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守護機兵Xガードナー 第四話

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第四話
 シュートとルーナは格納庫を出ると、廊下に見知らぬ人物が壁に持たれて立っていた。
 長いストレートの黒髪、鋭い瞳、一瞬、女性と思わせる端整な風貌だが、統連軍の青い軍服で男なのだと分かる。そして開口一番、彼は言い放った。
「ダリューグ家の者だと聞いて来てみれば、僕の勘違いだったようだな」
「…なに?!何が言いたいんだよ」
「有名な戦士の御子息が只の家出息子だったなんて、とんだ貧乏くじを引かされたもんだ」
 明らかに落胆。それ所か嫌みを言い始める。
 ルーナは察知していた。彼の言った言葉でこれから何が起こるかを。
「ッ…!?言わせて置けば、お前ぇー!」
 シュートが一番言われたくない事、それは家族の事。歴戦の勇士の息子である劣等感、父への嫌悪、兄との対比、生まれてから今まで言われ続けられてきた言葉が脳裏によぎる。次には体は駆けだしていた。
「待ってシュートッ!」
 ルーナが叫ぶ。
 だが止まらない。すでに一直線に対象に向かって拳を振り上げていた。
 普通は無謀すぎる事だ。相手は軍人でシュートは素人、勝てる要素は無い。だが軍人である青年にもシュートには勝てる要素が有るからだ。
 それは、この“眼”だ。
 幼少の頃、兄と受けた眼の手術。何でも一緒が良いと思っていたがこの時ばかりは、あまりの眼の痛さに後悔した。だが痛みが退いた時、世界が全く違うモノに見えた。
 高速に見えるボールがノロノロ飛んでいた。落下する雨の滴が見えた。とにかく周りがゆっくりに見える。
 シュートは歓喜した。人と違う能力、ヒーローにでもなった気分だ。
 だがそれも一瞬の出来事だった。
 兄レインの眼を使った実験の日、シュートの眼に激痛が走ると共にあるビジョンが見えた。

 兄の乗る機体が爆発するシーン

 夢なんかじゃない、起きていた時に見たビジョンだ。兄や父に言えど信じてもらえない。まだ自分でも確証は持てなかったが言い表せない何かがそう言わせた。
 そして起きた。予感が確信に変わったのだ。

 家を出て逃げだした時だって、軍人を相手に喧嘩をした時も、ロボット同士の戦いの時もそう、この眼のおかげだ。この眼が全てを見せてくれる。俺は誰にも負けない。
「負けるわけ無いんだッ…!」
 シュートの拳が青年の頬へと向かう。確実に決まった、そう確信した時だった。
「甘いな」
 冷ややかな声が聞こえた。いつの間にかシュートは床に突っ伏していた。
 一瞬、頭が真っ白になる。シュートは再び立ち上がり、もう一度仕掛ける。
 何度も、何度も、殴り掛かろうとする。が、その拳は空を切るばかり。そして、分かったことがある。
(早いッ…!?何でだ?!)
 この“眼”でしっかりと見据えている。シュートだけが見えるスローモーションの世界。だが、それよりも数段速く青年が動く。
「…グッゥ!!」
 シュートの腹部に熱い衝撃。こみ上げてくる物があるが必死で飲み込む。脂汗が止まらない、威圧感、圧倒的差。苦悶の表情で睨む。
「…コノォ…ウッ?!」
 いつの間にか青年の指が、シュートの眼の前にあった。あと少し動いていたら突き刺される所だった。
「不思議な顔をしているな」
 氷の様な声が耳を通る。
「…俺も“眼”を矯正している」
 腰から崩れ落ちるシュート。それにルーナが駆け寄る。
「この眼…“アルターアイ”は動態視力、反射神経、思考・判断力の強化。それを持つ者同士が戦えばどうなる?」
 シュートの耳の側まで来る。
「技術の差だ」
 決定的。あきらかな差がそこにはあった。
「ただ戦術があろうが、それを生かす戦略が無いと意味がない…分かるか?」
 図星すぎて言葉も出なかった。

 サイバ・ドール 十八歳
元統連軍極東方面第三独立愚連隊ブライトス小隊所属
十歳で士官学校に入学、十二で卒業しすぐ実戦投入、十四で少尉に就任
一年前、核の護送任務中に兵器が謎の爆発、それより周辺地域に多大な被害が起こる
サイバ・ドールは唯一の生き残り

 シュートは医務室で手当を受けた後、ブリッジにてサイバの事を聞いていた。
「…と、こんな感じでしょうか」
 副長のグラン・バールが説明を終える。
「シュートが出ていったのと入れ違いで来たんだけど、まさか、あんな事になるなんて…」
 ルーナが心配そうに見る。
「俺のせいじゃない。あっちが勝手に勘違いしただけだし。それに俺は俺だ!親を持ち出すなって話だ」
 シュートはくせっ毛の髪を掻きむしる。
「あらまぁ坊ちゃんお冠だねぇ」
「んだとゴラァッ!」
 ライドがまた、いらない所で突っかかる。これは直らない性分だ。
「ちょっと、こんな所でまで喧嘩なんかしないでよ!」
 その中にルーナが交わる。さらにグランや操舵士、索敵士が止めに入るがもう収集が付かない。
 けたたましい音が艦内に響きわたる。
「後方に追尾する艦を確認」
 一人参加しなかった通信士サラーが淡々と伝える。
「敵艦を黙視で確認」
 月明かりに飛行する光る銀色の艦の後方に、鋭角なシルエットをした紅い戦艦<ファルシオン>。通信士の声を聞きビーク・トライバは拳を握り締めた。
「艦長、私を拾っていただきありがとうございます」
「なぁに、気にする事はない。君も苦労したんだろう?今日ぐらい休んだらどうだね」
「いえ、今を逃せば次がいつ来るかは分かりません。ならば今がチャンスなのです。それに夜戦は得意です」
「…それにしても、あのガードナー隊がかね?」
 艦長が訝しげに聞く。
「“剣と翼の生えた盾のエンブレム”…間違いありません」
「報告では五年前のスフィア落としで壊滅したと聞いたんだがな…」
 近年まれに見る激戦だった。廃棄されていた球体型コロニー“スフィア”が太平洋上に墜落。水位上昇による津波、破片が世界各地に飛来、地球軍に大打撃を与えた。
 任務に当たったWガードナー隊はスフィア破壊任務を受けていたが失敗、隊員は行方知れずとなった。
「なんであれ驚異になる前に潰しておく事に損はありません」
「そうだな…各員戦闘配備!」
(隊長…必ず私が仇を取ります)
 ビークは火星式の敬礼をする。
「我が烈火なる母星の為に…!」

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