創作発表板 ロボット物SS総合スレ まとめ@wiki

戦脚は大陸に燃えたか【第四話】

最終更新:

Bot(ページ名リンク)

- view
だれでも歓迎! 編集
クワンチョウ外縁・帝國陸軍飛行場




昨日の索敵をもってしても、彼女達は戦脚を見つけだす事に失敗していた。
『何らかの支援組織、そして移動手段を用いた事に相違あるまい』
大佐は隊のみんなを前にしてそういった
『大佐、戦脚とやらの所管は歩兵科なのですよね?なんで我々空中砲兵科が相手する必要があるんです?そりゃあ・・・仲間が落とされてるんだからヤるのに否やはないんですがね』
手を挙げて隊員が質問する
『偶然にしても、だ。我々の機材を撃墜できる存在が第三国やテロリストに渡ってみろ。どれだけの手間が増えるか』
それこそ圧倒的な火力・機力・展開力を持つ海軍はどうでもいい問題だろうが、我々陸軍はどうだ?
『うへぇ』
ひっきりなしに鳴る支援要請。戦車や対空車両といったものが必ずあるとは限らないし、間違いなく展開能力から言って空中砲兵の出番となる。我々の主敵が現われるのだ
『わかったな。そんな面倒なものを量産されてはたまらん。だからその芽を摘む必要があるのだ』
というより、第三国やテロリストをそんな面倒が出来る相手にしたくない、というのが彼らと正面から向き合う陸軍の本音だった
『しかし、未だ発見できていないとなりますと』
「皆も薄々気付いているだろうが、機材の持ち出しについてはどうしたって船舶を使うしかない。ならば、潜伏先は海辺。そして探索していないのは一ヶ所しかない」
鉄道網はダイヤの関係で輸送は大抵把握出来る。もう一人の隊員が手を挙げた
「あそこだとして、どうあぶりだすんです。我々の火力じゃ表面を引き剥がす程度ですよ?」
そして仮にあぶりだしに成功しても、それに火力を使用してしまえば、戦脚との戦闘には機銃しか使えなくなる
「下手に損害を出すのはまずいのでは?」
それこそ戦脚の有効性を証明し、第三国やテロリストの受けが良くなるだけではないのか
「敵の所在が我々の攻撃を受け付けない場所であった場合、炙り出しそのものが難しいです」
「出さない為の海上封鎖は海軍の仕事ですよね?」
噴出する疑問符を大佐は手で制した
「諸君等の言いたいことはわかる。だが、ようは情報の流出が防げればいいのだ」
OS関連の巨大なデータを、送るには、それなりの送信設備が必要となる。アンテナ類かそれに類するものが設置してあるはず
「諸君らはそれを破壊すればいい。記録媒体の流出は歩兵・・・まぁ憲兵の奴らが防ぐ」
あとは包囲し警戒し続ければいずれ出てこざるをえなくなる
「そこを叩けば良い」
大佐は言い切った・・・確かにそうなのだろうが、それぐらい敵にだってわかりそうなもの。その上で相手がどうするか



ビィーッ!ビィーッ!ビィーッ!



けたたましく警報が鳴った
《警報!警報!クワンチョウ市街地に攻撃!空中砲兵科は・・・》
場が一気に固まった
「打って出てきただと!?緊急出撃!被害を大きくするわけにはいかん!」
大佐が叫ぶ。後手に回ってしまったわね
「大尉、嬉しいんですか」
「っ!?違うわよ!」
駐機している愛機に駆け寄ったとき、ガンナーの子に指摘される
確かにどこか嬉しい自分が居た。あの人のやることが、通り一辺倒なわけがないと思っていたから
「でも・・・軽蔑するわね」
考えれば、そう。あの男は貧者や第三国の意志や権利が弱いことを憂いていた
「でもしていることは、弱者を盾にして、暴れている。それだけよ」
市街地なら我々が撃たないとでも思ってるのかしら?
それが狙いだとしても、今という時じゃ、テロリスト排除を誉め称えられるだけよ、残念ながら、ね
「システムオールクリア、FCS良好です!」
「行くわよ!」


マングスタは飛び立つ、市街地での戦闘という悪夢を現出させるべく

クワンチョウ市街地



一方戦脚は、クワンチョウ南部の南沙地区から上陸する事に成功した。
彼らへの抵抗は僅か、巡らの警官が恐怖のあまり拳銃を乱射した事と、虚空へ発射した機銃の一連射へ驚き、事故を起こした車両が行く手を阻む事(正直、これが歩兵より面倒かもしれない)くらいだった
「政庁舎まで進攻する、現状で抵抗はない」
ここクワンチョウはかつての広西軍閥系の都市国家である。
第二次世界大戦後、一時期は統一国家が形成されかけていた大陸であったが、国民党軍は大戦中の大敗北とアメリカからの援助を終戦で断ち切られて枯死し
共産党はその隙間をついて肥大化するも、指導者陣を陸軍航空隊でなく海軍航空隊が沿岸の空母から長駆して行うという奇襲爆撃により失っては瓦解するしかなかった
それ以降は各地に根付いた軍閥が物資集積地たる都市を経営して蠢動しており、その中でも海洋での船舶輸送が行える大陸沿岸の都市群。通称【大沿連(大陸沿岸都市連合)】が大陸では勢力を整えていた
クワンチョウは都市国家群の中でも上海や青島に並ぶ実力者にあたる
「避難誘導がまだ始まらないか」
逃げ遅れた連中がかなりいる。これじゃ何の為に一連射したのか



バダダダダ


「音声感知、マングスタか」
いや、来るならばマングスタしかあるまい
「随伴、近隣にショッピングモール等があったら知らせ!」
上方からの掃射を避けるには建物内に入り込むのが一番だ
「右か」
随伴歩兵が右側を指差す。ターンには少し時間がかかるが、間に合うか


バダダダダ!



「いかん!見付かった!」
マングスタの1機がビルの影から現われる。距離は五千か!撃ってきた!
「こなくそ!」
対戦車ミサイルは比較的小型であり、炸薬も小さく、弾頭はおおよそHEAT



バガン!



こんなこともあろうかと戦脚の片腕に盾を装備・・・盾は屋台の鉄板にコンクリブロックを挟んだ代物、を用意してきたのだ
「時間稼ぎには、なるな」
バラバラと剥がれ落ちるコンクリート片。しかし使えるのはあと1、2回か
「いくぞ!」
戦脚はショッピングモールの正面玄関をぶち破って建物内に侵入する
「こ、こっちにきたぁああ!!!」
「な、なんなんだよあれ!」
大きいショッピングモールだ。未だ事態に気付いていなかったもの、建物内に逃げこめば大丈夫だと身を縮めていたもの、様々な悲鳴がホールを揺るがす
「さっさと逃げろ!死にたいのか!」
《あいつ!建物の中に!》
《待ってクワント6!早まるな!!!》

最初に発見した僚機が突撃するのを見て、私は制止した
《ミサイルが効いてないんです!掃射してやります!》
《駄目よ!ビルごと外側から破壊しなさい!》
質量で押し潰せばいいの!
《それじゃ被害が!わたしは行きます!》
《待って!》
一足遅かった。クワント6のマングスタが降下していく


「深淵を覗き込む者よ、お前が覗きこんだその時、深淵もまた、お前を覗きこんでいるのだ」


《っ!!!》


ダダダダダダ!!!


戦脚を外から覗き込んで火力をたたき込める開口部は限られている。つまりはそういう事だ
《クワント6!!!》
叫ぶ間もなくマングスタが撃ち抜かれて墜落する。そして搭載弾頭と燃料の爆発
周囲のビルのガラスが全て割れて落下し、火炎に飲まれなかった逃げ惑う人々を切り裂く
「だから・・・待てって言ったじゃない」
その光景に、見とれているわけにはいかない。
《クワント6ダウン!各機集合!火力を周囲から投げ掛ける!》


      • わたしは、あなたを許さない






 ↓ 感想をどうぞ(クリックすると開きます)
+ ...

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
ウィキ募集バナー