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創作発表板 ロボット物SS総合スレ まとめ@wiki

とあるツッコミ体質の男の受難

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匿名ユーザー

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 文学だの芸術だの音楽だの……とにかく、そういった「作品」と呼ばれるものには、テーマというものがある。
ま、つまり、「それを通じて一番伝えたいこと」のことだ。
で、SSにおいてもそれは同じだと思う。
それでこのSSはどうなんだ、このSSのテーマ、つまり「一番伝えたいこと」はなんなんだと言われると……

「道を歩いていたら、向こうから走ってきた車に乗っていた男に
 『すみません、実はこの近くにあるっていう病院に友人が運ばれたって聞いたんですが、
  この辺りは初めてなんで、道がわからないんです!
  申し訳ないんですが、一緒に乗って案内してくれませんか!?』
 と言われたからってつい同情して車に乗っちゃいけません」

ということだと思う。

 少なくとも俺はそう断言する。



 で、ここはなんかウスラデカい「研究所だか工場だかっぽい建物」内の一角。
それで目の前にはソファーに鎮座する「二十歳の男性大学生拉致事件の犯人」である30前後っぽい長髪・白衣の男。
「不安にさせるようなやり方をしてすまなかったね。周りに人の目があるところでは話しにくい用件だったもので」
「……で、その要件ってやつは? 言っとくけど、俺及び俺の三親等以内の親族はそこまで裕福というわけではないぞ」

 テメエはソファーに座ってるくせに用件があって連れてきた人間はパイプ椅子に座らせているという件に関して
ツッコんでも無駄なカテゴリーの人種であろう、ということを瞬時に見てとった俺は、
その件に触れる手間は省いて、身代金目的であれば標的選択を誤ったことを教えてやった。
まあもっとも、ここに連れてこられるまでに身に染みさせられた、
コイツがなんか(主に嫌な方向性の)スゴい技術を持っている事実からすれば、
こんなセコい誘拐なんかより遥に金を得られる方法なんか掃いて捨てるほどあるだろうというのは明白だから、
今の発言ははかなり純度の高い皮肉だ。

「いや、どうも勘違いさせてしまったようだが、別にそういった目的で誘拐したんじゃない」
「誘拐なのは認めてるんかい!」
「実は君にやってほしいことがあってね。それで拐かして連れてきたんだ」
「性質悪いなオイィィィィィイイイイイイイ!!!!!!!」
「まあ取り合えず、何をやってもらうか説明しようか」
「ちょっと待て! なんでオレにやらせようって決めたんだよ!?
 オレはアンタのことなんか知らんぞ!? アンタだってオレのこと知らんはずだろ!?
 やらせようとしてるのがどんなことなのか知らんけど、どうしてオレにやらせるって決められるんだよ!?」
「ああ、それについて言えば、実は君のことを少し前から調べていてね、それで決めたんだ。
 というより、調べていた人間の中で一番良さそうだったから君のことを選んだ、と言った方が正確だな」
「調べていたってなんだよオイィィィィィイイイイイイイ!!!!!!! 適当なこと言ってるんじゃねぇよ!」
「いや、別に嘘はついていないよ。実際に君のことは調べていたんだ、佐藤和俊君」

 オレの名前を知っている…… オレは一瞬ぎくりとした。だがしかし、ここで怯んだ様子を見せてはいけない。

「へ……へぇ~、一応名前くらいは調べてあるみたいだな。
 でもどうせ、その程度のことまでしか調べてないんだろ? そんなに深いことまでh」
「いや、割と深く調べたと思うよ。
 例えば、『お前の母ちゃんドブス』とからかわれていたけど、
 よくよく聞いてみるとその『ドブス』は佐藤君の妹さんのことで、
 それがわかってから周囲がそのことに触れなくなったことt」
「やめろぅ! その話は今すぐやめろぅ!」
「じゃあ、私が厳正なる判断の下に佐藤君を選んだ、ということを認めてくれるね?」
「認める認めます認めさせていただきます」
「では説明を始めよう…… 少し前置きが長くなるが、聞いてくれ」

 よもやこんなところで癒えない心の古傷をえぐられようとは…… とにかく、これで話を聞くしかなくなった。
何をさせられようとしているんだかわからないが、それがわかってから対処法を考えても遅くはあるまい。
そんなオレの心の動きにお構いなしに、誘拐犯は語り出した。

「こう見えても私は女性にもてなくてね…… それも昔からなんだ」
 ……ひょっとするとコイツは「鏡に映ってるのは自分である」、ということを知らないのかも知れない。
「そこで私は美少女アンドロイドをつくろうと思った……
 『(ちびトラウ)ぅぬぅうをををっしゃぁぁぁぁあああああ!!!!!!!』とか
 『(ちびトラウ)どぅぅぇぇえりゃぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!!!!』とか
 のためにね……」
「全年齢板でどんな発言してくれてんだテメエはぁぁぁぁああああああ!!!!!!
 (ちびトラウ友情出演ありがとう…… おかげでマジでしゃれにならない事態は避けられた……
  それとTロG氏マジごめんなさい)」
「しかしアンドロイドをつくるというのは大変なことだ……
 私は一つ一つ問題を解決していったが、非常に苦労したよ。ただ、それによって様々な技術を開発できたのもまた事実だ。
 でも、そうやって新しい技術を実現していくうちに、私は気付いたんだ。
 こんな素晴らしい技術を、私の個人的『(ちびトラウ)セイ!!!!!!!』のための
 美少女アンドロイドをつくるのだけに使っていいのだろうか?
 世界の人々の平和や幸福のために使うべきではないか?
 悪の魔の手から、力は無いが善良な人達を救うために使うべきではないか?
 そうすりゃもてるんじゃないか?」
「立脚点にいささかのブレも無いようだな」
「そして私は決意した。
 私の技術を、既存の兵器では歯が立たない兵器を使って世界征服を企て無辜の人達を苦しめる悪の秘密組織を倒し、
 人々を救うために使おうと!
 しかしここで重大な問題が発生した……
 既存の兵器では歯が立たない兵器を使って世界征服を企て無辜の人達を苦しめる悪の秘密組織とか
 別にいなかった!」
「お前の都合と思い付きに合わせて世界が構築されるとか思うなよ!?」
「私は嘆いたよ。
 ああ、世界の人々は何て不幸なんだろう。
 せっかく私が悪の秘密組織から救ってあげようと思っているのに、悪の秘密組織に苦しめられていないなんて……」

 もしかすると、この人は「日本語じゃないんだけどはたから聞くと日本語に聞こえる言語」をしゃべっているのかも知れない。

「まったく困ってしまったよ……
 あまりにも困ってたんで、うっかり「NHK」を「えねーち系」と言ってしまうような日々が続いた……
 だが、そんな日々の中、私はひらめいたんだ。
 既存の兵器では歯が立たない兵器を使って世界征服を企て無辜の人達を苦しめる悪の秘密組織とかがいないんだったら、
 自分でつくればいいんだと!」
「困ったもんなのはテメエの頭だぁぁぁぁぁあああああ!!!!!!
 コペルニクスも裸足で逃げ出す転回じゃねぇかぁぁぁあああああ!!!!!」
「安心したまえ、『言うこときかないと壊したり殺したりしちゃうぞ☆ テヘ☆』って宣言させたら即座にやっつけるから。
 破壊活動とかそういうのは実際にはしないから。
 だってすぐにやっつけないとその間に他のヒーローとかにやっつけられちゃうかも知れないじゃん」
「他のヒーローなんか
  (いや待て、ここで「他のヒーローなんかいねーんだよ!」とか突っ込んだら、
   この馬鹿は「あ、そうなの? じゃホントに破壊活動してる奴を倒した方がもてそうだからそうしよう」とかやりかねん。
   ここはこの馬鹿に自分の馬鹿な考えを信じ込ませておくべきだfor the human being(人類のために))
 が先に倒す可能性は確かにあるけれども!
 マジで即座に倒せるように悪の組織の兵器をそれなりには弱くしとかなきゃ!」
「フッ、そんな心配は御無用だ。自分で言うのもなんだが、私のつくった正義の美少女ロボットはかなり強いぞ。
 別に悪の組織のロボットも手を抜いてつくるつもりはないが、苦戦することはあっても負けることは無い!」
「大した自信だな」
「フッ、過剰な謙遜をするつもりは無いからな! どうだね、気になるかね、実際に見てみたいかね?」
「ああ、(歴史上稀に見るレベルの馬鹿の言葉をそのまんま真に受けるなんて不可能だから)ぜひ実際に見てみたいね」
「フッ、ならば仕方無い、見せてやろう! あっちを見ろ!」

 馬鹿が立ち上がり、右手を伸ばして揃えた指で指し示す先に、
スポットライト的なものが灯り、その下の床が左右に開いて、何かがせり上がってきた。

 直前の馬鹿の発言からして、せり上がってきてるのは「正義の美少女ロボット」なんだろう……
人間よりはるかにデカいみたいだけど。
まあデカいから「美少女アンドロイド」→「美少女ロボット」って呼び方を変えたんだろうな。
 でも不覚にもこの登場シーンてちょっとカッコいいって思ってしまうな。いかにも「巨大ロボ発進!」って感じだもん。
まあ実際にロボットの姿を見たらカッコいいとか思う気持ちはブチ壊されちゃうんだろうけど。
なにしろあの馬鹿がつくったもので、しかも美少女ロボだもんなあ。
まず期待出来ん。ほらどんな姿か分かるくらいにまで出てきたよ、あんな↓カッコだもん……

「もっと多岐にわたるもんブチ壊されたわ―――――ッッッッッツツツ!!!!!!」
「どうしたんだね!?」
「こちとらテメエの頭がどうしたのか聞きたいわ! なんじゃあの戦車!」
「そうか、言っても佐藤君はこういうことに関しては素人だもんね。
 いいかい、陸上戦闘において重要なのは火力と装甲だ。
 『避けながら連続して弱点を狙えばいい』なんてのは実戦では通用しない甘い考えだからね。
 でだ、まずは火力についてだけど、
 威力・連射性・即応性・多様な目標への対応能力というものを高次にバランスさせることを考えると、
 大口径高初速砲を主兵装として複数の種類の砲弾を多数搭載するのが最適なんだ。
 ただ、これは単純な装備の重量としても、反動に対するための全体の重量としても、重くなる。
 次に装甲については、強固なものにすれば当然その分重くなるし―――
 軽い材質の装甲をつくれたとしても、その分より厚く、つまり全体として重くすればより防御力が上がるわけだしね、
 そして、その重量を抑える、つまり強固な装甲で覆うべき面積を低減させることを考えれば、
 最も攻撃を受ける可能性の高い、つまり最も強固な装甲を配さなければならない正面の投影面積を小さいものにするべきだ。
 さらに、そうして重くなった兵器は、接地面積が広くないと接地圧が高くなり過ぎて特に軟弱な地面だとめり込んでしまう。
 そして接地面積を広くとるためには、キャタピラが有効だ。
 これらを総合すると、
 『口径が大きくて砲身が長い大砲を積み、全高と全幅を可能な限り小さく抑え、キャタピラによって走る兵器』
 となる。
 これはまさしく戦車の姿だね。
 つまり、あの形は必然により導き出されるものであって、
 各国の軍が戦車を地上戦闘の重要な兵器として配備しているのも理に叶っt」
「この場でそんな兵器のデザインに関するマジ解説求めてねーんだよ! あの生首に関する解説を求めてんだよ!」
「だってあれが無いと美少女ロボットにならないじゃないか」
「あれのおかげで美少女ロボじゃなくてホラーオカルト系統のナニモノかになってんだぁぁぁぁあああああ!!!!!!!
 >>882のヤツもあれの下書き中『生首部分をリアルに描いた方が面白くね?』って思って途中まで描いたんだけど
 あまりのホラーっぷりに消し去ってなかった事にしたくらいなんだぞ!!
 そんなに美少女にこだわるんだったら
 普通のちゃんとした戦車つくって美少女アンドロイド乗り込ませりゃいいだろうがぁ!!!!」
「!
 ……まさか……こんなところにこんな恐ろしいほどの頭脳の持ち主がいようとは……」
「テメーの物理的に一番身近な人間が逆に恐ろしいほどの頭脳の持ち主なだけだぁぁぁぁあああああ!!!!!」



「まあつくってしまったものは仕方無い。
 正義の美少女ロボット(まだ美少女ロボットと言い張るか)を操作出来るような美少女アンドロイドを
 これからつくってると時間がかかり過ぎるし。
 それにそんなにひどく言うもんじゃない。佐藤君あれに乗るんだし」
「どういうことだぁぁぁああああ!!!!!!」
「私は『博士ポジキャラ』だからな。基地で指令とか出す役をしなくちゃならないから、自分で乗るわけにはいかない。
 だからあれに乗る人を探していてね。そこで佐藤君を選んだってわけだ」
「オレが(不幸の降りかかり先に)選ばれた理由はなんだよ」
「やっぱ最近の子だとさ、ゆとり教育って奴?
 それを受けてるから割と適当に説明すれば簡単にノリで乗ってくれるんじゃね? って思ってね」
「あんなもんにホイホイ乗るような人間に育てるには逆に極めて特殊な教育が必要だろうがぁぁぁぁああああ!!!!!!
 それにゆとり教育に対する馬鹿なネトウヨみたいな誤解持ってんじゃねぇぇぇぇえええええ!!!!!!!」
「そんなこと言ってももう仕方無いよ。訓練のために、これからシミュレーションで悪の組織のロボットと戦ってもらう」

 馬鹿がまた違う方を今度は伸ばした左手で指し示す。またその先にスポ(中略)何かがせり上がってくる。

 また戦車か? いや、もしかすると戦闘ヘリコプターとか戦闘機とかかも知れないな。
マジで何が出てくるんだよ……
頼むからオレというド素人の乗った「正義の美少女ロボット(の生首をつけた戦車)」で倒せる相手であってくれ……
いよいよ姿が分かるようになってきた。あんな奴↓か……

「なんで悪の組織の方はロボットなんだぁぁぁぁぁあああああ!!!!!!!!」
「やっぱり悪には“悪”って感じの見た目が必要だからな!」
「なら正義にも“正義”って感じの見た目が必要だろうがぁぁぁぁぁあああ!!!!!」
「さっき説明したろ、強くすると戦車になるの! 悪の方は負けるの前提なんだから戦車じゃなくていいの!」
「もはやテメーも「正義の美少女ロボット」の方「戦車」っつっちまってんじゃねえかぁぁあああああ!!!!」
「あーもう細かいことをゴチャゴチャと! 大人しく訓練受けろ!」

 そう言って馬鹿は指をならそうとして失敗し、
5、6回のチャレンジの末あきらめたらしく大人しく白衣の裾のポケットから小さな箱を取り出して
それについているボタンを押した。
 すると突然、(恐らくは天井から)「タライらしきもの」が落ちてきて、その底がオレの頭を直撃した。
冗談抜きでクラっとなりながらオレが見たのは、
「タライらしきもの」がくるりと上下引っくり返ってオレの頭部全体にすっぽり被さろうとしている光景だった。
そしてオレの頭部に「タライらしきもの」がすっかり被さってしまうと、オレの意識は急速に遠くなっていった。
な、この「タライらしきもの」には被さった相手の意識を奪う機能があるのか…… これじゃ抵抗することもできない……
……だったらさっきオレの頭に「タライらしきもの」をぶつけた意味はぁぁあああああ!!!!!????

 そんなツッコミも実際に言葉にして口に出すこともできないまま、オレの意識は完全に闇に沈んだ。



 何か狭い部屋の中にいてモニターとか色んな機器とかに囲まれてる。
 そのことを認識して、オレは意識が戻ったことに気がついた。
 この様子は…… シミュレーションで「正義の美(中略)けた戦車」に乗せられてるんだな、多分。
意識を失ってる間に運ばれて実際にシミュレーターに乗せられてるのか、
それとも、「タライらしきもの」に脳に「そんなことしちゃらめぇぇぇえ!」なことされて
疑似体験させられてるのかはわからないけど。
しかし……、本物の戦車に乗ったことなんてないけど、
まず間違いなく戦車の中ってこんなアニメのロボットのコクピットみたいな感じじゃないな。

「聞こえるかい?」

 いきなり、通信音声が聞こえてきた。

「奇跡的なほどの馬鹿の声なら聞こえる」
「? 何か不具合でも起きてるのか……?(口調が…… マジだ!)
 まあいい、反応したってことはこっちの声も聞こえてるってことだろう。
 さっき言った通り、これから悪の組織のロボットと戦ってもらう。
 操作なんかわからないっていうだろうけど、
 その点についてはちゃんとどうしたらいいか指示をもらえるシステムがあるから心配要らない」
「ああそうか、そりゃ助かるな…… で、その指示を受けるにはどうすればいいんだ?」
「佐藤君自身は別に何もしなくていいよ。
 搭乗者の様子をモニターして、『困っている』と判断すれば向こうから指示を出してくれるから」
「へえ、そいつはすごいな!
 でも、その『あ、コイツ困ってるな』って判断は機械というか、コンピューターがするんだろ?
 なんていうか、そういう人間の表情とか様子とかいうものをコンピューターがちゃんとわかるのか?
 見落としとかあったりしないのか?」
「いや、コンピューターがやるわけじゃない。それは安心していい、ヨネさん(82)は人生経験豊富だから」
「ヨネさん(82)て何だぁぁぁぁぁああああ!!!!!!」
「ヨネさん(意外と洋食も好き)は『おばあちゃんの知恵袋システム』の要っつーか全てみたいなもんだ」
「婆さんにアドバイスされるのかぁぁぁぁああああ!!!!! 役に立つ気配皆無だろうがぁぁぁぁあああああああ!!!!!」
「失礼なことを言うな。ヨネさん(でもやっぱり朝はご飯)は人生の先輩だぞ。
 よく言うだろ、『亀の甲より歳の功』って。
 ……あ、今のは別に『亀甲縛りされるより歳をとってる人相手の方がいい』、
 つまり『SM趣味より熟女趣味の方が良いものだ』っていう意味で言ったんじゃないぞ。
 私にはどちらの趣味も無いが、人の嗜好に優劣なんかつけられn」
「聞くのが初めて過ぎる解釈だぁぁぁぁぁああああああ!!!!!!!
 テメエの嗜好だけは全力で否定したらぁぁぁぁぁあああああ!!!!!」
「とにかく、模擬戦を開始する。
 あ、言い忘れてたけど、
 これシミュレーションだから仮にやられて死んじゃったとしても現実には問題無いと思ってるかも知れないけど、
 脳に『え…… うそ…… そんなことするの……』ってなことして仮想現実体験させてるから、
 重傷を負ったりとか死んだりとかするとアレなことになるかも知れないんで、真剣にやった方がいいよ」
「アレなことって何だ!!! アレなことって何だぁぁぁぁぁぁああああ!!!!!!!!!」

 返事しろコラぁぁぁぁぁぁああああああ!!!!!!!



 オレは取り残された。いや、この表現多分間違ってると思うけど心情的にはそんな感じだ。
どうしたらいいんだよ…… 
そんなことしてもどうにもならないことはわかってるけど、体のそうしようとする反応のまま、
オレは(多分涙目で)周りを見回した。
 すると、そこはかとなく「ワタクシ通信用で御座います」という空気を醸し出してるモニターに、
いかにも縁側で日向ぼっこをしてるのが似合いそうなかわいらしいおばあちゃんが映っているのに気が付いた。
ああ、これが「おばあちゃんの知恵袋システム」だな、寸分の疑いの余地も無く。

「どうしたらいいのかわからなくて困ってるようじゃねぇ」
おばあちゃんが話しかけてきた。いかにも優しいおばあちゃんと言ったほんわかした声だ。
いや、確かにホント誰でもいいから助けてほしい状況ではあるんだけど、
ちょっとおばあちゃんにどうにかしてもらえる状況じゃなさs

「発動機始動の手順としては、キーを回す代わりにスターターボタンを押すくらいで、
 操作自体は自動車とほとんど変わらんから心配しなくてもええ。
 ただ、重量が大きいんで発動機に常に高い回転が必要とされるという過酷な使用状況になるから、
 暖機はしっかりするんじゃよ。
 まぁ、電装系や主砲の電熱砲が消費する大量の電力を賄うために大容量蓄電器を搭載しとる、
 そのおかげで発動機停止中にも砲塔・武装を動かせるから、暖機中に向こうが仕掛けてきても反撃は出来る、
 過信や油断は禁物じゃが、過剰に心配することも無いよ。
 暖機が終わったら動かすわけじゃが、基本的な操縦の操作はオートマチックの自動車とほぼ同じじゃよ。
 無論、より高度な操作が要求される機能もあるが、
 初めてじゃから、あまり特殊な操作をしろと言われても混乱するだけじゃろうから、今回は基本的なことだけにしとこうのう。
 それで勝てるように指示を出したげるから。
 で、動かす段階になったら、
 まずマップモニターに示した青いバツ印のところに行って、砲塔を青い矢印の方向に向けるんじゃよ。
 向こうは起伏の激しい地形に強いが地表が軟弱な地形には弱い、こちらはその逆じゃ、
 そのことを考慮して、向こうが選ぶであろう接近経路が限定しやすく、迎え撃ちやすい状態になるのが、
 マップモニターに示したところじゃ。
 さらに、もし向こうが裏をかいてこちらの側背から襲い掛かれるような経路をとったとしても、
 青いバツ印の位置ならば、そういう側背を衝かれるような経路は散布式警戒センサーが効きやすい地形になっとるから、
 位置につけたらそこに散布式警戒センサーを射出しておけば、十分余裕を持って対処出来る。
 まあ、さっきやられたらアレなことになると言われたが、もしそんなことになりそうだったら、
 システムを乗っ取ってそうならないようにしてあげるから、安心しなさい。
 ただ、そうは言っても訓練じゃから、出来る限り自分で頑張るんじゃよ。
 さて、今、射撃統制装置の緯度設定はデフォルトのままで日本のそれになっとるが、
 訓練ということで、ここは緯度が違っておる。
 データリンクに接続している状態なら、自己位置情報を元に、自動で緯度設定が修正されるが、
 まだ接敵しておらず秘匿性を高めるため、
 及び、敵の電子戦能力が未知であるのでデータリンクの情報を『盗み見られる』危険がありそれを防ぐため、
 という訓練上の設定から、
 今はデータリンクに関する電波の送受信を全くしておらん。
 このままではコリオリ力に関する修正が狂うから、暖機の時間を利用して、緯度情報を修正入力しよう。
 今から説明する通りにするんじゃよ……」

 このババアはナニモンだぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!



 その後、「悪の組織のロボット」と戦った。
 具体的にはよくわからんけど、
少なくとも動きやら周囲へのとばっちりやら見た感じでは、「悪の組織のロボット」は結構戦闘力高そうな感じだったが、
完全なるド素人のオレでも全く危なげというものも無く楽に勝てた。
 そりゃもうあまりに楽勝だったもんで見せ場というものがまるで無く、戦闘時の描写をかっ飛ばすくらいに簡単に勝てた。
 ヨネさん(冷徹な頭脳と野生の勘を併せ持つ女)の適切過ぎる指示のおかげで。

「いや~、完全なる勝利じゃないか! 初めてでこれなんて、佐藤君もしかしたら天才なんじゃないか!?」

 「正(中略)車」のシミュレーションから解放された(現実世界へと帰還した)オレをえらく上機嫌な馬鹿が出迎えた。

「ヨネさん(天使のように大胆で悪魔のように用心深い)の指示が完璧過ぎるおかげだわ!
 ヨネさん
 (もはや「相手がヨネさん(戦場を支配する老獪なる女狐)の考えに合わせて動いているのではないか?」と思うレベル)
 の言うこときいてりゃ誰でもあの結果になるわ!
 もうオレ乗せないでヨネさん(本当に……コイツが敵でなくてよかった……)に直接遠隔操作でもさせろよ!
 そっちのほうが強いわ!」
「あ、言われてみりゃ確かにそうだ。じゃ、佐藤君用済みだからもう帰って二度と来なくていいから。
 秘密を知ってしまったから消す、とかはしないであげるから、感謝してね」

 オレは可及的速やかに馬鹿の棲家から退去し、その足で警察署へと向かった。



「模擬戦を終えた佐藤和俊。
 再びの平和に、彼は安堵する。
 しかし、それは戦士に与えられたつかの間の休息に過ぎなかったのだ……
 チャラチャチャッチャッ チャラチャチャ!」
「勝手に続けようとするなぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!!!」

                               おわり。


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