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転移戦線異常有り!? 大海上都市群「兵庫」重歩兵中隊がワームと戦うようです 最終話A

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irisjoker

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リミッター解除の影響で頭の中が痛い。脳が痛い、と表現した方が正しいだろうか。尋常ではない激痛と不快感が全身を苛む。
並の人間なら戦闘は不可能な状態だろうが、俺は「この程度」で戦闘不能になる柔な鍛え方はしちゃいない。廃人になっても構わないならもう一度リミッター解除も可能だ。だが、残念な事に意味が無い。
間接防御兵器以外の弾薬が尽きた今の状態でリミッターを解除しても、撃つ弾薬が無ければ話にならない。振動熱斬刀を主力の格闘戦でも大きな威力を発揮はするが、「まだ」そこまでオルトロスは到達していない。近接部隊の射撃で塹壕に到達するまでに殲滅しているからだ。
しかし、現在の状態が保たれるのは残り数分。最長でも残り数分で間接防御兵器以外の全ての弾薬が尽き果てる。そんな時に後方支援部隊が背負っているバックパックのセンサーが「それ」を捕らえた。「それ」の解析情報が全員に送られ共有される。
「B-52?」
<二百年ぐらい前の戦略爆撃機っスよ。ほら、アメリカの>
「そんなもんの大編隊がなんで空を飛んでるんだ。のび太と竜の騎士のスネ夫的心境なんだが、今」
<俺にだって分からないっスよ>
その時、中身がぐっちゃぐちゃに掻き混ぜられたように感じる脳にニュータイプみたいな電流がピキーンと走った。
「そうか、そういう事だったのか」
<ん? 何か分かったのか、隊長?>
「俺達はとんでもない思い違いをしていたようだ」
<思い違いだって>
そう、そうだ。
「俺達……というより、大海上都市群「兵庫」は魔王が支配するファンタジー世界へと転移した。だから今回の再転移も本来の地球とは関係無い全く別の世界に存在するモンスターと戦っているのだと、そう思っていた。だが、真相は違っていたんだ」
<どういう事なんだ、隊長!?>
「俺達が今いるこの場所は、平行世界の地球なんだよ!」
<<<<<なっ、なんだってェーーーーー!!>>>>>
俺を除く中隊全員99人が絶叫する。
<それは本当なのか、隊長!?>
「そうだ! そしてこれはノストラダムスの……って最後まで言わせろ!」
塹壕の近くまでやって来た複数のオルトロスに頭部両側の迎撃針弾発射機から針弾を、5連装2基10門の6.25mm迎撃機関銃から6.25mm振動熱徹甲弾を叩き込み、怯んだ瞬間を逃さず他の仲間が仕留める。
<で、ノストラダムスがなんだって?>
「え、ノストラダムス? 俺、そんな事言ったか」
<駄目だこいつ、早く何とかしないと>
<リミッター解除の影響がきついんだよ、ほんのチョッピリ程度でも優しくしてやれ>
<隊長、頭かわいそかわいそなのです>
この野郎共、好き放題言いまくりやがって。まぁいい。今重要なのはこっちに真っ直ぐ向かってくるB-52の大編隊だ。戦略爆撃機なのだから、当然その任務は戦略爆撃なのだろう。そんでもって、こいつらの標的がオルトロスだと仮定しよう。
現在、俺達のいる塹壕に向けて大多数のオルトロスが進軍して密集しており、爆弾を大量に投下すればそりゃもう最高にハイッて奴になれる絶好の状態になっている。本来の爆撃目標から変更しても構わないぐらいの「餌場」。
だから、こうなるだろうとは分かっていた。いや、戦略爆撃機が飛んでくるという時点で既に「オチ」が本能的に理解出来ていたのかもしれない。近接部隊の弾薬が尽きると同時に、俺達の塹壕を中心として、B-52が大量の爆弾を投下し始めた。
「おおー、俺達らしい展開だな」
<冷静にしている場合か、隊長。なんかもう色々とヤバいぞ>
「大丈夫だって。もう「準備」はとっくに出来てるんだろう。なぁ」
<ああ>
返事をしたのは後方支援部隊のリーダーだ。
<既に101人が収容可能な即席の防空壕を作ってある。全員、今すぐ集合しろ>
こいつは最初から先読みしていた。何らかの大威力攻撃に備えて、弾薬が尽きていらなくなった各種武器、小型弾薬補給車「イグルー」、牽引式輸送車などを解体して資材とし、即席の防空壕を「既に」作り終えていたのた。
「最高」の行動と「最適」の行動は全く違う。神ならぬ人には「最高」よりも「最適」な行動を選ばざるを得ない局面が多いが、「最適」な行動は正しさと同じではない。爆撃機が爆弾を投下し始めたから今から防空壕を作ろう、では当然間に合わない。
さながら宇宙戦艦ヤマトの真田さんのようなチート先読みで(俺の命令なんざ完全無視で勝手に)防空壕を「既に」作ったのだ。全く、本当に頼りになる奴だ。清水の糞野郎と戦った時も今回みたいなキレを発揮しててくれれば全滅されなかったかもしれないのに。
「よおし、行くぞ」
<おおォッ!>
全員重装甲強化服を脱ぎ、塹壕の奥深くに作られた防空壕へ向かう。無人の重装甲強化服は予め入力した通りに自動で動き、全てが塹壕から飛び出す。そして、オルトロスへ走りながら間接防御兵器の全力射撃を始める。オルトロスを倒す事等全く考えていない。これは足止めだ。
最初こそ殺せないまでもオルトロスの大軍勢を押し止めていたが、間接防御兵器の弾薬が尽きた後、雪崩のようにオルトロスは攻め寄せてきた。
針弾を剣山の撃ち込まれて大破、十数体で寄ってたかって好き放題に踏み潰され、触手で五体を引き千切られる。それは今までやられた鬱憤を晴らしているかのようであった。百体の重装甲強化服の全てがオルトロスに破壊される。だが、甘いな。
俺達が「ただ」で済ますと思うか。弾薬は全て尽きた。重装甲強化服を脱ぐ際に持ち出した軽歩兵用の武器弾薬を除き、重歩兵としての「普通に射撃する分の弾薬」は、だ。最後の置き土産、有り難く取っておけ。
破壊された重装甲強化服から数個の大きな黒い物体が地面に転げ落ちる。バラバラ死体のように散乱し、腕だけとなった重装甲強化服の手にも握られていたりした。それら数百個は一瞬、凄まじく発光した後に爆発、周囲のオルトロスを文字通り消し飛ばした。
重歩兵用手榴弾。通称、重手榴弾。時限爆弾のように時間を設定したり壁に張り付けたり地面に埋めて地雷のようにしたり、他にも説明するのが面倒なぐらい様々な使い方がある多目的多機能爆弾。プレゼントはお気に召して頂けたかな。
防空壕に中隊100人と「あれ」を合わせて101人が集まる。オルトロスが塹壕に到達したが、もう遅い。むしろグッドタイミングで来てくれた。地獄の業火に焼き尽くされて燃え尽きろ。
B-52の投下した爆弾がオルトロスの大軍勢に降り注ぐ。さっきの重手榴弾など比べ物にならない大爆発と衝撃波が大多数のオルトロスを消し飛ばし、凄まじい轟音が塹壕の奥の防空壕まで轟き渡る。軽装甲強化服のセンサーで感じられたのはそこまでだ。
魂をも吹き飛ばしそうな爆音と轟音が次から次へ響く。実際は短い時間だったが凄まじく長く感じられた。それがどれくらい続いただろうか。不意に静寂が訪れる。即席の防空壕は何とか持ち堪えてくれたようだ。
軽装甲強化服のセンサーで感じられる範囲にオルトロスは死骸の塵すらも存在しなかった。しかし、油断は出来ない。大多数がさっきの爆撃で死んだとはいえ、まだ多数残っているはず。
俺が携行しているのは軽歩兵の基本装備である12.5mm軽拳銃と30cm振動熱斬刀、軽手榴弾数個のみ。他の連中も似たり寄ったりだ。重歩兵用の武装に比べて大きく威力が劣るこれだけで、残ったオルトロスを相手にしてやらなければならない。
ん? いや、待てよ。何かおかしい。
(軽装甲強化服のセンサーで感じられる範囲に? V3ホッパーからの情報受信はどうしたんだ。あれは空を浮遊しているんだ、いくら強力であろうと爆撃で全てが破壊されはしないはずだ)
しかし実際何の反応も無い。どういう事だ。俺達は気を抜かず、防空壕から出て塹壕の中から周囲の様子を探る。すると、なんという事でしょう。あれだけたくさんいたオルトロスは一匹も存在しなかったのです。
<オルトロスがいないな。というより、さっきとは景色が全然違ってないか>
<むしろ見覚えがあるな。こいつは……>
「ああ、間違いない。再転移する直前に俺達がいた場所だ」
B-52の爆撃が引き金になったのだろう。俺達は元の世界に戻ったのだ。
<それにしても、何とも俺達らしい結末だな>
<アニメとかならさー。普通苦戦しながらも何とか敵を撃退したり、燃える場面とか、そういうのがあるじゃん。俺達、格好悪過ぎだろ>
<まぁいいじゃないか。ぶっちゃけ俺達はどうでもいいが、「あれ」が無事だったんだからな>
<うむ、確かに。じゃあ隊長、恒例のアレの時間だぞ>
「そうだな。「あれ」を輸送車から運んだのは誰だ」
<俺っスよ!>
「……随分と満足そうだな」
<そりゃもう、最高の気分っス!>
「…………「あれ」を運ぶ時に、同じ目的の数人を数秒で叩きのめしたのは不問とする。誰だってそーする。俺だってそーする。で、お前どうやって運んだんだ?」
<愚問っスね隊長。そんなの、お姫様だっこ以外に何があると言うんスか>
「中隊裁判の結果を発表する。お前、死刑な」
<うおーい>
<隊長、こいつどさくさに紛れて胸を触ってたぞ>
「なら超☆死刑だな」
<おーい、余計な事を言うんじゃねえ!?>
「黙れ、戯けが! 「あれ」をお姫様だっこした上に胸を触るなどという、うらやまけしからん行為をした貴様に一切の情けは不要。やれ! いや、むしろ俺がやる!!」
<な、なにをするきさまらー!>

「……全く、子供同然のどこまでもどう仕様も無い困った御主人様達ですね」
少し離れた場所であの人達の戯れを見ながらため息を吐いた。きっと今の私は母親が我が子を見るような目であの人達を見ているのだろう。いつの間にやら100人全員での殴り合いになっていたが、あれはあれでお互い楽しんでやっているのだと分かっているから止めはしない。
「人の形をしていても所詮は只の道具。欲望のままに思う存分犯すなり、暴力を振るってストレスを解消するなり好きにすればいいでしょうに。むしろその為だけに私達は造られて、それだけが私達の存在意義だというのに。
本来持たない心を勝手に与えて、一度も抱かないところか娘のように大切に大切に扱って。自分達より私を大事にするなんて正気の沙汰じゃないでしょう。数有る姉妹の中で未だに処女なのは私ぐらいですよ。全く、本当にどう仕様も無い御主人様達」
いや、思い返せば欲望には忠実だったか。お兄ちゃんと呼んでくれとかパパと呼んでくれとかお姉ちゃんと呼ばせてくれとか罵ってくれとか。
他にもブルマスク水巫女服メイド服ナース服、様々な衣装を彼らが要求する通りに着用した。微塵も嫌がらず、むしろ喜んで。色々試した結果、いつの間にか今着用している黒の和服が私の正装、という事になっていた。
「……はぁ……」
額を掌で押さえる。これが人間でいう頭痛という物だろうか。深く深くため息を吐く。私は一生、廃棄される最後の最後まで処女で在り続ける気がする。
「本当に困った御主人様達」
私の呟きなど聞こえず、彼らは殴り合いを続けている。真っ赤な夕日に照らされて、さながらドラマのワンシーンのようであった。

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