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都道府県対抗機動兵器決選 プロローグ2

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匿名ユーザー

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例えるなら「蟹」
火影の複眼のようなセンサーアイが、指定選闘域内(バトルフィールド)に侵入した岡山側アバターを捕捉する。
「何だ、二足型かよ・・・」
火影の選定因子試験搭乗者(ファクター)荒木督重(すさぎとくしげ)は棺桶のように
無機質で狭いコクピットの中で一人舌を打つ。
それはまるで、ファクターが場合によっては生死に関わるこの戦いを、ゲームのような
感覚で立ち振る舞っているかのような節さえ感じられた。
圧倒的な余裕、それは人型であるという原型を捨てた、アバター火影への絶対的な自信
と彼自身が作ってきた実績が不動のものとさせていた。
兵庫が誇る重砲撃アバター火影、その異形とも言える体積の七割強を占めるであろう脚
部は甲殻類のように装甲が折り重なり、海洋都市体系維持機構を応用した兵庫のフロー
ト技術により二足型に劣らぬ縦横自在な機械的な高機動を可能としていた。

彼方から放たれた岡山のアバターのビームを交わす。
その直線的な動きはまるで、将棋盤上の飛車のようであった。
「そっちの狙いはわかってんだよ!!」
火影の両腕は先程無人戦闘機をやった時のように蟹のハサミのように開く。
集束されていく光塵。
「行けやあ!!」
低い振動音と共に断続的に放たれる光の筋。
これが、西日本最強と目された大阪を一撃に沈めた集束イオン粒子重砲「アルタルフ」
の放つ一撃必殺、文字通り岡山の終わりを告げる紅い光であった。

巨大な円柱状の空白。
集束された高出力の紅い熱線はその射線上に存在していた瓦礫を文字通り「蒸発」させてしまった。
浅瀬の上に建つ桟橋のように残されていた旧赤磐ハイウェイの瓦礫は、
中心線から逆トンネル状に抉られ、陥没したU字の底部は海水に浸っていた。

人でいう腕と呼ぶべき複雑系装甲。
このマニュピレーターは本来、二足機動兵器アバターの基本構想である、外付け兵装の効果的装備変更を潤滑的に行う為の機構。
それが火影には構想段階から違うものとされ、その機能を持っていなかった。
「腕そのものを大口径粒子砲とし、一撃必殺の短期決選を前提とす。」
この兵庫のアバター開発時の構想こそが、火影が有する上半身とほぼ同容量を持つ巨大なハサミ状の主砲アルタルフであり、
初戦の鳥取、第二戦では西日本最強と目された大阪の選定アバター、日本GF直属の技術部が開発した「ブルヘッド」を破るという輝かしい大金星に至ったのである。
その自信こそが兵庫(かれら)の強みだった。

蒸気と共に右腕アルタルフの肩部から突出していたバッテリーパックがパージされ、海水から白い蒸気が立ち込める。
そして火影の蟹のような頭部のセンサーアイから紅い光が点滅の後消える。
瞬間的システムダウン。
アルタルフ発射時に回されていた余力を切り離し、いち早く以後の選闘における機動力の確保に回す。
アルタルフの最大出力での使用はアバター動力核「レッドスフィア」、
主催者たるトライユニオンが各都道府県支部48に配布された最新式の燃料電池。
それへの負担を和らげるために、発射と同時に稼働していた動力を複数、強制切断するのだ。
そこから次の行動に移る為の若干残された稼働部からの再起動。
その間の残された僅か数秒、その刹那が火影の稼働力が低下する唯一の隙だった。

「たわいもねぇ・・・アルタルフをモロに喰らって、ファクターごとイッたか。」
荒木は苦虫を噛んだような表情を浮かばせる。
選闘時におけるファクターの死亡、これによるはこの国の法律では問われない。
あくまで選定中の不慮の事故とみなされる。
この規定は生死をかけた緊迫下での選闘が有用性ある結果に繋がるという、完璧な「実働的な機動兵器」を目指す主催者側の意向だ。
それでも彼、荒木督重、彼なりのポリシーに反するものがあった。

「最大出力やらせやがって・・・」
アルタルフの右腕部発射残量ゼロということを示す、右腕部が消灯された火影の表示。
暗いコックピット内でその点滅光を瞳に反射させながら、座席脇に固定されていたドリンクに手をかけようとする荒木。
その矢先、警告音と共にその指先が止まる。

システム再起動と共に画面一杯に広がる「ALERT」の赤い文字、被ロックオンの警告音、残留粒子により若干波打つモニター。
煙が晴れ、円柱状に捲れあがった赤磐の旧ハイウェイの彼方から、何かが海水を二手に巻きあげ青白い光を噴射しながら真っ直線に突っ込んでくるではないか。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」

通信越しに聞こえる少年の発する叫び。
画面真ん中で拡大される白と呼ぶほど清廉とまではいかない乳白色の機体。
関節をカバーする紅い装甲が赤と白のツートンカラーを成し、人の顔のようなツインアイを覆うクリアレッドのバイザー。
左手には実体剣、右手には片手式の短機銃というアバターのお手本ともいうような装備。
人型の王道とも呼ぶに相応しい、火影とは対照的なその機体の右肩には、粒子砲を寸前でかすったらしいくすみを被った表面に確かな文字で、
「鬼斬」
ただそれだけ印されていた。
この機体こそ、制式機動戦闘機烈空をベースとした岡山の選定アバター「鬼斬」(おにきり)であった。
列空の特徴ともいえる単発式のターボブースター、その推進力は凄まじく、
火影が作った直線進路を伝い一気に差を詰める。

『さっきみたいな無茶な迎撃運動はもうやめて』

全開のスピードにビリビリと震える鬼斬のコックピット。
そのメインモニター右下のウインドウに映る栗色の髪の少女の忠告。
「わかってるさ逢。でもさっきの一撃で兵庫の蟹にも隙が生まれた。一気に決める・・・!!」
鬼斬のファクター常澄アキ、彼もまた荒木と同じアバターの専属パイロット、ファクターであった。
愚直とも言える彼の戦術に、逢と呼ばれたオペレーターの少女は、無駄だとは思いつつ忠告する。
『敵機背後に複数の熱源、注意して。』
「わかってる!!」
そう言ってアキは操縦桿を握り締め、敵機へのロック解除と共に上昇した。

「最大推力でアルタルフを交わしたか。」
迫りくる敵機を見上げながら「面白くなってきた」
そう言わんばかりの笑みを浮かべる荒木。

「でもな坊主・・・そういう対策も、してるんだよ!!」
突如、火影の背後、そう深くはない海面から飛び出す4つの機影、
その姿は純正の戦闘機、この水没しかけの変動した世界で軍事力の中枢を担う空海両用戦闘機だった。
『ブラックテイルを確認、有人機!!』
「了解!!」
選定時におけるアバターに付随することが許されている戦力、それは先程撃墜された岡山側の無人戦闘機だけではない。
アバターの動力源である「レッドスフィア」
この48都道府県各々が有するスフィア保有数1という規定。
それさえ守られていれば、それを搭載したアバターに付随する戦力は空海戦闘機から旧来の機動戦闘機、あげくは戦艦まで許可されていることになる。

「いけよお前ら!!手柄をやるぞ!!」
「タイガー1了解、各機散開して敵アバターを撃墜する。」

だがもちろん各都道府県を統括する支部、CF(企業軍)が有する戦力は限られている。
内戦ならまだしも、これは実質トリニティの管轄下にある国軍、日本GF(国防軍)の次期主力機選定と、
地方分権が傾倒したこの国における各都道府県のイス取りゲームなのだ。
たがいのアバター撃破のみが勝敗条件となるルールだが、いたずらに人的資源や物的資源を割く訳にもいかない。
それ故、基本無人機より高級かつ有能とされる有人兵器を惜しげもなく投入する兵庫の、「勝利への本気」がアキには感じられた。

『敵機散開、間に合わない!!マニュアルで迎撃して。』

「わかってる。」
ブラックテイルの機首から発せられた機銃をピシピシと火花をあげ、刀身で受け止める。
対無人兵器パターンに設定されていた右手の短機銃を不規則な機動をする有人戦闘機の迎撃にシフトさせる。
ロックをあわせ、パラパラと乾いた音をさせながら落下機動中の鬼斬が張る弾幕。
正面から攻撃をかけたブラックテイルは回避運動を取るが間に合うわけもなく、
主翼を弾けさせながらのたまう鳥のように揺らめきながら海面に墜ちる。
「よし!!」

背後の浅瀬に墜ち爆散する敵機を確認したアキは、即座にミサイルの安全装置を解除、残りの二機をロックする。
「フォックス2!!」
トリガーに据え付けられた赤いボタンを押し込むと、小気味よい発射音と共に両足からミサイルが飛び出し天に向け花火のように上がっていく。
白煙をあげて上昇する二基のミサイル。
「何・・・」
「隊長!!」
上昇中の二機のブラックテイルは引き離し切れず、尾部、尾翼それぞれにミサイルの破片を浴び被弾。戦線離脱を余儀なくされた。
『敵機撃墜確認、あとは兵庫のアバターを。』
「終わらせるんだ。これで・・・!!」
鬼斬の剣が赤く光る。
火影目指し、鬼斬がその切っ先と共に真っ直ぐに加速した。

(狙うは装甲の継ぎ目)

「ハッハァ!!楽しいぜ坊主!!」
火影に残された片腕のアルタルフから紅い光弾が矢継ぎ早に斉射される。
単発連射式に出力を落とした粒子砲。
だがその一弾一弾を押し通してまで懐に斬り込める程の装甲を鬼斬は有していない。
それはこの数十秒間での交戦から荒木が判断し、また、搭乗者(ファクター)であるアキにも周知の事実であった。
しかも鬼斬は火影の真正面。

終わった。

バトルフィールドに設置された全周囲モニターと、オペレーティングモニター越しからアキをサポートする逢はそう思い唇を小さく噛む。
だが、しかし。
「何だこいつは・・・」
荒木は目を見開きその現状に唖然とする。
火影が放った拡散アルタルフの雨霰のような掃射を、岡山の鬼斬は紙一重で回避しながら接近してくるではないか。
「やらせるかよ!!」
斉射操作をキャンセルしそのハサミのような隻腕を振り上げる火影。
懐に斬り込む鬼斬。
ハンマーのように叩きつけられたら間違いなく鬼斬は大破する。
ズシャアンという轟音と水しぶきが上がる。

『アキ?』
瓦礫の粉塵としぶきが入り混じった霧が晴れ、そこにはハサミだけが逆さとなり地盤に突き刺さり、両腕を失った火影に、
頭部下のコックピットデカールの貼られた装甲板に切っ先を向け佇む岡山選定アバター、鬼斬の姿があった。


『兵庫の投降受理を確認。』
しばしの沈黙の後、逢のため息混じりの声が独り言のように聞こえる。
『アキ、貴方の勝ち、私達岡山の勝ちよ。お疲れ。』

「ふぅ・・・」
コックピットの中でゆっくり伸びをするアキ。
選定の終了共に解除されるコックピット内のオープンモニター。
その中の一つで目を見開きブルブルと震える赤い髪の火影のファクターの姿があった。

GF-VF-X選定試験
岡山-兵庫
兵庫側投降勝者岡山


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