「あーあ、ホント嫌になっちゃうよねえ……」
鞄の中身を検分しながら、ぶつぶつと愚痴を零す少女が一人。
海賊『カイル一家』が一人、砲撃手
ソノラ。
屈託のない笑顔が実に似合うであろう彼女の表情は、残念ながらあまり芳しいものではなかった。
「ようやく大きい仕事が入ったと思ったら、訳の分からない所に連れてこれられて、オマケに『今から殺し合いをしてもらう』?
冗談じゃないわよ、まったく……」
一枚の紙に目を走らせ、また苦虫を噛み潰したような表情を浮かべるソノラ。
彼女を不快にさせている原因、それは食料や地図、時計といった物品と一緒になって入っていた名簿である。
あの男……確か、
ヴォルマルフとか言ったか。あいつの説明を思い返してみると、参加者の名前の一覧が各自に配布されているとか言っていた。
あの場では暗くて誰がいるのかあまりよく確認できなかったので、改めて知り合いがいないか調べたかったのだが……最悪だ。
自分が知っている人物は、たった一人だけ。しかも、できればお目にかかりたくない人物と来た。
「アズリア・レヴィノス……」
彼女の雷名は、当然ソノラの耳にも聞き及んでいた。曰く、『女傑』の名に恥じぬ剛の者だとか。
軍人である彼女と海賊である自分との関係は、正に犬猿の仲。見つかればどうなるか、考えただけでも背筋に冷たいものが流れる。
厭な考えを振り払うように頭を軽く振り、改めて鞄と向き合う。
結局、見つかったものは
- 食料と水
- 地図、方位磁石
- 時計
- 参加者名簿
- よく磨かれた緑色の宝石がはめ込まれた腕輪
そして……
「これってもしかして、銃!?」
最後に残った油紙の包みを開けた中に入っていたものは、幸いにも自らの最も得意とする得手であった。
少し重いのが気がかりだが、それでも愛用していたものと同じ六連発型の回転式拳銃だ、取り扱いは容易い。
独りぼっちの不安も忘れ、慣れた手つきで別途支給されていた弾丸を装填し、『装備』した。
(一人きりで放り出された時はどうしようかと思ったけど、これがあれば最低限自分の身を守ることはできる。
不幸中の幸いってやつかな?)
彼女の幸運。それは、この状況下で運良く銃を引き当てた事。
彼女の不幸。それは、この状況下で運悪く『この銃』を引き当てた事。付属の説明書をロクに読まなかった事。そして……
この銃を、『装備』してしまった事。
気がつくと、銃を握る右手が妙に重い。始めは見知らぬ場所に連れてこられた緊張感からくる何かかと思ったが、どうも変だ。
どんどん右腕が重くなっていき、それに伴い感覚が消えうせていく。
何事かと思い視線を滑らせると、答えはすぐに分かった。否、分かってしまった。
「何よ……何なのよ、これ……!?」
銃を握る右手が、手首が、肘が、二の腕が、肩口が、無機質な灰一色に染まっていた。
石化、と気付いたときにはもう手遅れだった。忌わしき呪いは哀れな少女の全身を這い回り、彼女の全てを灰色に染め上げていく。
段々と薄れていく意識の中、ソノラは諦めにも似た感情を抱いていた。孤立無援のこの状況下、石化状態を解除してくれる者などいるわけがない。かといって、自分で何が出来るわけでもない。もう、どうしようもないのだ。
(こんな終わり方なんて厭だけど……どうにもならないし、仕方ないか。
あーあ……今日はホント、ついて、ない、な……)
そうして、海賊の少女は遂に意識を手放した。
朝日が差し込む森の中、少女の石像が一つ。
その足元に転がった紙が穏やかな風に撫でられ、カサリと音を立てて表を向く。
それは、少女の右手に握られたままの銃の説明書。
そう、その名は『
石化銃』。装備したものの身体を石に変える忌わしき拳銃。
愚かな少女を嘲笑うかのように、その銃身に刻まれた紋様が朝日を反射し鈍い光を放っていた……
【G-6/森/一日目・朝】
【ソノラ@サモンナイト3】
[状態]:石化中
[装備]:石化銃@FFT(弾数6/6)
[道具]:支給品一式、ヒスイの腕輪@FFT、弾丸(残り24、他の銃に利用可能かどうかは不明)
[思考]:……
[備考]:石化しているため、一切の思考・行動を行えません。
石化銃は彼女の右手に収まっていますが、右手も石化しているので回収は不可能です。
また、彼女の周りに支給品一式とヒスイの腕輪が転がっています。
石化は自然回復しませんが、何らかの方法で治療されれば息を吹き返します。
ただし、石化状態で身体の一部に損傷を追い、石像が破損した場合、その傷は石化が解けた後にも影響します。
つまり、仮に右腕が本体から切り離された状態で石化状態から回復した場合、その右腕は失われたままです。
参戦時期は本編開始直前、主人公や生徒、帝国軍人たちの乗った船を襲撃する前です。
なので、同作品の参加者とは誰とも面識がありません。かろうじてアズリアの名前を聞いた事がある程度です。
最終更新:2009年04月17日 00:55