様々な事件(リリのスターク艦内での暴走、なぜか不機嫌なリクの八つ当たり)が過ぎ去った後、つかの間の休息が訪れる。
死地へと向かう戦士達の休息が―――
「まじですみませんでした」
一部を除いて訪れた。
「つまり、オレの反応を楽しむために盗聴器まで仕掛けて艦内に生中継か」
「ほんの出来心だったんです。許して下さい」
ゴースは既に頭を下げるどころでは無い状態まで逝っている。
「協力してくれるとか言ったのもこの為か」
「それは少し違うぞ?本気で俺はその恋を応援するつもりで」
「楽しげに策略をめぐらせたと」
「本当にすいません」
リリの怒りは収まらない。
死地へと向かう戦士達の休息が―――
「まじですみませんでした」
一部を除いて訪れた。
「つまり、オレの反応を楽しむために盗聴器まで仕掛けて艦内に生中継か」
「ほんの出来心だったんです。許して下さい」
ゴースは既に頭を下げるどころでは無い状態まで逝っている。
「協力してくれるとか言ったのもこの為か」
「それは少し違うぞ?本気で俺はその恋を応援するつもりで」
「楽しげに策略をめぐらせたと」
「本当にすいません」
リリの怒りは収まらない。
そんな艦内には、月を見ながら酒を飲んでいる二人がいた。
「久しぶりですね、月見酒なんて」
「まったくですね、最近は戦いばかりでしたから」
ハーミストとカルラは酒を酌み交わしていた。
昔から、この二人は大きな問題にさしかかるたびに酒を酌み交わすのだ。
「リク君、彼はなぜあんなにも不機嫌になったんでしょうね」
「情緒不安定、という訳ではないんでしょうね。彼にも結構謎が多いですから」
リクの戸籍には全く持って不審な点は無かった。
しかし、そこには少しだけ不自然な点もあった。
ゴースが言うにはデータに改ざんされた形跡がわずかに残っていたという。
なぜ改ざんされたのか、誰がやったのか。それすら分からない程にわずかな形跡。
ハーミストは、それはリク自身が自分の経歴を知られたくないがためにやったのではないかと思っている。
「彼の復讐、そこまでの物がそれには存在するのでしょうか」
「復讐を舐めてはいけませんよ?それは、自分も相手も焼きつくすまで止まらない両刃の剣ですから」
「貴方も諦めていないんですね」
「………」
ハーミストにも復讐したいと思っている相手はいる。第三次世界大戦は、当時少年だった彼に残酷な現実を突きつけて、傷を残した。
「そのために、あの機体を放棄しなかったんです。諦め切れる訳がないでしょう?」
ハーミストがひたすらに、絞り出すように、抑え込むように、呟いた。
「……分かっています。自分はいつでも貴方の後ろで貴方を信じています。安心してください」
「……ありがとう」
戦友の夜は更けていく。
「久しぶりですね、月見酒なんて」
「まったくですね、最近は戦いばかりでしたから」
ハーミストとカルラは酒を酌み交わしていた。
昔から、この二人は大きな問題にさしかかるたびに酒を酌み交わすのだ。
「リク君、彼はなぜあんなにも不機嫌になったんでしょうね」
「情緒不安定、という訳ではないんでしょうね。彼にも結構謎が多いですから」
リクの戸籍には全く持って不審な点は無かった。
しかし、そこには少しだけ不自然な点もあった。
ゴースが言うにはデータに改ざんされた形跡がわずかに残っていたという。
なぜ改ざんされたのか、誰がやったのか。それすら分からない程にわずかな形跡。
ハーミストは、それはリク自身が自分の経歴を知られたくないがためにやったのではないかと思っている。
「彼の復讐、そこまでの物がそれには存在するのでしょうか」
「復讐を舐めてはいけませんよ?それは、自分も相手も焼きつくすまで止まらない両刃の剣ですから」
「貴方も諦めていないんですね」
「………」
ハーミストにも復讐したいと思っている相手はいる。第三次世界大戦は、当時少年だった彼に残酷な現実を突きつけて、傷を残した。
「そのために、あの機体を放棄しなかったんです。諦め切れる訳がないでしょう?」
ハーミストがひたすらに、絞り出すように、抑え込むように、呟いた。
「……分かっています。自分はいつでも貴方の後ろで貴方を信じています。安心してください」
「……ありがとう」
戦友の夜は更けていく。
また別の場所、スタークのハンガーにはモニターの明かりがついていた。
リクはその明りに近づく。
「ラウル、まだやってるの?」
「まあね、グラビレイトの強化武装案だよ。弱点を克服しなきゃダメだろ?」
グラビレイトの弱点、三つあるそれは既に二つが露呈している。
粒子の制御に電力が掛かり過ぎる事。そして、粒子を使わないと摩耗が激しい事。
さらに、後一つ。この弱点は致命的と言えた。そこを突かれた瞬間にリクの死は決まってしまう程に。
モニターに映っているのは二つのグラビレイト。それぞれが別の装備をしている。
一つは全身にブースターが付いた高機動型の追加装甲。その下にはVer.Multiboosterと書かれている。
もう一つは肩に巨大な武装の付いている明らかな重武装タイプの追加装甲。そちらにはVer.Assaultと書かれている。
「とりあえず考えてはみたんだけどね、どっちも問題があって……」
「高機動型は火力が足りない、重武装型は電力が足りない、かな?」
「そ、高機動型は詰める武装が限られててね。現状ではワイドグラビティぐらいなんだよ。。そして重武装型は使用する電力が発電量を上回っ
てる。大体、15秒くらいで電力切れだね」
「だけど、使える武装ではあるんだよね」
明らかに欠陥が多すぎる追加装甲だが、それでも。
「一応製作はしておいて。ひょっとしたら使えるかもしれない」
「どうやって?」
「少し、考えさせてくれ。すぐにまとまる筈だから。まずは目先の障害、死機使い。これが終わったら考えるよ」
ハンガーに格納されているグラビレイトには、新たな装備が付けられている。
グラビティショットマグナム。暴徒鎮圧用のゴム弾を重力で極限以上に押し固めた弾丸をショットガンとして込めた武装だ。
広域に弾をばら撒く銃。つまり、これは手加減が出来ない銃だ。撃てば確実に、殺してしまう。
(殺したくない。人を殺すのは、俺が壊れてしまう)
人を殺す事を悪い事だとは、リクは絶対に思えない。だが、リク自身は殺す事を絶対にしたくない。
あくまで自己中心的な理由で、だが。
リクはその明りに近づく。
「ラウル、まだやってるの?」
「まあね、グラビレイトの強化武装案だよ。弱点を克服しなきゃダメだろ?」
グラビレイトの弱点、三つあるそれは既に二つが露呈している。
粒子の制御に電力が掛かり過ぎる事。そして、粒子を使わないと摩耗が激しい事。
さらに、後一つ。この弱点は致命的と言えた。そこを突かれた瞬間にリクの死は決まってしまう程に。
モニターに映っているのは二つのグラビレイト。それぞれが別の装備をしている。
一つは全身にブースターが付いた高機動型の追加装甲。その下にはVer.Multiboosterと書かれている。
もう一つは肩に巨大な武装の付いている明らかな重武装タイプの追加装甲。そちらにはVer.Assaultと書かれている。
「とりあえず考えてはみたんだけどね、どっちも問題があって……」
「高機動型は火力が足りない、重武装型は電力が足りない、かな?」
「そ、高機動型は詰める武装が限られててね。現状ではワイドグラビティぐらいなんだよ。。そして重武装型は使用する電力が発電量を上回っ
てる。大体、15秒くらいで電力切れだね」
「だけど、使える武装ではあるんだよね」
明らかに欠陥が多すぎる追加装甲だが、それでも。
「一応製作はしておいて。ひょっとしたら使えるかもしれない」
「どうやって?」
「少し、考えさせてくれ。すぐにまとまる筈だから。まずは目先の障害、死機使い。これが終わったら考えるよ」
ハンガーに格納されているグラビレイトには、新たな装備が付けられている。
グラビティショットマグナム。暴徒鎮圧用のゴム弾を重力で極限以上に押し固めた弾丸をショットガンとして込めた武装だ。
広域に弾をばら撒く銃。つまり、これは手加減が出来ない銃だ。撃てば確実に、殺してしまう。
(殺したくない。人を殺すのは、俺が壊れてしまう)
人を殺す事を悪い事だとは、リクは絶対に思えない。だが、リク自身は殺す事を絶対にしたくない。
あくまで自己中心的な理由で、だが。
「そんな、弱点が……」
キセノから話されたグラビレイトの露呈していない弱点。ミキとギルバートは驚きを隠せない。
「これで機体の方の弱点は全部です」
「しかし、それは本当の話か?そんな無茶苦茶な話が……」
ギルバートは情報の真偽を見極められずにいた。
「真実です。正直言ってあの機体は試作機、実際の戦闘に対応するにはまだ手を加えなければいけない筈の物ですから」
「その弱点を突けば、勝てますか?」
ミキの期待のこもった質問にキセノは笑顔で答えた。
「必ず」
グラビレイト、あの機体が連邦に渡る事は実は想定内だった。
こちらの手にあるうちに実験データを取り、そして連邦に奪取させるつもりだった。
計画のずれは全てリクを中心として起こっている。
自分をつけ狙うちっぽけな完成者。彼の能力はグラビレイトに適応しすぎた。
「さらに言えば、あの機体のパイロットの弱点、というか癖もお教えできますが?」
「何だと?そんな事がなぜわかる」
ギルバートの殺気がキセノを包む。
「情報を纏めれば分かります。白い魔弾の戦績を見れば」
データの中の戦績には死者がゼロと出ていた。
「奴は絶対にコックピットは狙いません」
「それなら、攻撃が……」
キセノは頷きながら言った。
「完璧に、読めますよ」
キセノから話されたグラビレイトの露呈していない弱点。ミキとギルバートは驚きを隠せない。
「これで機体の方の弱点は全部です」
「しかし、それは本当の話か?そんな無茶苦茶な話が……」
ギルバートは情報の真偽を見極められずにいた。
「真実です。正直言ってあの機体は試作機、実際の戦闘に対応するにはまだ手を加えなければいけない筈の物ですから」
「その弱点を突けば、勝てますか?」
ミキの期待のこもった質問にキセノは笑顔で答えた。
「必ず」
グラビレイト、あの機体が連邦に渡る事は実は想定内だった。
こちらの手にあるうちに実験データを取り、そして連邦に奪取させるつもりだった。
計画のずれは全てリクを中心として起こっている。
自分をつけ狙うちっぽけな完成者。彼の能力はグラビレイトに適応しすぎた。
「さらに言えば、あの機体のパイロットの弱点、というか癖もお教えできますが?」
「何だと?そんな事がなぜわかる」
ギルバートの殺気がキセノを包む。
「情報を纏めれば分かります。白い魔弾の戦績を見れば」
データの中の戦績には死者がゼロと出ていた。
「奴は絶対にコックピットは狙いません」
「それなら、攻撃が……」
キセノは頷きながら言った。
「完璧に、読めますよ」
ネフド砂漠。
死機使いの領域と呼ばれるその砂漠には、人は寄り付かない。
その死者の砂漠を通る一隻の戦艦。
「本当に死者なんている訳ねーよなー」
リリは全く恐れも無い。
「反応は今だなしっと……しかし、本当にいるなら見てみたくはあるよな」
ゴースの反応は知的好奇心の賜物だろう。
「まだ、その領域に入ってはいないみたいですね。警戒は強めてください」
カルラはいざとなればハーミストが出撃する為、落ち着いている。それは信頼の証拠だ。
ハーミストはこの場にいない。機体の凍結解除に従事しているからだ。
「作戦領域内まであと300、250、200――」
「艦内の警戒態勢を第1級に、HB部隊は出撃準備を」
「ん、あれなんだ!?」
リリの目は砂漠のど真ん中、何もある筈の無い場所を見ていた。
「熱源!?HBが大量に、し、出撃しろ!これはまずい!!」
砂漠の真ん中から現れたのは、数百機のHBだった。
死機使いの領域と呼ばれるその砂漠には、人は寄り付かない。
その死者の砂漠を通る一隻の戦艦。
「本当に死者なんている訳ねーよなー」
リリは全く恐れも無い。
「反応は今だなしっと……しかし、本当にいるなら見てみたくはあるよな」
ゴースの反応は知的好奇心の賜物だろう。
「まだ、その領域に入ってはいないみたいですね。警戒は強めてください」
カルラはいざとなればハーミストが出撃する為、落ち着いている。それは信頼の証拠だ。
ハーミストはこの場にいない。機体の凍結解除に従事しているからだ。
「作戦領域内まであと300、250、200――」
「艦内の警戒態勢を第1級に、HB部隊は出撃準備を」
「ん、あれなんだ!?」
リリの目は砂漠のど真ん中、何もある筈の無い場所を見ていた。
「熱源!?HBが大量に、し、出撃しろ!これはまずい!!」
砂漠の真ん中から現れたのは、数百機のHBだった。
[第一小隊、ならびに第三小隊出撃してください!]
「了解した。ウィンス・ファオス、出撃する」
敵の大群に向かっていく第一小隊。
ウィンスの専用機、灰被りは大型二区分ながらも高出力ブースターで一気に敵の中へ飛んでいく。
「大量の敵相手なら、この機体の真価が見せられるというものだ」
敵機の表示をロックしていく。
右肩の武装の小型クラスターミサイルを全弾発射する。
点では無く面による制圧に数十機が爆散する。
撃ち尽くしたミサイルポットをパージする。
真下に集まっている敵機に左腕の大型ミサイルを発射する。
爆炎に包まれる敵機の真ん中にパージした武装を落とす。
左肩の六連ミサイルランチャーと右腕のグレネードを発射する。
爆発、両肩の上に保持されているバズーカを効果的な位置に打ち込んでいく。
背部の大型クラスターミサイルを後方の敵に撃つ。
撃ち終わった武装をパージすると、その下の武装を放つ。
両肩のグレネードの投的機が作動する。腹部の自動小銃が火を吹く。
バズーカが取り外されて自由になった腕で腰にあるガトリングガンを取り出す。
腰のグレネードを投げつけて近づく敵を燃やす。
一方的な蹂躙ともいえるその光景が、ウィンスが灰被りと呼ばれるゆえんだ。
「了解した。ウィンス・ファオス、出撃する」
敵の大群に向かっていく第一小隊。
ウィンスの専用機、灰被りは大型二区分ながらも高出力ブースターで一気に敵の中へ飛んでいく。
「大量の敵相手なら、この機体の真価が見せられるというものだ」
敵機の表示をロックしていく。
右肩の武装の小型クラスターミサイルを全弾発射する。
点では無く面による制圧に数十機が爆散する。
撃ち尽くしたミサイルポットをパージする。
真下に集まっている敵機に左腕の大型ミサイルを発射する。
爆炎に包まれる敵機の真ん中にパージした武装を落とす。
左肩の六連ミサイルランチャーと右腕のグレネードを発射する。
爆発、両肩の上に保持されているバズーカを効果的な位置に打ち込んでいく。
背部の大型クラスターミサイルを後方の敵に撃つ。
撃ち終わった武装をパージすると、その下の武装を放つ。
両肩のグレネードの投的機が作動する。腹部の自動小銃が火を吹く。
バズーカが取り外されて自由になった腕で腰にあるガトリングガンを取り出す。
腰のグレネードを投げつけて近づく敵を燃やす。
一方的な蹂躙ともいえるその光景が、ウィンスが灰被りと呼ばれるゆえんだ。
一気に数百機を葬るウィンスの攻撃も焼け石に水だった。
「既に囲まれている!?」
「くっそ、離脱できない!」
「ミサイルランチャーと対空砲火、急いでください!」
その時、ハーミストがブリッジに入ってきた。
「艦長!?出撃しないんですか!?」
「まだ凍結解除が終わらないんです。まずはこの苦境から艦を遠ざけましょう」
ハーミストは艦長席に座ると指示を出し始める。
「第7から13までのミサイルを発射後、弾幕を2時の方向だけ強化、そこからレーザーを第2と第3だけ発射して電磁フィールド展開、敵の陣形に
突撃します、止めに7時の方向に艦底レールガンを発射してください」
「りょ、了解!」
ハーミストの指示に従い、艦内が動き出す。
[艦長、僕も出ます]
「分かりました、電磁フィールド展開直前に出撃してください。出来ますね?リク君」
[了解です]
すぐに行動が開始される。
ハーミストの指示通りの場所に敵が集中し始めていた。
「撃てぇ!!」
戦艦とHBの交戦ではありえない程の撃墜数を叩きだしながらスタークが敵の包囲を抜ける。
「既に囲まれている!?」
「くっそ、離脱できない!」
「ミサイルランチャーと対空砲火、急いでください!」
その時、ハーミストがブリッジに入ってきた。
「艦長!?出撃しないんですか!?」
「まだ凍結解除が終わらないんです。まずはこの苦境から艦を遠ざけましょう」
ハーミストは艦長席に座ると指示を出し始める。
「第7から13までのミサイルを発射後、弾幕を2時の方向だけ強化、そこからレーザーを第2と第3だけ発射して電磁フィールド展開、敵の陣形に
突撃します、止めに7時の方向に艦底レールガンを発射してください」
「りょ、了解!」
ハーミストの指示に従い、艦内が動き出す。
[艦長、僕も出ます]
「分かりました、電磁フィールド展開直前に出撃してください。出来ますね?リク君」
[了解です]
すぐに行動が開始される。
ハーミストの指示通りの場所に敵が集中し始めていた。
「撃てぇ!!」
戦艦とHBの交戦ではありえない程の撃墜数を叩きだしながらスタークが敵の包囲を抜ける。
『敵機照合、種類に統一性はありませんが装備が統一されています』
「あの背中の特殊戦闘用のパック?」
イザナミがデータバンクから照合したパックの情報を引き出す。
『あれは潜砂装備です。砂の中で行動する為に開発された装備ですがあまりにも局地的すぎて量産されなかった幻の装備です』
「それがあそこまで大量にある、ねえ……」
死機使いの戦闘は少し、いやかなり以上だった。
死を恐れないだけじゃない。チームワークが統一されている。
群生生物のように一糸乱れぬ動きをしている。
「確かに、これは死んでるように見えるよね……」
そしてその機体の特徴はもう一つ一致するものがあった。
全機、一様にぼろぼろなのだ。武装もほとんどない。
「しかし、この動き……試してみる価値はあるかな?」
『敵機来ます』
数十機が一斉に飛びかかってくる。それを微妙にずれながらかわすリク。
グラビレイトが背中にマウントできる武器は二つ。今回はグラビティライフルとグラビティショットマグナムだけだった。
「接近戦の間合いに入ってきた機体のみをロックして」
『了解しました、表示します』
表示された敵機に照準を合わせてグラビティライフルを取りだして撃つ。
戦闘不能になるその機体を無視して襲ってくる他の機体。
「粒子散布量を増やして、リフレクションを準備。操作は僕がやる」
『散布量増加します』
グラビレイトの粒子散布用ダクト、両肩と両脛、胸部と背部のダクトから黒い光が強く漏れる。
リクは粒子の動きを操り、罠を仕掛けていく。
「さて、砂漠らしくいこうか?」
「あの背中の特殊戦闘用のパック?」
イザナミがデータバンクから照合したパックの情報を引き出す。
『あれは潜砂装備です。砂の中で行動する為に開発された装備ですがあまりにも局地的すぎて量産されなかった幻の装備です』
「それがあそこまで大量にある、ねえ……」
死機使いの戦闘は少し、いやかなり以上だった。
死を恐れないだけじゃない。チームワークが統一されている。
群生生物のように一糸乱れぬ動きをしている。
「確かに、これは死んでるように見えるよね……」
そしてその機体の特徴はもう一つ一致するものがあった。
全機、一様にぼろぼろなのだ。武装もほとんどない。
「しかし、この動き……試してみる価値はあるかな?」
『敵機来ます』
数十機が一斉に飛びかかってくる。それを微妙にずれながらかわすリク。
グラビレイトが背中にマウントできる武器は二つ。今回はグラビティライフルとグラビティショットマグナムだけだった。
「接近戦の間合いに入ってきた機体のみをロックして」
『了解しました、表示します』
表示された敵機に照準を合わせてグラビティライフルを取りだして撃つ。
戦闘不能になるその機体を無視して襲ってくる他の機体。
「粒子散布量を増やして、リフレクションを準備。操作は僕がやる」
『散布量増加します』
グラビレイトの粒子散布用ダクト、両肩と両脛、胸部と背部のダクトから黒い光が強く漏れる。
リクは粒子の動きを操り、罠を仕掛けていく。
「さて、砂漠らしくいこうか?」
死機使い、自分はそう呼ばれているらしい。
特殊な場所で一人の少女は座っている。
一つの立体投射機の前で戦況を眺めながら手元の端末で操作をする。
特殊なコックピットで行われる戦争というゲームを少女は落ちついて眺める。
一機の白いHBがこちらの軍勢を減らしていく。それは微々たるものだ。
この戦況をひっくり返すには少女の居場所を探さなければならない。
それは隠されたルール。だからこそ少女はじっと落ちついて戦況を眺められる。
ふと、こちらの攻撃が白いHBに直撃コースで迫る。
しかし、HBの方に気付いた様子はない。少なくとも反応する様子はない。
少女は、一つの違和感に気付いた。別の視点から見れば、その攻撃のコースに白いHBはいない。
それだけじゃない。様々な視点から見れば分かるのだが白いHBの位置が微妙にずれている。
「なにが?」
少女は動きを止めてしまった。一体どこに本当の敵がいるのかが分からなくなったからだ。
白いHBから周囲にスピーカーで音声が放たれる。
[掛かったな、死機使い。いや、この場合は傍観者(メタファー)というべきかな?]
少女から慌てて攻撃を再開するが、既にこちらのトリックは見破られてしまった。
白いHB、白い魔弾と呼ばれるそのエースの動きは、先ほどまでとは違った動きになっていた。
特殊な場所で一人の少女は座っている。
一つの立体投射機の前で戦況を眺めながら手元の端末で操作をする。
特殊なコックピットで行われる戦争というゲームを少女は落ちついて眺める。
一機の白いHBがこちらの軍勢を減らしていく。それは微々たるものだ。
この戦況をひっくり返すには少女の居場所を探さなければならない。
それは隠されたルール。だからこそ少女はじっと落ちついて戦況を眺められる。
ふと、こちらの攻撃が白いHBに直撃コースで迫る。
しかし、HBの方に気付いた様子はない。少なくとも反応する様子はない。
少女は、一つの違和感に気付いた。別の視点から見れば、その攻撃のコースに白いHBはいない。
それだけじゃない。様々な視点から見れば分かるのだが白いHBの位置が微妙にずれている。
「なにが?」
少女は動きを止めてしまった。一体どこに本当の敵がいるのかが分からなくなったからだ。
白いHBから周囲にスピーカーで音声が放たれる。
[掛かったな、死機使い。いや、この場合は傍観者(メタファー)というべきかな?]
少女から慌てて攻撃を再開するが、既にこちらのトリックは見破られてしまった。
白いHB、白い魔弾と呼ばれるそのエースの動きは、先ほどまでとは違った動きになっていた。
「ふふふ、あははははは!!」
『マスター?』
リクは笑い始めた。
スピーカーでの死機使いへの宣告の直後だ。
「笑わないでいられるかい?イザナギ、全員に通達。死機使いは人間だ。無人機を操っているだけだよ」
リクが行った事は簡単だ。
リフレクションで使う大気の歪みを利用してグラビレイトの居場所を微妙にずらして見せただけ。
蜃気楼のようにずれるグラビレイトは複数の視点から見られると位置が特定しづらくなる。
相手が人間、それも一人である事を予想したリクの作戦だった。
「グラビティミラージュを解除。さて、本気でやらしてもらうよ」
リクはグラビティショットマグナムを左手に、右手にグラビティライフルを持って敵機の中心へと飛び込む。
ブースターで一気に加速するグラビレイトに襲いかかる無人機。
背部のフレキシブルブースターを操作して、機体の動きを大幅に変更。直進から制止、そして横移動。
体にかかるGを振り払って機体を横に回転させながらずらす。
両手の銃は正確に敵を撃ち抜いていく。
脚部を地につけて動きを止めるとグラビティショットマグナムを目の前に撃つ。
7機が一気に吹き飛んで動きを止める。背後からの攻撃にライフルを連射。一撃一撃が正確に敵機を撃ち抜く。
宙返りをしながら敵に銃弾の雨を降らせるリク。
弾が切れたショットマグナムの弾倉を取り外して、腰についている弾倉と取り換える。
短刀がついていた筈の場所は弾薬の搭載場所になっていた。
どちらの武装も性能は良好。そこにきてリクが本気を出している。
大量の無人機はなすすべも無く破壊されていく。
「落ちろ、燃えろ、消えろ、つぶれろ、いなくなれ」
リクはキセノに対するイライラを解消するかのように暴れまくる。
弾倉を取り換えて撃つ。跳びながら撃つ。銃口を押し当てて撃つ。
弾を撃ち尽くした時には周囲にHBの残骸が小山の様に散らばっていた。
しかし、HBは数を減らしたようには見えない。
「まだいるのか」
『撃墜数は300を超えましたが、残りはまだ800以上います』
「多すぎるな。仕方ない」
グラビレイトの両手の指先に粒子が集まる。
襲いかかってきた敵機にその指先を押し当てる。
ずぶりと沈む指先はそのまま敵機を突き抜けた。
両腕を振り回して削り、貫き、砕く。
武器がない以上仕方がない戦法だが、それでもかなりの一撃を振り回すグラビレイトは驚異的だった。
「親玉が見えない、一体どこから……」
リクは無差別に攻撃しているように見えて、実は区別している。
大型区分の機体には手加減している。
これだけ大量の無人機を操る装置は、リクの知りうる中で一つしかない。
それは大型のHBの中ならぎりぎり入る大きさの装置。つまり、大型の機体の中に親玉がいると予想していた。
しかし、いつまでたっても様子が変わらない。
「まさか……試すか」
リクは機体を大きく跳びあがらせた。敵機を足場にしながら上空へ跳び、ブーストでさらに飛ぶ。
上空に停滞したグラビレイトの手の先には空気が集まっている。
重力の中心に圧縮された空気が熱を持ち始める。
リクはそれを振り下ろして地面に叩きつける。
熱によって生まれる気流の乱れと空気が解放された事による爆風で砂が舞い上がる。
リクはその中心に飛び込んだ。
『マスター?』
リクは笑い始めた。
スピーカーでの死機使いへの宣告の直後だ。
「笑わないでいられるかい?イザナギ、全員に通達。死機使いは人間だ。無人機を操っているだけだよ」
リクが行った事は簡単だ。
リフレクションで使う大気の歪みを利用してグラビレイトの居場所を微妙にずらして見せただけ。
蜃気楼のようにずれるグラビレイトは複数の視点から見られると位置が特定しづらくなる。
相手が人間、それも一人である事を予想したリクの作戦だった。
「グラビティミラージュを解除。さて、本気でやらしてもらうよ」
リクはグラビティショットマグナムを左手に、右手にグラビティライフルを持って敵機の中心へと飛び込む。
ブースターで一気に加速するグラビレイトに襲いかかる無人機。
背部のフレキシブルブースターを操作して、機体の動きを大幅に変更。直進から制止、そして横移動。
体にかかるGを振り払って機体を横に回転させながらずらす。
両手の銃は正確に敵を撃ち抜いていく。
脚部を地につけて動きを止めるとグラビティショットマグナムを目の前に撃つ。
7機が一気に吹き飛んで動きを止める。背後からの攻撃にライフルを連射。一撃一撃が正確に敵機を撃ち抜く。
宙返りをしながら敵に銃弾の雨を降らせるリク。
弾が切れたショットマグナムの弾倉を取り外して、腰についている弾倉と取り換える。
短刀がついていた筈の場所は弾薬の搭載場所になっていた。
どちらの武装も性能は良好。そこにきてリクが本気を出している。
大量の無人機はなすすべも無く破壊されていく。
「落ちろ、燃えろ、消えろ、つぶれろ、いなくなれ」
リクはキセノに対するイライラを解消するかのように暴れまくる。
弾倉を取り換えて撃つ。跳びながら撃つ。銃口を押し当てて撃つ。
弾を撃ち尽くした時には周囲にHBの残骸が小山の様に散らばっていた。
しかし、HBは数を減らしたようには見えない。
「まだいるのか」
『撃墜数は300を超えましたが、残りはまだ800以上います』
「多すぎるな。仕方ない」
グラビレイトの両手の指先に粒子が集まる。
襲いかかってきた敵機にその指先を押し当てる。
ずぶりと沈む指先はそのまま敵機を突き抜けた。
両腕を振り回して削り、貫き、砕く。
武器がない以上仕方がない戦法だが、それでもかなりの一撃を振り回すグラビレイトは驚異的だった。
「親玉が見えない、一体どこから……」
リクは無差別に攻撃しているように見えて、実は区別している。
大型区分の機体には手加減している。
これだけ大量の無人機を操る装置は、リクの知りうる中で一つしかない。
それは大型のHBの中ならぎりぎり入る大きさの装置。つまり、大型の機体の中に親玉がいると予想していた。
しかし、いつまでたっても様子が変わらない。
「まさか……試すか」
リクは機体を大きく跳びあがらせた。敵機を足場にしながら上空へ跳び、ブーストでさらに飛ぶ。
上空に停滞したグラビレイトの手の先には空気が集まっている。
重力の中心に圧縮された空気が熱を持ち始める。
リクはそれを振り下ろして地面に叩きつける。
熱によって生まれる気流の乱れと空気が解放された事による爆風で砂が舞い上がる。
リクはその中心に飛び込んだ。
少女は苦戦していた。
まさかここまで強い相手がいるとは思えなかった。
所詮井の中の蛙。自分は砂漠の中で最強を気取っていただけにすぎない。
その証拠に白い魔弾が自分の居場所を見つけたようだ。
砂に潜ってくる白い魔弾。
「まさか、砂の中まで!?」
すぐにHBの操作で白い魔弾を止めようとするが追いつかない。
上から衝撃音が聞こえた。
タイムオーバーだった。
まさかここまで強い相手がいるとは思えなかった。
所詮井の中の蛙。自分は砂漠の中で最強を気取っていただけにすぎない。
その証拠に白い魔弾が自分の居場所を見つけたようだ。
砂に潜ってくる白い魔弾。
「まさか、砂の中まで!?」
すぐにHBの操作で白い魔弾を止めようとするが追いつかない。
上から衝撃音が聞こえた。
タイムオーバーだった。
「リクは一体何をしてんだ?」
ゴースの呟きももっともだ。
リクは大暴れした後、空中に飛び上がって地上で爆発を起こして砂煙の中に消えていった。
その直後、敵機もすぐに地中に潜って行き、一気に静かになった。
「ん、音?」
「ゴース君、どうしましたか?」
「いや、音が地中から……んあ!?」
「おい、それって戦と――うぉ!?」
ゴースが驚き、リリが続いて驚いた。
グラビレイトが砂漠の中から現れたからだ。大きな箱を持ち上げながら……
[こ、降参!降参するから落とさないで!!]
少女の慌てた声が聞こえる。死機使いとの戦闘はこうして終わった。
ゴースの呟きももっともだ。
リクは大暴れした後、空中に飛び上がって地上で爆発を起こして砂煙の中に消えていった。
その直後、敵機もすぐに地中に潜って行き、一気に静かになった。
「ん、音?」
「ゴース君、どうしましたか?」
「いや、音が地中から……んあ!?」
「おい、それって戦と――うぉ!?」
ゴースが驚き、リリが続いて驚いた。
グラビレイトが砂漠の中から現れたからだ。大きな箱を持ち上げながら……
[こ、降参!降参するから落とさないで!!]
少女の慌てた声が聞こえる。死機使いとの戦闘はこうして終わった。
スターク艦内のある部屋。
「シエル・ファーニール。職業はちょっとしたパシリね」
死機使い、いやシエルはそう言った。
「つまり、僕にあの端末を渡したのも仕事の一環だと?」
「そゆこと。あたしはキセノのパシリやってんの」
リクはシエルを見て真っ先に問い詰めた。シエルは街でリクにキセノと通信した端末を渡してきた少女だったからだ。
「奴は今どこにいる。知らない訳じゃないんだろ?」
「い、いや~……向こうから連絡とってくれないとどうにもね……」
シエルはたじろぎながらも答えた。
キセノに繋がる手掛かりはゼロ。目の前にチラついているのに手に入らないという状況は、リクを焦らせる。
「あそこで無差別の襲撃を行っていたのも、指令の一環ですか?」
ハーミストの質問に頷くシエル。
「それでは、あの装置は一体何ですか?」
装置とはシエルが居座っていた、砂漠に埋まっていた箱の中にあった装置の事だ。
「そっちのおにーさんは知ってるんじゃないの?知ってるからあたしの居場所の見当もついたんだろうし」
リクは一瞬体を強張らせると、何事も無いかのように答えた。
「……貴女の居場所を探ろうとして色々やって、機体に乗って無いならどこかに隠れてるんだろと思ったから見つかったんだよ。見当がつく訳
ない。あんな装置は見た事も無いしね」
「そう、なら教えたげる。あれはね、立体式戦略盤っていうの」
「聞いたことありませんね。どういったものですか?」
ハーミストは首をかしげるが、リクは既に壁際によっている。
「立体投射機で映し出されたフィールドで、無人機を効率よく動かすための装置よ。使用にはかなりの情報処理能力を要するけど、その分安全
に無人機を運用できるの」
「そんなものが……貴女はその装置のデータ収集の為にここで戦闘を?」
シエルは手をぶんぶんと振りながら答えた。
「違う違う、あの装置はとっくに実用段階にあるわ。あたしがあそこにいた理由は、あたしも知らないの」
「知らない?聞かなかったんですか?」
「教えてもらえなかったのよ。知る必要はないとか言って」
シエルはやれやれと首を振りながら溜息をつく。
「まあ立体式戦略盤、あれが実用段階の新兵器なのはいい情報ですね。多用されたら厄介になるでしょうし」
「それも違う。あの立体式戦略盤は第三次世界大戦時からある装置よ」
ハーミストは自分の記憶を手繰り寄せるが、そんな兵器は見た事がない。そもそも無人機と遭遇した事がない。
「いったい、いつ頃使われたものですか?」
「具体的に言えば最終決戦時、三大伝説の一つの不沈艦オロチに内蔵されていたの」
「オロチ、ですか」
ハーミストは最終決戦時の記憶も手繰り寄せるが、やはり記憶にない。
「あの時使われたのはあたしの使った奴の30倍以上の規模だけどね。当時、日本が研究してた完成孤児(パーフェクトアーミー)が操ってい
たという話よ」
ハーミストは驚きを隠せない。恐らく、その規模の装置なら最終決戦の戦場を全て包みこんでもお釣りがくる。
自分が相手をしたHBは、無人機ではありえない動きもしていた。
「そんな事が……」
その時、静かにリクは部屋を出て行った。
シエルがその様子を見て疑問を口に出す。
「彼はどうしちゃったの?」
ハーミストはリクが出て行った扉を見つめながら言った。
「彼は強化孤児ですから、それにプライドも高いですしね」
「少し、デリカシー無かったかな?」
シエルは呟いた。
「シエル・ファーニール。職業はちょっとしたパシリね」
死機使い、いやシエルはそう言った。
「つまり、僕にあの端末を渡したのも仕事の一環だと?」
「そゆこと。あたしはキセノのパシリやってんの」
リクはシエルを見て真っ先に問い詰めた。シエルは街でリクにキセノと通信した端末を渡してきた少女だったからだ。
「奴は今どこにいる。知らない訳じゃないんだろ?」
「い、いや~……向こうから連絡とってくれないとどうにもね……」
シエルはたじろぎながらも答えた。
キセノに繋がる手掛かりはゼロ。目の前にチラついているのに手に入らないという状況は、リクを焦らせる。
「あそこで無差別の襲撃を行っていたのも、指令の一環ですか?」
ハーミストの質問に頷くシエル。
「それでは、あの装置は一体何ですか?」
装置とはシエルが居座っていた、砂漠に埋まっていた箱の中にあった装置の事だ。
「そっちのおにーさんは知ってるんじゃないの?知ってるからあたしの居場所の見当もついたんだろうし」
リクは一瞬体を強張らせると、何事も無いかのように答えた。
「……貴女の居場所を探ろうとして色々やって、機体に乗って無いならどこかに隠れてるんだろと思ったから見つかったんだよ。見当がつく訳
ない。あんな装置は見た事も無いしね」
「そう、なら教えたげる。あれはね、立体式戦略盤っていうの」
「聞いたことありませんね。どういったものですか?」
ハーミストは首をかしげるが、リクは既に壁際によっている。
「立体投射機で映し出されたフィールドで、無人機を効率よく動かすための装置よ。使用にはかなりの情報処理能力を要するけど、その分安全
に無人機を運用できるの」
「そんなものが……貴女はその装置のデータ収集の為にここで戦闘を?」
シエルは手をぶんぶんと振りながら答えた。
「違う違う、あの装置はとっくに実用段階にあるわ。あたしがあそこにいた理由は、あたしも知らないの」
「知らない?聞かなかったんですか?」
「教えてもらえなかったのよ。知る必要はないとか言って」
シエルはやれやれと首を振りながら溜息をつく。
「まあ立体式戦略盤、あれが実用段階の新兵器なのはいい情報ですね。多用されたら厄介になるでしょうし」
「それも違う。あの立体式戦略盤は第三次世界大戦時からある装置よ」
ハーミストは自分の記憶を手繰り寄せるが、そんな兵器は見た事がない。そもそも無人機と遭遇した事がない。
「いったい、いつ頃使われたものですか?」
「具体的に言えば最終決戦時、三大伝説の一つの不沈艦オロチに内蔵されていたの」
「オロチ、ですか」
ハーミストは最終決戦時の記憶も手繰り寄せるが、やはり記憶にない。
「あの時使われたのはあたしの使った奴の30倍以上の規模だけどね。当時、日本が研究してた完成孤児(パーフェクトアーミー)が操ってい
たという話よ」
ハーミストは驚きを隠せない。恐らく、その規模の装置なら最終決戦の戦場を全て包みこんでもお釣りがくる。
自分が相手をしたHBは、無人機ではありえない動きもしていた。
「そんな事が……」
その時、静かにリクは部屋を出て行った。
シエルがその様子を見て疑問を口に出す。
「彼はどうしちゃったの?」
ハーミストはリクが出て行った扉を見つめながら言った。
「彼は強化孤児ですから、それにプライドも高いですしね」
「少し、デリカシー無かったかな?」
シエルは呟いた。
リクは人気のない通路で壁を殴りつけた。
情緒不安定になっている。あまりにも心を静めるには時間がかかる話を聞かされたからだ。
キセノの最後の言葉、それとさっきのシエルの話。
自分の心をえぐる事ばかりだ。
「落ちつけよ……この程度で揺れる訳にはいかない……俺には関係ない……」
自分がやるべき事を呪詛の様に呟きながら、リクは心を静めていく。
情緒不安定になっている。あまりにも心を静めるには時間がかかる話を聞かされたからだ。
キセノの最後の言葉、それとさっきのシエルの話。
自分の心をえぐる事ばかりだ。
「落ちつけよ……この程度で揺れる訳にはいかない……俺には関係ない……」
自分がやるべき事を呪詛の様に呟きながら、リクは心を静めていく。
「では我々は潜水艦で移動しますので、貴方達は我々の乗ってきた輸送機でイギリスに戻って下さい」
「了解しました、ありがとうございました」
キセノは潜水艦に乗り込み、クルーに指示を出す。
「北極へ向かってください」
「北極、でありますか?北極は今激戦区では?」
キセノはいたずらをしている子供の様な顔で言った。
「貴方は自分の目で見た物を信じればいいんです。あ、報告は辿り着いてからにしてくださいね。少し予定がありますので」
納得できない様な顔でクルーは北極への進路を取る。
「リク、君の世界はどこまで歪むんだろうね?ま、そのしわ寄せは俺に来る訳だが」
キセノは、ただ楽しげに言った。
「了解しました、ありがとうございました」
キセノは潜水艦に乗り込み、クルーに指示を出す。
「北極へ向かってください」
「北極、でありますか?北極は今激戦区では?」
キセノはいたずらをしている子供の様な顔で言った。
「貴方は自分の目で見た物を信じればいいんです。あ、報告は辿り着いてからにしてくださいね。少し予定がありますので」
納得できない様な顔でクルーは北極への進路を取る。
「リク、君の世界はどこまで歪むんだろうね?ま、そのしわ寄せは俺に来る訳だが」
キセノは、ただ楽しげに言った。
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