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守護機兵Xガードナー 月奪還作戦(オペレーション・ムーンテイカー)編 第1話

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匿名ユーザー

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アグリット・ダリューグは、いつの間にか艦長席で、うたた寝をしていたようだ。
「…いかん」
 しかし、艦長帽を深く被り腕を組んだ姿勢、普段から仏頂面のお陰で部下にはバレずに済んだ。
「…状況は?」
「はっ、現在、火星軍艦隊は月軌道上に展開、二時間後には交戦となります」
「本艦は間もなく戦闘となる、各員、戦闘配備だ」
「了解しました提督」
 艦内が一気に慌ただしくなる。が、ブリッジの角に一人の少年が、ぼーっと外を眺めていた。
「…シュート」
 少年は振り返る。顔に精気は全く無い。気だるそうな表情をアグリッドに向ける。
「…お前も早く持ち場に付け」
「時間まだあるんだろ?」
「…あるからなんだ?」
「…」
「…今のお前は私の部下だ。上官の命令は絶対だ」
「俺は、部下になった覚えもないし、ましてや軍人でもない」
「…なら何故、此処にいる?」
「そ、それは…」
「…戦うなら早くしろ。それでなければ帰れ」
 放った言葉が空間を凍らせる。
「お、親父は、俺との再会がうれしくないのか?」
「…今は部下と上官だ」
「そんなの関係ないよ!家族を戦争に巻き込んで、兄貴まで死んで…死んじゃって」
「…シュート」

「今度は俺に軍人になれだって、そんなのおかしいじゃないか!?俺は兄さんの代わりじゃないんだ!俺は…ただ、親父にッ

 シュートには見えていたのだ。
 迫り来るアグリットの拳が。
 だが、敢えてシュートはそれを避けなかった。
 繰り出される鈍く重い拳が頬に叩き込まれる。
 脳が大きく揺さぶられる。
 一瞬、意識が遠のく。
 そして、激痛が走る。

 しかし、シュートは嬉しかった。

 父が自分に対して感情的になったのはこの瞬間が初めて。
 子供の頃、優秀だった兄に付きっきりだった父。シュートは、いつもその光景を眺めるだけだったのだ。
 今、この時、父は自分を見てくれている。気に掛けてくれている。
 シュートは嬉しくて仕方がなかった。

 それが最初で最後の父から息子への修正だった。

「…ぐッ」
 アグリットは殴った右手で口を押さえた。掌を開くと、唾液に赤色が入り交じる。
「提督!」
 それまで横で傍観していた副官の大佐が駆け寄る。
「やはりまだお体が…」
「…気にするな。それより、“ソレ”をかた片づけろ。無理矢理にでもコクピットに放りこんどけ」
 アグリッドは席に座り直し血を拭かぬまま仮眠を取ったのだった。

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