闇属性の上級刻印装甲シェイサイドを駆る暗殺者の襲撃を退けてから数時間後。
敵の不意を突くために室内でシルヴァールを展開し、自宅を吹き飛ばしてしまった俺、霧坂涼夜は
今日の寝床を確保する為に観光客や流れの商人達のために解放されている観光街へと訪れていた。
敵の不意を突くために室内でシルヴァールを展開し、自宅を吹き飛ばしてしまった俺、霧坂涼夜は
今日の寝床を確保する為に観光客や流れの商人達のために解放されている観光街へと訪れていた。
異世界での住まいとは言え、家が無くなるというのは、不安なものだとは思いも寄らなかったな…
そして、こんな時に限って部屋が満室だからと宿屋から宿泊を断られ続ける事、これで七件目。
そして、こんな時に限って部屋が満室だからと宿屋から宿泊を断られ続ける事、これで七件目。
―全く以って忌々しい。シェイサイドの適合者め…今度、遭遇したら殺してしまおうか。
なんて殺気立っている場合では無いな…此の侭では宿無しで日没を迎える事になってしまう。
この国では公人以外の身分の者が許可無く、夜に城下を出歩く事を禁じられており
巡回の兵士に見つかった場合、罰金を払わされた上に不衛生な牢獄の中で一夜を明かす羽目になる。
この国では公人以外の身分の者が許可無く、夜に城下を出歩く事を禁じられており
巡回の兵士に見つかった場合、罰金を払わされた上に不衛生な牢獄の中で一夜を明かす羽目になる。
明日からはカンザス湿地帯を始めとする危険地帯で、オルベリオンの調査を予定している以上
何が何でも心身ともに万全な状態で挑みたい。よって、まともな寝床の確保が必要不可欠だ。
何が何でも心身ともに万全な状態で挑みたい。よって、まともな寝床の確保が必要不可欠だ。
こんな時、頼れる相手が居れば良いのだが、俺はこの世界の住人では無くいずれ消える存在だ。
態々、馴れ合う必要も無いと考え、この世界での俺の人間関係の幅は非常に浅く狭い。
態々、馴れ合う必要も無いと考え、この世界での俺の人間関係の幅は非常に浅く狭い。
―馴れ合っていないせいで、今まさに困っているわけだが。
頼れる相手と言えば冒険者ギルドのマスターか、ロワール王国第一王子アラン=フォン=ロワール。
どちらも助けてくれそうではあるが、オルベリオンの捜索に集中したいのでギルドに寄る気にはなれない。
かと言って、アランに頼ってロワール城で一夜を過ごすのは絶対に避けろと俺の第六感が囁く。
俺の思い過ごしでは無く、最近、あの城に居ると権力争い的な意味で貞操の危機を感じる事がある。
どちらも助けてくれそうではあるが、オルベリオンの捜索に集中したいのでギルドに寄る気にはなれない。
かと言って、アランに頼ってロワール城で一夜を過ごすのは絶対に避けろと俺の第六感が囁く。
俺の思い過ごしでは無く、最近、あの城に居ると権力争い的な意味で貞操の危機を感じる事がある。
―余としては涼夜と、イリアが婚姻を結ぶ事に反対はせん。寧ろ、賛成だ。
場合によっては奴も俺の敵に回りかねんからな…いや、間違いなく奴が一番の敵になるだろう。
俺自身がこれまでに示してきた結果や実績の九割九分九厘がシルヴァールの力によるものだとしても
首輪に繋がれていない上級刻印装甲の適合者というものは極上の馳走に見えるらしい。
俺自身がこれまでに示してきた結果や実績の九割九分九厘がシルヴァールの力によるものだとしても
首輪に繋がれていない上級刻印装甲の適合者というものは極上の馳走に見えるらしい。
「涼夜さん?」
途方に暮れながら宿を探していると、鈴の音の様な声が俺の背中に投げ掛けられた。
この世界の知り合いの中に品のある声で、丁寧な呼び方をする奴は一人しか居ない。
この世界の知り合いの中に品のある声で、丁寧な呼び方をする奴は一人しか居ない。
「嘉穂か…奇遇だな。」
声のした方へと首を動かすと俺と同じ、この世界に迷い込んだ地球人、天草嘉穂の姿があった。
刻印装甲の適合者のみで構成されたロワール王国最大の戦力を誇る装甲騎士団の紅一点にして
風の中級刻印装甲、ローザンシュレイクの適合者だ。
刻印装甲の適合者のみで構成されたロワール王国最大の戦力を誇る装甲騎士団の紅一点にして
風の中級刻印装甲、ローザンシュレイクの適合者だ。
「奇遇と言うか、ずっと探していたんですよ?」
これが地球ならばモバイルシステムを使って呼び出すだけで事が済むのだが、この世界には電子的な
伝達手段が無い為、非常に狭いエリアであっても、入れ違い等が生じると悲惨な結末を迎える事になる。
確実に自宅に居る時間を狙えば問題は無いのだが、今の俺は実質ホームレスみたいなものだからな。
伝達手段が無い為、非常に狭いエリアであっても、入れ違い等が生じると悲惨な結末を迎える事になる。
確実に自宅に居る時間を狙えば問題は無いのだが、今の俺は実質ホームレスみたいなものだからな。
「イリア姫を救った英雄を称えるための祝賀会にお招きするようにとの事だったのですが…」
家が跡形も無く吹き飛んでいる上に他者との繋がりが希薄なせいで探しようが無かった…そんなところか。
それにしても、王族を暗殺者の襲撃から救い出した程度で祝賀会とは…まあ、この世界ならやりかねんな。
納得出来なくは無いが…アランの言葉が再び、耳の奥で木霊した気がして、背筋に悪寒が走る。
それにしても、王族を暗殺者の襲撃から救い出した程度で祝賀会とは…まあ、この世界ならやりかねんな。
納得出来なくは無いが…アランの言葉が再び、耳の奥で木霊した気がして、背筋に悪寒が走る。
「状況は理解したが…此処は見逃してくれないか?明日、厄介な場所へ出向く予定になっていてな。
其処に地球へ戻るための手掛かりがある以上、余計な事に意識を乱されたくは無い。」
其処に地球へ戻るための手掛かりがある以上、余計な事に意識を乱されたくは無い。」
地球へ戻る手掛かりが見つかったと聞いて、嘉穂が驚きのせいか目を大きく見開かせた。
別れた半日後に帰る手掛かりが見つかったと言われれば、状況が動く早さに驚くのも無理は無い。
別れた半日後に帰る手掛かりが見つかったと言われれば、状況が動く早さに驚くのも無理は無い。
「そうですか…この時間に観光街を歩き回っているという事は宿泊地の確保は…」
「忌々しい事に七件の宿屋に断られたところだ。」
「寝床の提供くらいなら出来ますし、私の家まで来ませんか?」
絶妙なタイミングでまともな寝床を確保する事が出来るとは、正に渡に船…などと言うとでも思ったか?
今の状況と目的を達成するために必要な事は充分な睡眠を取り、体調を万全な状態にする事だ。
だがな、俺とて十九歳の健全な男子で歳相応の欲求や煩悩くらい、人並み程度に持ち合わせている。
今の状況と目的を達成するために必要な事は充分な睡眠を取り、体調を万全な状態にする事だ。
だがな、俺とて十九歳の健全な男子で歳相応の欲求や煩悩くらい、人並み程度に持ち合わせている。
―男が夜に女の家に行ってやる事など一つしか無いだろう?
それどころじゃないのは確かにその通りなのだが、この世界に迷い込んで以来、ご無沙汰だったのだ。
(…正直、辛抱堪らん。)
俺が阿呆な事を考えていると先導していた嘉穂が立ち止まって振り返り、冷たい視線で俺を睨みつける。
「涼夜さん…目がえっちです。一応、言っておきますけど養父母と同居ですからね?」
どうでも良いが、女って奴はこういう時に限って、無闇やたらに勘が鋭いのは何故なのだろうか?
「やましい事など何一つとして無い。女の身で騎士というのは養家の力か?」
「こっちに来た直後に装甲騎士団のラウバルド将軍に助けてもらったんですよ。
将軍夫婦が子宝に恵まれなかったという事もあって、そのまま養子扱いになっています。」
将軍夫婦が子宝に恵まれなかったという事もあって、そのまま養子扱いになっています。」
ラウバルド・ガウゼンダール…諸外国からロワール王国にその人有りと言われている猛将軍だ。
齢六十過ぎと騎士にしてはかなりの高齢だが、雷属性の上級刻印装甲ゴルトゲイザーの適合者として
雷神、雷帝の勇名で以って幾多の戦場を制してきた熟練の古強者だ。
齢六十過ぎと騎士にしてはかなりの高齢だが、雷属性の上級刻印装甲ゴルトゲイザーの適合者として
雷神、雷帝の勇名で以って幾多の戦場を制してきた熟練の古強者だ。
だが、ゴルトゲイザーの適合者であるが故に騎士、将軍という立場が一番に目立つが
彼の本来の役割は議会議員…つまりは政治家だ。俺からすれば熟練の古狸という印象の方が強い。
彼の本来の役割は議会議員…つまりは政治家だ。俺からすれば熟練の古狸という印象の方が強い。
―実際に戦っているところを見た事は無いしな。
「将軍は祝賀会に出席していて、明日の昼過ぎまで戻りません。養母には恋人とでも言っておきましょう。
将軍が戻らないと聞いたので、こっそり連れて来たという事にしますので、そのつもりでいて下さい。」
将軍が戻らないと聞いたので、こっそり連れて来たという事にしますので、そのつもりでいて下さい。」
まあ…夜分に転がり込んできた異性の友人を泊めるよりも、恋人を泊める方が自然と言えば自然だな。
何と無く釈然とせん気がしなくも無いがな…とは言え、嘉穂以外に頼れる相手がいないのも、また事実だ。
何と無く釈然とせん気がしなくも無いがな…とは言え、嘉穂以外に頼れる相手がいないのも、また事実だ。
「…では、一晩世話になる。」
「はい。お世話致します!」
意気揚々と亜麻色の髪を揺らしながら先導する嘉穂に続いてガウゼンダール邸へと足を運んだのだが…
「久しぶり…アラン王子を介さず会うのは初めてだね。」
「これは…どういう事だ?」
「し、将軍…今日は祝賀会で帰れないと…」
豪奢な扉をくぐり抜けると大広間でパイプを吹かすラウバルト将軍の姿が、人の良さそうな笑顔で此方に手を挙げる。
一瞬、嘉穂に謀られたかとも思ったが、嘉穂もまた驚愕の表情を浮かべており、彼女にとっても想定外の事態のようだ。
一瞬、嘉穂に謀られたかとも思ったが、嘉穂もまた驚愕の表情を浮かべており、彼女にとっても想定外の事態のようだ。
「彼ならば祝賀会の裏に潜む思惑を見抜いて、出席を拒否する事は分かりきっていた事だからね。
主賓のいないパーティに出ても、何の意味も無いからね。適当に理由を付けて抜け出して来たんだよ。
でも、君が此処を訪れるのは流石に予想外だよ…聞くまでも無いと思うけど、君達の関係は何なのかな?」
主賓のいないパーティに出ても、何の意味も無いからね。適当に理由を付けて抜け出して来たんだよ。
でも、君が此処を訪れるのは流石に予想外だよ…聞くまでも無いと思うけど、君達の関係は何なのかな?」
「恋人だ。」
「夜分に訪れている以上、その反応が自然だね。あの狂戦士の恋人が私の娘とは今年一番の驚きだよ。」
ラウバルド将軍の質問に対し、事前の打ち合わせ通りに応えると彼は大して驚きもせずに
まるで決められた台詞を棒読みするかのように無感情で抑揚の無い声を返した。見抜かれたか?
まるで決められた台詞を棒読みするかのように無感情で抑揚の無い声を返した。見抜かれたか?
「年頃の恋人同士にしては、初々しさも恥じらいも無いのは気のせいかな?」
「若者に幻想を抱き過ぎだ…十二を過ぎた男女が二人になれば何が起きても不思議では無い。
ましてや、それが十九にもなれば尚更の事…それに恥じらいや初々しさが残る程、若くも無い。」
ましてや、それが十九にもなれば尚更の事…それに恥じらいや初々しさが残る程、若くも無い。」
「王族や年長者に対する敬意も無く、無節操で爛れた異性関係…これが時代の流れなのだろうか…
それとも、君が異常なのかな?君を見ていると教育の在り方という物を根底から疑いたくなってくるよ。」
それとも、君が異常なのかな?君を見ていると教育の在り方という物を根底から疑いたくなってくるよ。」
そして、ラウバルド将軍は最後に嘆かわしいと付け加え、何とも言えない表情で深々と溜息を吐いた。
バレるバレないでは無く、年寄りからの若者に対する苦言…と言うわけか。焦らせてくれる。
バレるバレないでは無く、年寄りからの若者に対する苦言…と言うわけか。焦らせてくれる。
「何時の時代でも何処の世界でも老人は若人の在り方に疑いを持ち嘆く…到って正常だな。」
「それで嘉穂。君は彼で良いんだね?本当に彼で後悔しないね?大丈夫だね?今なら引き返せるんだよ?」
失礼極まりない老骨だが、表情や声色、言動を察するに彼は本当に嘉穂の事を心配しているようだ。
戻る事が出来なければ、本当に良い家族になる事も可能かも知れないな。まあ、何が何でも連れて帰るが。
戻る事が出来なければ、本当に良い家族になる事も可能かも知れないな。まあ、何が何でも連れて帰るが。
「大丈夫です。私も涼夜さんを愛していますから。」
彼女もまた平静を保ったまま、思ってもいない事を淡々と述べ、隣に並び俺の腕に抱きついた。
腕に嘉穂の胸の感触が伝わるが、あまりにも淡々とした態度のせいか役得な筈なのに微妙に嬉しくない。
実際の恋人では無いのだから、別に如何だって良い事なのだがな。
腕に嘉穂の胸の感触が伝わるが、あまりにも淡々とした態度のせいか役得な筈なのに微妙に嬉しくない。
実際の恋人では無いのだから、別に如何だって良い事なのだがな。
「そうかい…納得する事にしておくけどね、君の様な男が私の義理の息子になろうとはね。」
「不服か、義父上?」
「礼節、常識と道徳が完全に欠落しているところを除けば非常に評価しているつもりだよ。
まあ、中に入ると良いよ…だけど、私の屋敷の中で無粋な真似は遠慮願いたいところだね。」
まあ、中に入ると良いよ…だけど、私の屋敷の中で無粋な真似は遠慮願いたいところだね。」
「アランからカンザス湿地帯の調査を依頼されてな。随分と危険なエリアなのだろう?
出立する前に愛しい恋人の顔を見ておきたいと思っていただけだ。妙な気を起こすつもりは無い。」
出立する前に愛しい恋人の顔を見ておきたいと思っていただけだ。妙な気を起こすつもりは無い。」
「それなら結構。嘉穂、彼を客室へ案内して差し上げなさい。」
「はい。涼夜さん、此方です。」
ラウバルド将軍から開放された事で幾分か表情の和らいだ嘉穂が俺に寄り添ったまま部屋へと案内する。
通された部屋は真っ白な壁と天井で室内を囲み、巨大なシャンデリアが昼間の太陽の様に室内を明るく照らす。
そして、室内に踏み込むと、足が沈み込む程、柔らかなベージュの絨毯が俺を迎え入れる。
革張りのソファに大理石のテーブル、黒檀のデスク。無駄に巨大なキングベッドが圧倒的な存在感をアピールしている。
その上、ワンルームでありながら、吹き飛んだ自宅の二倍程の広さを持っており…落ち着けるか、莫迦野郎。
しかし、客室でありながら、これ程までに豪奢とは…将軍と議会議員、二足の草鞋は伊達では無いと言う事か。
そして、室内に踏み込むと、足が沈み込む程、柔らかなベージュの絨毯が俺を迎え入れる。
革張りのソファに大理石のテーブル、黒檀のデスク。無駄に巨大なキングベッドが圧倒的な存在感をアピールしている。
その上、ワンルームでありながら、吹き飛んだ自宅の二倍程の広さを持っており…落ち着けるか、莫迦野郎。
しかし、客室でありながら、これ程までに豪奢とは…将軍と議会議員、二足の草鞋は伊達では無いと言う事か。
「将軍相手に物怖じせずに、ある事無い事…私なんて緊張し過ぎて上手く喋れなかったのに
途中から芝居だって事を忘れて、本当に涼夜さんから愛されているんじゃないかって錯覚しましたよ。」
途中から芝居だって事を忘れて、本当に涼夜さんから愛されているんじゃないかって錯覚しましたよ。」
「将軍相手だからこそだ…」
言葉の端々や、前後の情報に何かしらの矛盾があれば、彼は確実にそれを見つけ、突いてくる。
長年、議員として務めてきたせいか、悪意の有無に関係無く、そういう会話の運び方をする男なのだ。
長年、議員として務めてきたせいか、悪意の有無に関係無く、そういう会話の運び方をする男なのだ。
「それに…君は周囲の者に俺と恋人同士だと思われている方が何かと好都合なのだろう?」
「えっと…」
「別に利用してくれても構わんぞ。」
今、ロワール城内では俺を巡って王族や貴族の間で様々な思惑が錯綜している。
俺を手中に納めるという事は天の上級刻印装甲、シルヴァールを手にする事と同じ意味を持つ。
一介の議会議員でしか無かったラウバルド将軍がゴルトゲイザーの適合者になった事によって
ロワール王国の最高戦力を統括する立場になれる程、上級刻印装甲の影響力は非常に強い。
俺を手中に納めるという事は天の上級刻印装甲、シルヴァールを手にする事と同じ意味を持つ。
一介の議会議員でしか無かったラウバルド将軍がゴルトゲイザーの適合者になった事によって
ロワール王国の最高戦力を統括する立場になれる程、上級刻印装甲の影響力は非常に強い。
祝賀会が開かれているタイミングで、ラウバルト将軍の目の前で恋人が居ないなどと口走ろうものならば
アラン第一王子派の彼は、この場で一戦交えてでも俺をロワール城へと運び込み、アランにとって都合の良い女。
例えば、イリアとの婚儀を貴族達衆人観衆の前で、高らかに宣言する事くらいやってのけても不思議では無い。
一見、温厚な老紳士だが、国益の為ならば脅迫、懐柔、追放、失脚、殺傷、まるでゲームの選択肢を
選ぶかのような気軽な態度で作業的に他者の人生を狂わせ、命を奪う事さえもやってのける男だ。
アラン第一王子派の彼は、この場で一戦交えてでも俺をロワール城へと運び込み、アランにとって都合の良い女。
例えば、イリアとの婚儀を貴族達衆人観衆の前で、高らかに宣言する事くらいやってのけても不思議では無い。
一見、温厚な老紳士だが、国益の為ならば脅迫、懐柔、追放、失脚、殺傷、まるでゲームの選択肢を
選ぶかのような気軽な態度で作業的に他者の人生を狂わせ、命を奪う事さえもやってのける男だ。
だが、俺に恋人が自分の養女―天草嘉穂ならば、流石の彼も引き下がる以外の選択肢は無い。
先程の態度から察するにラウバルト将軍にとって嘉穂は大切な娘らしいからな、普段通りの対応は出来まい。
そして、貴族は勿論の事、王族であっても武の顔役、ラウバルト将軍に対して横暴な振る舞いも出来ない。
先程の態度から察するにラウバルト将軍にとって嘉穂は大切な娘らしいからな、普段通りの対応は出来まい。
そして、貴族は勿論の事、王族であっても武の顔役、ラウバルト将軍に対して横暴な振る舞いも出来ない。
―結果として俺は城内の面倒ごとから切り離される事になる。
だからこそ、歯の浮く様な台詞を吐き、義父上などという胸糞の悪くなる呼び方をして恋人を演じたのだ。
だが、俺の状況を知らない嘉穂ならば、最悪の場合、事実を話して謝罪するという選択肢もあった筈だ。
だと言うのにも拘らず、彼女は緊張のあまり上手く喋れない代わりに、行動で恋人である事を示した。
今日、知り合ったばかりで彼女の人間性を断定する事は出来ないが、嘉穂に相応しい行動とは思えない。
だが、俺の状況を知らない嘉穂ならば、最悪の場合、事実を話して謝罪するという選択肢もあった筈だ。
だと言うのにも拘らず、彼女は緊張のあまり上手く喋れない代わりに、行動で恋人である事を示した。
今日、知り合ったばかりで彼女の人間性を断定する事は出来ないが、嘉穂に相応しい行動とは思えない。
例えば、何処ぞ莫迦王子の様な権力者に見初められ、半ば強引な手段で婚儀を求められているが
王族との繋がりや自分自身の発言力、影響力をより磐石にするためにラウバルト将軍はそれに快諾。
嘉穂が拒めば、将軍も相手の要求を撥ね退ける事になるが、この国の為にという将軍の思惑を理解し
どうせ地球に戻れないのならと半ば、自暴自棄に…といったところだろうか。
王族との繋がりや自分自身の発言力、影響力をより磐石にするためにラウバルト将軍はそれに快諾。
嘉穂が拒めば、将軍も相手の要求を撥ね退ける事になるが、この国の為にという将軍の思惑を理解し
どうせ地球に戻れないのならと半ば、自暴自棄に…といったところだろうか。
「そして、君は俺と出会った事で、このシナリオを描いた。好都合な事に将軍は祝賀会に出席している。
将軍と直接対峙して、根掘り葉掘りと質問攻めにされながら彼を言い含めるのは中々に至難の技だからな。
夜分に俺を恋人として、この屋敷に招待したという事実が君の養母の口から彼の耳に届けば良かった。
当たらずとも遠からずってところじゃないか?」
将軍と直接対峙して、根掘り葉掘りと質問攻めにされながら彼を言い含めるのは中々に至難の技だからな。
夜分に俺を恋人として、この屋敷に招待したという事実が君の養母の口から彼の耳に届けば良かった。
当たらずとも遠からずってところじゃないか?」
「ごめんなさい…だって将軍のためなら仕方無いって思っていたのに戻れるって言われたら…
涼夜さんの言葉に縋りたくなっても仕方が無いじゃないですか!私は地球に戻りたいんです!」
涼夜さんの言葉に縋りたくなっても仕方が無いじゃないですか!私は地球に戻りたいんです!」
「利用してくれて構わんと言った筈だ。謝罪の必要は無い…俺も君と似たような状況だからな。
ラウバルト将軍の養女と恋仲にあるという風聞が流れるのは俺にとって非常に都合が良い。
だから、地球に戻るまでの間、君の恋人を演じ続けても構わない。」
ラウバルト将軍の養女と恋仲にあるという風聞が流れるのは俺にとって非常に都合が良い。
だから、地球に戻るまでの間、君の恋人を演じ続けても構わない。」
「は、はい……そう言えば、初めに聞いておくべきだったのですが、彼女とかっているんですか?」
―だったら妹と結婚すれば良いじゃん、このシスコン野郎!
「此方側にも向こう側にも恋人は居ない。君一人だけだ。」
「そうなんですか?意外ですね…」
意外と言われてもな…付き合うまでに苦労した事は無いが、関係が続く事は殆ど無いのだから仕方が無い。
何故か、誰も彼も一ヶ月と経たずに俺の事をロリコンだの、シスコンだのと罵倒して去って行ってしまうのだ。
因みに此方の世界に迷い込む前にも交際中の同級生がお決まりの台詞を残して去って行ったな。
何故か、誰も彼も一ヶ月と経たずに俺の事をロリコンだの、シスコンだのと罵倒して去って行ってしまうのだ。
因みに此方の世界に迷い込む前にも交際中の同級生がお決まりの台詞を残して去って行ったな。
「巡り合せに恵まれないんだ…では、そろそろ、休ませてもらう。」
「あ、はい…おやすみなさい。」
そして、翌日―
朝霧の漂うガウゼンダール邸にて嘉穂の見送りを背に街道へ抜けると、ラウバルト将軍が待ち受けていた。
「やあ、いい朝だね。」
「嘉穂に聞かれると不味い話か?」
危険なカンザス湿地帯に出立する直前に礼儀作法云々の話をする様な事をするとは思えない。
彼なりに重要で俺と共通する話題と言えばそんな事くらいしか無いからな。
彼なりに重要で俺と共通する話題と言えばそんな事くらいしか無いからな。
「あの子は何かと遠慮しがちな子だからね。嘉穂の目の前で、イリア姫が君に想いを寄せているなんて言えないよ。
いや、仲人は私にお任せなさいなどと口走らなくて良かった。本当に…心からそう思うよ。」
いや、仲人は私にお任せなさいなどと口走らなくて良かった。本当に…心からそう思うよ。」
それは僥倖…矢張り、昨夜に嘉穂と恋人を演じていたのは大正解…阿呆なやり取りのお陰で
少なくとも将軍は俺の味方にならないまでも、敵に回る事は無くなったと考えて良い。
しかし、イリアが俺を―背筋が薄ら寒くなるな。
少なくとも将軍は俺の味方にならないまでも、敵に回る事は無くなったと考えて良い。
しかし、イリアが俺を―背筋が薄ら寒くなるな。
「イリアはまだ子供だぞ…お前達が都合の良い様に解釈を捻じ曲げたんじゃないだろうな?」
「そう言いたくなる気持ちはよく分かるけど、仮にも義理の父に向かって酷い言い様だね?
だけど、流石の私でもこの国の象徴たる姫君の心や想いを捻じ曲げるような真似はしないよ。
間違いなく、イリア姫の本心だよ。それに十二を過ぎれば何が起きても不思議では無いからね。」
だけど、流石の私でもこの国の象徴たる姫君の心や想いを捻じ曲げるような真似はしないよ。
間違いなく、イリア姫の本心だよ。それに十二を過ぎれば何が起きても不思議では無いからね。」
世界が変われば文化を変わる。そうだとしても、この世界の常識というものを根底から疑いたくなる話だ。
…そもそも、嫌われる要素はあれど、好かれる要素は皆無な筈だが…
そもそも、昨日、最悪な形で出会ったのだぞ?そんなに簡単に惹かれて良いのか?
…そもそも、嫌われる要素はあれど、好かれる要素は皆無な筈だが…
そもそも、昨日、最悪な形で出会ったのだぞ?そんなに簡単に惹かれて良いのか?
「イリア姫は異性への耐性が無いからね。凶刃から身体を張って護られたとあれば心奪われるのも無理無いよね。」
存外…安っぽい話だな。無理があり過ぎると思うのだがな…如何でも良いし興味も無い。
「それともう一つ…実はあの子に想いを寄せている王族が居るんだよ。」
「昨晩、嘉穂から聞いた。相手が誰だろうと俺は絶対に嘉穂を手放さん。」
「君が少しでも権力に興味を向けるような男なら簡単に説き伏せて、イリア姫に捧げているのだがね。」
もしも、俺の恋人が嘉穂で無ければ力で組み伏せて、イリアに捧げていたくせによく言う…
地球に戻る手段が無いなら、アランに仕え、イリアを娶るという選択肢を選んだかも知れない。
王族の権力を存分に生かして、王立図書館に入り浸る日々を送る事も可能だろうからな。
地球に戻る手段が無いなら、アランに仕え、イリアを娶るという選択肢を選んだかも知れない。
王族の権力を存分に生かして、王立図書館に入り浸る日々を送る事も可能だろうからな。
「何度も言うが、嘉穂を誰にも渡すつもりは無いし、一夫多妻を肯定する事も出来ん。
アランからイリアにも、嘉穂を見初めた男にも諦めるように言い包めてもらう。それなら角も立つまい?」
アランからイリアにも、嘉穂を見初めた男にも諦めるように言い包めてもらう。それなら角も立つまい?」
「利用出来るならば、王子との友情も利用するのかい?それは暴君の考え方だよ。」
使える人、物、状況なら何でも使いこなして来た人間の言えた台詞か?
幾人もの人々を奈落に突き落とした貴方と、ただ一人の同胞を守る為に二人の人間を失恋させた俺とでは
圧倒的に俺の方が人道的だと思うがな…この世界の住人の価値観ではどうかは知らんが。
幾人もの人々を奈落に突き落とした貴方と、ただ一人の同胞を守る為に二人の人間を失恋させた俺とでは
圧倒的に俺の方が人道的だと思うがな…この世界の住人の価値観ではどうかは知らんが。
「嘉穂の為ならば暴君にも魔王にでもなる覚悟くらいはある。
そうで無ければ、惚れた女を護る事も幸せにする事も出来んからな。」
そうで無ければ、惚れた女を護る事も幸せにする事も出来んからな。」
この世界に迷い込んでからというものの、随分と嘘を吐くのが上手くなった気がする。
舞台俳優でも目指してみるか…まずは地球に戻ってからでなければ話は始まらないがな。
ラウバルト将軍の返事を待たず、シルヴァールを展開しカンザス湿地帯へ続く空へと駆け上った。
舞台俳優でも目指してみるか…まずは地球に戻ってからでなければ話は始まらないがな。
ラウバルト将軍の返事を待たず、シルヴァールを展開しカンザス湿地帯へ続く空へと駆け上った。
ゴールが見えているというのにも関わらず、余計な回り道が多過ぎた。いい加減に前進させろ。
カンザス湿地帯にて―
「これは…予想以上だな…」
以前、嘉穂達の救出に向かった際、山岳地帯でリザードと戦闘になった時から違和感を感じていた。
遭遇した時は能力の制限される場所で攻撃を仕掛けるとは莫迦な連中だと瞬殺してやったわけだが
今になって考えると、いくら知能が低いとは言え、水辺から遠く離れた地に居る事自体が変な話なのだ。
遭遇した時は能力の制限される場所で攻撃を仕掛けるとは莫迦な連中だと瞬殺してやったわけだが
今になって考えると、いくら知能が低いとは言え、水辺から遠く離れた地に居る事自体が変な話なのだ。
そして、俺はカンザス湿地帯に到着すると同時に更なる異変を思い知らされる事になった。
事前に得た情報では苔がこべり付いた朽ちた建造物、露出した岩肌、不気味に垂れ下がるシダ系の木々。
広範囲に枝分かれした薄く濁った河川に時折、姿を見せるリザードの群れ。それがカンザス湿地帯の姿だ。
事前に得た情報では苔がこべり付いた朽ちた建造物、露出した岩肌、不気味に垂れ下がるシダ系の木々。
広範囲に枝分かれした薄く濁った河川に時折、姿を見せるリザードの群れ。それがカンザス湿地帯の姿だ。
だが、薄暗いカンザス湿地帯の木々や岩山の隙間を縫うようにしてシルヴァールを飛翔させていると
腸を食い破られたリザード達の残骸が其処彼処に転がっており、、生々しい屍骸もあれば、風化した骸もある。
勿論だが、俺が殺ったわけでは無い。そもそも、食い散らかしたような殺し方を人間の手で行うのは難しい。
腸を食い破られたリザード達の残骸が其処彼処に転がっており、、生々しい屍骸もあれば、風化した骸もある。
勿論だが、俺が殺ったわけでは無い。そもそも、食い散らかしたような殺し方を人間の手で行うのは難しい。
この笑える惨劇を生み出した張本人、それは―
「来たな…デカブツが…!」
魔獣の身体の大半は魔力で構成されており、オリジナルを産み落とした魔族の力量や個性によって
大きさや外見、能力に若干の差異が現れ、全く同じ外見の個体というものは存在していない。
リザードの全長は大体、10~15m程度、その身に水の属性を宿し、位は下級にカテゴライズされている。
大きさや外見、能力に若干の差異が現れ、全く同じ外見の個体というものは存在していない。
リザードの全長は大体、10~15m程度、その身に水の属性を宿し、位は下級にカテゴライズされている。
並び立つ木々を踏み潰し、無骨にそびえる岩山を砕いて押し退けたソレは、姿身こそリザードに近いが
その全長はシルヴァールの二倍以上…少なくとも50m前後はあろうという巨躯を誇っていた。
岩山のような無骨で巨大な顎門には自らの体液で全身を染め上げた通常サイズのリザードが挟まれていた。
その全長はシルヴァールの二倍以上…少なくとも50m前後はあろうという巨躯を誇っていた。
岩山のような無骨で巨大な顎門には自らの体液で全身を染め上げた通常サイズのリザードが挟まれていた。
巨大なリザード…以下、異常個体と呼称する。異常成長体でも構わんが…取り合えず、異常だな。
奴はシルヴァールの姿を捉えるなり顎門を閉じ、口に咥えたリザードを真っ二つに食い千切り、口腔に残った
リザードの残骸を嚥下し、木々や岩山を粉砕しながらロケット弾の様に勢い良く、此方へと飛び込んで来る。
奴はシルヴァールの姿を捉えるなり顎門を閉じ、口に咥えたリザードを真っ二つに食い千切り、口腔に残った
リザードの残骸を嚥下し、木々や岩山を粉砕しながらロケット弾の様に勢い良く、此方へと飛び込んで来る。
「もう少し綺麗に食事が出来んのか、貴様は…」
たった今、上半身と下半身が泣き別れになり、地に打ち捨てられたリザードの断面から体液と臓腑が流れ
その有様はグロテスク以上に相応しい形容詞が見当たらず、不快以外の何物でも無い。
どのような経緯があって、此処まで肥大化し同族を捕食するようになったのか興味は尽きないが
水辺の無い場所にリザードが群れを成していたのは、コイツから逃げ延びた連中だったというわけか…
その有様はグロテスク以上に相応しい形容詞が見当たらず、不快以外の何物でも無い。
どのような経緯があって、此処まで肥大化し同族を捕食するようになったのか興味は尽きないが
水辺の無い場所にリザードが群れを成していたのは、コイツから逃げ延びた連中だったというわけか…
手当たり次第に魔獣を食い散らかして、絶滅させてくれるのは結構だが、成長し過ぎにも程があり過ぎる。
それに魔獣同士とは言え、たったの一体で生態系を破壊出来るだけの能力と魔力を保有している以上
油断は出来ないし、万が一、人里に降り立った時の事を考えたら看過も出来ない。
それに魔獣同士とは言え、たったの一体で生態系を破壊出来るだけの能力と魔力を保有している以上
油断は出来ないし、万が一、人里に降り立った時の事を考えたら看過も出来ない。
「何よりも遺跡調査の邪魔だ…」
<唸れ疾風!我が腕に宿りて怨敵を打ち払う力となれ!ソニックインパクト!>
風を周囲の塵や埃ごと収束し、茶色に染まった風の結晶を形成し、異常個体に向けて殴り飛ばす。
魔獣の皮膚を挽裂き、強骨を粉砕する程の風の猛威も、異常なまでに高質化した奴の頭部を砕くには到らず
逆に奴の体当たりで宙に弾き飛ばされた上に、シルヴァールの右腕に巨大な亀裂が走った。
魔獣の皮膚を挽裂き、強骨を粉砕する程の風の猛威も、異常なまでに高質化した奴の頭部を砕くには到らず
逆に奴の体当たりで宙に弾き飛ばされた上に、シルヴァールの右腕に巨大な亀裂が走った。
「発動プロセス抜きで、術攻撃だと…?」
人間、魔族、魔獣、種族や力に関係無く、術攻撃を発動させるには発動に到るプロセスが必要とされる。
例えば、今し方無力化されたソニックインパクトにしても、詠唱で出力を調整し術式名を唱える事により
俺の精神力がシルヴァールに流れ、魔力に循環され魔術兵装を稼動させるという流れがある。
リザードの水鉄砲にしても同じ事だ。発動直前に内包する魔力の流れが変わり、術が発動する。
例えば、今し方無力化されたソニックインパクトにしても、詠唱で出力を調整し術式名を唱える事により
俺の精神力がシルヴァールに流れ、魔力に循環され魔術兵装を稼動させるという流れがある。
リザードの水鉄砲にしても同じ事だ。発動直前に内包する魔力の流れが変わり、術が発動する。
今の体当たりに異常個体の魔力の流れに揺らぎは無く、巨躯を生かした物理的な体当たりでしか無い。
だと言うのにも関わらず、シルヴァールの耐魔術甲冑には亀裂が走り、粉々に粉砕される直前。
だと言うのにも関わらず、シルヴァールの耐魔術甲冑には亀裂が走り、粉々に粉砕される直前。
何より、シルヴァールの右腕を通じて俺が受けた苦痛は間違いなく、術攻撃のダメージに相違無い。
「蜥蜴風情が…そういう事か…!」
術攻撃に発動プロセスを必要としない能力を保有しているかという考えが脳裏を過ぎるが、そうでは無い。
奴の巨躯に内包された魔力が上手く循環出来ずに体外に漏洩した魔力が、異常なまでに高質化し
苔生した鱗の一枚一枚に流れ込み、魔力を宿す攻防一体となった耐物、耐魔の性質を持つ堅固な鎧になっている。
奴の異様なまでに肥大化した巨体から繰り出される突進が合わされば、凶悪な魔術爆弾にすら成り代わる。
奴の巨躯に内包された魔力が上手く循環出来ずに体外に漏洩した魔力が、異常なまでに高質化し
苔生した鱗の一枚一枚に流れ込み、魔力を宿す攻防一体となった耐物、耐魔の性質を持つ堅固な鎧になっている。
奴の異様なまでに肥大化した巨体から繰り出される突進が合わされば、凶悪な魔術爆弾にすら成り代わる。
その上、魔力の循環不順や魔力の漏洩というものは魔獣の幼生体特有の現象で自らが持つ魔力を
安定出来る体躯になるまで身体の肥大化を続け、内包する魔力を完全に行使出来る成体へと成長する。
此の侭、放置していたら何処まで大きくなるのだろうか…見てみたい気がしなくも無い。
安定出来る体躯になるまで身体の肥大化を続け、内包する魔力を完全に行使出来る成体へと成長する。
此の侭、放置していたら何処まで大きくなるのだろうか…見てみたい気がしなくも無い。
想像が付かない程、途方も無く巨大な生物が眼前を動き回っている姿をこの目で見る事が出来たら
それはさぞかし、俺の童心を喚起し、地球では経験する事の出来ない喜びと感動を覚える事だろう。
ついでに、この世界の人間が途方もない異形を目にしても尚、人間同士の戦いを続けるのかも興味がある。
それはさぞかし、俺の童心を喚起し、地球では経験する事の出来ない喜びと感動を覚える事だろう。
ついでに、この世界の人間が途方もない異形を目にしても尚、人間同士の戦いを続けるのかも興味がある。
「悪趣味な事を考えている場合でも無いな。少し惜しいが…」
能力の発動プロセス抜きでシルヴァールを容易く損壊させるような化け物を生かしておく理由など無い。
弾き飛ばされた勢いを利用して距離を取り、体勢を直し、魔力をシルヴァールの両翼に循環させる。
出し惜しみや魔力の温存などと悠長な真似をしながら戦える相手でも無い。グラビトンランサーでケリを付ける。
だが、発動体勢に入ると同時に奴が顎門を大きく開き、真紅に染まった口腔を曝け出す。
弾き飛ばされた勢いを利用して距離を取り、体勢を直し、魔力をシルヴァールの両翼に循環させる。
出し惜しみや魔力の温存などと悠長な真似をしながら戦える相手でも無い。グラビトンランサーでケリを付ける。
だが、発動体勢に入ると同時に奴が顎門を大きく開き、真紅に染まった口腔を曝け出す。
「水鉄砲…」
間抜けな名前とは裏腹に通常サイズのリザードですら刻印装甲の甲冑を貫く程の破壊力を持つ。
それが、ふざけた大きさに成長して尚、持て余す程の魔力を持つ異常個体の水鉄砲ならば…
それが、ふざけた大きさに成長して尚、持て余す程の魔力を持つ異常個体の水鉄砲ならば…
―魔獣との戦いで悪寒が走ったのは、これが最初で最後と願いたいものだ。
翼に魔力を集中させていたのは幸運だったとしか言い様が無い。
嫌な気配を感じ取った直感に従い、重力の鎖を解き放ち、何も考えずに瞬時に上空へ舞い上がると同時に
極太の水鉄砲…いや、水の大砲だな…木々や岩山を砕き飲み込んでも尚、その威力は衰えない。
その上、重力を完全に無視した大瀑布に飲み込まれた異物は地に落ちる事無く水の中で粉々に砕かれ
発動時間終了と共に空気中で霧散し、魔力振動から発生する轟音を周囲に鳴り響かせた。
嫌な気配を感じ取った直感に従い、重力の鎖を解き放ち、何も考えずに瞬時に上空へ舞い上がると同時に
極太の水鉄砲…いや、水の大砲だな…木々や岩山を砕き飲み込んでも尚、その威力は衰えない。
その上、重力を完全に無視した大瀑布に飲み込まれた異物は地に落ちる事無く水の中で粉々に砕かれ
発動時間終了と共に空気中で霧散し、魔力振動から発生する轟音を周囲に鳴り響かせた。
「………帰りたい…な。」
奴の体躯を凌駕する程の水量にオリジナルとは比べ物にならない程の威力と射速、発動時間。
その上、吐き出した水の再吸収も早く、第二射までの間隔が短い…と冷静に分析している場合では無いか!
天をも穿つ程の巨大な水剣が地表から薙ぎ払われる。間合いを大きく取っていれば直撃を避ける事は
大して難しくは無いが、水柱が放つ魔力の余波を受けるだけでも、気を持っていかれそうになる。
その上、吐き出した水の再吸収も早く、第二射までの間隔が短い…と冷静に分析している場合では無いか!
天をも穿つ程の巨大な水剣が地表から薙ぎ払われる。間合いを大きく取っていれば直撃を避ける事は
大して難しくは無いが、水柱が放つ魔力の余波を受けるだけでも、気を持っていかれそうになる。
「覚悟を決めるしか…無いか…」
内包する魔力、その破壊力も上級の魔獣どころか魔族や上級刻印装甲さえも圧倒出来る程の
途轍もなく強力で馬鹿げた個体だって事は認めてやるさ。一人で相手するのは困難だという事もな。
だが、此方とて生半可な覚悟でこの場に立っているわけでは無い。この世界で守ってやりたい奴が出来た。
そして、地球には何がなんでも守らなければならない妹がいる。
途轍もなく強力で馬鹿げた個体だって事は認めてやるさ。一人で相手するのは困難だという事もな。
だが、此方とて生半可な覚悟でこの場に立っているわけでは無い。この世界で守ってやりたい奴が出来た。
そして、地球には何がなんでも守らなければならない妹がいる。
非常識に次ぐ、非常識。そんな世界の中で奇跡を起こして地球に帰るという役目がある。
俺には図体がでかいだけの蜥蜴如きに怯え竦んでいる暇も無ければ、余裕も無い。
俺には図体がでかいだけの蜥蜴如きに怯え竦んでいる暇も無ければ、余裕も無い。
「よって…立ち塞がる障害は全て排除する。」
<風の刃よ十二の罰となりて咎人を戒める楔となれ!ウインドスライサー!>
奴の身体を拘束し、シルヴァールの機動力で圧倒する。此方が唯一勝る要素など、その程度しか無い。
だが、一つでも勝る要素があれば強大な障害を打ち崩す、取っ掛かりにする事は出来る。
だが、一つでも勝る要素があれば強大な障害を打ち崩す、取っ掛かりにする事は出来る。
引き抜いたシルヴァールの羽が、十二の飛刃に変化し異常個体を包囲し、風の連結刃が奴の鱗を貫き
飛刃を繋ぎ合わせ、魔力によって形成された鎖で奴の動きを封じ込め、グラビトンランサーで消滅させる。
飛刃を繋ぎ合わせ、魔力によって形成された鎖で奴の動きを封じ込め、グラビトンランサーで消滅させる。
「…というのが理想的だったのだがな。」
風の連結刃が飛刃と飛刃を結ぼうにも、奴の鱗を貫くには到らず、捕縛するには遠く至らない。
それにしても、詠唱込みで魔術兵装を発動させているというのに、此処まで無力化されるとなると
流石に気が滅入る…それすら通り越して、いっそ清々しいな。少々、意気込んだ程度で勝てるか莫迦が。
それにしても、詠唱込みで魔術兵装を発動させているというのに、此処まで無力化されるとなると
流石に気が滅入る…それすら通り越して、いっそ清々しいな。少々、意気込んだ程度で勝てるか莫迦が。
こうなったら、ダメージ覚悟で真正面からグラビトンランサーの詠唱を試みるか?
最悪、両翼さえ残れば攻撃は可能、霊薬を使えばシルヴァールの再構築も可能だ。
問題は水鉄砲と言うか、大瀑布の如き水大砲の猛撃を受けて両翼が残るかどうか…十中八九残らんな。
最悪、両翼さえ残れば攻撃は可能、霊薬を使えばシルヴァールの再構築も可能だ。
問題は水鉄砲と言うか、大瀑布の如き水大砲の猛撃を受けて両翼が残るかどうか…十中八九残らんな。
あれこれと悩んでいる余裕は全く無い。俺が考えれば考える程、奴に攻撃の機会を与えてしまうのだから。
だが、考えようと考えまいと、現状では奴に有効的なダメージを与える事は難しい。機会を待つしか無いか?
だが、考えようと考えまいと、現状では奴に有効的なダメージを与える事は難しい。機会を待つしか無いか?
水鉄砲が当たらない事に業を煮やした異常個体が、円を描くように首を振り回し、水鉄砲を吐き出し
周辺の廃墟や木々、岩山を粉々に破壊し、湿地帯を真っ平らな平地へと埋め立てていく。
何でも有りにも程がある…これ以上、勝手を許せばこの辺りの遺跡まで破壊されてしまいかねない。
周辺の廃墟や木々、岩山を粉々に破壊し、湿地帯を真っ平らな平地へと埋め立てていく。
何でも有りにも程がある…これ以上、勝手を許せばこの辺りの遺跡まで破壊されてしまいかねない。
とは言え、火力不足は否めんか…奴の強固な鱗を貫き、内部にダメージを与えるには如何すれば良い?
打つ手が無い…放たれては霧散する水鉄砲が雨の様に俺達の周囲に降り注ぎ、奴の口の端が吊り上がる
打つ手が無い…放たれては霧散する水鉄砲が雨の様に俺達の周囲に降り注ぎ、奴の口の端が吊り上がる
―バカメ
そう言われたような気がした。
異常個体の背ビレが高速で振動し、降り注ぐ霧雨を弾き、断続的に降り注がれる霧雨に魔力を伝搬させる。
リザードの第二能力、ハイドロウェイブ―
本来は水中で背ビレを高速振動させ水流による魔力衝撃波を複数の攻撃対象に放つ能力だ。
威力自体は低いが、結界系の能力を持たない刻印装甲では防ぐ事も避ける事も出来ず、鬱陶しい能力だ。
霧散し、降り注ぐ霧雨に充分な魔力が流し込まれ、シルヴァールに激しい衝撃が断続的に襲い掛かる。
如何に異常個体の魔力が桁違いに高いとは言え、霧雨を使ったハイドロウェイブではシルヴァールを
一瞬で粉々に撃ち砕く程の威力が無いのは幸いと言えなくもないが…高度を下げられるには充分過ぎる。
本来は水中で背ビレを高速振動させ水流による魔力衝撃波を複数の攻撃対象に放つ能力だ。
威力自体は低いが、結界系の能力を持たない刻印装甲では防ぐ事も避ける事も出来ず、鬱陶しい能力だ。
霧散し、降り注ぐ霧雨に充分な魔力が流し込まれ、シルヴァールに激しい衝撃が断続的に襲い掛かる。
如何に異常個体の魔力が桁違いに高いとは言え、霧雨を使ったハイドロウェイブではシルヴァールを
一瞬で粉々に撃ち砕く程の威力が無いのは幸いと言えなくもないが…高度を下げられるには充分過ぎる。
再び、奴の顎門が開き口腔が外気に晒され水流が渦を巻く…能力の同時発動だと!?
そして、驚いている間も無く、ガトリングガンの様に水の連弾が周囲の地面ごとシルヴァールを蹂躙する。
ハイドロウェイブで此方の動きを止め、一撃の威力よりも手数を重視した水鉄砲の連続発動による面制圧攻撃に
シルヴァールの頭部、右腕、左翼、左足が撃ち抜かれるが、滞空しながら踏み止まる。地に伏すのはまだ早い。
ハイドロウェイブで此方の動きを止め、一撃の威力よりも手数を重視した水鉄砲の連続発動による面制圧攻撃に
シルヴァールの頭部、右腕、左翼、左足が撃ち抜かれるが、滞空しながら踏み止まる。地に伏すのはまだ早い。
「…所詮は獣か、詰めが甘い。」
水鉄砲、ハイドロウェイブの発動時間終了、強固な鱗から剥き出しになった口腔は眼前にある。
漸く、巡りに巡った攻撃のチャンスだ。これで駄目なら、一心不乱の大逃走劇を繰り広げるしか無い。
出来る事ならば、そんな事態に陥るのは避けたいところなのだが…はてさて、どうなる事やら。
漸く、巡りに巡った攻撃のチャンスだ。これで駄目なら、一心不乱の大逃走劇を繰り広げるしか無い。
出来る事ならば、そんな事態に陥るのは避けたいところなのだが…はてさて、どうなる事やら。
今のシルヴァールに音速を越える余力はないが、人間の視覚では認識出来ない程のスピードで攻撃するだけの魔力はある。
刻印装甲の外見など所詮は適合者の魔力が視覚化した姿に過ぎず、慢心相違だろうが五体満足だろうが
適合者の魔力が尽きない限り、魔術兵装の発動に支障は無く威力にも影響を及ぼす事は無い。
適合者の魔力が尽きない限り、魔術兵装の発動に支障は無く威力にも影響を及ぼす事は無い。
ソニックインパクトなら掌が残っていれば発動は可能だ。
ウインドスライサーやグラビトンランサーならば、翼さえ残っていれば良い。
ウインドスライサーやグラビトンランサーならば、翼さえ残っていれば良い。
そして、この魔術兵装ならば巨槍状の杖を握る腕があれば良い。
<我が手に集いし閃光よ愚者を穿つ刃となりて、その名を示せ!ライボルトスクリーマー!>
穂先が五つに分かれた巨槍から五条の雷刃が異常個体の口腔から体内に侵入し、柔らかな内腑を
相克属性による直接攻撃で焼き貫き、魔力振動を起爆剤に奴が内包する魔力を暴走させ、爆破する。
自身の膨大な魔力の奔流に、異常個体は大気が振動する程の巨大な悲鳴をあげ、体内から閃光を放ち
魔力爆発の渦に呑み込まれた。此処まで梃子摺らせてくれた敵は初めてだと思ったのも束の間。
相克属性による直接攻撃で焼き貫き、魔力振動を起爆剤に奴が内包する魔力を暴走させ、爆破する。
自身の膨大な魔力の奔流に、異常個体は大気が振動する程の巨大な悲鳴をあげ、体内から閃光を放ち
魔力爆発の渦に呑み込まれた。此処まで梃子摺らせてくれた敵は初めてだと思ったのも束の間。
異常個体は全身から黒い体液を垂れ流しながらも、今の爆発に身体の頑強さだけで耐え抜き
身を躍らせ、湖底へと素早く潜り込みながら、鉄槌の様な尻尾の一撃をシルヴァールに叩き付ける。
不意打ちと言うか、流れ弾の様な一撃に身構える暇も無く、残った手足や翼を周囲に撒き散らしながら
木々を薙ぎ倒し、岩肌に叩き付けられた。ああ、糞。背骨がどうにかなりそうだ。
身を躍らせ、湖底へと素早く潜り込みながら、鉄槌の様な尻尾の一撃をシルヴァールに叩き付ける。
不意打ちと言うか、流れ弾の様な一撃に身構える暇も無く、残った手足や翼を周囲に撒き散らしながら
木々を薙ぎ倒し、岩肌に叩き付けられた。ああ、糞。背骨がどうにかなりそうだ。
「上等だ、化け物め…完全に殺し尽くしてやる…!」
散々、此方の攻撃を無力化した上にシルヴァールを無残な姿に変えておきながら、まだ暴れるとは良い根性だ。
残った魔力の半分を使い、胴体だけになったシルヴァールを再構築し奴が逃げ込んだ湖の真上へと飛翔させる。
残った魔力の半分を使い、胴体だけになったシルヴァールを再構築し奴が逃げ込んだ湖の真上へと飛翔させる。
「気流連結、魔力波顕現……魂ごと砕け散れェッ!」
残った全魔力をシルヴァールの両翼に丁寧且つ、丹念に流し込み、羽の一枚一枚を綺麗に紡ぎあげ
くたばれという想いを込めながら、身の丈を越える巨大な黒槍を構築し、湖底に映る黒い影へと投げ込む。
くたばれという想いを込めながら、身の丈を越える巨大な黒槍を構築し、湖底に映る黒い影へと投げ込む。
「…詰めが甘かったな。」
―奴では無く俺がな。
魔力の枯渇と引換えに黒槍を投擲すると同時に、奴は湖を引き裂き、天駆ける龍の如く一直線に飛翔。
黒槍を避け、シルヴァールへと肉迫し、黒い体液を撒き散らしながら顎門を開き、シルヴァールの腹部に牙を突き立てる。
相克属性による体内への直接攻撃は余程、効いたらしく魔力の循環はほぼ停止状態にある。
此方も魔力切れで似たり寄ったりの状態にあり、物理的な攻撃でも致命的なダメージを負いかねない状態だ。
黒槍を避け、シルヴァールへと肉迫し、黒い体液を撒き散らしながら顎門を開き、シルヴァールの腹部に牙を突き立てる。
相克属性による体内への直接攻撃は余程、効いたらしく魔力の循環はほぼ停止状態にある。
此方も魔力切れで似たり寄ったりの状態にあり、物理的な攻撃でも致命的なダメージを負いかねない状態だ。
それを知ってか知らずか、異常個体は異様なまでに肥大化した豪腕でシルヴァールの頭と足を握り潰しにかかる。
奴の牙はシルヴァールの腹を貫通し、足も頭も奴の掌の中で握り潰されている最中で身動き一つ取る事も叶わない。
その上、重力に従い、湖へと急速落下中、着水の衝撃で粉々になるのが先か奴の掌の中で潰されるのが先か。
奴の牙はシルヴァールの腹を貫通し、足も頭も奴の掌の中で握り潰されている最中で身動き一つ取る事も叶わない。
その上、重力に従い、湖へと急速落下中、着水の衝撃で粉々になるのが先か奴の掌の中で潰されるのが先か。
「だが…もう一度、形勢逆転だ。俺は水底止まりだが、お前は地獄の底まで行って来い。」
確かに奴は俺が投擲した黒槍を避け、シルヴァールを捕らえる事に成功した。
だが、あくまで奴は黒槍を避けただけに過ぎず、グラビトンランサーを無力化したわけでは無い。
だが、あくまで奴は黒槍を避けただけに過ぎず、グラビトンランサーを無力化したわけでは無い。
俺が投擲した黒槍はグラビトンランサーを発動させるのに必要な魔力が練り込まれた起爆装置でしか無い。
グラビトンランサーは発動時間経過による自動発動、あるいは術者の任意で発動する仕組みになっている。
発動時間が経過したわけでも無ければ、発動命令を出したわけでもない。
グラビトンランサーは発動時間経過による自動発動、あるいは術者の任意で発動する仕組みになっている。
発動時間が経過したわけでも無ければ、発動命令を出したわけでもない。
―そして、湖底へと沈んだ黒槍は未だ、俺の制御下にある。
重力に引かれ、湖へと落下している今ならば、避ける事も出来まい。
魔力の循環が停止した上に堅固な鱗も爆散した今なら、黒槍の刺突も阻む事は出来まい。
魔力の循環が停止した上に堅固な鱗も爆散した今なら、黒槍の刺突も阻む事は出来まい。
精々、魔力が枯渇したシルヴァールを潰す事に躍起なっていれば良い。それが貴様の今生の見せ場だ。
巨大な水柱を立てながら飛び出した黒槍が異常個体の腹を突き破る。後は命じるだけだ。
<汝、呪われた顕界に踊りし者。その無慈悲な暴を以って、堕落せし愚物に絶望を刻め…グラビトンランサー!!>
詠唱し術式を唱えると、天と地から放たれた重力の結界が奴を挟み潰す。
そして、グラビトンランサーの影響を受けるのは攻撃対象のみ。どんなにお前が俺に噛み付き、捕まえようと
重力の結界は俺に猛威を振るう事は無い。精々、一人で足掻き苦しむが良いさ。
そして、グラビトンランサーの影響を受けるのは攻撃対象のみ。どんなにお前が俺に噛み付き、捕まえようと
重力の結界は俺に猛威を振るう事は無い。精々、一人で足掻き苦しむが良いさ。
奴は悲鳴と共にシルヴァールを取りこぼし、俺は一足先に水面に叩き付けられ、湖底へと沈んだ。
参ったな…霊薬を取り出すのが遅れてしまった。奴の死に様を確認する前に俺の意識が飛びそう…だ…
クソッタレ…このまま…意識を失いっ放しって事は無いだろうな…
参ったな…霊薬を取り出すのが遅れてしまった。奴の死に様を確認する前に俺の意識が飛びそう…だ…
クソッタレ…このまま…意識を失いっ放しって事は無いだろうな…
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