランスな脚部がめり込み地面に叩き付けられ違法ギアは煙を吹き、沈黙した。
アイリス・ジョーカーが転倒しかけると決め付けていた違法ギアは完全に油断していたのだろう。
避けようともせず、ダガーを構えていた違法ギアの頭部にアイリス・ジョーカーの
アンバランスな脚部がめり込み地面に叩き付けられ違法ギアは煙を吹き、沈黙した。
「戦闘不能…?俺が勝ったのか?」
初の実戦で辛くも勝利を納めたが余韻に浸ったり、呆けている暇は無い。
ギア戦で勝利を収める事は出来た。次は中の搭乗者だ。
大人しく出てきて拘束されてくれるのなら良いが、あまりにも現実的では無い。
コクピットハッチをもぎ取り、搭乗者を引きずり出す方が安全でてっとり早いか。
だが、守屋がハッチをこじ開けるよりも早く、搭乗者が出て来た。
ギア戦で勝利を収める事は出来た。次は中の搭乗者だ。
大人しく出てきて拘束されてくれるのなら良いが、あまりにも現実的では無い。
コクピットハッチをもぎ取り、搭乗者を引きずり出す方が安全でてっとり早いか。
だが、守屋がハッチをこじ開けるよりも早く、搭乗者が出て来た。
「思いの他、諦めが早いな…」
「くっ…はははははははッ!!」
搭乗者は守屋達と同じく、倭国系の顔立ちをしており、年の頃も守屋と同じくらいのモヒカン男だった。
いきなり沸いて出て来て、好き勝手暴れて敗北しておきながら、何故かアイリス・ジョーカーを指差し爆笑している。
いきなり沸いて出て来て、好き勝手暴れて敗北しておきながら、何故かアイリス・ジョーカーを指差し爆笑している。
「何が可笑しい?」
「これが笑わずにいられるかよ!高性能なMCI搭載機を使って、SCI機を倒すのが精一杯ってか!?
てんで、話にならねぇじゃねーか!八坂はよぉ!!今年の地区大会は俺達、宋銭高校の勝ちだな!!」
成る程、違法ギアでは無く、ただの頭が不自由な他校生らしい。
てんで、話にならねぇじゃねーか!八坂はよぉ!!今年の地区大会は俺達、宋銭高校の勝ちだな!!」
成る程、違法ギアでは無く、ただの頭が不自由な他校生らしい。
「今日初めてギアに乗った奴にボロ負けてしておいて、何を言っているんだ?
負け惜しみにすらなっていないし、そもそも、俺は部員じゃない。」
負け惜しみにすらなっていないし、そもそも、俺は部員じゃない。」
違法ギアじゃ無かったと言う安堵と、目の前のモヒカン男の馬鹿らしさのせいで思わず溜息が出る。
だが、モヒカン男にとっては溜息どころじゃない。見る見るうちにか男が真っ青になっていく。
だが、モヒカン男にとっては溜息どころじゃない。見る見るうちにか男が真っ青になっていく。
「ぶ、部員じゃないだと…?」
「その通り!!彼はスポーツギア部見学中の一般生徒だ!!」
いつから居たのか、加賀谷が戻って来ていた。寧ろ、最初から登場するタイミングを伺っていた。
漸く回って来た出番だ。加賀谷は更に言葉を続ける。
漸く回って来た出番だ。加賀谷は更に言葉を続ける。
「お前達、宋銭高校スポーツギア部の永久活動停止にお前の退学。
これでも、まだ足りんくらいだ。ギア乗りが一般人に手を出したのだからな…懲役5年くらいは覚悟するのだな!!」
これでも、まだ足りんくらいだ。ギア乗りが一般人に手を出したのだからな…懲役5年くらいは覚悟するのだな!!」
と言っても、加賀屋は大きな問題にするつもりは無い。ただでさえ近場にギア部のある高校が限られているのに
対人戦の経験を積む機会を潰すような事は出来ない。宋銭に借りを作る事が出来た上に守屋の素質も見極められた。
対人戦の経験を積む機会を潰すような事は出来ない。宋銭に借りを作る事が出来た上に守屋の素質も見極められた。
統合歴329年5月26日
守屋一刀は朝から憂鬱だった。まだ部外者だというのにギアに乗って戦闘。その上、他校のギアを工場送りになってしまった。
確かに悪いのは向こうだ。しかし、スポーツギアは非常に高価なスポーツ用品だ。
恐らく、全くのお咎め無しというわけにもいかないだろう。また一週間か二週間くらいの停学処分を受けるのでは…
そんな守屋の悩みなど霧坂にとっては知った事では無いわけで、守屋の机の上に入部届を景気良く叩きつけた。
守屋一刀は朝から憂鬱だった。まだ部外者だというのにギアに乗って戦闘。その上、他校のギアを工場送りになってしまった。
確かに悪いのは向こうだ。しかし、スポーツギアは非常に高価なスポーツ用品だ。
恐らく、全くのお咎め無しというわけにもいかないだろう。また一週間か二週間くらいの停学処分を受けるのでは…
そんな守屋の悩みなど霧坂にとっては知った事では無いわけで、守屋の机の上に入部届を景気良く叩きつけた。
「ねえ、昨日の戦闘を見て思ったんだけど、正式に入部する気…無いかな?」
やたらと厚かましい態度で入部届けを叩き付けた癖に、なんで誘い文句の時はそんなにしおらしいんだよ。
思わず心の中で霧坂に突っ込みを入れた。口で言っても、ロクな回答を貰える筈が無い。
思わず心の中で霧坂に突っ込みを入れた。口で言っても、ロクな回答を貰える筈が無い。
「ツンデレと同じよ。男らしさと女らしさのギャップ。どーよ?萌えた?」
「悪い。本当に意味が分からないし、分かりたくも無い。そして、人の心を読むな。気味が悪い。」
「心を読むも何も守屋君って単純だからねぇ…色々と分かり易いんだよね。」
霧坂はそう言って、ケタケタと笑い出した。
単純に輪をかけたような奴に単純と言われた上に笑われてしまった。しかも、正解なのが非常にムカつく。
単純に輪をかけたような奴に単純と言われた上に笑われてしまった。しかも、正解なのが非常にムカつく。
「もう一個、守屋君の考えている事当ててあげよっか?」
どうせ、愚にも付かないような事しか言わないだろ。
「昨日の事件、お互いにとって都合が悪いから大人の事情により揉み消されました。
よって、守屋君にペナルティは一切ありません。これで少しは安心した?」
よって、守屋君にペナルティは一切ありません。これで少しは安心した?」
「はっ!?」
「へっへー!またまた大正解。気味が悪いとか思わず褒めて褒めてー!」
どれもこれも大正解。気味が悪いのを通り越して閉口し入部届けにサインを書いて、霧坂に渡す事しか出来なかった。
「ほら、これで良いんだろ?」
霧坂は入部届けを受け取り、満面の笑みを浮かべた。
「うん。大変、よく出来ました。これが今、一番欲しかった物。女の子の欲しい物が分かる男はモテるよ。
勿論、分かった上で行動してくれたらの話だけどね?ま、その点、守屋君は合格かな。」
勿論、分かった上で行動してくれたらの話だけどね?ま、その点、守屋君は合格かな。」
人の机に叩きつける程、ねだっておいて何を言うか。
ま、別に良いか。やれやれと肩を竦めて、霧坂の笑顔に負けないくらいの笑顔で言ってやった。
ま、別に良いか。やれやれと肩を竦めて、霧坂の笑顔に負けないくらいの笑顔で言ってやった。
「改めて宜しくな。霧坂。」
すると霧坂は恐ろしい程の邪悪な笑顔で返事をした。
「こちらこそ。で、この封筒の中に婚姻届が入っているから一筆頂ければ
不束者ですが、宜しくお願い致します。って事になるんだけど、如何する?」
不束者ですが、宜しくお願い致します。って事になるんだけど、如何する?」
ああ、そうだった。霧坂を相手に真面目にやっても馬鹿を見るだけだって事をすっかり忘れていた。
コイツは…コレはそーゆーモノなんだと自分に言い聞かせて接するくらいで丁度良い。
これから卒業まで、こんなテンションでこんな変わり者とやっていかなきゃならない。
そう思うと、実に辟易した。眩暈もする。ついでに頭痛もする。
コイツは…コレはそーゆーモノなんだと自分に言い聞かせて接するくらいで丁度良い。
これから卒業まで、こんなテンションでこんな変わり者とやっていかなきゃならない。
そう思うと、実に辟易した。眩暈もする。ついでに頭痛もする。
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