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創作発表板 ロボット物SS総合スレ まとめ@wiki

3-エピローグ

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夢を見ていた。
始まりはなんだっただろう…。
ああ、そうだ、母の笑顔だ。
母はいつも優しかった。
母は劇団『幻想館』の花形だった。
母の操糸は誰よりも綺麗だった。
糸を使ってまるで自分が空を飛んでいるように見せたり、遠くにあるモノを糸で使ってもってきてまるで物体が意思を持ったように動かす一族の技能、剣糸術を使い、見に来たお客さんに幻想を与えていた。
そんな母を持っていたのがあたしの何よりの自慢だった。
あたしは母のようになりたかった。
だからあたしがお母さんに糸操りを教えてもらうようにお願いしたのは自然な事だった。
初めてそう母に教えてお願いしたとき、母は少し困った顔をした。
そうして母はこういった。
「剣糸は一歩間違えれば人を傷つけてしまう、そんな危ない技能なの、だからね、お母さんと一つ約束しよう。絶対この技を他人を傷つける為に使わないって…。」
いつも優しい母の顔がその時ばかりは怖いぐらいに真剣だった。
それでもあたしはそんな母を恐れずに――
「うん、頑張る!そしてお母さんみたいになる!」
そういったあたしは母はまた笑って頭を撫でてくれた。
その日からあたしは糸操りを教わり始めた。
母の指導は厳しくもあったがあたしは熱心にそれを聴き練習し一つ一つの技を身に染み込ませていった。

―――そうして7ヶ月がたったある日。
「ミナ、明日からお母さんと一緒に舞台に上がってみない?」
母はミナに笑顔でそう言った。
「えー、でもあたしはまだ巻きが下手だし…。」
巻きというのは糸を狙った箇所にしっかりとくくり付ける技の事だ。
この結びが強いと解けなくなってしまうし、逆に弱いと糸で自分を釣る時に解けて落ちてしまう。
だからこの巻きをうまく操作する事が糸操りの重要な点の一つだった。
「大丈夫、お母さん練習が終わってもミナが頑張って練習してるのを見てたんだから、あんなに頑張ってるミナが出来ない筈ないよ。」
母の声は優しかった。
「う、うん、なら…頑張ってみる…。」
正直、自信は無かった。
それでも、あたしは母の期待に応えたい一心でそう答えた。
そして舞台の本番。
あたしが任されたのは演目名「天女舞」のオオトリである演目名と同じ天女舞と呼ばれるパートだ。
天女舞というはこういうお話だ。



とある才能ある天女がその才能ゆえに慢心し、天界にての横暴な振る舞いをしていた。
それを見かねた神様は天女を下界に落としてしまう。
天女は下界に落ちて最初は自分をこんな汚いところに落とした神様を呪ったのだが、ある時、心臓に不治の病をもった少年と出会った。
天女は最初はその少年を侮蔑していたが、自身の病気を顧みずいろんな人に健気に尽くそうとする少年に心を打たれ始め、優しさというモノを理解しはじめる。
そうして少年と天女は仲良くなっていった。
だが、そんな幸せな日々にも長くは続かない、少年はその病ゆえに倒れてその息を引き取ってしまう。
天女は自身の能力でなんとか少年を生き返らせようとするが、天女の中でも頭一つ抜けて高い能力をもっていた彼女でも少年を生き返らせる事は出来なかった。
そんな彼女に残されたのは天女の最大にして最後の秘法「転魂の舞」。
自身の魂を削りとり、他者に与える事で死に瀕した他者を救うという禁じられた秘術。
だが天女は迷わなかった。
なんとしても少年を救ってやりたかった。
そうして天女は舞を舞う。
命を賭けて少年を救う為に、その過程で魂を削りとったことで天女はどんどん体が小さくなっていってしまう。
そうして天女が泡ほどの大きさになったとき、少年は息を吹き返した。
それを見た天女は最後に良かったと笑って消えていった。


とまあ、こんな感じの物語である。
天女舞というのはこの物語の肝である転魂の舞を舞うパートだ。
本来ならばこの転魂の舞のパートでは天女役の女性が途中で子役と交代し、体が小さくなっていくのを表現していくのだが、幻想館には子役がおらず、そのパートの表現を飛ばして死んでしまう天女という風に描写していた。
あたしという子役を得た今の劇団はついにこの天女舞を完璧な形で行えるのだ。
演目が始まる。
母は糸操りだけではなく演技も上手い。
記者達はその面からも天才と褒め称えたが、それはとてつもない努力に裏づけされたものだというのもあたしは知っている。
あたしの演技の指導を行ってくれたあとも一人でずっと熱心に演習しているのをあたしは何度も見た。
舞台でついに少年が死んでしまった。
天女は泣き叫び色々な術で少年を生き返らせようとするが生き返らない。
それはまさに迫真の演技だった。
あたしはごくりと息を呑む。
それは自分の出番が近づいているという事だ。
腕が震える。
失敗したらどうしよう。
お母さんがあんなに頑張ってるのに…あたしがそれを台無しにしちゃうんじゃないだろうか…。
怖い…そんなの嫌だ…。
舞台が暗転する。
その間に背景を変える為小道具の人たちは大急ぎで背景を変え始める。
あたしはそれを見ていて逃げ出したくなった。
その怖さからか涙が流れてくる。
逃げたい。
もう、こんなの嫌だよぉ…。
そんな中、母が自分を見つけて、にこりと微笑んだ後、あたしを抱きしめた。
そしてこう言った。
「いい、ミナ、よく聞いてね。今までミナは凄い練習してきたでしょ、きっとお母さんはミナに凄く辛い事もやらせたと思う。
 でもミナはそんな中、諦めずに文句も言わず、ずっと、ずっと、ずーーーーーーっと、頑張ってついてきてくれた。
 だからね、お母さんはこう信じてるんだよ。ミナは絶対、演技を成功させる事が出来るって…諦めずに、ずっと頑張った人はね、必ず報われるんだよ。
だから一緒に頑張ろう、ミナ。」
そう言う母の腕の中はとても温かくて優しくかった。


「で、でも、もし、もし失敗したら――」
母は笑ってあたしのあたまをポンと叩いた。
「やる前から失敗することなんて考えちゃだーめ。今は演技を頑張ることだけを考えるの、頑張って、頑張って、頑張って演技する。
それでも駄目だったら――お母さんが一緒に謝ってあげる。それにね、ミナに文句をいうような奴がいたら追い払ってあげる。だからね、頑張ろう?」
「うん。」
そして母はあたしをもう一度強く抱きしめた。
なんだろう少し勇気が湧いてきた気がする…。
「それではそろそろお願いします。」
舞台の背景の移動が終り、小道具の人たちが戻ってきて母にいった。
母はあたしを見て、優しく笑って言った。
「じゃあ、一緒に行こうか。」
その時の母の笑顔は本当に天女のような笑顔だった…。

結果から言えば、舞台は大成功だった。
あたしは演技をミス無くこなす事が出来、好評を得た。
舞台最後の挨拶で、舞台上であたしが会場の客に歩いて挨拶した時、会場中から拍手が起こった。
あたしはこの時の事を絶対に忘れないだろう…その時、あたしはそう思っていた。




暗転する。



炎上する舞台。
倒れた柱と床に足を挟まれ母は身動きが出来ない状況だった。
あたしはなんとかその柱から母を引っ張りだそうとしたが、子供の力では抜けない。
「ごめんね、ミナ、お母さんはもういいからあなたは逃げなさい。」
母は笑って言う。
「嫌だ、そんなの嫌だよ、お母さん!!」
あたしはそんなの絶対に認められない。
「嫌だ、お母さんがいないなんて絶対に嫌だ、お母さんが――」
そういって母を引っ張ろうとした時、大きな音と共にあたしの頬の熱い衝撃が走った。
そうして母をもう一度見た後にあたしは気づいた。
母があたしを手を上げたのだと…今までどれほど厳しく言ってもあたしに一度も手を上げた事が無かった母が…。
「ごめんね、ミナ…痛かった?でもね、ミナ、あなたには生きていて欲しいの。」
母は強く言う。
「でも、でも、そんなの嫌だよぉ…。」
それでも泣きじゃくるあたしに母はあーあーと笑った。
「恥ずかしいから言わなかったんだけどね、実はお母さん、ミナが始めて天女舞やったときね、あんまり凄かったものだから感動して舞台裏で泣いちゃったの、それにちょっと、本当にちょっとだけだけど嫉妬しちゃった。」

「え……。」
あたしは驚いた。
いくらミスが無かったとはいえその演技の隅々にはまだ練習の足りない稚拙な部分が多かった筈だ…。
「演技をするにおいてに大事なのは上手い演技をするというだけじゃないの、演技にはね、その人引き付けて離さない妖しさというのが必要なの…。
お母さんは才能なくてね、その妖しさをついに手に入れる事が出来なかった…。
出来ないからより綺麗な演技を、より上手い演技を…そう思って練習していたの…。」
母は続ける。
「だから、ミナの初舞台の時にね、ミナの演技を見ていた時…ミナの演技にはね、その妖しさがあったの。嬉しく思った反面、良いなぁってちょっと思っちゃった。
それでいてね、私はね、ミナの演技に心の底から感動してたの…。
技はまだ拙いところがあるけれどそれ以上にミナの体から発せられる不思議パワーというと変な例えかなと思うけれど、そんな力を持ったあなたがさらに技を完璧に身につけたらどんな凄い役者になるだろう…って…それが凄く楽しみだった。」
火がさらに舞台を包み始めていく…。
そんな中で母はミナに優しくいった。
「だからね、ミナはこんな所で死んじゃ駄目。だってあなたにはまだ未来がある。
まだまだ、先は長くて辛い事もあるかもしれないけれど、頑張れば必ず報われる。
あなたには才能もあるし、何よりもあんなに厳しい訓練に文句一つ言わずついてきた強さもある。そんなあなたが報われない事なんてありえないよ。」
あたしは泣きながら立ち上がった。
お母さんをここに置いていきたくない。
でも、これほどあたしの事を思ってくれている母の意志を蹴り飛ばすような事が出来ようか…。
「お母さん、あたし…あたし頑張るからね!絶対、凄い役者になってみせるからね!」
母は泣きながらそう叫ぶあたしに向かってニコリと笑って――
「――いきなさい。」
そう言った。
それからあたしは後ろを振り返らなかった。
後ろを見たらきっと決心が鈍る。
きっと母から離れられなくなる。
目の前に火があがる。
死んでたまるものか…。
母を犠牲にしたのだ。
母を見捨てたのだ。
母を…あの母を…。
優しかった。
自慢だった。
――大好きだった。
火を避ける為に迂回路を探す。
あたしはなんとしても生きなければならない。
こんな所で死ぬことなんてあたしには許されない。
絶対に…絶対に!!
まだ火の手の弱いところを見つけた。
あたしはそこに向けて走る。
天井が崩れ始める。
間一髪だった。
あと少し走り出すのが遅れていれば、あたしは落ちてきた天井の下敷きになって死んでいただろう。
あたしは出口を探す。
消化作業が行われているおかげか出口部分の火の手は薄かった。
そしてあたしはまた走った。
涙が止まらない。
それでも走った。
ただ、走った。
母との約束を守る為に……。
ただ―――ただ―――走りぬいた。
外に出る。
先に逃げ出していた幻想館の仲間達はあたしを見つけ、生きていて良かったと抱きしめてくれた。
あたしは生き延びたのだ。

そして、あたしは泣き叫んだ。
その時だったか、周りの人間たちが絶叫をあげたのだ。
燃え上がる舞台を見にきていた野次馬たちが皆、逃げ始める。
何事かと思い、あたしは燃え上がる舞台を振り返る。
燃え上がる劇場の上に何かが立っているのを見た。
そこにいたのは人間ではなく、大きな異形だった。
一つ…そう、一つ目の化け物……。
それが、この炎の原因を作り出したモノ。
そしてその化け物の口には一つの異物が咥えられているのが見えた。
あたしはそれが何かと気になり、凝視する。
その何かが何なのかと気づいた幻想館の仲間はあたしの視線を遮ろうとした。
けれど…遅かった。
あたしは体が動かなくなる。
怒り、悲しみ、恐怖。
なんとも形容しがたい感情があたしの中で渦を巻く。
だって…だって…その化け物の口には上半身が喰いちぎられたお母さんが―――



「うああぁぁぁぁーーーーーーーーーーーー!!!」



絶叫と共にあたしは目を覚ました。
息を吐き、周りを見渡す。
全身汗だらけだ…。
ここは何処だとあたしは確認を始める。
回りには多数のモニターとコントロールバーが手元にあった。
そしてお前は誰だとモニターに微かに移る自分を見て自問自答する。
「夢か…。」
D-40 グレリーナ。
その機体の中にあたしはいた。
妖魔の群れとの戦闘後のデータ整理が終わった所で疲れてそのまま眠ってしまったのだろう…。
「それにしてもね…。」
あんな夢は久しぶりに見た。
昔はよく見てはいたが最近は滅法見ていなかったからだ。
ドライブの副作用だろうか…あとでカタリナに聞いておかないといけない。
しかし、嫌な夢だった。
もし、もしも母が生きていて今の自分を見たらなんと思うだろうか…。
母はこのような事をする為にあたしに剣糸術を教えてくれたわけじゃなかっただろう…。
だが、あたしにはやらないといけない事が二つある。
それを果たす為には――
「おい!ミナ!!おい!!聞こえてるか!ミナ!!」
無線越しに声が聞こえた。
知っている声だ。
「聞こえてるよ、うるさいからもっと声のトーン落として…。」
クーガ・ラグナグ。
昨日、シャドウミラージュに配属されてきた新入りで王名持ちの名誉騎士。
いきなり機体を壊してやってきた時はどんな名前だけのヘボかと思ったが、セイム曰く腕は確かだそうだ。
あいつはそういう所ではテキトーな事をいわない奴なので本当なのだろう。
「うるさいってなぁー、さっきのお前の絶叫の方がずっと…。」
ん?聞かれていた?
そんな筈は無い。
でも、なんであたしはこいつと話しているんだろう…?
無線のスピーカーはOFFに―――――なってない。
寝相でスイッチ弄っちゃったんだよねぇ…これ…。
ちょっと自分が嫌になる。
だからちょっと八つ当たりしてやる事にした。

「えー、乙女の寝言を聞いてたのぉ~もう、クーガっちたら、そんな趣味があったんだぁ~。」
「な、何も聞いてねぇよ、大体ずっといびきかいてたし…。」
「何か言った?(意訳:何、阿呆なこといっとるんじゃ死なすぞ、コラ)」
あたしは出来るだけ優しく答える。
「いえ、なんでも無いです、ミナさんはずっとすやすやお休みになられていました。」
「よろしい。」
からかうのは失敗した。
まあ、無線越しに話してる相手には結構ダメージあったみたいなのでOKとしておこうか…。
しかし、このあたしがイビキか…まずいな…これをセイムにでも聞かれたら永遠にネタにされかねない…気をつけないと…。
「それで一体なんの用?」
「いや、叫び声あげてたからなんかあったのかと心配したんだけどな…その調子じゃ問題なさそうだし…心配して損したと嘆いてる所。」
さっきのあたしの叫び声を聞いてこいつなりに心配してくれていたようだ。
それはちょっと悪いことしたなと思う。
「ごめんね、なんでもないから忘れて…。」
「いいよ、別に…。」
ぶっきらぼうにクーガは答えた。
そこであたしは一つのことを思い出した。
「それよりもクーガっち、約束の件、覚えてる?」
そう、まだあたしは彼に約束を果たしてもらっていない。
「ミナが言った質問に答えるだっけ、最初も言ったけれどゼスに関しての事ならば俺は答えないからな。」
「おーけ、おーけー。」
「んで、何を聞きたいんだ?聞いても面白いことなんてもうほとんど話したと思うが…。」
何を聞くか…それは最初から決めていた。
もし彼の経歴があたしの調べた通りならば知っている筈だ…。
だから、聞こう――全てはあたしの目的の為に――
「一つ目の妖魔って知ってる?」


第三話 変幻する糸 了>









次回予告

妖魔の森クロロスペッツゥナ
そこから発せられるSOSに向けてシャドウミラージュは決死の救出作戦を決行する
そこに待ち受けるのは―――

シャドウミラージュ第四話『九曜(ナインデイ)』

それは九つに分かれたオロチの頭蓋







To be continued

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